雄英高校ヒーロー科。オールマイト、エンデヴァー、ベストジーニストなどの大物ヒーローを何人も輩出している、日本一の高校。入学倍率は300倍を超える、ヒーローを目指すものにとっては憧れの学校。
今、そんな誉れ高き学校に、不純な動機で入ろうとする者がいた。それは
(見てください皆さん!!僕の目の前にあるのはあの、“もっと入学人数増やせ!!”と保護者からクレームが絶えないといわれる雄英高校です!!いやー…そりゃそうですよね…40人の枠を1万2000人が取り合うんですから…あと2,3はクラス増やそうよ…でもそんなことしたら質が落ちちゃうか!!)
雄英の校門で脳内YouTubeにいそしむ中戸 袢波。本当はチャンネル開設したいのだが、いずれ決行する雄英崩壊の足かせになると我慢をしているのだ。ゆえに脳内YouTubeなのだが…
(ねえ知ってるぅ?雄英高校の倍率って300倍を超えてるんだよ?僕は考えたんだ。なんでこんなにも人が多いのか。そりゃあヒーローに成りたい人がたくさんいるからだろうけど、にしても多い。個性なんてものがなかった時代の進学校でもせいぜい20倍。じゃあなぜ雄英の倍率は異常に高いのか。それは、“ヒーローになりたい”以外の目的で受験している人がいるんじゃないかと思う…続きが気になる?それはね…)
他の者は試験直前の緊張でガチガチ。中には今にも転びそうな人物もいる。
いや、袢波の目の前で躓くものがいた。が、隣の女子のおかげで難を逃れる。女子が手を合わせると、ふわふわと浮いていた男子生徒は地に足着く。
一連の流れを見ていた袢波。女子生徒の個性に食いつく。
(軽くする…いや、浮かす…?まあいいや。なんにしても…使えそうだ!!)
おもむろにペンを取り出すと、わざとらしくペンを女子生徒のほうへ転がす。
突然、転がってきたペンを拾い上げると、女子生徒は袢波を見る。待ってましたと言わんばかりに袢波はまくしたてる。
「ああごめんごめん!!それ僕のペンだよ!!拾ってくれてありがとう!!!いやぁ!!君みたいなかわいい子に拾ってもらってペンも喜んでるよ!!」
「い、いやいや!!そんなことないよ!!はい、どうぞ」
(…男の子?女の子?なんでジャージなんやろ…)
ニコニコした袢波にペンを渡す女子。袢波の性別そして服装のことが気になるようだ。だが、父の【読心】をコピーしている彼には筒抜けである。
「やっぱりジャージに気になる?」
「え!!?あ、うん…」
「なんで僕がジャージを着てるか…それはね…ここに来る人は皆制服だからさ!!」
困惑した表情の女の子と男の子。その表情にご満悦の袢波。ご機嫌にジャージの理由を語る。
「まあ目立ちたがりやなんだよね、僕!ま、今日はお互い頑張ろうよ!!」
自身の性格を語った後、爽やかに締める袢波。スポーツマンのように、右手を差し出す。
女子生徒は困惑しながらも、手袋を外し手を差し出す。そして、袢波が握ろうとすると
【雄英ヒーロー科受験生!!早く受付を終えてください!!】
運営からの連絡。いやにゆったりした袢波と違い、女子生徒はその放送に焦る。一緒にいた緑髪の男の子と“ごめん!!”と言いながら踵を返し、受付口へと走る。
「あ!もう時間や!!じゃ、お互い頑張ろうね!!」
ポツンと残された袢波。彼も急がなければ試験を受けられない。
風の音に消えるような声で小さく、
「・・・・・・・ちぇっ」
舌を打つ。
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ビルを一つ建てるのにかかる費用は平均15億。つまりオフィス街を模すとしたらその総工費は一般人どころか、会社でも手が届かない額となるだろう。
しかし、その大出血のビル建設を日本一のヒーロー校はたやすく行っていた。
袢波がいるのは雄英試験会場。ちいさな街一つが敷地内にある事実はこの国財政を疑わせる
試験のルールはいたってシンプル。
得点の違う3種のロボを倒すのみ。制限時間15分なので、スピード勝負となるだろう。
袢波の個性を考えれば、一位をとることは難しくない。だがしかし、袢波の狙いはそこじゃない。ただただ、自分がどうすれば目立つのかを考える。
(よし決めた!この試験にはドッスンよろしく、超やばやば親玉ロボが出てくるらしい!ラッパーのおじさん曰はく、そいつは無視していいらしいんだけど…そいつを狩れば超目立つよね!!!!だって皆が逃げ惑う中1人で立ち向かう!!そんなの目立たないわけがない!さながらオールマイトみたいじゃん!!)
