「で、英梨々は人の家の窓から侵入してきて何の用なの?」
「・・・あなたたちのピンチにかっこよく参上するはずだったのよ!」
「窓を破って?」
「・・・そうよ」
「それが英梨々のやり方なの?」
「そうね」
「頭、大丈夫?」
「ぶつけたとこ痛い・・・」
「よしよし」
※※※
「で、英梨々・・・用件をお願い」
「えっと、ちょっともう少し二人はくっついて床に座ってくれる?」
倫也と恵がくっついて座る。
英梨々がベッドの上に立って二人を指さす。
「ちょっと、あたしの倫也から離れなさいよ!」
英梨々が二人を引き離す。
「・・・英梨々?何がしたいの?」
「恵・・・あんたは大きな勘違いをしているわ・・・この物語の主役はあたし、澤村・スペンサー・英梨々なのよ」
「そう」
「そして、この安芸倫也は・・・あたしのフィアンセなの!」
「そうなんだー、よかったねぇ」
「あの?ちょっと?」
「続けててくれる?」
恵は立ち上がって、マウラーを巻く、倫也にもマフラーを渡す。
「いい?倫也はあたしにプロポーズしたのよ」
「倫也くん、マフラーそんな巻き方じゃだめだよ」
恵が倫也のマフラーを結ぶ。
「だからね、本来の正妻候補筆頭はあたしなのよ」
「あっ、悪いな恵。どうもこういうの苦手で」
倫也の顔が赤くなる。
「だから、波島出海も氷堂美智留も、あたしに対して宣戦布告するのが筋なのよ」
「ねぇ安芸くん、今度手編みのマフラーとかチャレンジしてみようか?ベタな話になるかなぁ」
「いいんじゃね?」
「・・・あの、聞いてるのかしら?」
「うんうん聞いてるよ?で結論は?」
「恵、手袋はいるかな?」
「えっと、だから、恵が倫也といちゃいちゃするなら・・・」
「そうだねぇー手袋もあったほうがいいと思うけど、手をつなぐかもしれないし、ポケットにいれておいてくれるかな」
「OK」
「ねぇ英梨々、そんな話はどうでもいいのだけど・・・、ランタン出せる?」
「ランタン?」
「持ち運びができそうな少し暖かい火が欲しいのだけど」
「うーん、ちょっとまってね」
英梨々が指をバチンッと鳴らす。
鳥籠に入った小さな火蜥蜴(サラマンダー)を出す。
「こんな感じでどうかな?」
「あっ、いいねぇー、暖かくて。ありがとう英梨々。で、結論だけいってくれる?」
英梨々は息を吸ってから恵に言った。
「正妻戦争に参加宣言すべきは、恵のほうじゃないかしら?」
「まとめると、英梨々は小学校の約束を根拠に主張しているのよね?それを安芸くんは認めているのかな?」
「認めているわよ?」
「どこに証拠があるのかしら?」
「これよ・・・『負け犬4』結婚式イベントで、倫也が認めたわ」
「・・・これ・・・どういうこと安芸くん?」
「落ち着け恵・・・それは負け犬4の安芸倫也であって俺じゃない。俺は・・・恵だけを愛している・・・」
英梨々が白く固まる。
恵もさすがに驚く。
「文字通り、心も体も『負け犬5』の加藤恵だけを・・・」
「か・・・体もなんてぇー、もう安芸くんったら~」
恵が倫也を軽く叩かく、視覚化できるハートがあふれでる。
「あのぉ・・・どういうこと?恵?」
「なんでもないよ?英梨々?」
「こっちの話だ、英梨々。プロポーズの件はわかった。だけど小学校の頃の話だろ?」
「それでも、あたしはその言葉を頼りに10年間想ってきた」
「それはお前の主張であって、俺の気持ちはどうなるんだよ?」
「・・・今はいいの、倫也はちょっと黙ってなさいよ」
「だって、思いっきり被弾しているんですけど!?」
「わかったわ英梨々。で、わたしに何を望むの?」
「望むものは恵からの宣戦布告よ!あたしからじゃかっこつかない」
「英梨々の気持ちはわかった。それが英梨々の出した答えなの?」
「そうよ」
「わかった」
恵の目が黒く塗りつぶされる。外に雷鳴が鳴り響いた。そして、『絶望の歌』が鳴ったが、恵は指を鳴らしてそれを消した。
「英梨々・・・絶交する。二度と声をわたしにかけないで。それから・・・正妻戦争にわたしも参加する。倫也くんはわたしのだから、絶対に渡さないから。っというより、勝手にわたしの夫を過去に巻き戻して『if』シナリオ書いて、英梨々のフィアンセって言われても、ただの『不倫』だから。覚えておいて」
恵からとんでもないワードがでてきた。
倫也が固まる。英梨々も固まる。関係者も不穏な空気に固まった。
(つづく)