キャラクターには得意分野不得意分野があるようで、
こういう多人数の会議を進行する役割は冷静なキャラの役目なんですね。
美智留と出海が袋にドリンクをいれて戻ってくる。
「おまたせー」
「まずは、澤村先輩はドクペですかね」
「ありがと」
「センパイはブラック無糖でいいのかな?」
「ええ、ありがとう氷堂さん、悪いわね」
「あとは100%フルーツジュースを適当に買ってきたけど、加藤ちゃん何にする?」
「んー、じゃあグレープフルーツで」
「どうぞ」
「ありがとう氷堂さん、出海ちゃん」
「倫也先輩は何にしますか?」
倫也は伏せたまま黙って手だけを出す。
「じゃあ、糖分多そうな桃で」
「ありがと、出海ちゃん」
「あとはキウイとオレンジとリンゴですね。氷堂先輩どうします?」
「あたしは後でいいよー、出海ちゃん選びなよ」
「じゃあ・・・キウイにしよかな」
「あたしは無難にリンゴかな」
「はい、お兄ちゃんはオレンジだけどいい?」
「ああ、ありがとう出海。ちょうどオレンジがいいなって思ってたんだ」
「だったら、先にいいなよ波島兄ちゃん」
「はははっ、こういう伏線のない他愛ない会話もいいもんだね」
「みんな考えすぎなんだってば」
それぞれが席に着きドリンクを飲む。静かな時間が過ぎる。
「ああついでにちょっといいかなぁ?」
恵が手をあげる。
「ああ加藤、あまり、もめないような話題にしてくれよ・・・」
倫也が辛うじて反応した。
「別にもめるつもりはないっていうか、ちょっと・・・わたしも疲れたっていうか・・・」
「恵先輩でも疲れるんですね?」
「どういう意味かな、出海ちゃん?」
「出海、実際怒られている側よりも怒っている側の方が疲れるもんだよ」
「そっかぁ、でも倫也先輩のほうがぐったりしてますよ」
「それは出海ちゃん、トモのほうは別なことに体力使っちゃったからだよ」
「別なことって?」
恵がため息をつく。出海たちの相手をせずに話を進める。
「もう一つ会議の前に解決しておくことがありますよね?霞ヶ丘先輩、英梨々」
「ええそうね・・・なんだかゴタゴタしていてわからなくなるわね」
「うん、恵、あたし・・・あんたに謝らなきゃいけないことがあるの・・・」
「許すわ。英梨々」
「まだ何もいってないんだけどぉ!?」
「ええだってぇー、だめだぁ・・・少し眠る・・・波島くんあとお願い・・・」
恵が両手を前にして机に伏せる。倫也も寝息を立てている。
「せっかくのご指名なんで・・・いいかな澤村さん?」
「なんで何もいってない内から許されるのよ、なんだか釈然としないのだけど?」
「うーん。今後のプロットの大幅な変更と修正のせいかな。まず最初に確認しておきたいのがマルズイベントフラグがバレンタインよりも前にきていることだね。これにはバレンタインが特別なイベントであるために、他のイベントを消化して整合性を出そうとした結果なのだけど・・・」
「それって今、私達が進めているイベントのことよね?」
「うん、そうだね。今、加藤さんが許した『二人のマルズ移籍』自体は正直どうでいいんだ」
「ばっさりきたわね・・・」
「イベント進行を前後させていることで、実はまだ本題である『冴えない彼女の育て方(仮)』イベントフラグがたっていない。だから加藤恵が二人の移籍を怒る理由もない。これが表面的な理由」
「表面的な?」
「真の理由は、マルズ移籍イベントが起こらないとできないことがあるからだよ。さらに『冴えカノ』制作が持つ矛盾を回避できる」
「なるほど、確かにメインヒロインを呪いととらえるこの小説で、加藤さんをメインヒロインにするゲームを作るのはおかしいものね」
「そうなんだ。なので、倫也くんと加藤さんには別なことをしてもらう必要があるのだけど・・・」
「例えば・・・?」
「倫也君と加藤さんには学生の本分としての受験勉強に専念しているということでいいと思う」
「な・・・お兄ちゃん・・・それだとわたしがせっかく入学してもサークル活動がないってこと?」
「んー、そうなるね。でも、少なくともこの『負け犬5』で4月以降が描かれることはないよ」
「わたしの青春もばっさりだー」
美智留が手をあげた。
「質問。波島兄ちゃんはいったい何を話しているの?もう少しわかりやすくして欲しいんだけど」
「僕の能力は『千里眼』だと以前説明したと思うけど、これはあらゆるプロットを把握し見通す能力だ。同人の「if」は未来をどんどん変えてしまうからね。そしてどのプロット・・・どの選択を選ぶかは・・・当然主人公である倫也君の仕事だ。そしてプロット通りに進める役割を霞センセが担っている。僕らのいう「霞ヶ丘シナリオ」なんだ。氷堂さんわかったかな」
「うん。で、何が問題になっているの?」
「加藤恵をメインヒロインから解放する目的は一緒でも動機がそれぞれ違うことだよ」
「んー、やっぱりあたしはお呼びじゃない?」
「大丈夫ですよ氷堂先輩、わたしもぜんぜんわからないですから!」
(つづく)
作者もよくわからんから彼らに会議させてるんだけどね。
そのうち何か見つけてくれるといいなっとか他人事のように思いながら。