小鳥は伸びやかに歌い続けて地に落ち、風は爽やかに春を呼びに行ったまま帰らない季節!はい、ということで4月になり、ついに雄英入学式です!
いやー試験以来だねこの学校に来るの!並木道の桜がえぐいくらい地面に落ちて清掃員の人大変そう!あ、それともルンバ最終形態みたいなのがいるのかな?
齢4歳で人生に絶望した僕。別に無個性だからとか、現実を知ったとかそんな悲劇とかは無かったよ?ただ、大好きだった人にこれからの僕を否定されて…知ってたかな?僕はお父さんとおな…
まあいいや。両親が死んで、生きる意味を見つけられた僕。そこからはどんな苦しいことも平気だった。全部、ぜーんぶ夢に繋がってると思えたから。これまでの僕の足跡は、これからの皆を驚かせる歴史になる。そして今日、雄英生徒としその門をくぐる。この一歩は、偉業の始まりだ。
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珍しくセンチになっちゃった!さて、雄英に入ったは良いけど…どの方向から見てもHの形をした校舎。う~ん卑猥!設計者誰だよ!あ、鼠校長かな?あはは!やっぱり鼠には人間の美的感覚はわからないのかな!?けど頭は僕らよりいいからなァ…ていうか世界で唯一の存在って…うらやま!!
アホなことを考えながらも教室を探す。ヒーロー科は二クラスしかないけど、ここは経営科、サポート科、普通科もある。だからこれだけ広いんだろうけど…
迷うわ!?地図を傾けながら首も傾げる。ああもう…どこだよっ…お、目の前にいるのは茶髪丸子!!教室の前に佇み、誰かと喋って…あ、入ってった。あの子も受かったんだ!ラッキー!
僕は彼女が入ったクラスを確認し、飛び込む。第一印象は最も重要!インパクトに全振りで!
「み~なさんこんにちは!!期待の希代の新入生、中戸袢波が来た!!」
黒板の前でポーズを決め、校舎中に聞こえる爆音で挨拶!僕の挨拶にクラスを静まり返る。ありゃりゃ?滑ったかな?ま、注目は集められたしいっか!教室を凍り付かせたも気にせずに、茶髪娘の元へ向かう。
あ、
「緑谷君!やっぱり受かったんだ!」
彼女の隣にいたのは緑谷君。茶髪娘との会話で顔を真っ赤にしてたみたいだけど、僕の挨拶で真っ青になってる!教室の隅に僕を追いやり耳元で囁く。
「な、中戸さん…いきなりで皆びっくりしてるよ!!何あの挨拶!?」
「つまり過程も結果もオーライってことだね!それより緑谷君!耳元はやめてよ!弱点なんだ!」
「ご、ごごごごめん…」
目を丸く顔を紅潮させる緑谷くん…うーんからかいがいがあるね!見るからに臆病というか、地味なんだけど…
この子は要注意なんだよね…彼の個性は、僕の中では【ワンフォーオール】って名前になってる。命名は僕の頭の中に流れてくるからそれを使ってるけど…
本当の名前はわからない。だけど【個性を渡す】なんて超ド級の個性を、こんな地味な顔して持ってる…うん、僕より目立ちそうで要注意!
僕と緑谷君が変な雰囲気になっていると、茶髪娘ちゃんは気まずそうに手をもむ。
おっと、この子にもあいさつしなきゃ
「こんにちは!入試前にあったよね!本番でもあったっけ!?中戸袢波です!よろしく」
「う、うん。あたしは麗日お茶子。よろしくね!」
(なんで体操服なんやろ…)
入試の時と似たような疑問を抱く彼女。よっぽど気になるみたいだね!
「中戸くんって何でジャージなん?そもそも【くん】でいいの?」
お、いいとこついてきたね! 僕が男なのか女なのか…確かに謎ではあるよね。僕髪長いし。けど一人称僕だし…顔は中性的だし、言葉遣いはどっちともとれる。
教えてあげてもいいけど、謎があるほうがみんな気になるでしょ!
