※感想、批評お待ちしています!
色んな本編書かずに何してんだろう俺・・・。
その者は、一言で言えば『異質』であった。
人類が艦娘を駆り、深海棲艦との戦いに明け暮れる中、ある鎮守府で開発された『彼』は、何もかも変わっていた。
開発された当初から、鎖で雁字搦めにされており、鎮守府から一歩たりとも海洋に進むことができない。
しかしその反面、主砲として35.6cmカノン砲を持ち、そしてどの艦娘よりも―――それこそ大和型戦艦をも上回る―――高い耐久力を持っていた。
そこで産み落とされた彼は困惑していた。
彼はいつも通り、会社を出て帰宅してる時に目眩を感じたのだ。
そしてなんとか自宅にたどり着き、布団に横になったと同時に、そのある鎮守府に出現していたのだ。
そこにいた提督や艦娘と呼ばれる少女達は、最初は彼の誕生を喜んでくれた。
しかし、それもすぐに消えることとなる。
提督が遠征などに彼を艦隊に組み込もうとした時、ことごとくエラーが出たのだ。
不審に思った彼の秘書艦が原因を調べたが、その結果は驚くべきものだった。
なんと彼は外洋航行能力を、全く持ち合わせていなかったのだ。
だが、提督と呼ばれた人物は、なんとかいくらボイラーやタービンを載せようとした。しかしどのようにしても、そのたびにエラーが出る。
やがて、提督や艦娘達は彼を艦隊に組み込むことを諦め、彼はその鎮守府で留守番をするしかできなかった。
彼に任務と言ったら、時折迷い込んでくる深海棲艦を追い払うことであった。
幸い、資源は弾薬以外消費していなかったが、毎日出撃していく艦娘達は、彼が出迎えするのに、少なからず不満を抱いていた。
そして喧嘩っ早い艦娘は、遠征や出撃から帰ってくる度に、彼に陰口や嫌味を叩くのが常になっていた。
たとえそれが本心でないにしてもだ。
しかし彼は何も言わず、ただ表情を苦しげに歪め、彼女達に詫びた。
彼女達もその度に表情を歪め、提督や他の艦娘が止めるまで、さらに彼を罵倒する。
それの繰り返しだった。
しかし、そんな日々も突如として終わりを告げる。
なんと深海棲艦の大群が、その鎮守府に迫ってきていたのだ。
そして総司令部からは、『貴艦ノ艦隊ヲ殿部隊ニ任命ス。奮励努力サレタシ』という、玉砕命令ともとれる、巫山戯た内容の命令が送られてきたのだ。
彼は憤ったが、軍人としての任を全うしなければならなかった。
そして配下にいる艦娘達全員を集め、殿部隊に誰を組み込むか話していた時、『彼』は突然作戦司令部に入ってきて、おもむろに口を開いた。
『自分がここで囮になって、なんとか食い止めてみる。だからここにいる皆、全員逃げてほしい』
艦娘の火力でも、断ち切ることができなかった鎖で縛られていた彼は、どこにも行けない。だから彼の言葉は、至極最もなものだった。
だがそれでも、司令部にいた彼らは最初、猛反対だった。
いくら今まで暴言を吐いたとしても、仲間である彼を見捨てるという真似など、出来るはずもなかった。
彼はそれに驚きつつも、自身の意見を曲げることはなかった。
やがて議論する時間もなくなり、提督は涙を流して彼の提案を呑んだ。
彼らが鎮守府を離れる時、全員が涙を流し、そこを後にした。
そしてしばらくして、深海棲艦の大群が鎮守府目掛け、殺到した。
建物が次々と破壊される中、彼は主砲や副砲を敵に向け、砲弾を撃ち続けた。
深海棲艦達も、潜水艦や戦艦棲姫や飛行場姫をも動員したが、彼の膝を折ることはできずにいた。
だが、彼も全くの無傷というわけではない。
副砲の3分の2は破壊され、頭からは血を流していた。
しかし、それでも彼は攻撃の手を止めることはしなかった。それこそが、彼の本来の任務だったからだ。
「何故・・・貴様ハ、ソコマデ抗ウ?」
「ああ?」
「貴様ノ指揮官ハ、貴様ヲ、見捨テタ。何故・・・ソンナ人間ニ、尽クソウトスル?」
戦艦棲姫の質問は、そこにいた全ての深海棲艦の問いでもあった。
しかし、彼はそれに対し、笑みを浮かべながら答えた。
「あの人は、見捨てたりなんかしなかった。俺がここに残ると言った時、他の艦娘と共に泣いてくれた」
「ダガ・・・」
「それに・・・」
「?」
「それに・・・それが、俺の任務だからだ」
「何・・・?」
「敵を誘い込み、それを撃滅し、ここを守る・・・それが、俺の本来の・・・任務だ!」
「!!・・・ソウ、ナラ・・・アイアン・・・ボトム・・・サウンドニ・・・シズミナサイ・・・!」
「やれるもんなら・・・やってみろ!!俺は・・・」
彼はそこで一瞬口をつぐみ、そして声高らかに言い放った。
「俺の名前は、フォート・ドラム!この鎮守府を・・・守護する者だ!!」
血を流し、そして血を吐きながら口にした彼は、目の前の深海棲艦達に主砲を向け、深海棲艦達はそれに応えるように、彼に殺到した。
後に深海棲艦を足止めし、総反攻作戦を成功させる足がかりとして、有名になったこの作戦は「FD作戦」と名付けられた。
この作戦名の「FD」となった由来は・・・言うまでもないだろう。