先に言っておきますが、主人公はエアYouTuberです。
ぶんぶん、ハローゆーちゅーぶ!孤児系ユーチューバーの中戸 袢波です!ご覧ください僕の部屋を!今日も今日とて何~にも無い部屋ですね!まあ5畳一間で炬燵置いてるから仕方ないね!
いやー、小学生まで施設で暮らしてたけど、どうにも管理人さんから不気味がられちゃって…ヒーロー名鑑見ながら涎垂らしてただけなのに…中学入学と同時にこの家に追いやられちゃいました!
まあいいんですけどね…ほら、友達とか連れ込み放題じゃん?ほとんどいないけど!それっぽい人はいたけど、先輩だしなァ…元気にしてるかな?全然話を聞かないし。いやどうだっけ?問題起こしたんだっけ?
とと、そんなことはどうでもよくて…今日のイベントはこれ!じゃじゃん!
気になるよねぇ~?僕の持ってるこの円盤型ディスプレイ!これはね…雄英からの試験結果なんです!え、まさかのDVDって思っちゃったよ!実はこのディスクの裏側にボタンが合ってね…よいしょと!
ポチっとな
「んん-!私が投影された!!」
円盤が映像を写したかとと思えば、出てきたのは筋骨隆々のゴリマッチョ!まさかまさかのオールマイト!?おいおい、なーんで雄英からの手紙にオールマイトが…っは!まさか!
「ふふふ!中戸くんはわかったかな!?そう、私は今年から雄英で教鞭をとることとなったのだよ!!」
うわー!!マジかー!!さいっっっっっこうじゃん!!
「はーっはっは!歓喜の声がここまで聞こえてくるようだよ!あいにく君とは会ったことは無いが、私のファンだということを祈ってるよ!さて…早速本題に入ろうか!といっても私の口ぶりから察せただろうが…中戸くんは合格さ!」
ありゃ、すんなり言いましたな。もっとこう‥感動で涙!みたいな感じにしたかったんですけど。
すこしぶー垂れる僕を見抜いたかのようにオールマイトはほくそ笑む。
「へい、あっさり終わったと思ったかい!?ふふふ、全て計算さ!私がエンターテイメントに欠けることをすると思うかい!?」
なんだなんだ?実は合格じゃなかったとか?そんなえぐいことするの?もしそうだったら暴れちゃうよ!?
「君がロボを倒して得たPは54点!入試では18位。1万人以上の受験者の中でこの結果はすばらしいぞ!」
へー…18位か!思ったより上かな?まあ後半は人助けをメインでやってたし。そんなもんなのかな?
なんとも地味な順位であり、正直つまらない。面白くなくなった僕は、オールマイトが写るディスプレイを無造作に放り投げる。
ガキャン!!
ゴミ箱にインしたそれは、未だオールマイトの声を垂れ流す。あまり聞きたくないが、止め方を知らないため嫌でも耳に入ってくる。
「だが、君のすごいところはここじゃあない!君は試験中にも拘わらず、近くの受験生をとにかく助けていたね!終了間際でも瓦礫から2人ほど救助していた」
肘を着きながら音声だけを聞き取る。
ああ、緑谷くんとまんまる茶髪っ娘か。あれは救助って言うか…まあいいけど
「実はね、私たちが見ていたのは戦闘力だけではないのさ!ヒーローは常に命懸けで他者を救う。そこに問われるのは自己犠牲の精神。試験中にどれだけ他人を助けられかも点数項目だったのだよ!」
そーなの!?
彼の言葉を聞いた瞬間机を蹴り飛ばし、急いでゴミ箱からディスプレイを回収。大事に大事に床に置く。乱雑な扱いをしたせいで映像はぶれているが、まだ生きてるようだ。
僕はオールマイトの言葉をゆっくり反芻する。
人助けも評価されてたってこと?確かに精神性を見るとは思ってたけど…まさか点数にまでするとは!やっぱりイカレテルよ雄英!!
「中戸袢波!敵P54、レスキューP210!君が、××××年雄英入試 首席合格さ!!」
映像がかすむ。今度はディスプレイのせいじゃない。これは…僕の目から汗が出ているんだ。
人助けと首席。一兎を追っていたら二兎得てしまった僕は思わず感極まる。右手からは炎、左手からは樹木、両足からは電気が放出される子の体だ。目から【放水】なんて普通さ!!
