伊織がはいってくる。
「やぁ倫也君」
「今更つっこむのもなんだけど、お前違う学校だろ」
「細かいなぁ倫也君は」
「こんなガバガバな設定で進めているわりに細かいのよ。バカ倫也」
「・・・(ため息)」
教室の隅に座ろうとする伊織。
「だめだ伊織。ちゃんと座れ」
「僕はここで十分なんだけどなぁ。なんならノートPC置いてリモートでもいいけど」
「いいやぁだめだ。ちゃんと座れ」
「はいはい」
伊織が右側の端に座る。
「なんか波島兄ちゃんがこういうのに参加しているのを初めてみたよ」
「まぁねぇ。必要な時は交渉だってするんだけどね」
伊織が椅子にもたれかかって、両手を頭の後ろで組んでいる。
扉開く。出海がはいってくる。
「おまたせしてすみません!」
深くお辞儀をする。
「恵先輩の制服が汚れたので着替えてきました。どうぞ恵先輩」
恵が視聴覚室に入ってくる。その姿は『メインヒロイン』のピンクの衣装だった。
恵が軽くお辞儀する。
「そう・・・わたしこそがメインヒロインってことね?加藤さん」
「そんなんじゃありません」
2人は目も合わせない。
「ああ違うんですよ。今日は始業式だから着替え用の体操服がなかったんです。倫也先輩は恵先輩のブルマみたいな方がよかったです?」
「いまどきブルマねぇよ・・・ジャージもなかったのか?」
「はい♪」
「で、どうしてその衣装があるのよ波島出海」
「メインヒロインがメインヒロインの衣装着てなにがいけないんです?」
「それ答えになってないわよ波島さん?」
「理由なんてどうでもいいじゃないですか?じゃあ空から降ってきたんですよ。都合よく」
「はぁ、そんなことあるわけないでしょ?」
「むしろ空から女の子やパンツが降ってくる世界で衣装ぐらいで何を騒いでいるんですか?」
「・・・」
「ほら。こんな感じで」
出海が指を鳴らすと。美智留の上だけ雨雲ができて雨が降る。
「うわぁー何?あたしなの?なんで?」
「あ、氷堂先輩、これ衣装です。せっかくなんで。二人だけなんですよ専用衣装があるのは」
「・・・着替えてくる・・・」
美智留が教室から出ていく。
※※※
席順を確認しておこう。
__倫也__
加藤__詩羽
出海__英梨々
伊織__美智留
美智留が戻ってくるまでの間、誰もしゃべらない。目線も合わさない。嫌悪な雰囲気が嫌でも伝わる。
それでも倫也はなんとかまとめないといけない。この会議は大事だ。これ以上、物語が進んでいくと修正がきかない。みんなで納得して進めてもらう必要がある。
美智留が戻ってきた。『Icytail』の衣装だ。この作品では着る機会のなかった舞台衣装である。
「お待たせ」
「どうですか氷堂先輩?」
「どうって?」
「気合が入りませんか?」
「ああ、確かに戦闘モードにはいるね」
「衣装は大事ですよ。衣装がキャラ付けして力を与えるんです」
「なるほど」
美智留が席に着くのを確認して倫也が立ち上がる。
「それでは、「負け犬ヒロインの育て方5」のプロット制作会議を始める」
倫也が座る。
すかさず詩羽が手を軽くあげ、立ち上がる
「詩羽先輩・・・どうぞ」
「会議の前にまずは加藤さんが一言謝罪すべきじゃないかしら?」
恵と詩羽の視線が合う。バチリッと電気が走る。
それはこの会議がただでは終わらないことを示していた。
(つづく)
しばらく会議がつづきます。