「恵先輩、恵先輩、起きてください。話がだいぶ進んだようですよ」
「んー」
「倫也先輩も起きてください」
出海が二人を起こす、短時間とはいえ深く眠ったようで、二人ともおでこが少し赤くなっていた。
「ありがとー、出海ちゃん・・・ふぁあー」
恵が大きなあくびをする。
「あと、波島くんもありがとう」
「いえいえ、あまり役立てなかったけど」
「ううん、役柄に似合わないことさせてしまってごめんなさい。でも霞ヶ丘先輩に気付いてもらえただけでもよかったと思う」
詩羽が腕を組んで立ち上がっている。
「で、加藤さんはどんな風にシナリオ修正すべきだと思っているのかしら?」
「どうでもいいんじゃないですか?バレンタインイベントなんて」
「あなた、自分の言っていることわかっているの?」
「そのつもりなんだけどなぁ」
「でも、イベントをこなさないと澤村さんが成長しないわよ、今のままメインヒロイン型と戦っても・・・」
「だから、そんなことどうでもいいですって・・・」
(ねぇねぇ出海ちゃん、これ加藤ちゃんガチめに怒ってない?)
(はい・・・これはもうシリアス展開なんてもんじゃないですよ)
(でも、いつもの演技なんでしょ?)
(前回のボイコットもガチですからね・・・)
(どうしよ・・・止める?)
(あたし達じゃ無理ですよ・・・格が違います・・・)
(波島兄ちゃんなら止められる?)
(お兄ちゃんなら、さっきこっそり帰ってますよ)
(いつのまに!?)
(だからガチなんですってば)
「そう・・・そんなに私のシナリオが気に入らないのね」
「あんたバカなのぉ!?死ぬの?」
「・・・!」
(ちょっと出海ちゃん、今のセリフどっち?)
(どっちもなにも、澤村先輩なら教室の隅で借りてきた猫みたいに震えてままですよ)
(じゃあ、加藤ちゃんが言ったの!?)
(・・・はい)
(迫力ありすぎじゃない?)
(だから、あのセリフは絶妙な加減が必要なんです。それが澤村先輩の魅力なんじゃないですか)
(なるほどぉ)
「だからぁ、霞ヶ丘先輩。安芸くんと付き合っているんですか?」
「・・・あなたそれ、真面目に聞いているの?」
「はぐらかさないでもらいたいんだけどなぁ?」
「だって、そんなの違うってわかるでしょ」
「なんでですか?」
「なんでもなにも、付き合ってないでしょ」
「だったらなんですぐに否定しなかったのかなぁ?」
「・・・えっ?」
詩羽が戸惑う。恵はずっと機嫌が悪かった。
「いい加減にしてくれないかなぁ!自分の想いを殺して、英梨々にばかり辛い思いをさせて、何が『霞ヶ丘シナリオ』よ?あなたが参戦していないことで、あなたが最終ボスっぽくなってくるのに、自分で気がついてないわけ?」
「・・・私・・・そんなつもりは・・・ヒック・・・」
(これ何かのフラグですかね?)
(あーそうかも、なんだろ?)
(もう霞ヶ丘先輩泣きそうですよ・・・)
「さて、霞ヶ丘先輩。聞かせてもらえないかな?あなたの『宣戦布告』を」
(出海ちゃん、やっぱり加藤ちゃんが何に怒っているかいまいちわからないわ・・・)
(ひとつには霞ヶ丘先輩が傍観者なのが不安なんだと思いますよ。性格的にも何かありそうな気がするのはわかりますし)
(センパイは確かにそういうところあるかもしれないね、それで先に予防線を張っていると?)
(それもあるみたいですね。もう一つはやっぱり霞ヶ丘先輩はシナリオに伏線をいれてきますから、そこらへんで何か気が付いたのかもしれません)
(つづく)
女同士のヒステリックなケンカに実際に居合わせると、緊張がきれて逆に笑えたりしません?まっ、この話とは関係ないですが。