まるで僕が感動していることを知っているかのように、オールマイトは少し間を開ける。スタッフさんから巻きの指示を受けてからようやく、僕への激励の言葉を述べる。
「さあ、これからもトップで走りつづけよう!この、雄英高校ヒーロー科で」
最高だ…僕は、僕はなんて恵まれているんだ…ただ雄英に入ってぶち壊せればよかった。それだけでも目立つと思ってた。
だけど、この試験結果でその構図は大きく変わってしまった。
だって…
自己犠牲にあふれる入試首席がオールマイトを携えた雄英をバラバラに壊す!誰がこれを無視できるだろうか!全てだ。全てが予想以上に上手くいっているんだよ!
画面のオールマイトの目は見えない。あまりの彫りの深さに目の光さえも届かない。しかし彼の声は明るく皆を照らすものだった。今もなお、僕に明るく宣言する。
実に的外れな励ましを。
「此処が、君のヒーローアカデミアだ!」
此処が、僕の崩壊アカデミアになるんだ!
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雄英合格を決めた僕。一番初めに報告する人は決めていた。
東京の中でも特に物価が高く、おしゃれ上級者が集う新浜。そんな若者の聖地に唯一存在するヒーロー事務所。建物のデザインは主を表すようで、窓から看板までぴっちり長方形だ。
場違いと思われるボロボロの私服を身に纏い、事務所をノックする。
「こーんにちーはー!」ガチャリ
返事の前には既に扉を開く僕。戸を開けた先には男の人がいるが動じない。この慣れた感じ!一般人にはとても無理だろうね!
意味もなくどや顔する僕に呆れる男性。ため息をつきながら僕に応対するのは、日本を代表する潔癖ヒーロー。
「やれやれ、また君か。来るときは連絡しなさいと言っているだろう。私は君と違って忙しいんだよ」
「そーゆー言い方はひどくないですか?ジーニストさん!」
日本ヒーロービルボードランキング3位ベストジーニスト。【ファイバーマスター】という死ぬほど使いづらい個性を駆使してここまで上り詰めた人。日本で3位だよ!?
彼の個性は特殊。だけど見ててわかる、難しい奴やん!!個性応用能力を学びたくて、僕はこの事務所に出入りしているんだ!小さいころからお世話になっていたから、報告も速めにとすっ飛んできたんだよ。
「ジーニストさん!僕、雄英受かりましたよ!」
その報告に、ジーニストさんのめったに動かない眉が動く。
「…ほう…君の個性では火力が足りないかと思っていたが…友達のいない君にはその個性は酷だろう?」
(にも拘わらず合格できたのは…よく頑張ったのだろう。うむ、エクセレント)
おいおい!心の中でのお言葉をくださいよ~まったく、ツンデレなんだから!
「そんな言い方あります?!腐っても僕はあなたのファンなんですよ!?」
「腐っている自覚があるならば結構。わかっているならばもっと私に対し敬意をもってくれ。特に服装。まったく。ここに来るときは最低でもスラックス。もしくはジーンズをはきなさい。ジャージでこられては私の沽券にかかわる」
此処に来るたび言われるなぁ…まあ中学に上がった時には特製ジーンズをもらったんだけどさ…この事務所ってジャージの人いないから目立つんだよね!え?悪目立ちだって?これから大悪党になって目立とうとしてるんだから!予行練習さ!
心の中では僕をよく褒めてくれるジーニストさん。しかし表に出す感情は辟易したものばかり。
そんな時、間に立ってくれるのはジーニストさんの隣にいるオールバック!ユラギさんっていうんだけど、クールそうに見えてすごく優しい人なんだ。個性も【陽炎】っていって、これがまあ便利なんだよ!
「まあまあ、いいじゃないですか。そっかぁ。袢波ちゃんもそんな年か。此処に来た時のことを思い出すと涙が出そうになるよ」
想いを馳せるユラギさんに僕もつられ思い出す。
僕がここに始めてきたのは小学3年生のとき。孤児施設から希望者を募り、人気ヒーローの職場見学させてもらうってイベントがあったんだ!まあ慈善事業だね!
