バカが魔法少女になった話   作:わらしべいべー

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【前回の舞台裏】




「だいり、それは何だい?」
「なぎっちに仕掛ける罠だ」
「…その爆弾が?」
「おりっちからもらったんだ。あ、勿論玩具だぞ。なぎっちに使うと尋常じゃ無いくらいビビるって言ってたから使ってやろうかなって」

(明らかに玩具に込める魔力量じゃないね…。織莉子はなぎさを殺すつもりなのかい?)

「くくく…なぎっちがみんなの前で恥をかく姿が想像できるぜ!」

(……仕掛ける時にはそれとなく別のものにすり替えておこう)







バカにバカと言われたくないわ

 

「またバイトクビになった」

 

「……」

 

 

 お洒落な内装を着飾っているカフェテリア。それとは似つかわしくない落ち込んだ空気でだいりはそう言葉を漏らした。

 対の席にいる美国織莉子はそんなだいりの話を困った顔をしながらも真剣に聞いている。

 

「これで何度目かしら?」

 

「えーっと…、多分10回目くらい?」

 

「通算27回目ね。それで、今回は何をやらかしたの?」

 

「いやぁ…別に変なことはしてないぞ。言われて刺身を切ったら、その後急に泣きつかれて"お願いだから出てってくれ"って…」

 

「………そう、なるほどね」

 

 何が起きたのかを大方察した織莉子は手に持っている紅茶を一口飲む。

 

(向こうにそのことを伝えるのをすっかり忘れてたわね。悪いことをしてしまったわ)

 

「いやー悪いな、せっかく紹介してもらったのに」

 

「別に良いわ。貴方の為だもの」

 

 少し前からだいりは織莉子にアルバイト先を紹介してもらっていた。PTAという立場柄、見滝原での顔はそれなりに広く、動かせるコミュニティも多い。それを活かしてだいりのバイト先を探していたのだ。

 しかし当の本人が2日持たないので、大体は徒労に終わってしまうが。

 

「だーっ、これじゃいつまで経ってもバイクの免許が受けられん!」

 

「…私が貴方に教師免許を発行して教師として働くのはどうかしら?勿論、正当な手続きや、試験は踏むことになるけど」

 

「…それ経歴とかどうすんの?」

 

「何とかするわ。今の私ならそれくらいなら容易よ」

 

「小学校のPTA会長のできることじゃない」

 

「私も日々成長してるのよ。今ならこの見滝原で大体のことはできるわ」

 

 織莉子はだいりを守る上で、ジワジワと見滝原を支配している。少しずつ、根を張り巡らせるように。表の顔こそ優しげなPTA会長だが、裏では見滝原を支配する魔王として君臨しつつあった。今では動かせる力だけで言えば地方の政治家クラスだ。

 果たして彼女は一体どこに向かっているというのだろうか。だいりにはさっぱり分からなかった。

 

「だったら家庭教師でいいじゃん。それなら何とかなるし」

 

「ダメよ」

 

「えぇ…」

 

「だいりにワンツーマンでものを教えてもらうなんて、羨m…何が起こるかわからないじゃない!」

 

「何がどう起こるんだよ」

 

「むしろ私が教えてほしいくらいなのに…。ふしだらだわ!」

 

「だから何の話!?いーじゃんか、最近なぎっちにも教えてるから結構自信あるんだぞ!」

 

「な!? あ、あのクソガキ…! と、とにかく、家庭教師はダメよ!」

 

「えー…じゃあどうすんの?」

 

「モデルとかアイドルなんてしてみたら?折角良いプロポーションをしてるんだし」

 

「無理無理無理!絶対無理!!」

 

「良いじゃない。やるなら私は喜んでファンになるし、活動も全力支援するわ」

 

「そういうのはダメなんだってば!なんでおりっちはそう毎回毎回発想が物騒と言うか、斜め上に飛ぶんだ!?」

 

 織莉子の提案を全力拒否するだいり。資金が欲しいのは事実だが、男のプライドを捨ててまで得たいとは思わなかった。

 そんな時、注文した品を持ってきたマミが話に入ってきた。

 

「だいりさんがアイドルね。中々良いんじゃないかしら?」

 

「あら巴さん。気が合うわね」

 

「はい、注文されたチョコケーキ。持ってきたわよ」

 

「わーい、頂きまーす」

 

 美味しそうにチョコケーキを食べているだいりを見てマミは笑顔を浮かべる。

 

