英梨々がゴーレムの手の平で宇宙を見上げている。
「出海。どう?恵の様子は」
「はい、クラスメートAと接触を確認。巨大隕石のメタファー発言が回収されました」
「じゃあ、ここからは心の勝負ってことでいいのかしらね?」
「そうですね。でも・・・表現は大事ですよ・・・隕石を破壊していくのか・・・それとも・・・」
「受け止めるのか・・・って感じかしらね?」
「はい」
「ATフィールドっぽく宇宙に展開して勝負するわ」
「受け止めるんですね」
「やれるだけやってみる。でもこれって失敗したらバッドエンドなのよね?」
「はい、そしたら倫也先輩の能力が発動されて、ハッピーエンドっぽく終わると思います」
「それはなさそうね・・・」
「ちがうんですか?」
「そんな予防線をはったら・・・あたしが本気にならないことぐらい・・・あいつなら知ってる・・・そうじゃなきゃ・・・降板している説明がつかないじゃない」
「・・・なるほど」
※※※
宇宙。巨大隕石。こたつにみかん。クラスメートAと恵がいる。
「そろそろわたし行くわね」
「どこにです?」
「ちょっとね・・・」
「あのぉ・・・私はどうやって帰ればいいんでしょうか?」
「むしろ、どうやってきたのよ・・・」
「波島出海って子に準備してもらいましたけど・・・」
「確認してみる・・・出海ちゃん?」
「はい!なんでしょうか?」
「クラスメートAさんってどうやって帰還するの?」
「恵さんと一緒ならなんとかなると思って」
「そう・・・じゃあ、クラスメートAさんは今すぐ戻しなさい」
「それはお兄ちゃんに聞かないと・・・」
「わかったよ加藤さん、クラスメートAはすぐに彼女の自宅に戻す。頼み事はそれだけかい?」
「それだけ・・・よ!」
※※※
伊織の後ろに恵が立っている。
「・・・加藤さん・・・」
「ふーん。ここが秘密基地なの・・・かな?」
「さすがに瞬間移動は・・・」
「でも場所がばれることも予定調和なのかなぁ?」
「加藤さんはもう少し・・・自分を大事に演じた方がいいんじゃないかな?」
「まだ、わたしを『加藤恵』と認識してくれているなら、感謝しないとね」
「・・・信じているんだよ。みんながさ」
「・・・知ってる。でも確認させて・・・霞ヶ丘先輩が復帰したのね?」
「どうかな・・・」
「町田さんのところかな?」
「行ってみたら?」
「そうする」
加藤が消える。伊織はため息をつく。
「お兄ちゃん・・・ごめん・・・」
「大丈夫だ・・・けど、加藤さんは本気でこの物語を壊すつもりなのかもしれない」
「こんなにわたしたちががんばっているのに?」
「出海・・・がんばっていることは・・・当然のことなんだよ」
伊織が厳しい顔で考える。加藤恵にとっては宇宙も、学校も、自宅も、名古屋も、距離がないに等しい。それは設定のルール違反の気がするが、その境地にまでたどり着いているのかもしれない。作中人物として自分は自分の役割を果たすのがベストだろう。着実に収束に向かっているようだった。
だとしたら、自分にできるのは・・・
「そうか・・・そういうことか・・・」
と涼しい顔でもっともらしいことをつぶやくぐらいしかなかった。
(つづく)
自由だなぁ・・・