少年が風船を離す、風船が木に引っかかる。「えーん」と泣く、さっきよりも少し泣き方がうまい。
すると、人影がさっと走り、木を一回蹴って華麗にハイジャンプ。風船をキャッチする。
少年に風船を渡すと敬礼した。
「任務完了です」
それを怯えながら眺める出海と、興味深そうに眺める美智留。
「ねぇ出海ちゃん?すっごい綺麗な人だね。金髪が光ってるみたいだよ。青いドレスにロングブーツも似合ってるし・・・」
「遅かった・・・お兄ちゃん・・・」
もう電話は切れていた。
「なんかすっごいキャラ立ってるんだけど、誰なの?」
「あれは・・・あれは・・・みちゃいけなかったものです・・・」
「人形みたいな人だね、あれ・・・両手義手・・・?」
「美智留さん! ああ、セリフが乗っ取られているのか・・・」
コツンッ、コツンッと足音を響かせ、出海の方へ歩いてくる。
「だめ・・・こないで」
出海が泣く。
『リテイク』
※※※
出海が帰り道を電話しながら一人で歩いている。
「だからねお兄ちゃん、わたしの次の短編はメルヒェン的なものにしようかと思うのだけど、やっぱりちょいエロもいれたほうがいいかな?・・・えっ、何?逃げろってなんで??」
「いいから早く、戻って美智留さん拾って倫也くんと合流するんだ、急げ!」
「あれ、でも前から風船もった少年がきたよ?これ、今のわたしのセリフ回収するやつだよね?」
「遅かったか・・・」
電話が切れる。
※※※
「だめだ、間に合わなかったよ倫也くん!」
「恵・・・総没だ」
「わかった!・・・総没・・・だよ!」
※※※
教室。
倫也は体育館での始業式を欠席したもののホームルームに戻ってきた恵の横顔を眺めていた。
先生の話
「それでは今日から三学期が始まる。みんなもまだまだ正月ボケがあるかもしれないが・・・」
倫也が席を立ちあがる。
「おい、安芸。お前なんで立ち上がってるんだ?」
先生を無視して恵のところに駆け寄る。
「大丈夫か?」
恵が胸を押さえながら大きく息をしている。けっこう限界のようだ。
「あの・・・メインヒロイン型を戻してみる、倫也くんは紅坂さんを頼って・・・校庭にいるはず」
「ああ、でも戻すな。あれはあそこに置いたままでいい。恵は寝てろ」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
「少しは俺を信じてくれよ。社長だよ、主人公だよ、・・・お前の安芸倫也なんだよ!」
「・・・うん」
「だから、お前は寝てろ」
「がんばって・・・倫也くん」
恵はそのまま気絶する。
先生がとまどいながら注意する。
「おい、安芸いい加減にしろ?」
倫也、先生をするどく睨む。
「先生、それ台本にないですよね?ちょっとアドリブやめてもらえますか?」
「安芸廊下に立ってなさい」
「あははは」
教室に笑い声。
「黙れよ!糞モブが!」
教室がシーンとなる。
「あと、役割モブだからって、調子に乗んなよ?先生」
「・・・すまなかった」
「静かに帰れよ」
「・・・はい」
一同がぞろぞろと教室からでていく。
(つづく)
( ゚д゚)ポカーン