「だいりさん、普通に綺麗だから、人気は出ると思うのだけれど」

 

「そうよね、勿体無い。歌って踊るところを見てみたいわ。というか推したいわ。……ねぇ、やっぱりやらない?」

 

「やりません!!」

 

「だいりさん本当そういう女の子らしいことは苦手よね」

 

 織莉子としては割と本気でだいりをアイドルに仕立て上げたいと思っている。自分の眼福が欲しいからという極めて個人的な理由もあるが、だいりが世間的に著名になればより大きな組織を動かす名文にもなる。世間に出るリスクこそ高いが、そんなもの将来的にいくらでも握り潰せる。

 アイドル化計画はだいりの安全を守る手段としてはそれなりに有効だと考えていた。

 

(それにしてもだいりのアイドル姿……見たいわ)

 

 内心でゴスロリ姿のだいりの姿を想像する。…いやでもやっぱりボーイッシュも捨て難い。そんな我欲満点なことを考えながら窓の外の街並みに目を向ける。

 

 

「……ところでさっきから気になってたのだけれど、あの外にいる人たちは何なのかしら」

 

 織莉子が見た先には黄色い鉢巻に法被を着たやたらテンションの高い強面の集団が大勢カフェ入り口付近にいた。鉢巻や法被には『MA☆MI』と書かれており、法被の背には黄色いリボンで象られたロゴのようなものが描かれている。

 彼らはカフェ前に陣取り、タバコを吸ったり、酒を片手に談笑したりと自由に行動しており、正に無法地帯となっていた。

 

 

「おいおい、今時のヤンキーはあんな大集団で動くもんなの?どこ中だ?」

 

「最近できた私のファンクラブだそうよ。どうしてもって言うから許可したのだけれど、まさかあんな大勢いるなんて思ってなかったわ」

 

 困ったようにマミが言葉をこぼしていると、集団の中から一際丈の長い法被を着た団員がセットされた台に上がる。その団員は視界を埋め尽くさんばかりにいる団員を見渡し、マイクを構える。

 

「せいれぇぇぇぇぇつ!!」

 

 そう一喝するとバラバラな行動をとっていた集団は数秒とかからずに綺麗な列を作る。

 

「お前らぁ!マミさんはこのカフェでここに来ている客のためにその身を粉にして奉仕している!アタシらは先日マミさんから影ながら応援することのできる名誉ある権利を賜った!そして今日はマミさんの出勤日だぁ!だったらどうするかわかってるよなぁ!?」

 

『はい団長!!』

 

「声が小さぁい!!」

 

『はい団長!!!』

 

「よぉし、じゃあ行くぞ!!マミさん公認【マジカル☆リボン団】団長佐倉杏子が許す!!アタシらの精魂尽きるまでマミさんにエールを送るんだぁ!!」

 

『イェッサーーー!!』

 

 

 

 

『フレーーーー!!フレーーーーー!!マーーミさーーーん!!!』

 

 

 

 

 

 …見間違いでなければあの集団を仕切ってるのは佐倉杏子である。

 

 

「…何だあれ」

 

「ごめんなさい、正直私にもどうしてこうなったのかよく分からないわ。いつの間にかあの集団を纏めてたみたいで…」

 

「いや集団どころじゃないでしょ!?軍団じゃん!てか何だマジカル☆リボン団って!?名前のプリティーさに対して実態が一致してない!完全にヤクザじゃん!?」

 

「大丈夫よ、だいり。貴方がアイドルになった暁にはあんな野蛮人どもとは違う私厳選のパーフェクトファンクラブを作ってみせるわ」

 

「俺っちあんな風に応援されるのは嫌だ!」

 

 突然カフェ前で集団応援をしにきた迷惑カタギ集団。そのトップは酷く見知った顔であった。

 外からこんな大勢で大声で叫べば、当然この店内にも響き渡るわけで、おかげで店内からはだいりたち以外の客はすっかりいなくなっていた。

 当然それに伴ってマミの怒りのボルテージも高まっていく。

 

「……少し灸をすえてくるわ」

 

「いってらっしゃいませ!」

 

 怒りで僅かに魔力を滲ませているマミをだいりは綺麗な敬礼で見送った。

 

 

「普段は温厚な人ほど怒らせたら怖いものね」

 

「…それおりっちが言う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フレ!!フレ!!マミさ、 ぶべらぁ!?」

 

 