「うん、呼び方はどっちでもいいよ!ジャージの理由はね、この前と変わらないよ!僕が目立てるからさ!!」
諸手を上げ、教室の端で想いを叫んだ僕。彼女は若干引きながらも、おかしかったのかすぐに噴き出す。正直な感想を述べながらも手を差し出す。
「あはは!変な人やね!けど、あたしは嫌いじゃないよ!入試でも助けてくれたし!よろしくね!」
ガシっ
やっぱり良い子!それに
【触れた対象を無重力化できる。対象はひとつに限る】
【命名】
【無重力】
おお!やっぱりいい個性だ!一つしか効果を及ぼさないっていうのはきつい劣化だけど…それでも役に立つ個性!うん!やっぱり君と仲良くなってよかったよ。名前は…無重力ね。うん、まあ及第点のネーミング!本当の個性はなんていうのか後で教えてもらおうっと
「麗日さん!ありがとう!ほんっと!ありがとう!」
過剰な感謝の言葉に小首をかしげる麗日さん。うーん、天然っぽい仕草でかぁいいねぇ。
おっと、他の皆にもっと…
僕はバッグを背負ったまま、ひらりひらりと机の合間を縫いクラスの皆に声を掛けに行く。
「僕は袢波!よろしくね!」
「おっおう…あ、俺は切島!よろしくな」
「あたしは芦戸!!」
「へいへい!俺は上鳴ってんだけど!今度お茶しない!?」
次々と握手を交わしていく僕。あ、別に個性コピーはできてないよ?条件満たしてないし。ただ、こうすることで今後やりやすくしてるんだ!大事なのは今じゃなくて崩壊!せっせと信頼と個性を積み上げるために努力を怠らない僕!さっすがだぜ!
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僕がクラスのほとんどと握手をし終える時、低い声が低い位置から飛んでくる。えらいイケボだな。
「いつまで浮かれてるつもりだ」
場が静まり返る。僕を除いて
「あ、よろしくね!!」
「ああ!?誰がてめぇなんかに触れさせっか!!」
うわ…この子口悪いな…よくそんなんでヒーロー目指したね…ヒーローっていうのはね?優しくなくちゃいけないんだ…なんていうか…
「緑谷君の方が君よりヒーロー向いてるね!」
「急に何言ってんだこの金髪がぁ!」
おっと声にだしちゃった。テヘペロ?
ギャイギャイと騒ぐ僕らに、声の主から怒りの矛先が向く。浮浪者のようなそいつを黙視すると、僕は体を少し傾ける。すると、僕がいた場所には包帯のような布が飛んでくる。
ギチィ!
「ぐっ!!」
無様にくらったのは口の悪い腰パン君。驚きの感情がクラスで巻き起こる。ふふふ、伊達に【読心】は4歳から使ってるわけじゃないんだ。ある程度の距離なら心の声じゃなくて感情だって読める。が…むやみに動いた腰パン君が僕に近づいたせいで、後発の布をよけそこなう。
「うひゃっ!!」
一瞬包帯に捕まったかと思えば、瞬く間にがんじがらめ…燃やしてもいいけど…退学させられそうだし…
僕を捕まえた浮浪者はため息をつき、教壇に立つ。右手は包帯を持ち、左手で頭を掻きながらめんどくさそうにポツリ。
「静かに。えー…担任の相澤だ。よろしくね」
(((担任!?)))
あ、皆の声が重なった。確かに意外だね。あんな人がプロヒーローなのか?うーん…ヒーロー名鑑でも見たこと無いし…まあそれより
両腕に個性を流し、力任せに引っ張ろうととしたとき、先生は緩めて一つ指示を出す。
「全員、体操服きてグラウンドに出ろ」
…ってことは僕、このままお外へGO!
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ここはグラウンドα。数ある雄英グラウンドの中で、唯一まともなグラウンドだ。鉄棒や砂場、トラックもある。まあサイズは1Km平方を超える化け物運動場だけど!
「えー今から君たちにはテストを受けてもらいます」
これからデスゲームでも始めるかのように先生が伝える。その内容は体力テスト。立ち幅跳び、50メートル走、握力などなどおなじみのやつだ。しかし、条件が一つ加わる。それは
「個性の使用自由!?」
入学式やガイダンス等があると思ってたけど、どうやら省くみたい!ほんと自由だね!僕もこの学校の先生になろうかな!?そんで初日に全員落としてみたい!絶対問題になるでしょ!?
要領を得ない生徒には実践と言わんばかりに、腰パン君に投げさせる。あ、爆豪っていうのね。
雄たけび(死ね)を叫びながら投げたわけだけど…
すごい!!球を投げる瞬間爆破させてふっとばしたんだ!その飛距離は705メートル!?むしろ回収どうするんだろ!!てか運動場広すぎない!?
そうか…個性を使えば異常な記録が出せる!いかにそういう記録を出すかってことなんだね!?これでオール一位とれればそれだけで注目を集められる!!
