出海が帰り道を電話しながら一人で歩いている。
「だからねお兄ちゃん、わたしの次の短編はメルヒェン的なものにしようかと思うのだけど、やっぱりちょいエロもいれたほうがいいかな?・・・えっ、何?カメラ回ってるってなんで??」
慌てて電話を切る出海。
「ふぅ・・・、あれぇ・・・?わたしに出番は終わったはずだけど、ちょっと困ったときは恵先輩でしょ?えっ、疲れすぎてる?ちょっと、人材不足なのになんで1人退場させちゃったの・・・?」
「おーい、出海ちゃん待ってよー」
美智留が走ってくる。息を軽く弾ませる。
「あっ、援軍きた」
「ん、出海ちゃん誰と話しているの?」
「さぁ?」
「さぁって・・・」
「とにかく、この物語がピンチだということがわかりますね」
「なんかもめてたもんなぁ」
「そうですよ、つまらない伏線すら張れず、なんかガチ切れしてましたからね」
「まぁそれはトモがなんとかするでしょ、ああ見えて主人公だし」
「そうですね。ちょっと立て損ねたフラグ回収しますね、ついでなんで」
二人が話ながら歩いていると、前から風船を持った小さい男の子が歩いてくる。
「きましたね」
すると少年が風船を離して見上げる。
美智留が猛ダッシュからハイジャンプして風船をキャッチして渡す。
「はい、気をつけてね」
「・・・ありがと」
少年が風船を持って走りだす。
「あ、だめですよ美智留さん」
「なんで?」
「泣くまでが役割だからです」
「?」
少年が立ち止まって出海の方を見る。迷っているようだった。出海は大きくうなずく。
風船を離して見上げる。「えーん」と泣く。それは下手な泣き方だった。
「まぁ、見ててください」
「でも、もうあんなに空高く・・・」
出海が一度しゃがんでからジャンプする。上空30メートル。ちょっとしたビルの高さだった。
「出海ちゃん!?なんであんなに」
空で風船をキャッチした出海はその風船と一緒にゆらゆらと揺れて降りてくる。
少年がそれを指さして「ピンク」と言った。
地上にスタッと降り立った出海は少年に風船を渡す。
「アドリブセリフもよかったよ」
「えへへ」
鼻をこすりながら会釈すると、走っていってしまった。
「出海ちゃん今、すごいジャンプしなかった?」
「しましたね。30メートルぐらいですか?」
「なんで?」
「美智留先輩もBGMを変えることできるじゃないですか?」
「じゃあ、今のが出海ちゃんの能力なの?」
「わたしの能力は『フォロー』ですよ。今のはクリエイターの資質みたいなもんです」
「資質?」
「クリエイターは創出し実現するんです。美智留先輩は音楽を創出し世界に影響をあたえていますよね?それと同じようなもんです」
「ぜんぜん違うと思うけどなぁ・・・」
「あれ・・・?」
「どうしたの?」
「今、公園の横通りましたよね?」
「うん」
「隠れてください!」
出海がしゃがむ。美智留もしゃがむ。
「さっきの少年がまたいるでしょ?」
「ほんとだ」
「あの少年はモブより少し上のイベントフラグモブです」
「へー」
「あたしのネズミーランドのお城の絵の時に、それとなく描かれています」
「あー雰囲気でるしね」
「そういうことです。でも、ああいう場所で風船を離すのは何かのイベントフラグなんです」
「へぇー」
出海のケータイが鳴る。伊織からだ。
「出海!観測したらダメだ、早くそこから逃げろ!プロットが・・・目まぐるしく変更しているぞ!」
「ダメだよお兄ちゃん・・・(つづく)になってる・・・」
(つづく)
「観測」の対象を観測するまでは不確定な存在である。