『団長ぉ!?』

 

 

 突如応援の先陣をきっていた杏子の体が飛び、空中で身体を回転させながら頭から地面に激突した。

 

「大丈夫ですか団長!?」

 

「何で突然あんな芸術点の高い飛び方を!?」

 

「何やってんだよ団長!?」

 

 

「貴方たち」

 

 

 声のした方に団員たちが一斉に顔を向けると、そこには怒り心頭と言わんばかりの雰囲気を出しているマミがいた。その手には黄色いリボン(ムチ)が握られている。

 

「…ここはカフェテリアよ?応援は嬉しいけど、場所を考えましょう…ね?」

 

『はっ、はい!マミさん!!』

 

 菩薩のような穏やかな表情から醸し出される不動明王のごとき圧倒的オーラ。雰囲気に呑まれた団員たちは一瞬で萎縮して降伏の意を示してしまった。

 

 

「ま…マミさ…」

 

 ズパン!!

 

「ぎゃぴぃ!?」

 

「誰が喋って良いと言ったかしら?」

 

「す、すびば」

 

 ズパン!ズパン!!

 

「ひぎぎぃ!?」

 

 マミは何の躊躇もなく杏子の尻目掛けてリボンを叩きつける。叩きつけるたびに玩具のように杏子の幸せまじりの悶え声が鳴る。

 

「あ、あんなマミさん初めて見たっ…」

 

「いや、だがアリだな」

 

「わかる。普段は温厚なのに怒ったら急に暴力的になる。とても良い」

 

「それな」

「推せる」

「叩かれてぇ」

「マミさんの鞭打…ハァハァ…」

 

 マミは、ふと団員たちの方に目を向ける。その表情はいつもの慣れ親しんだ笑顔だ。反射的に団員の肩がビクリと跳ねる。

 

「貴方たちは帰りなさい。今後はこんなことをしないようにしっかりと言い聞かせておくから」

 

『……』

 

「それと、ここ禁煙だから煙草はやめてちょうだい…ね?」

 

『は、はいぃ!!』

 

「じゃあ解散ね」

 

 マミがそう言うと、迷惑集団【マジカル☆リボン団】は蜘蛛の子を散らすように帰っていった。

 支払いを済ませただいりと織莉子はその光景を尊敬と畏怖が混ざった絶妙な塩梅の視線で見ていた。

 

 

「…完全にマミっちがボスじゃん」

 

「才能アリかもしれないわね」

 

「もうっやめてったら!」

 

 バチィン!!

 

「ぎゃぴぃ!?」

 

 船にあげられた魚のようにビクビクと震える杏子にだいりは心配して顔を覗く。

 

「大丈夫?あんこちゃん」

 

「えっへ…えっへへへへへへ」

 

「ダメだ。完全に臨界点突破しちゃってるヘブンズフィール状態だこれ」

 

「ソウルジェムから呪われた泥とか出てきそうね」

 

「やだ汚いわ」

 

 バチィン!!

 

「ひゃあ!?ありがとうございますっ!!」

 

「なんかさ、あんこちゃんのこれ日に日に悪化してない?」

 

 悦に顔を歪める杏子。同じ弟子である自分もいずれこうなってしまう未来があるかもしれないと考えると中々にくるものがある。間違ってもああはなりたくないものだ。

 

「あ、そうだわ。だいりさん、これ良かったら」

 

「ん?」

 

 思い出したようにマミはだいりにチラシのような紙を手渡す。

 

「学園祭?」

 

「そう、明日私の中学でするのだけれど、外部からも参加できるようにはなってるわ。私のクラスも出し物をするから時間があるなら是非なぎさちゃんと来て欲しいと思って」

 

「お祭り!行く行く!」

 

「まっ、マミさんっ…!アタシもっ…」

 

 バチィン!!!