「楽しそー!!!」
僕は大声で目をキラキラさせながら口にする。初めて遊園地に来た子どものように。これほど純情な態度が先生は面白くないらしい。彼は、本心からこう告げる。
「ほう…余裕そうだな…よし決めた。成績トータルの最下位の者は見込みなしと判断し…その時点で除籍処分としよう」
事実上の1人確定退学宣言。教師あらざる言葉を歯をむき出しにしながら僕らに告げる。
うわっ!!?やばいやつじゃん!てか僕がしたいことじゃん!!なんなんだこの先生!もしかして僕のファンなの!?
当然場は騒然とする。当たり前だ。その中では何故か緑谷君が一番動揺している。彼ほどのパワーならむしろトップを狙えるはずなのに
皆々が思っている。なんて理不尽なんだと。こんなの入学当日に起こるイベントではないと。ボロボロのつなぎを来た先生は、挑発するかのように言い放つ。
「生徒の如何は先生の自由。ようこそ。これが雄英高校ヒーロー科だ」
…ジーニストさんが化け物の巣窟っていってたけど…それは先生も含むんだね!!
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最下位退学体力テストが始まり、各々が死ぬ気で種目に挑む。そりゃそうだよね!必死に入った雄英を一日で出ていくのはごめんだろう…僕だって嫌だ。もしこれでやめさせられたら、例え雄英をぶっ壊しても動機が復讐と思われちゃう。そんなのありきたり過ぎ!
とはいうものの、僕の個性は【器用貧乏】。大抵のことはできるから最下位の心配はない。目指すべきは…
「一位だ!!」
50メートル走の順番待ちで、1人いきり立つ僕。その隣で、緑谷君は青々としてる。あ、新鮮って意味じゃなくて、物理的に。
「まずいまずいまずい。まだ僕は調整ができないんだ。どうする?一発狙いにしても最初から体を壊してちゃ意味がない…」
ブツブツと不安がる。なんで…あ、そっか!
僕は入試を思いだす。インフェルノを破壊するほどの純粋な力。その代償は重く、彼の体はバキバキに折れていた。正直、個性があってない…待てよ?渡す個性ってことは誰かから渡されたのか!?それなら体と個性のアンバランスにも納得いく!
僕が1人で納得すると、順番が回ってくる。僕を呼びに来たのは耳朗さん。50メートルと体を見た感じだと…聴覚強化系かな?
…
「あ、耳朗さん!なんかついてるよ?」
「え?」
背中を見ようとする彼女。僕は親切にゴミを取ってあげる。
「あ、ありがと」
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50メートル走か…よし、【感覚敏捷】×
「STAR」
【無重力】×
Tを言い終えるか否かで個性を発動。僕の体はふわりと浮き上がる。地球の重力から解放され、内臓がぐるりと回るようだ。
「T!!」
【風迅】×【波動】
発動の意思で、両の手からは別々のエネルギーが放たれる。右手からは黄色の波動。左手からは青い猛風。掌を後方へ向けることで、体重0の僕の体は、前へと追い出される。そのスピードは劣化ヘルフレイム単体よりも速い。ビュン!と空を切り裂き白帯を切る。
「ゴール!!」
「中戸…3秒05」
うわー!これでもか!1位の飯田君より0.01秒遅い!!個性パクればよかった!!麗日さん
「オロロッロロロロロ!!」
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…その後の結果…
50メートル走 2位
握力 2位
反復横跳び 2位
上体起こし 2位
長座体前屈 2位
立ち幅跳び 2位
8割の競技を終えた僕は
「くそくそくそくそくそくそ…!」
苛々していた。なんでだ?なんで1位が取れないんだ?いや、理由はわかってる…あのパイナップル頭のせいだ…八百万さんだっけ?何でもかんでも体から出しやがって…チートじゃん!しかもその性能は自分の知識に依存するって!!コピーしたけど全然使えないよ!!
…個性を聞いたらすんなり教えてくれたから、いい人だとはわかってる。だけど僕の道を阻むってことは悪い人だ…うーん…ここで殺しても捕まって終わりだし…正攻法でやるしか…
相澤先生の呼びかけが入る。
「おい、立ち幅跳びが終わったやつからソフトボール投げだ。さっさと始めろ、八百万」
超ハイテクジャンピングホッパーで立ち幅跳びを終えた八百万さん。今度は何を使うのか…彼女はおもむろに体操服を脱ぎだす。といってもお腹が見える程度だけど。
1人ブドウ頭の男子が息を荒くするが気にも留めない。彼女が作り出したのは…大砲!?兵器じゃんか!!
