倫也が倒れ込む英梨々を支える。
「伊織!もう無理だ。俺の能力で・・・『大団円』オールハッピーで・・・終わらせよう」
「倫也君・・・たぶん無理だよ・・・」
空に激しい光源が見えた。巨大隕石が地球圏に突入、摩擦で熱を帯びているからだ。
「加藤さんがそれを拒否した。もう隕石の上に魔法少女はいないよ」
「そんなの・・・関係ない!やるさ・・・発動する。『大団円』を!」
倫也の体を中心にして球体が世界に広がる。
しかし、隕石は消えない。
「な・・・なぜだよ・・・」
「倫也君・・・君も澤村さんと同じように成長して気が付かないといけないんだよ・・・その能力じゃ・・・加藤さんは救えない」
「伊織・・・」
※※※
名古屋の地下基地。モニターには何も映し出されず、あらゆる計器が異常な数値を示して、けたたましい警報がなり、異常事態をつげる。
「出海!最終手段だ」
「お兄ちゃん・・・成功したら・・・わたし・・・目覚めないよ?」
「ああ、知ってるさ・・・お前が短編用の主人公希望だってことぐらい」
「いいの考えておいてね」
「約束する」
「もう衝突する・・・」
「ALT。CTRL。DELETE。強制終了!」
「・・・」
世界が真っ暗に閉じた。
※※※
暗闇の何もない空間は宇宙空間よりもさらに寂しい。
そこにイデアがさまよう。もう純粋なものでなく、さまざまな感情が入りまじり、浸食され、原型は誰にもわからない。
「そう・・・出海ちゃんがね・・・明るくて元気だから・・・確かに負の感情を内包できるかもしれない。わたしだって最初はそうだった。誰かに喜んでもらえるなら、恋をしてもらえるなら、メインヒロインになれるなら・・・がんばってきた。だけど・・・成功した深夜アニメのヲタク向けメインヒロインの末路なんて知らなかった。出海ちゃんは知らないんだ、プロメテーウスの嘆きを。死ねない、終わらない恐怖を・・・」
「あら、加藤さんらしくない暗いモノローグね。それであなたとして認識しろなんて無理な話よ?ずいぶんとくだらないことで『呪詛』を貯め込んだものね。まだファーストキスを盗まれた恨みのほうがよほど共感できるわよ。それにあなたの立場で不満なら、添え物のように扱われるサブヒロンの立場はどうなるのよ?よほどこっちのほうが怨嗟が深いわよ?」
「恵。ごめん。凌辱もの作家として言わせてもらうとね・・・題材にされるだけでもありがたいと思ってもらいたいわ。どれだけのヒロインが毎年チャレンジしていると思っているのよ、数百人よ、数百人。アニメの第一話で切られてしまうヒロインの気持ちがわかるの?アニメにすらならないヒロインの気持ちは?」
「だめですよ恵先輩、わたしが目覚めるイベントは短編なんですから!本編が先にエタったらわけがわからないじゃないですか。負け犬シリーズと関係ない短編だけど、影響を与えているっていうのがいいんです。わかりますか?この情熱が。恵先輩の悩みが何であれ、他人は本質的にはわかりあえないんじゃないですかね?それにこの恵先輩は、この物語のものであって、『加藤恵』とはやっぱり他人じゃないですか?恵先輩の呪詛は結局のところ、同人作家の俺こそが恵を一番よくわかっているという、どうしようもくキモい妄想によって作られたものですよね?そう思っている恵像ですよね?そんなものに負けるなんて、わたしは納得いきません」
「だからさー加藤ちゃん。シリアスはダメなんだってシリアスは。もっと単純に楽しくやろうよ。あたしなんかロボット操作してたけどさ、ぜんぜん役立たないまま消されちゃったじゃん?ひどくない?伏線?何それおいしいの?って、感じよ。でもさー、加藤ちゃんの負の感情もわかるよ。でもさー、こんなどうしようもない内容でも読者がいるのは加藤ちゃんのお陰じゃん。それはやっぱり、この物語の加藤ちゃんの力なんじゃないかな?」
「俺はバレンタインに恵から手作りチョコが欲しい。待ってるから。じゃ!」
「・・・ほんと、倫也くんは勝手なんだよなー。少しは寄り添って欲しいんだけどなー」
(つづく)