「さて、気をとりなおして、会議を始める」
倫也が恵の顔色を伺いながら言った。
「会議の前にまだ解決しないといけない問題があるわね。澤村さん例のものを」
「例のものってなに?」
「合鍵よ合鍵。返すんでしょ」
「ああ、よく覚えているわねぇ・・・霞ヶ丘詩羽」
「あなたが忘れっぽいだけじゃないかしら?」
英梨々が鞄から合鍵を取り出す。
「恵、ありがとうね。これ返すわ」
「英梨々・・・」
「やっぱりあたしはこれ・・・受け取れない」
「ううん、英梨々違うの」
「なに?」
「わたし、これを倫也くんに返しておいてって言ったつもりだけど、違ったかなぁ?」
英梨々が汗をかく。
「あっ、うん。でも返しそびれちゃったし、これは恵が持っている方がいいと思って」
「うん、でも、さっき・・・『受け取れない』っていったよね?もしかして、自分で持ち逃げしようとしてた?」
「まさか、そんな。・・・恵、まだ機嫌悪い?」
「別に・・・怒ってなんかないよ?正当な怒りだよ?」
「何がちがうの・・・」
英梨々が倫也を見て助けを求める。ここで倫也が合鍵に気が付き推測すればオセチ料理が恵からとわかり、和解のきっかけになる。
が、倫也は気が付かないふりをして目線を逃がす。もう恵とやりあう体力は残っていないらしい。
「それにね、英梨々。これはわたしが内緒で貸してあげたのだから、それを安芸くんの前で返すっていうのは、なんだかなぁーだよ?」
今度は恵から倫也に視線をうつす。気が付けこの鈍感主人公。和解のフラグは立てた。あとは適当にオセチ料理の感想でもいってくれれば許してあげて、恵はチョロインとしての面目も立つ。
・・・が、倫也はまたしても目線を合わせない。
恵と英梨々は視線を出海や美智留に移すが、二人は事情がまったくわからない。伊織は声を殺して笑っている。
詩羽がため息をついて助け舟を出す。
「倫理君?大丈夫?えっなに?加藤に嫌われたーもうだめだー、死ぬー?・・・ですって加藤さん」
「そう、だったら彼女の霞ヶ丘先輩が慰めてあげたらいいじゃないですか?」
「まだ続けるのね加藤さん」
ゴゴゴゴゴゴッというJOJO効果音のもと二人の目線が再び火花を散らす。
「ちょっとまったぁ!これ以上シリアスは耐えられないよー。一回休憩しよ?」
「そうですねぇーさすが氷堂先輩です。何か飲物を買ってきましょ」
「いやー出海ちゃんがいて助かったよー」
「わたしもです、氷堂先輩!」
2人が視聴覚室から出ていく。
目線を外して、席に座る恵と詩羽。もうツッコむ気力すらない倫也は机で伸びている。伊織は笑いが収まってプロットの資料を確認している。英梨々はリトラブ本を読みふけっていた。
会議が遅々として進まないどころから、未だに始まってすらいなかった。
(つづく)
会議が始まってないけど、休憩をいれてあげたい