閑散としたグラウンドに似つかわない大砲。黒光りするそれに、彼女はソフトボールをセットする。原始的な導火線にチャッカマンで火を着ける。ジジジと蝉の鳴き声のような音を出した後、大砲はドゴンと鳴き遥か彼方へとボールを吹き飛ばす。
「記録705.3メートル」
うへぇ…まじかよ…さすがの僕でも辟易しちゃうよ。大砲に勝つ方法なんて…授業用の個性じゃあ無いよ…緑谷君ならいけそうだなぁ…
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そう思っていたら緑谷君の記録はなんと40メートル。まるで無個性の人間の記録みたいだ。不思議に思い話を聞くと、個性を使わせてもらえなかったらしい。え…てことはまさか…あの先生の個性「個性を消す」系統!?つっよ!!
これは…ぜひ欲しい。
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ひと悶着した後、緑谷くんの記録は705.3メートル。トップに躍り出る。人差し指だけを犠牲にしてこの記録…やっぱりこの個性はやばいんだ…気になるなァ…誰からもらったんだろう…いや待てよ?確か個性発動のイメージはオー
「早くしろ中戸。お前で最後だ」
「あ、はいはい」
…いいこと思いついた…!
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サークルに立ち、手を挙げる。
「20番目中戸!行きます!」
「バカやってないで早くしろ」
もー…わかってないなァ先生は。こういうのは雰囲気づくりが大事なんだよ…
皆の視線が僕に集まる。朝からさんざんアピールしまくったからなァ。皆には僕がどう見えてるだろう。変な人?お茶目な人?優しい人?
まあなんでもいいや。その評価の中身自体は何でもいい。重要なのは、
さてさて
確か…
ケツの穴ぐっと引き締めて
心の中でこう叫べ、だっけ
【ワンフォーオール】
大きく振りかぶり、ただ白球を握りしめる。個性を発動すると、彼の因子が右腕全体に溶け込んでいくのがわかる。雑なフォームで肩、肘、手首の順に力を込めていく。小さな粒子が神経にまで入り込んだかと思えば、それぞれが炸裂してエネルギーへと変換される。
「SMAASSHH!!」
神経、筋肉。僕の右腕を構成する道筋は全て悲鳴を上げている。しかし気にしない。肩、肘、手首の順に骨が割れ、肌は黒く染まっていく。だが、それらを引き起こすほどのパワーは白球に移る。自壊の力を込められたボールは音もなく遥か空の向こうへ。いや、空に達した後、ギュオンと音が後から空を舞う。白い球はうすい青空に消えて行ってしまったようだ。
弾が消えたことを確認した相澤先生は記録を伝える。
「…中戸。記録、3000メートル」
文字通り桁違いの記録。皆が口を開けて僕を見ている。その目は畏怖なのか、羨望なのか、嘲笑なのか。
ああ、たまらない、たまらないよ皆!その顔、その顔が見たかった!笑顔でもなく、泣き顔でもない。ここからじゃ感情が読めないから悔しいよ!あの顔の感情はクセになるんだ!パチパチの炭酸みたいな刺激的な感情!
ようやく口を開いたのは、朝に話した切島君。
「な、中戸…う、腕が」
なんだよ…もう…知ってるよ…
僕の腕は動かない。およそ曲がってはいけない方向に曲がっている。実は、皆からは見えてないけど骨も突き出てるしね?
痛いさ。それなりに。【感覚鈍化】を使っても全然痛い。個性が劣化したせいで緑谷君よりも反動がひどい。だけど、こんなもの、僕が目立ってるで事実だけど快感に変わるさ!
「なんだよなんだよ皆して!そんなに僕が好記録だしたのが羨ましい?」
「ちょっとちょっと!冗談だって!ほら、笑って笑って!」
いいねぇ…この目は施設で感じた、異様なものを見る目。笑いが止まらないや!
ケラケラと笑う僕に対し、相澤先生が伝える
「…中戸。まだやれるのか?」
緑谷君は指を壊した時、涙目でこう言った。「まだやれます」と。その瞬間、み~んな彼を見てたからね。やっぱり彼も異常なんだろう。だけど、僕も負けないよ。
そうだなぁ・・・ここは雄英。しかも先生はプロ。ならこう返すべきでしょ!
満面の笑みでね。
「ヒーローは常に命懸けですから!!」
ブランブランと揺れる腕をもって答える。ポタポタと流れる赤黒い液体。傍からはどう見えるだろうなァ?けなげか、異常か…ヒーローっぽくない?雄英自己犠牲好きでしょ?
これで体力測定編はおわりです!テンポは速く!
当作品の、これからの進め方
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一人称(2話A)みたいな感じ
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三人称(2話B)みたいな感じ