僕はそこから個人的にお邪魔させてもらってるんだ!最初は良い顔されなかったけど、孤児って言えば案外誰もかれも同情してくれるからやりやすいんだ!お父さん、お母さん、サンキュー!
父母への感謝をしている顔を、合格に浸っている顔だと勘違いしたジーニストさん。無感情を装い彼は僕を外へ追いやろうとする。
「感傷に浸るのは家にしてくれ…まったく。私にはトップヒーローとしての役目が山積みなんだ。用事が済んだのなら早く帰りたまえ」
が、彼の言葉とは裏腹に感情は非常にポカポカするもの。彼はチラリとユラギさんを見ると、ユラギさんはヤレヤレといった表情でなにかを取り出す。
「はい、袢波ちゃん!これは、僕たちからの合格祝いだよ!」
そういって差し出したのは藍色のジーンズと、ジージャン。指で触れると滑るような質感。その染具合や触り心地から最高級の逸品。貧乏な僕でも分かった
「袢波ちゃん!これはね、マスターのオーダーメイドなんだよ!世界に一つだけの君専用ジャケット!これは普段着にもヒーロースーツにも使える優れものなんだ!」
「仕方なくだ。この事務所の者が君を応援したいというからな。サイドキックの要望を叶えるのもヒーローの役目だ」
いつになく長いジャージで顔を隠しながら僕に伝える。言い訳っぽく聞こえるのはなんでかな?まあぜーんぶ【読心】で筒抜けなんだけど!
しかし僕は常識的な真人間。ジーンズも両手で受け取ると、一歩下がって深々と礼をする。その姿を見て皆が拍手をする。あれ?なんでだ?拍手の音で心音が聞こえないけど、皆どうして拍手を?
疑問顔の僕に対し、ジーニストさんはまっすぐ目を見て、今度は嘘偽りなく思いを伝えてくれる。
「中戸。君はまだスタートラインに立ったに過ぎない。私も通っていたからわかるが、雄英は化け物の巣窟だ」
大丈夫です!化け物がいっぱいなら常識人の僕が目立つはずなので!
「だからこそ君の個性は映える。精進するように!」
「はい!ありがとうございます!もうこれ以上ないぐらい精進します!」
あなたの母校を
あなたの技術で壊すために…ふふっ!
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ジーニスト事務所を後にした僕は、次なる事務所に向かう。新浜から電車で一時間。夕日が赤くなってきた頃に着いた事務所は…太陽のように燃える事務所!
おもっくそ扉を開き、声を張り上げる。そんな僕に勢いよく返してくれるのは彼女だ。
「こんにちは!!今日もあついねバーニンさん!!」
「袢波!なんだ!なんか用事でもあんのか!?」
「雄英受かりました!」
「マジか!!胴上げだ!!おめーら、袢波をかつげ!!」
そう!僕が来たのはエンデヴァーヒーロー事務所!事件解決数No1名だけあって、チームの総人数も半端じゃない!
そしてこの粋なわっしょいを促してくれたのはバーニンさん!
バーニンさんはこの事務所のヒロインかつヒーロー的存在だ!黄色く燃える髪が生える姉御肌!萌ってかわいらしい名前なんだけど、読んだらすごく恥ずかしがる乙女なんだ!僕を弟のように想ってくれる優しいお姉ちゃん!
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事務所ほぼ総出の胴上げが終わると、バーニンさんは元気溌剌で言う。
「今はエンデヴァーさんいないからあとで言っとくわ!」
「あ、そう!?エンデヴァーさんは僕のこと嫌いっぽいけど!」
「大丈夫大丈夫!子どもさんも雄英らしいからね!息子の同級生ともなればもう無碍には出来ないだろ!」
そう。僕はエンデヴァーさんに嫌われてる。ジーニストさんみたいにツンデレとかじゃなくて、マジで。
ジーニストさんのところと同時期にこの事務所へ見学に来た僕。その時は無断で来てエンデヴァーさんがぶちぎれたっけ?なんかすごい荒れてたんだよ。チラッと心を見たら、お葬式のイメージがあって…
けどそこは僕!孤児らしさを前面に押し出した、浅ましい下目使いで周囲を陥落!結局、黙認という形で僕はこの事務所に出入りしてたんだ!習ったことは炎の制御。僕の多くの技はバーニンさんやエンデヴァーさんを手本にしてるんだ!
