とある使用人の1日。   作:道央花子

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またのお目汚しを失礼致します。





ゾルディック家の使用人のある日オムニバス8

ある日33

 

「ここが天空闘技場かぁ!」

「高いですねぇ相変わらず」

「まぁな、って言っても高さだけならうちの方が高いけど」

「来たことあるの?」

雲より高い天空闘技場を仰ぎみる少年ふたりと男が1人。わずか6歳の時にこのタワーを登ったというキルアに驚くゴン、シミズは職務中の無表情はどこへやら、表情豊かに天空闘技場のシステムを掻い摘んで注釈していた。

「さ、受付しにいこーぜ」

「うんっ!」

「久しぶりにやりますかぁ〜」

受付所にならぶ列の最後尾につき、3人はまた雑談混じりに進むのを待った。

「おいおい子供連れかよ」

「舐めてやがるな」

そんな言葉がコソコソと囁かれているが、欠片も気にした様子なく、シミズはニコニコと少年ふたりの掛け合いを見ていた。

そして、受付を終えた3人は番号を呼ばれると壇上に上がる。

「おいおいおっさん、無理すんなよ怪我するぜ?」

チンピラが向かい合ったシミズを挑発するように笑っているが、シミズは歯牙にもかけず審判の開始の合図を待っている。

「始めっ!」

勝負にすらならない一方的なビンタがチンピラの頬を往復した。しかしチンピラにダメージは無かった。

「へ、へへっ!早いだけかよ」

シミズは無言でチンピラの言葉を流すと、また彼の頬をビンタした。

「うっぐふっ」

どうやら今度は痛みを感じる程度のようで、ビンタの往復が終わるとチンピラはたたらを踏んだ。

「て、てめぇ!」

「手加減しすぎたかぁ…意外と丈夫だなー殺しちゃダメって手加減難しいんだよねー」

手を握ったり開いたり繰り返し、確かめるようにシミズが呟いている。それを隙だと思ったのか、チンピラはシミズにつかみかかった。

「ほげらっ」

次の瞬間、激しく頬を殴打されたチンピラは空を舞い、壁へとめり込んだ。

「死んでない死んでない良かったー」

殴打と同時にチンピラに忍ばせた蝿から彼の心音を聞き取り、ルールに反していないことを喜んだシミズに審判が近づき次の試合が行われる階を伝えた。

「貴方は前に190階まで到達されていますね。…うん、100階にお進み下さい」

何やら操作した器械からシミズの過去の戦績を見たのか、審判はそう言って紙を手渡した。

「うわー、ありがとうございます!」

 

ある日34

 

「あ?お前100階?」

「わぁ!すごいねシミズさん」

「ふふふ、そうでーす。宿の金が浮きましたぁーお先に失礼致しまーす」

キルア達と合流し、エレベーターに乗り込んだシミズは言い渡された数字を伝えぺこりと頭を下げた。

「協調性のねーやつ…まぁいいや、後で部屋教えろよ、泊まってやるから」

「お待ちしてますよーぉー」

「50階でーす」

50階につくと、キルアとゴンはシミズに手を振りながら降りていく。

「シミズさんまた後でねー!」

「部屋番送れよ」

「はい、また後ほど」

いっそわざとらしいほどの笑顔で手を振り返すシミズは、内心疲れていた。

「(写真、動画コーナーを買収してキルア様グッズの販売を止めなければ…まかり間違って売られた場合俺が殺される…それから蝿ちゃんにつけたミルキ様特製超小型カメラからの映像を編集、ハイライトをA2で高解像度現像して紫外線保護フィルム付きパネルを…)」

シミズが与えられた個室に腰を据えた頃、50階ではキルアとズシの試合が始まっており、キルアを追うように操作した蝿達が入れ代わり立ち代わりでシミズの元へやってくる。

「あーなるほどズシって子、念が使えるんだ…一瞬すぎて気が付かなかったや…鈍ってるなーうん、別に見つかってもいいけどぶつからないようにしとこう」

シミズはハエたちを陰状態にすると、素早くキーボードを叩き編集ソフトを起動した。ハードにイヤホンを装着すると映像を再生し編集を始めた。

「ふんふふーん…」

長引くキルアとズシの試合を鼻歌交じりで観戦しながら編集するシミズは完全に油断していた。

ズシ!!