 

「ぎゃぴぃん!!?」

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 見滝原中学は恒例行事として毎年学園祭を行う。この日は一般人も学内に入場可能なので、学年のそれぞれが出し物をして、来場者をもてなしたり交流することのできる場となっている。

 そんなお祭り騒ぎな1日が始まる学校の校門前に立つ人影が三つ。

 

「文化祭じゃオラァァ!!」

 

「だいり、うるさいのです」

 

 珍しく朝早く起きただいりはなぎさと織莉子と共に見滝原中学まで来ていた。

 周囲を見渡すとまだ学園祭が始まる前だと言うのに既に大勢の一般人が来ている。校門の上には学園祭と大きな装飾付きの看板が飾られていて、学園全体も暖色系の花やリボンが飾りつけられていた。門前もこの学校の生徒と思わしき人が売店の準備に勤しんでいて、実に賑やかなお祭りの雰囲気だ。

 そんな光景を見てだいりの目はキラキラと輝いている。

 

「うおぉ、すっごーー!あっ、見て見てあそこにたこ焼き屋さんがある!あっちにはかき氷にりんご飴だって!」

 

「だいり五月蝿い。そんなの見たらわかるのです」

 

「いやだって、こういうところに来るの初めてだからさ!気が舞っちゃって」

 

 だいりは遊園地に来た子供のように目を輝かせながら売店や、学生手作りのドールを見つめる。だいりの見た目が明らかに中学生以上だということを除けば、実に微笑ましい。

 

 

「…だいり、何故また僕はこんな目に合っているのかな?」

 

 突然だいりの背後から声が聞こえた。正確にはだいりの背中からだが。

 

「仕方ないだろ。鞄壊れちゃったんだから」

 

 喋ったのは鞄ではなくキュウベェである。否、正確には鞄になったキュウベェである。

 先日、魔女との戦闘中に愛用していたリュックが破損して使い物にならなくなってしまったので、新調するまでキュウベェを鞄にして代わりに使うことにしたのだ。だいり作である。

 

「最近僕の扱いがどんどん酷くなっている気がするんだけど」

 

「ロリコンが犯罪行為をやめないからだろ。いい加減幼女を誘惑するのはやめろこの陰獣」

 

「失礼な、これは宇宙のためなんだ。結果的には君たちのためにもなるんだよ」

 

「幼女騙して維持される宇宙とか滅んだほうがマシだっての。幼女誘う暇があるくらいならマジ○ガーでも呼んでこい。そんな問題あっという間に塵にして解決してくれるぞ」

 

「それ塵にされるの僕らだよね?」

 

「おう、宇宙(そら)に還元されてこい。世の中からロリコンが消え去って、エネルギー問題も解決する。一石二鳥だな」

 

「だいり、君は僕が傷つかないとでも思ってるのかな?」

 

「感情無いから大丈夫でしょ?」

 

 

「…織莉子、耳から手を離して欲しいのです」

 

「ふふっ、なぎさちゃんにはまだ早いお話よ」

 

 

 そんなやり取りをしていると、校門前の人混みからマミが出てきた。

 

「みんな来てくれたのね。今日は楽しんでいってほしいわ」

 

「おう!…ってマミっち今日は変わった格好してるな」

 

 目の前のマミの装いは、黒のふわりとしたワンピースにニーソックス。手足には白いフリルが付いており、その上に白いエプロンを着ている。 

 いつも喫茶店で着ているものと比べるとやけに派手で際どい。

 

「だいり、あれはメイド服よ。ほら前に言ってた」

 

「あぁ、これがメイド服か!初めて見た!」

 

 だいりはマミのメイド服を興味津々にまじまじと見つめる。気がつけばだいりの顔はマミの目と鼻の先にあった。

 

「そ、そのだいりさん…。そんなに見られると少し恥ずかしいわ…」

 

「あ、ごめん」

 

 あまり人馴れしてないマミは恥ずかしそうに顔を赤くして視線を逸らす。

 

「……」

 

「いでっ!」

 

 突然だいりの足に痛みが走る。どうやらなぎさがだいりの脛を蹴ったらしい。なぎさは不機嫌そうな顔でそっぽを向いている。

 

「何すんだ!地味に痛かったぞ!」

 

「べっつに」

 

 

 すると校門前の準備中の看板が取られ、代わりに入場可と書かれた看板が立てられた。どうやら準備が終わって学園祭が始まったようだ。同時に売店も販売を開始した。

 

「じゃあ行きましょうか。私が案内するわ」

 

「はいはーい、綿飴食べたいです!」

 

「オメーは食べることしか頭にないのですか!」

 

「2人とも財布のスリとかには気をつけるのよ。こういう行事には腐った連中が湧きやすいんだから」

 

「「はーい」」

 

 

 

 

「あ、だいり。お昼まで売店はお預けなのです」

 

「そんな殺生な!?」

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 だいりたち4人は人で賑わう校内の廊下を歩いていた。教室からはそれぞれのクラスが考えただろう出し物で賑わっている。