そんなお世話になったバーニンさんは、合格書を見てニコニコしてくれている。目はイッてるけどすごく温かみがある人なんだよね!今にも燃やしそうな勢いだけど、彼女はつぶやく。そして、叫ぶ。
「そっかー…受かったのか…!よし!これをやる!!」
そう言ってロッカーから取り出してきたのはブーツ。膝下まであるロングブーツだ。こげ茶色を基調としたデザインで、サイドには燃える炎でHONAMIと書かれている。
「これはな!耐火性はもちろん、微細な穴があるから、足炎ジェット噴射のとき威力が軽減されないんだ!うちは皆こいつを使ってる!」
「本当!?お高いんじゃないの!?」
「一足240万だ!!」
!!??
さすがの僕でも目が回る数字だよ!というかお金には耐性が無いからね!思わず子供みたいになっちゃう。
「いいの!?」
「いいっていいって!エンデヴァーさんが知ったら怒るかもだけど!」
(目をキラキラさせちゃって!こいつは立派なヒーローに成りそうだぜ!)
「…ありがとう!!大事に使うね!」
ブーツを受け取る。やけにずっしりとした。それは物理的な重さのせいか、それともブーツに乗った皆の想いのせいか‥僕は見送ってもらう時にこう思ったよ。
いやぁ、僕は人に恵まれてるなァ
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ここで降りてスーパーに行こうっと。自宅一駅前で電車を降りた僕。タイムセールを狙った行軍だったけど、偶然彼らに会う。もしかしたらとは思ったけど、本当に会うとは思っていなかったので、思わず大声で駆け寄ってしまう
「シンリンカムイ!デステゴロ!岳山さん!」
「なんであたしだけ本名なのよ!」
「いいじゃないか。子どもだぞ?」
「そーそー。切れ散らかしてちゃ肌に悪いぞ?」
マウントレディやシンリンカムイ、デステゴロ。最近ここらでヒーロー業に励む新米ヒーロー!この三人は、最近仲良くなったんだ!マウントレディが免許証落としたのが始まりだけど…彼らは僕を妹のようにかわいがってくれるんだ!あ、マウントレディはかわいがってあげてるけど。
「もー、そんなに怒んないでしょ岳山さん!あ、僕雄英受かったよ!」
「…っち」
(っち!!!!!)
まさかの舌打ち!?しかも心の中でも盛大に言ったね!?
シンリンカムイは態度の悪い彼女をなだめながら、僕に賛辞を述べてくれる。
「すごいな。俺も受験したことはあるけど…あそこを通るっていうことは下手したらもう俺ら並かもな」
そう言って頭をなでてくれるシンリンカムイ。ただマウントレディは猛反発。
「っは!なわけないでしょ!?こんな水鉄砲とかチャッカマンくらいの出力の個性であたしらに勝てるって!?」
「落ちつけマウントレディ…すまんな。最近オールマイトさんがよく来てくれて…その、仕事がないんでふてくされてるんだよ…」
デステゴロの説明でさらに切れ散らかすマウントレディ。しかし、心はとうの昔に落ち着き、僕を祝ってくれている。
(まあ?弱個性なりに努力したんでしょうね。今度なんかおごってあげるか)
ふふ!僕知ってるよ!あなたも努力でここまで来た、良い人だってね!!って、もうすぐタイムセールだ!!帰らなきゃ!!
「じゃあそろそろ僕行きますね!!タイムセール始まっちゃうんで!」
「若いのにえらいなぁ」
「先輩もう年ですもんね」
「岳山!…中戸君!君も忙しくなるだろうけど、またいつか会おう!!」
シンリンカムイは少しだけ寂しそうに手を振った。マスクのせいで表情はあまり読めないけど、感情が読める僕にはわかる。本当に寂しいらしい。だから僕はこう返したんだ。
「すぐに会える」って
少なくとも3年以内には会えるよ。まあ、画面越しかどうかはわからないけど。楽しみにしててね!!
知り合いが多くて羨ましいですね、袢波さん
次回、入学&テスト!
当作品の、これからの進め方
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一人称(2話A)みたいな感じ
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三人称(2話B)みたいな感じ