ヒーローへの憧れが一切ないにも拘わらず、オールマイトへの尊敬の念は忘れない。あくまでも袢波なりの者だが…
木たるべき雄英崩壊の伏線として、この試験中も人救けをすることを決意。ヒーロー
らしい行動をし続けてきた人間が突然母校を壊滅させる。そのシナリオのためにひたすら動く。
試験の開始を待ち望む袢波だったが…
【はいスタート―】
無情にも既に試験は開始していた。
【どうしたぁ!!実践じゃあカウントダウンなんざねぇんだよ!!走れ走れ!!!賽は投げられてんぞ!!】
「「「「えええええ!!!」」」」
驚きつつも足を動かす受験生。試験開始からその異常性がわかる雄英。そういう意味では袢波はここにふさわしいのかもしれない。
スタートが出遅れた袢波は焦らず、己の個性を開放していく。いや、誰かの個性を、であるが…
(ええっと…【過発熱】、【解析】【気流操作】と…)
個性の発動と同時に、袢波の膝からはシュウシュウと音がする。焼けるほどでもないが、体温が高まり熱がこもってきているのだ。同時に、【解析】によりに瞳に映る物質を視覚化。〈空気〉を酸素、窒素、二酸化炭素など分類していき、必要な酸素だけを足元に【気流操作】で集める。
(【煙火】、【焔炎】で…)
足元に溜められた熱は、煙を放ちながら外へと放出される。その煙、集めた酸素と手から放たれる炎が結びつき、
「ドーーーン!!!」
BBWAANBB!!
大爆発が起きる。建物のガラスは衝撃波で破られ、周囲には黒煙が舞う。
当の本人は爆発の勢いと噴出火で高速移動。
5つの個性のコンビネーション。その勢いで前方組をゴンゴン追い抜いていく。優越感にひたりながら、昔を思い出す袢波。
(‥この技が完成したのは…中学生のときだったっけ?…はじめは炎系だけでやってたんだけど…僕の個性は劣化コピーだからカス火力だったなぁ…炎個性を2,3組み合わせても体を押し出すような火力は到底無理だった‥
そんなときに見つけたのは、きーちゃん!!僕の友達の妹だったんだけど…いやぁ…本当にいい個性だよ!暑い時には常に扇風機代わりにもなるこの【気流操作】!!一家に一個性って感じ!!うん…きーちゃんには…感謝だなぁ‥)
脳内インタビューをしている袢波の視界に入ってきたのは2Pロボ。早く動く分装甲が薄い中堅ロボ。
(ほうほう、これが雄英セキュリティ第一ラインのロボなのか…うーん…
多分、ここに受かる人にとっては大したことのないロボなんだろう。己の個性を駆使して楽々と立ち回るんだと思う。だけど、一つ一つの個性が弱い僕はそうもいかない。
だから、皆ちからかしてね。)
袢波の右掌に黒い穴が出現。勢いよく流れ出てきたのはただの水。プロの【個性】ではあるのだが…いかんせん勢いが足りない。しょせん劣化コピーでしかないため、本物には勝てないのだ。だが、ここからが袢波の本領。
自身の右腕一部を砂化。なんの混じり気もない純水にその砂を取り込ませる。さらに筋力を増強させ、穴を圧縮。水の勢いは何倍にも跳ね上がる。
「ふっ!!」
【放水】×【砂化】×【筋力増強】
個性の掛け合わせにより生まれたウォータージェット。手か放たれる水流はロボの間接に大きなダメージを与える。
BBSSHHUU!!!!!
袢波の体液を首元に食らったロボ。頭と胴体が華麗に切り離され、電気を垂れ流しながら停止する。数百万のガラクタの完成である
が勝利の余韻に浸る余裕はない。音につられて寄ってきたのは3Pロボだ!!!先ほどのロボより巨大なこれにはウォータージェットは効き目が薄い。ならばと袢波が獲る手は
PPRRAANNTTT!!!
植物。
重機まで搭載した3Pロボ。銃口を向けたそのロボは無様にも機能停止していた、その理由は絡みついた植物性ワイヤー。
袢波の足から生やしたワイヤーは機械内部に潜りこみショートさせた。
植物性ワイヤーのつくりは至極単純。シンリンカムイの【樹木】で生やした根にセメントスの【セメント】でコンクリートを混ぜるだけ。
(…やっぱりプロヒーローの個性は違うね!一般人の個性は5、6個重ね掛けしないと使えないくらいに弱体化するのに、彼らのは弱体化してもまあ使えるからね!!ほんっといい個性なんだから…)
そこまで思考した袢波は思い出す。会場に入る前にあった女子のことを。浮かす個性。自身の戦闘の幅を広がらせる青の個性は銭とも手に入れたい。
(…今から探そうか…敵を倒しながら、人も救けながら、女の子を探す…うーん…いくら僕が天才だからってこのマルチタスクは難しい…
けど、やるしかないよね!!えっと‥なんだっけ…
あ、そうそう
プルスウルトラ!!
だよね。)
前話と今話、どっちのがよみやすい、おもしろかったですか?
当作品の、これからの進め方
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一人称(2話A)みたいな感じ
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三人称(2話B)みたいな感じ