ベッドメイクをする恵。
「あの・・・恵、俺どこで寝れば?」
「寝るの?」
「えっと、どこでイベントトークを進めればよろしいでしょうか?」
「なんで敬語なの?」
「下に布団をもう一つ敷くんじゃないの?」
「ないよ?客用布団」
「俺どこで寝ればいいのかな?」
「寝るの?」
「俺、どうすればいいの?」
「なんで敬語なの?」
「寝袋とか?」
「ないよ?客用寝袋」
「・・・」
恵がベットをポンポンと叩く。
「・・・」
倫也が恵のベッドに座る。
「あー、もう・・・だめ、やっぱりお風呂はいらないままベッドになんて乗らないでよ!」
「ごめん」
「はい」
恵が買ってきた袋を倫也に渡す。
「シャワー浴びてきて。パジャマは置いてあるから」
「ああ、うん・・・」
倫也が部屋からでていく。
「一緒に入ろっか・・・?」
恵が一人でつぶやく。それから顔を枕にうずめて足をバタバタさせている。
※※※
倫也がシャワーから戻ると恵がバスルームへ行く。
2人ともパジャマに着替え終わった。
「おまえなぁ・・・」
「だってぇ・・・」
恵がカイロの袋を開けてふっている。それからコートを出す。
「そういう細かいところはさ・・・描写しなくていいんじゃないか?」
「こういう大事なところだからこそ、演出にいれるべきだとおもうんだけどなっ」
「俺の分も頼むわ・・・」
「うん、リハ、寒かったもんね・・・」
「冬だしな」
※※※
二人が仰向けでベットに横になり、一つの布団をかぶって寝ている。
「もうすぐ、終わるんだね」
「そう・・・だな」
「イベントトークはじめよっか」
「おまえがそうしたいなら」
「そういうの・・・ずるい」
「もう少し話するっていったら・・・」
「する、絶対する」
「ちょちょっとっ?」
恵が倫也の手を握る。
「続けて」
「んー、哲学と生物学の話があるけど、どっちがいいかな?」
「えっー、それがこのシーンの話題なの?」
「うん」
「どんな話?」
「どっちも『性』の話」
「えっちな話?」
「ううん」
「両方は話さないの?」
「うん」
「どうしてかな」
「あんまり長いとだれるし・・・それに結論が同じかもしれない」
「結論?」
「倫也と恵はここではエッチに発展しない」
「なんだか寂しいね」
「R18プロットの欠片のようなものがあったんだよ」
「エッチなやつだね・・・」
「どうかなぁ。その話では恵と海外旅行をしている。イギリスからフランス、モナコ、イタリア・・・エーゲ海を渡ってギリシア。それからイタリア戻って北上してスイス。さらオーストリアのウイーンで旅が終わる」
「壮大だなぁ」
「でも、最後のウイーンまではエッチしない。ギリギリなところもあるけれど我慢する」
「今と同じだ」
「そうなんだよ」
「我慢しているんだ?」
「そうだよ。恵がどうだかは知らないけどなっ」
「・・・そういうのは女の子に聞いちゃだめだよ」
「じゃあ、俺はどうしようもない『性』を抱えているが、恵は完璧なので『性』を抱えない」
「それもずるい」
「それを問いかければ哲学。作中の登場人物は『性』を抱えているのか?抱えることができるのか?」
「抱えることなんて・・・できないよ!」
恵は倫也とつないでいた右手を一度離した。それから、細い指の一つ一つを倫也の指と絡ませてから、強く握った。
左腕を自分の頭の上に置くと、唇を固く閉じて、静かに泣いた。
倫也は優しく握り返して、静かに時間が過ぎるのを感じていた。
恵は倫也と恋人のような甘い夜を過ごせない。どんなに望んでも倫也と「関係」をもつことはできない。
恵は負け犬5のメインヒロインを演じていて、それにR指定はついていないのだから。
(つづく)