 

「…全面ガラス張りって学校としてどうなのです?プライバシーもへったくれもないのです」

 

「校風が何処よりも自由な学園っていうのでこうなったらしいわ。私はもう慣れたけど、なぎさちゃんから見ても変に見えるかしら」

 

「とんだ開放主義者なのです」

 

 床も壁も廊下全体が一面ガラス張りになっている様は明らかに異様だ。あの子のスカートの中も楽々見ることができそうだ。これなら全国図鑑制覇も夢ではない。

 

「私が変えるように掛け合おうかしら」

 

「やめい、おりっちがやったら全部脅しになる」

 

 歩いていると、教室の横札が見えてきた。この辺りの学年は2年生。各々クラスで出し物をしているとの話だったが、一体ここはどんな出し物をしているのか。

 

「…3人とも早く行きましょう」

 

「何かマミっち、ここだけやけに急かすな」

 

「この辺りは正直あまりいたくはないわね…」

 

「?」

 

 珍しくマミが苦い顔をする。この辺りのクラスに苦手な人でもいるのだろうか。

 

「そういえばここのクラスは何をしてるのです?」

 

「……そうね、あの教室の立てかけを見て」

 

 言われるがままに教室の前に立てかけられている看板を見てみる。

 

 

「……まっそー教?」

 

 暖色のポップな文字でそう書かれていた。

 まっそーというのはよくわからないが、教…ということはなにかの教室だろうか。確かにイベントの一環としてはあってもおかしくはないが、何か違和感を感じる。

 何の気無しになぎさは教室の引き戸を開けた。

 

 瞬間、身体中に感じる、熱風。

 

 唯の熱風ではない。なんというか、生暖かかった。

 例えるなら水蒸気の様な湿っけが、はまた人肌の様な温もりに近い何か。

 

 ほんの、ほんの僅かに、母親の温もりに近いものを感じたなぎさはゆっくりと瞼を開ける…

 

 

 

「まっそー!まっそー!」

 

『マッソー!!!マッソー!!!』

 

「まっそー!まっそー!!」

 

『マッソー!!!マッソー!!!』

 

「もっとだ!もっと己が肉体を迸らせるのだぁ!」

 

『わかりマッソーッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 現実は非情である。

 

 

 目の前にあるのは、筋肉、筋肉、筋肉、筋肉。

 Tバックの黒光りするおっさんたちが、マッスルポーズを決めている姿。自身の想像と、現実の凄まじいギャップが、なぎさの脳内にかつてない超新星爆発(ビッグ・バン)を呼び覚ます…!

 百江なぎさ初めてのギャップ萌え(筋肉)?である。

 

 

「おーい、なぎっち。大丈夫か?」

 

「哀れね、きっと脳の許容範囲を越えたのよ。彼女はもうダメだわ。このまま置いていきましょう」

「いやダメでしょ。なぎっちおきろー」

 

「…仕方ないわね、だいり、ここは私が」

「おりっち、なんか良い方法があるのか?」

「えぇ、任せて」

 

 

 

 

 

「…確かここにだいりの作ったおb」

「ーーはっ!?何か猛烈に嫌な予感!?」

 

 

 

 

 

「あ、起きた」

「チッ」

 

 

「はぁ…はぁ…。ま、マミ!何なのですあれは!まっそーまっそーって…!」

 

「…彼らはまっそー教。己の全てを筋肉に捧げ、自らの肉体のみを信仰する変態集団よ」

 

 そう、彼らはまっそー教。己の肉体を鍛え上げ、その美しさと逞しさを日々磨き上げる男性限定のれっきとした宗教団体。信仰するは己の肉体そのもの。筋肉への裏切りは神への裏切りを信条としている。何故か正式な宗教として国に認められており、信者も結構いるそうな。因みにこの教室にいる信者は全員学園祭に訪れた保護者たちである。汝、筋肉の汗光に導かれんことを。

 

「…まさかこれが出し物とか言うわけじゃないのです?」

 

「…そのまさかよ」

 

「バカじゃないのです!?」

 

「私も反対したのっ!こんなこと学園祭でする事じゃないってっ!でもダメだったの…」

 

 実はマミは今回の学園祭の実行委員会である。クラスでの出し物をこの宗教にすると彼らが言い出したときは当然反対した。だが結果的に彼らの熱意に押され、泣く泣く実行委員会側が了承してしまったのである。

