負け犬ヒロインの育て方 5   作:きりぼー

35 / 41
エピローグ④

 

 ベッドメイクをする恵。

「あの・・・恵、俺どこで寝れば?」

「寝るの?」

「えっと、どこでイベントトークを進めればよろしいでしょうか?」

「なんで敬語なの?」

「下に布団をもう一つ敷くんじゃないの?」

「ないよ?客用布団」

「俺どこで寝ればいいのかな?」

「寝るの?」

「俺、どうすればいいの?」

「なんで敬語なの?」

「寝袋とか?」

「ないよ?客用寝袋」

「・・・」

 

 恵がベットをポンポンと叩く。

 

「・・・」

 

倫也が恵のベッドに座る。

 

「あー、もう・・・だめ、やっぱりお風呂はいらないままベッドになんて乗らないでよ!」

「ごめん」

「はい」

 

恵が買ってきた袋を倫也に渡す。

 

「シャワー浴びてきて。パジャマは置いてあるから」

「ああ、うん・・・」

 

倫也が部屋からでていく。

 

「一緒に入ろっか・・・?」

 

恵が一人でつぶやく。それから顔を枕にうずめて足をバタバタさせている。

 

※※※

 

 倫也がシャワーから戻ると恵がバスルームへ行く。

 2人ともパジャマに着替え終わった。

 

「おまえなぁ・・・」

「だってぇ・・・」

 

 恵がカイロの袋を開けてふっている。それからコートを出す。

 

「そういう細かいところはさ・・・描写しなくていいんじゃないか?」

「こういう大事なところだからこそ、演出にいれるべきだとおもうんだけどなっ」

「俺の分も頼むわ・・・」

「うん、リハ、寒かったもんね・・・」

「冬だしな」

 

※※※

 

 二人が仰向けでベットに横になり、一つの布団をかぶって寝ている。

 

「もうすぐ、終わるんだね」

「そう・・・だな」

「イベントトークはじめよっか」

「おまえがそうしたいなら」

「そういうの・・・ずるい」

「もう少し話するっていったら・・・」

「する、絶対する」

「ちょちょっとっ?」

 

恵が倫也の手を握る。

 

「続けて」

「んー、哲学と生物学の話があるけど、どっちがいいかな?」

「えっー、それがこのシーンの話題なの?」

「うん」

「どんな話?」

「どっちも『性』の話」

「えっちな話?」

「ううん」

「両方は話さないの?」

「うん」

「どうしてかな」

「あんまり長いとだれるし・・・それに結論が同じかもしれない」

「結論?」

「倫也と恵はここではエッチに発展しない」

「なんだか寂しいね」

「R18プロットの欠片のようなものがあったんだよ」

「エッチなやつだね・・・」

「どうかなぁ。その話では恵と海外旅行をしている。イギリスからフランス、モナコ、イタリア・・・エーゲ海を渡ってギリシア。それからイタリア戻って北上してスイス。さらオーストリアのウイーンで旅が終わる」

「壮大だなぁ」

「でも、最後のウイーンまではエッチしない。ギリギリなところもあるけれど我慢する」

「今と同じだ」

「そうなんだよ」

「我慢しているんだ?」

「そうだよ。恵がどうだかは知らないけどなっ」

「・・・そういうのは女の子に聞いちゃだめだよ」

「じゃあ、俺はどうしようもない『性』を抱えているが、恵は完璧なので『性』を抱えない」

「それもずるい」

「それを問いかければ哲学。作中の登場人物は『性』を抱えているのか?抱えることができるのか?」

「抱えることなんて・・・できないよ!」

 

 恵は倫也とつないでいた右手を一度離した。それから、細い指の一つ一つを倫也の指と絡ませてから、強く握った。

左腕を自分の頭の上に置くと、唇を固く閉じて、静かに泣いた。

倫也は優しく握り返して、静かに時間が過ぎるのを感じていた。

 

 恵は倫也と恋人のような甘い夜を過ごせない。どんなに望んでも倫也と「関係」をもつことはできない。

 

恵は負け犬5のメインヒロインを演じていて、それにR指定はついていないのだから。

 

(つづく)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。