とある使用人の1日。   作:道央花子

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ゾルディック家の使用人のある日オムニバス2

ある日5

 

「キルア様、朝でございます」

今日の使用人シミズはゾルディック家現当主シルバ・ゾルディックの三男であるキルアの世話を担当する。いつもの担当者が不在のためだ。

「ん〜あとごじかーん」

「12歳のキルア坊っちゃまは布団に描かれた黄色い大陸のことを覚えてらっしゃいますでしょうか」

「シミズ…お前ふっるい手を使うなよな」

「おはようございますキルア様」

「…様はいらねーって」

「それはご命令でしょうか」

「もういい」

キルアは俯き部屋を出ていった。

「さて、さすがにもうおねしょはなさらないようですが…これはチョコロボくんの残骸…」

シミズがシーツを持ち上げると、ぱらぱらとチョコ菓子の粉が落ちる。シーツに所々茶色い跡が残っている。

これは担当者の怠慢か、はたまたキルア坊っちゃまの食べ方の問題か…と、シミズは目を細める。

「あ!シミズ母さんにチクるのはダメだぞ!これは命令だかんな!」

キルアは何かを察したのか、さっと部屋に戻り言い放つとまた部屋を出ていった。

「申し訳ございませんキルア様。キキョウ様からのご命令を上書きすることは出来ません」

キルアの背中にシミズはそう声をかける。

「シミズのけーち!!ハゲろ!」

シミズはそっと自分の頭を押さえた。

 

 

ーーーーーーーー

 

ある日6

 

「おい」

「はい、なんでしょうか」

執事のゴトーはシミズの上司である。

歳はほとんど同じだが、技術はゴトーに勝るものは今のシミズにはない。ひとつを除いては。

「掃除」

「承ります。帰りの足はありますのでゴトーは先に帰ってもいいですよ」

シミズがおもむろに手を開くと、手のひらには無数の虫がいた。

「どうせ5分もかからないだろう」

「まぁそうなんですけどね」

虫はシミズの意志を汲んだように、床にとびちった人間だったものを貪り食う。

「相変わらず悪趣味な能力だな」

ゴトーは無感情にその光景を見やった。

虫は肉片を食べては卵を産み、その卵は瞬く間に孵化し成長過程でまた肉片をたべる。

加速度的に肉片はなくなっていく。骨すらも肉片より幾ばくかかかってはいたが、姿を消した。

「悪趣味とはいいますけど、自然の摂理ですよ。私はそれを少し早めているだけです」

虫は肉片を食い終わると、共食いをはじめた。

最後の1匹になると、シミズの手のひらに戻りその羽をたたんだ。

シミズはその虫を握りつぶし床に捨てた。

「証拠を残すなよ。一片たりともだ」

「ええ、もちろん」

床に捨てた潰れた虫から無数の卵が広がり、卵から孵った幼虫が部屋に四散する。

「今から匂いの元と…目撃者も始末しますね」

ガタンっと部屋の天井から何かが落ちてきた。

「賞金首ハンターか」

「おそらくは。しかし私程度に殺されるのですから3流ですね」

「フンッ違いない。さっさとしろよ」

ゴトーは唯一虫のはっていない入口のドアに背をもたれてシミズの虫が働くのをただ見ていた。

 

ーーーーーーーー

 

 

ある日7

(注意・虫食、蛆虫の描写あります)

 

執事見習いのカナリアは、まだ腫れの引かない患部に軟膏を塗っていた。

念能力を使えても未だ半人前の彼女は生傷が耐えなかった。

「マゴットセラピーって知ってる?」

カナリアが手当を行う傍らで、羽音をさせている袋を持ったシミズがなんの脈絡もなくそういった。

シミズにとってはあるのかもしれないが、カナリアには想像がつかなかった。

「マゴットって、蛆ですよね?セラピーってことは…」

多岐にわたるゾルディック家の仕事場、それに合わせて多言語習得は執事、使用人の必須条件だ。

「知らない感じ?」

「…シミズさんってゴトーさんにも敬語なのに私には崩しますよね」

「んー…今休憩中だから崩してる。休憩中はゴトーにも、こうやって話すよ?」

シミズは手に持った袋から羽音がしなくなるとそっと開いた。中には白く小さな幼虫がビッシリといる。

「ひぃえ」

「あれ?もしかしてカナリアって流星街出身じゃなかった?」

「馬鹿野郎」

シミズにゴトーの拳が振り抜かれた。

「ゴ、ゴトー…痛い…」

「てめーの能力で操作された虫なんか恐ろしくて食えるか」

ゴトーとシミズのやり取りに、カナリアが震える。

「た、たべ…?」

「貴重なタンパク源なのにぃ…俺弱かったし…」

殴られたのにも関わらず、しっかりと握った袋を大事そうに懐にしまい、シミズは項垂れた。

「その締りのない喋り方もやめろ」

「仕方の無い人ですねゴトーは」

ゴトーに睨みつけられると、シミズは肩を竦めて口調を正す。

「あ、あの…それでマゴットセラピーって結局なんだったんですかシミズさん」

カナリアは2人の様子にヒヤヒヤしながら、話題を戻した。逸らした、と言ってもいいかもしれない。

「あぁ、治療法のひとつなんですよ。蛆って腐って柔らかくなった肉だけを食料にしますから、壊死した部分を食べて除去してくれます。無菌状態で育てた蛆を患部に数十匹塗布し、空気を通すガーゼで塞ぎます。さらに蛆の…」

シミズは自分が口を開く度に青くなるカナリアの顔をみて話を中断した。

「ちゃんとした治療法なんだけど、無理そうだね」

「お前は試したかっただけだろうが」

また、ゴトーの拳が振り下ろされた。




ここまでお読みいただきありがとうございました。

また、スマホでぽちぽちして3~4ほど溜まったら投下します。
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