 その時の彼らの熱意が凄まじく、今でもその時のことを思い出すだけでマミは偏頭痛に襲われる。実行委員会も楽ではないということを思い知った瞬間であった。

 

「うわ、あの人上腕二頭筋すごっ」

「私はあの右にいる人の大胸筋がお気に入りね」

 

「二人は何でそんなあっさり適応してるのです…」

 

「だって見学自由って書いてあったし」

「少しむさ苦しいけど気分転換にはちょうど良いわね」

 

「どこが?」

 

 観光名所に来たのごとくキャッキャと騒ぐだいりと織莉子。バカ2人にはこの程度の混沌は常識として取り込まれていた。

 

「だー!こんなところにいると頭がおかしくなりそうなのです!」

 

 そう叫んだなぎさはこの空間の異質さに耐えられず3人を連れて教室を出る。

 廊下に出てため息をつくなぎさ。あんなものをいつまでも見ていたら気が狂いそうだった。

 するとふと肩にかけていたバッグの中からポロリとチーズが落ちた。

 

「あっ!なぎさのチーズが!?」

 

 慌てて拾いに行こうとするなぎさ。だが拾おうとした先のここの生徒であろう男性に先に拾われる。

 学園の制服を着た真摯そうな男はなぎさに拾ったチーズを手渡した。

 

「どうぞ。お嬢さん」

 

「あ、ありがとうなのです!」

 

「いえ、お気になさらず。それよりもお嬢さん」

 

 目の前の男はしゃがんでなぎさと目線を合わせる。

 

「?」

 

「良い体をしているね」

 

「んぇ?」

 

 なんと男は突然なぎさの腰回りを撫でまわし出した。突然の男の暴挙になぎさはみるみる顔を赤くしていく。

 しかも男の手つきは妙に手慣れていて明らかに初犯ではない。なんというか撫でまわし方がいやらしかった。男は撫でまわしながら言葉を続ける。

 

「おっと失礼。私は【摩ー等教】第七趣向領域組合神父長ロリ・コンスという者でね。我々は君のような神より賜ったエンゼリックボデーをこの手で愛し、守護するために活動をしているのだ。君の体は素晴らしい!是非とも君には我が宗教に保護されt」

 

「ウチのなぎっちに何かやっとんじゃぁーーっ!!!」

 

「ぶべらぁ!?」

 

 だいりの怒りのドロップキックによってロリ・コンスは廊下の果てまで飛んでいく。

 

 

「おりっち!」

 

「もしもし私よ。 えぇ、話が早いわね。その【摩ー等教】とかいうふざけた宗教を即刻見滝原から追放しなさい。あとその宗教の中に第十二趣向領域金髪鋭眼趣向系とかいうふざけた組織があるわ。あれは特に害悪だから、念入りに潰しておいて」

 

 

「なぎっち大丈夫か!?」

 

「こ、怖かったのです」

 

「ごめん、まさかあんな真正のロリコンがこの世にいるなんて…。あんな奴クソイタチロリコンだけだと侮ってた…!」

 

「あんなのと僕を一緒にしないでもらえるかな」

 

「似たようなもんでしょ」

 

「…あれは2年□組の生徒だったわね。一応学園祭前に来場者に手は出さないでと警告していた筈なのだけれど…ダメだったみたいね」

 

「常習犯なのかよ…っていうか」

 

 だいりが周りのクラスを見渡す。

 【青教】【パルプンテ教】【オサレ教】【パリィ教】【呼符教】etc…

 さっきまで気づかなかったが、よく見ればどのクラスも意味不明な宗教を掲げてそれを出し物にしていて、それぞれが宣伝を行なっていた。

 

「どーなってんだここ!?宗教だらけじゃねーか!」

 

「…二年生のクラスは皆んなこんな感じよ。各々が自分の信じてる宗教を宣伝し合うよく分からない行事になった。因みに学年合意で決まったらしいわ」

 

「学年合意で一学年宗教軍団にするとかここにいる人たち全員頭おかしいのです!」

 

 すると、さっきまで宣伝しかしていなかった宗教の人たちがだいりたちの元に詰め寄ってきた。注目を集めすぎてしまったらしい。

 4人は宗教集団にあっという間に包囲されてしまう。

 

 

「貴公たち、我らと共に醜い獣共を狩らないか?」

 

「否!ワタクシどもの【百合教】に是非!」

 

「ハハッ!キミたちは夢の国を信じるかい?(甲高い声)」

 

