ごめん。みんな。
教室。
倫也は体育館での始業式を欠席したもののホームルームに戻ってきた恵の横顔を眺めていた。
恵の席は廊下側の後ろのほうである。一方の倫也は窓側。終了の鐘と共に恵が教室から逃げ出すのをなんとか捕まえなければならない。
先生の話
「それでは今日から三学期が始まる。みんなもまだまだ正月ボケがあるかもしれないが・・・」
倫也が席を立ちあがる。
「おい、安芸。お前なんで立ち上がってるんだ?」
「それは先生・・・青春ですよ」
「あっ?お前なに言ってんだ?」
倫也は先生を無視して恵の前の席の子に声をかける。
「すまないが、ちょっと席を変わってくれるか?」
コクリと頷いたのはクラスメートAである。
倫也は体を後ろ向きに椅子にまたがって、恵を正面に見据える。
先生が咳払いをして話を進める。
「安芸!夫婦喧嘩を学校にもちこむなよ!」
クラス中から笑い声が起きる。倫也は笑わない、恵は壁の方を向いて前をみない。その表情はフラットのままだ。
「ひゅーひゅー熱いよ」
「なんだあの夫婦」
どこからともなく野次が飛ぶ。
「先生!あんまり熱いんで窓開けててもいいですか?」
「おう、開けろ開けろ」
外はまだ寒い。クラスメートAが窓を少し開けた。
「そういうわけでバカップルにみんなはならないように、みんな気をしきしめて三学期を送ってください」
「起立!礼!解散!」
同時に終了の鐘が鳴った。
倫也は恵から目を離さない。しかし次の瞬間、恵は倫也の前から姿を消す。
「前だ!英梨々」
「任せて!」
教室の前の扉が閉まる。
「ふふん、恵。観念しなさい。さすがの恵も扉が閉まっていたら外にでられないでしょ」
「・・・英梨々」
続けて恵が切り返す。
「当然、私もいるわよ?加藤さん」
詩羽が後ろの閉まった扉の前にいる。
「さぁ加藤。もういいだろ、視聴覚室いくぞ」
「・・・」
先生と生徒が呆然とみている。
「安芸、なにやってんだ?」
「あっ、先生と他の生徒は前からどうぞ。ちょっと検閲しますけど」
英梨々が前の扉の前に列を作らせる。
そして、ひとりづつ教室から出ていく。
「ちょっと、さりげなく混ざらない」
「・・・」
英梨々が恵の後ろ首を猫のようにつかみ、教室内に戻す。
「年貢の納め時よ加藤さん」
「もう逃がさないわよ恵」
「・・・まだっ!」
恵がステップして窓側に走り出す。
「まさか!?」
「ここは三階よ!」
さきほどクラスメートAが開けた窓の隙間から飛び出す。
「あいつ・・・無茶しやがって」
倫也がため息をつく。
(つづく)
負け犬5はけっこう長丁場になっております。
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