甲高い電子音とともに、その声はシミズの鼓膜を破らんと響いた。

「っ、あっクソっ蝿ちゃん達!!」

音波に直に晒された蝿たちは逃げ惑い失神する個体もいた。

「こいつ許さん!!」

 

 

ある日35

 

「シミズは知ってるか」

「は、何を、でしょうか」

随分と長引いた試合の後、ゴンとキルアはシミズが割り当てられた個室に来ていた。

「ネンだよネン!」

「ネンですか…うーん。少し待っててください」

部屋から出て共有スペースの電話ボックスに入り携帯電話を取り出すと短縮1番でコールするシミズ。それはゾルディック家の長男へと繋がった。

〘なに?〙

「キルア様の例の技術の習得につきまして質問がございます。旦那様にお取次ぎいただけますでしょうか」

〘対価は〙

「言い値で構いません」

〘場所は〙

「ジャポン」

シミズとイルミの掛け合いがしばらく続くと、唐突に受話器の向こうの人物が変わる。

〘キキョウの我儘に付き合わせてすまんな〙

「とんでもありません。私はキキョウ様の物ですから」

〘それで、念の事だったな。そろそろ覚えさせてもいいだろう。采配は任せる〙

「かしこまりましたお任せ下さい」

部屋に戻るとイラついた表情のキルアがいた。

「お待たせしましたー」

「ううんそんなに待ってないよ」

「いーや待ったね!」

「はいはい、念についてお話致しましょう」

 

ある日36

 

「なーシミズー」

「はい、なんでしょう」

「お前の念能力(はつ)ってなに?」

シミズの部屋でシミズを先生にオーラを感じるための瞑想をしていたゴンとキルア。

「お教えできません。私は弱いですので情報を秘匿していかないとすぐ死にますから」

「ちぇー」

「ヒント!ヒントだけでも教えて!」

「んんー弱いなりに頑張りました?」

全く参考にならないと、瞑想もそこそこにキルアは飲み物を買ってくると言い残し部屋を出ていった。

「シミズさんは念の事知ってて、瞑想も必要だから教えてくれてるんだよね?」

ゴンはついて行かないのか、この授業法に嫌気がささないのかとシミズが聞いて返ってきたのはこうだった。

「そうだよ?」

「シミズさんが嘘を言ってないのは何となくわかるよ。でも弱いなりに、はなんだか違うような気がするんだ」

「そう?まぁ、でもゴンくんは騙されやすいしカンも大事だけど経験も積んでいこうね」

「押忍!」

「ふふふ、例のズシ君の」

「えへへーうつっちゃって」

「彼の先生ともお話したんでしょう?」

「うん!念のことを知りたくて聞いたんだけど、念じゃなくて燃、燃えるって意味のしか教えてくれなかったんだ」

「前に言ったけど考え方としては同じだし間違ってるわけじゃないんだよ。でもケチだよねーどうせできる人はそのうちできるようになるしさー」

「(シミズさんウィングさんのことあんまし好きじゃないのかな)」

「だいたいあのメガネダサすぎだしシャツの裾いっつも出てるし言うこと硬いし絶対強化系ですよ!」

「え、関係あるの?(嫌いな割によく見てるなぁ)」

「イルミ様のご友人が勝手に作った念の系統別正確診断だそうです。結構あってるのでつい…」

「そうなんだぁ」

 

 

ある日37

 

「やあ」

「おや、こんな所で会うなんて運命だなぁ蠅くん…俺の子にならない?」

「無視は良くないよシミズ」

「あ、あっちには銀蝿くんが!」

一瞥もくれず完璧に無視を決め込むシミズに、新しい扉を開きそうなヒソカがついてまわる。

その光景を天空闘技場の参加者たちが奇異の目で見る。当たり前である。

ここ天空闘技場において200階の選手はよく取り上げられる有名人だからだ。それに加え、奇行を行う2人に視線は集まった。

「返事してくれないと泣いちゃうよボク」

「それも面白そうですね変態」

オーラのプレッシャーがうっとおしくなったシミズはさも嫌そうに振り向いた。

「やっとこっち向いてくれた。ねぇ、君はいつ200階に来る?」

「いや貴方そろそろカンストでしょう?」

「君さえ良ければ今ここでヤってもいいよ」

「嫌です無理です一昨日来やがれ変態奇術師死ねよ」

「そうかい?じゃあここでヤろうか」

「やらないって言ってるのにクソかよ変態」

しばらくの攻防の後、ヒソカのオーラを掻い潜った蝿の1匹がヒソカの首をとらえたことで終わった。

蝿の這っている部分のオーラが乱れ、そこにシミズの手刀が当てられる。

「今死ぬか、主の役に立って死ぬか選べ変態」

「君も大概だよね。いいよ、萎えちゃったし君の好きな方で」

「じゃせいぜい主の役に立ってくださいね」

「はぁい。ところでこれはとってくれないのかい?」

「オーラで簡単に飛ばせますよ?」

「…いいのかいそんな簡単に教えて」

ヒソカはオーラで蝿を弾き飛ばすと、貼り付けたような笑みでシミズに問うた。

「別にこれくらい戦ったら秒で分かることですし構いませんよ。貴方が本気なら私は今頃ミンチですし。それじゃ、私には二度と顔見せないでくださいね」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

この後ウィングさんとケンカップルとか妄想しましたが、ウィングさんがゲイとか解釈違いです。って人が多いと思うので辞めておきます。

シミズが200階受付のお姉さんに粉かける(打算あり)のとか描きたいような描きたくないような。

次回、期待せずに。
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