英梨々が打ち切り話をカミングアウト。しかし場は思ったよりも固まらない。
「えっ?澤村ちゃん、そんなのあったの?」
「作品があるだけいいじゃないですか、澤村先輩」
「・・・最初からないのと、途中で取り上げられるのではどっちが辛いかわかるでしょ」
「そっかぁ・・・」
英梨々が座る。
「だから、この負け犬シリーズのどこかで打ち切りがあって、それを克服していくことが大事だった、そういうことだよね?加藤さん」
伊織のアシストに加藤は小さくうなずく。
「そして霞センセ、あの即興の登校イベントは作品全体からして重要度が低い。カットされても大筋には問題がなかった。そうじゃないかな?」
「そうね、なるほど・・・では、あれは加藤さんがわざとやったってこと?」
「どうかなぁ?」
恵はそんなことちっとも考えてなかった。
「ねぇ安芸くん、謝っても問題ないのかな?」
「問題ないどころか、迷惑かけたのは事実だからなぁ」
「そうだよね?全部わたしがいけないんだよね?安芸くんが朝から英梨々といちゃいちゃしていても、わたしはフラットな顔してないといけないだよね?」
「あの・・・加藤・・・」
「そっかぁ。安芸くんは朝からわたしに英梨々といちゃいちゃしているところをみてもらいたかったんだねぇ。ごめんね。わたしが悪かった」
「ちょっと加藤・・・それ許してくれたんじゃ?」
「いつ?いつわたしが倫也くんを許したのかなぁ?冬コミの件からずーと怒っているはずなんだけどなぁ?」
「そこまでさかのぼるの??」
「だって、謝ってもらった記憶ないしー。あー、わたしが全部悪いから安芸くんが謝ることなんかひとっつもないもんねー」
「あの・・・ちょっと・・・」
「なによぉー」
「ほら、ちゃんと出海ちゃんの短編で謝ったろ?」
「あー、あの出海ちゃんといちゃいちゃを見せつける短編のこと?」
「加藤・・・勘弁してください」
「だってぇ安芸くんが余計なこというからぁ」
「俺、あの時謝ったよな、誠心誠意全力で謝ったよな?な?」
「で、わたしは許したの?」
「だって、こうしてまた参加してくれたし・・・それに、呼び方が安芸くんのままだぁー」
「ねぇ安芸くん。短編は短編だよねぇ?負け犬シリーズでわたしが安芸くんにされたのって、英梨々とのいちゃいちゃを見せつけられて、そのあと突然教室で捕獲されたんだけど?」
「ごもっともです」
「わたしの記憶が間違っているのかなぁ?」
「いえ・・・」
「じゃあ、なんでわたしから謝らなきゃいけないのかなぁ?」
「おまえが謝るのは俺にじゃなくて・・・霞ヶ丘先輩にだろ・・・?」
「なんでわたしが安芸くんを叩いて、霞ヶ丘先輩に謝らないといけないのかなぁ?もしかして安芸くん霞ヶ丘先輩とわたしの知らないうちに付き合ってた?そっかー」
「いやあのその・・・もういい加減機嫌直せよ・・・」
「そういうことでしたら霞ヶ丘先輩、先ほど失礼しました!」
伊織と出海は笑いをこらえている。
詩羽は突然話をふられてとまどう。
「えっと、もういいわ・・・加藤さん。こちらこそおとなげなかったわね」
「ええっー、霞ヶ丘先輩、倫也先輩と付き合ってたんですかー?」
出海のわざとらしいつっこみに、伊織がついに我慢できなくて吹き出す。
「ちょっと出海ちゃん、これ以上、火に油をそそらないでよ、あたしはシリアスに弱いんだからさー」
「氷堂先輩、これがシリアスにみえるんですかぁ??」
「えっ」
英梨々が立ち上がったまま、ぷるぷる震えている。
「ちょっと・・・あたしのトラウマ引きずりだしておいて、このコントはなんなのよー」
「まぁ機嫌なおしてよ澤村さん。この倫也君が3年前に作ったリトラブ本は約束通り再発行したからさぁ」
英梨々がすばやく同人本を伊織から奪いとる。
「まっ、許してあげるわ伊織」
「ちょっとぉぉ、伊織??」
(つづく)
まだまだ続く