伊織がモニターを眺める。
「始まった・・・出海スタンバイだ」
「いつでもOKだよ」
出海の頭部からの各ケーブルが光る。
「氷堂さんはどう?動けそう?」
外にでてロボットを操縦していた美智留は首を振る。
「無理、歩いたり走ったりはなんとかできたけど、隕石なんてぜんぜんわかんない」
「いまはそれでいい。そのまま・・・練習していてくれ」
「参加しなくていいの?っていっても参加の仕方もわからないけど」
「大丈夫、そういう想いが力になっていくから」
「難しいことは任せるよ。あたしはちょっくら走ってくる」
「了解」
伊織はモニターの数字を読み上げる。
「巨大隕石確認。高度約4万㎞。直径およそ10㎞の隕石だ。激突したら恐竜絶滅以来の地球滅亡だけど・・・まぁ物語がバッドエンドで終了かな」
「了解。お兄ちゃん、みんなの脳に直接つないでいく、みんなわかった?」
「OK出海ちゃん」
「出海ちゃん?今どこにいるの?」
「恵先輩、わたしは名古屋ですよ、ここからみんなを支援します」
「そう、わかった。がんばってね・・・」
伊織が舌を打つ。出海・・・アホじゃないかと・・・
「隕石衝突までの時間はおよそ1時間・・・」
「波島」
「なんだい澤村さん?」
「で、わたしはどうすればいいの?」
「さぁ?」
「さぁって・・・」
「あれをなんとかするのが澤村さんの役割なんだけどね」
「・・・」
※※※
「ねぇ倫也くん、確認したいのだけど」
「ん?恵どうした?」
「このプロットってわたしがなんとかしようとするみたいなこと書いてあるけど、どうすんの?・・・くちゅん」
「恵が宇宙まで飛んで行って、モノローグがはいったあと、「知らないよ!」って怒りながら蹴っ飛ばせばなんとかなるんじゃないの?」
「そんないい加減なの!?」
「あれはさ・・・あの巨大隕石はさ・・・メインヒロインの呪いが具現化しているものなんだろ?だったらメインヒロインがなんとかできるでしょっていう道理みたいだよ」
「いい加減だなぁ・・・」
「でもそれだと相打ちだから、サブヒロインが手助けしてなんとかなるからハッピーエンドなんじゃん」
「ひどいシナリオだね!」
「もう一つ確認したいのだけど?」
「どうした?クシャミまぜておいたほうがいいぞ?」
「もう・・・それこそどうでもいいよ・・・」
「まぁそういうことだ」
「もう少し真剣にやったほうがいいんじゃないの?」
「ずっと真剣だよ・・・少なくとも・・・恵や英梨々の葛藤はさ・・・」
「そうか・・・そうだよね・・・」
「で、倫也くん?なんで英梨々とキスしたの?」
「・・・えっ?」
「だって、キスする宣言してたよね?倫也くんがしたくないなら走って逃げるなり、強く拒絶するなりすればいいんじゃないの?英梨々とキスがしたかったの?わたしの目の前で?そんな主人公をさー、わたしが好きな相手って設定されてさー、納得いかないんだけど?なんだかなーだよ?」
「・・・宇宙いけば・・・わかるさ・・・」
「誤魔化してない?」
「・・・巨大隕石せまってるよ?」
「どうでもいいよ、そんなこと・・・」
「みんなはけっこう真剣なようだけど」
「答えてくれないなら、わたし・・・戦わないから」
「それも選択肢だな」
「プロットになくても」
「ああ、それにお前には「総没」があるだろ、それを使えばなかったことにできるだろ、でもそうしないのはなんで?」
「そっか!・・・『総没』・・・だよ!」
しかし、何も起こらなかった。
「どういうこと!?」
「もうさ・・・町田さんが管理しているから・・・自由度がそんなにないんだよ。その代わり外部からの侵略は受けない」
「リテイクは?」
「プロットに影響を与えない範囲でならできるんじゃない?」
「・・・いい加減だね」
「そうでもないさ・・・で、戦わないの?」
「うん。このまま巨大隕石でもなんでも激突して終わればいいよ」
「恵がそうならしかたない」
「いいの?」
「それほどこの物語が嫌なら終わればいいさ。でも、英梨々がキスをしたってことだけが確定される、それって葛藤を生むでしょ?」
「・・・そうだけど」
「それにさ・・・恵。俺もやっぱり未練なんだよ。あるいは恵以上にさ・・・」
「どういうこと?」
「言わせんな」
「聞きたいなー」
英梨々が汗をかきながら横目で二人を見ている・・・
「なんでこの異常事態にいちゃついてんのよ!」
「ケンカしているつもりなんだけどなー」
「あーそうですかーごちそうさま!」
「がんばれ、英梨々」二人が口をそろえる。
「あんたたちねぇ・・・」
(つづく)
つづく