とある使用人の1日。   作:道央花子

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なんでも許せる方のみご覧下さい。
読んでから許せなくなっても、オンラインで愚痴るのはおやめ下さい。


ゾルディック家の使用人のある日オムニバス

ある日1-

 

 

とある山道。

男はただ歩いていた。

程なくして歩き着いた先には大きな門。そこにはバスが一台と十数人の男女。

ここは、観光地として有名なククルーマウンテン。殺し屋1家ゾルディック家の屋敷の前である。

この大きな山が丸ごと敷地のうえ、殺し屋家業であるにもかかわらず隠れ住むこともせず居を構えている様は観光しうるものなのかもしれない。

屋敷の前、とは言うがこのそびえ立つ門の外から屋敷は見えず、観光客もただその門だけを見て肝を冷やす。

怖いもの見たさとは言え命は惜しいのだろう。

「あ!あんた危ないぞ!」

そんな叫びが聞こえていないはずもないのに、男は門へ近づいていった。

「お疲れ様ですゼブロさん」

「あぁ、シミズくんお疲れ様!観光バスが帰るまでお茶でもどうだい?」

「助かります。あまり見世物になるのは嬉しくありませんので」

男ーシミズーは門の壁に作られた小屋へ足を進め、そこに座り観光客をまるで孫でも見るような顔で見ている老齢の男に声をかけた。

狭い小屋の中、ゼブロと呼ばれた老齢の男は立ち上がり、湯呑みにポットから茶を注ぎテーブルに置いた。

程よい温度の液体は淡い黄緑色で、恐らくジャポンの緑茶であると見受けられる。

「ふぅ…私ももうすぐお払い箱かも知れませんね」

ゼブロは独り言のように視線をさ迷わせて再びもとの場所へ座った。

「ゼブロさんがお払い箱になったら自分がここに収まろうかと、考えます」

シミズは湯呑みに口をつけ、一息ついて外を見た。

ガラス越しのそこにはバスを見送る数人の男。

「シミズくんは本邸の使用人じゃないか。あと30年はこっちに寄越して貰えないよきっと」

やれやれ、と立ち上がったゼブロは小屋を出て外の男たちの方へ向かっていった。

シミズはその背中を見ながら、少しばかり薬臭い茶を啜った。

 

 

 

 

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ある日2

 

 

「なーシミズー」

巨漢がシミズを呼ぶ。

巨漢の名前はミルキ・ゾルディック。ゾルディック家の次男だ。

「如何致しましたかミルキ様」

シミズは掃除の手を止め、ミルキを振り返った。

「ゲーム付き合え」

「かしこまりました」

ミルキは典型的なオタクである。

画面の向こう側の人間と通信対戦できるゲームも好きだが、オフラインのマニアックなレトロゲームも好んでいる。

コンピュータ相手ではある程度パターンの予測が出来るためつまらないと、こうやって使用人に声をかけるのである。

「あっ!お前手ぇ抜くなよ!」

「申し訳ありません」

「ったくよー!次手ぇ抜いたらお仕置きだかんな!」

「承知致しました」

お仕置きとは、ゲームやアニメーションのキャラクターフィギュアを作る時のモデルになることである。それも悪くないと、シミズは思っている。この暗殺一家の使用人としてはそんな温い仕置で済むのならいくらでも、である。

「あっあっあーー!クッソ死んだ!なんでお前そんな強いんだよ!」

「昔取った杵柄、という所でしょうか」

シミズはすました顔でそう言った。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

ある日3

 

イルミ様は好き嫌いがないので楽だ。

食事を提供するシェフがそう言う。

しかしそれは間違いであると、シミズは思う。

「本日のメインでございます」

このゾルディック家で振る舞われる料理には様々な毒薬が入れられる。毒への耐性をつける訓練の一貫だ。

シミズは料理を運び終え、壁際に立ち一家が食べる様子をそれとなく伺う。

ふと、今日の毒は何系統だったかとシミズは思い浮かべた。

「(あぁ今日はアレだ)」

シミズはそっとイルミに視線を向けた。顔が見えると微かにいつもより口が引き結ばれている。

耐性は出来ていても、味の好みは残るらしい。弟達の手前表に出しはしないのでシェフは気が付かない。

シェフは一応毒の味も加味して料理を作っているはずだが、どうもある毒の味が苦手のようだ。

シミズは使用人のなかでは恐らく自分だけが気がついているのではないかと、密かに優越感に浸った。

 

 

執事のゴトーがイルミの好き嫌いにシミズよりうんと前に気がついていた事を数年後知ることになる。

「俺に勝てると思ったのか?」

「……ひとつくらい…」

「ないな」

項垂れるシミズを一蹴し、優秀な執事は業務をこなしに消える。ついこの間執事見習いから昇格したカナリアはその光景に堪えきれず笑った。

 

ーーーーーーー

 

ある日4

 

使用人シミズはとある街に来ていた。

「お仕事中失礼致します。お話を聞かせてください」

街の路地裏、一体のギャングをとりしまる若い男に声をかけると、沢山の小さい人影がシミズを取り囲む。

「何の用だ」

「言葉通りです。意味がわからないのであれば噛み砕いてお話することも出来ますが…いかが致しましょうか」

慇懃無礼に言い放つシミズに、色めき立つ子供たち。

「意味はわかる。話をするのは構わないが」

男はシミズに向かって親指と人差し指で輪を作って見せた。

「報酬はこれでいかがでしょうか?」

「いいだろう。それで?何が聞きたい」

旅行カバンにいっぱいの札束を確かめた男はシミズに話をうながす。

「こちらの男性の行動パターンを知りたいのです」

「……参考までに聞いてもいいか」

男は清水が差し出した写真に写る人物を知っていた。

「なんでしょう」

「この男をどうするつもりなんだ」

「殺します」

シミズの言葉を合図に、男と囲んでいた子供たちはシミズに飛びかかった。

しかし、彼らはシミズに指1本触れることなくくずおれる。

男を掴みあげ、無理やり目を合わせたシミズは静かに怒っていた。彼は予定が狂うのを酷く嫌う。

「行動パターンを教えていただけますか」

「死んでもごめんだ」

シミズはため息をつくと、男に1本針を指した。

「シミズお前遅いよ」

「申し訳ございませんイルミ様。お時間を頂いたのにも関わらずこの体たらく…如何様にもご処分を」

「お前を殺すとミルキがうるさいから今はやめとく」

「感謝致します」

「ん。まーとりあえず仕事の時邪魔が入らないようにだけはしといて」

「お任せ下さい」

シミズは深く頭を下げた。




お読み下さりありがとうございました。
きまぐれに更新するかもしれませんが今のところ未定です。
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