「何よこれ・・・!」
詩羽はプロットを読み終わって怒っている。
「このプロットはどこからあがったのよ?」
「・・・おそらくは澤村さんの潜在意識なんだろうけど・・・小人なんじゃないかな?」
「バカにしないでくれる?」
「霞センセはそのプロットがまったくでたらめだと思うのかい?」
「思わない・・・むしろ嫌いな私自身の鬱屈が書いたようなどうしようもない暗さね・・・」
「霞センセは関わってないと思うよ。その話に進むと降板してでてこない」
「そりゃあそうでしょうよ。許せるわけがないわ」
「澤村さんが望んでも?」
「当たり前よ」
伊織がうなずく。
「倫也くんも同じ気持ちだったよ。だからこそ霞センセの力が必要なこともわかっている」
「でも、それだと加藤さんの一人勝ちじゃないの?」
「そうだね。」
「それを私に納得した上で協力しろというのね・・・」
「納得しなくてもいいんじゃないかな?これが加藤さんから提出されたプロットなんだけど・・・」
伊織がまたプロットを渡す。今度は薄い。
「・・・なるほど、加藤さんらしいというか・・・なめていたのは私の方なのね・・・」
「なんだかんだ倫也君と結婚する人だからね。根が似ているんだと思う」
「少し時間をちょうだい」
詩羽が椅子にもたれかかった。自分にも役割がある。ついつい忘れてしまうことだった。伏線を置き回収する。点をつなげて正解に導く線にするために・・・その性分が邪魔をしていたのかもしれない。自分の気持ちとも向き合わなければならない。
英梨々勝利後の未来プロットは、彼女が倫也との未来を選びきれず恵に譲ってしまう。そして逃げるように10年前に遡る。小学生の時に倫也と喧嘩した事を修正するために・・・
しかし、我々『冴えカノ』の登場人物は過去の「設定」はあっても過去は存在しない。もし過去を存在させるなら過去を描く強力な力がいる。それはもう一つの作品だ。ゆえにプロットは高校時代に修正される。結果・・・英梨々だけが過去の住人になる。高次脳機能障害をおい、小学校の記憶のまま一日を繰り返す。
こうなるともう『冴えカノ』のifとは言えない。
問題はその物語の内容ではなく、なぜそのプロットが初期プロットだったのかということだ。
なぜそんなルートになった?
原因は私、霞ヶ丘詩羽にある。策に溺れたのだ。
『霞ヶ丘シナリオ』は加藤恵のキャラクター性を認めないことにあった。彼女はメインヒロインだから強いのだと・・・ゆえに登場させた@メインヒロイン型を倒すことで英梨々の勝利が確定する。私のサポートによって・・・。
しかし英梨々の本心はどうだろうか?それは加藤恵に勝ったと思えるだろうか?誰もが英梨々こそが本当のヒロインだったのだと思えるだろうか?
『霞ヶ丘シナリオ』はすでにその時点で、恵に英梨々は魅力で勝てないことを認めてしまっているのだ。
だから、英梨々は勝利後に自らの世界に完全に引き籠る。
小人シナリオとはよくいったもんだ。
そして頭にくるのは・・・この加藤恵から提出された薄っぺらいプロットだ。
『霞ヶ丘シナリオ』を修正し、大団円を迎えた後、英梨々の過去行きを阻止する。その後の真のエピローグは『倫也シナリオ』にして明るく終わらせるというものだった。
「あっ霞ヶ丘先輩いいですか?」
「何かしら出海さん?」
「えっと、あたしも難しいことはわからないですけど・・・今回みたいな話はつまらないから、恵先輩を早く起こせってことですよね?シナリオ重視しても、澤村先輩の魅力は引き出されませんよ?」
「・・・」
当の本人、英梨々は今、美智留とオセロを対戦中であった。
(つづく)
小難しいこといっているやつが何を言っているのかよくわからないことある。