 

「こいつらロクなもん信じてないな!?」

「いつの間にか囲まれてるのです!」

「ウッ、頭が…」

「仕方ないわね。この前作ったこの新作織莉子ちゃん☆火炎瓶で…」

 

 

 

 

 

 

 

『貴方たち、静まりなさい』

 

 

 

 

 

 集団で囲まれ万事休すかと思ったその時、突如集団の奥から何者かの声が聞こえた。

 

 

 

『!!?』

 

 

 鶴の一声と言わんばかりに一斉に動きを止める生徒たち。

 

『気持ちはわかりますが、ここは祭典の場。そんな祭典のお客様に無礼を働いてはいけません』

 

「ま、マザー…」

 

 生徒の1人がそう言葉を溢す。

 廊下の奥から人だかりが分けてその姿が少しずつ現れる。その女性はシスター服を身に纏っていて、顔はどこからか出る後光と前掛けの布で隠れて見えない。

 

『私たちは信じるものこそ違えど、互いに何かを信じる者たちです。それを信じる同士が増えることは確かに喜ばしいことでしょう。ですがその衝動に任せて他者の意を踏み躙るなどあってはなりません。…貴方たちの中で、信仰心を優先して私を裏切る者だけが、この私に石を投げなさい」

 

 

「マザー…」

 

「ぐっ、でっできません!」

 

「我々は己の信じたものを信じ尽くすと考えておりますが、そのためにマザーを傷つけるなどできません!」

 

「おぉ、マザー!」

「我々を導いてください!」

「美しき導きの月光よ…!(啓蒙99)」

「ハハッ、それがいいね!(甲高い声)」

 

 

 マザーと呼ばれた人物は徐に顔の布に手をかけ、そのままゆっくりと上にあげていき、遂にその顔が露わになる。

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ、このマザー・キョーコの名にかけてこの私が貴方たちを導いて差し上げま、 ぎゃびぃっ!!!??」

 

 

『マザーーー!?』

 

 

 

 マザー・キョーコ……もとい佐倉杏子の顔面にマミが投擲した火炎瓶が直撃した。

 

 

 

 

 

 

「投げたのは火炎瓶だから無罪放免ね。さ、行きましょう3人とも」

 

 

 

 

 

 まるで魔女でも倒したのかと思うぐらいには清々しい笑顔のマミ。顔面が炎上している杏子を無視して何事もなかったかのように悠々と歩いていく。容赦のなさでは一部から信仰はされるまでありそうだ。

 

 やはりマミを怒らせるのは危険なのかもしれない…

 

 群がっている人たちを横切りながら同情の意味も兼ねて、3人と一匹はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、最高です…」

 

 

 

 

 なんか言ってるが無視である。

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

「あんこちゃん、あんなとこで何やってたの?」

 

「あんこじゃねぇ杏子だ。…バイトだよ。何でか知んないけどあのシスター服着てそれっぽい口調で振る舞ってほしいって頼まれたんだよ。金も良かったし」

 

「の割にはノリノリだったのです。後光みたいなのも出てたし」

 

「まぁやるからにはちゃんとやる。後光は力んだらなんか出てきた。多分魔法だろ」

 

「魔法って何でもできるよなー」

 

「基本念じたら大体できるしな。…まぁその念じるのが難しいんだけど」

 

 そんな話をしていると、マミが両手に料理を持って現れた。

 

「皆んな、料理を持ってきたわよ」

 

「待ってましたー!」

 

「いただきますなのです!」

 

 だいりたち3人の囲うテーブルに美味しそうな料理が載せられていく。

 マミたち一年生のクラス出し物はコスプレ店舗である。喫茶店やアクセサリー店など、クラスによって店舗は異なるが、共通して皆何かしらのコスプレをしていた。マミのクラスはコスプレ料理店である。だいりたちはここで昼食を食べることにしていた。

 

「やっぱりマミっちの料理は美味い!」

 

「おいしーのです」

 

「ーーー」

 

「ん?あんこちゃん気絶してる!?」

 

「泣くほど美味しかったのね♪」

 

「まじ?一口貰うねあんこちゃん。はい、なぎっちあーん」

 

「!? あ、あーん…」

 

「あ」

 

 照れながらもだいりに差し出された料理をパクリと食べる。するとなぎさの顔がみるみる赤くなっていき、体が小刻みに震える。

 

「ーーーー辛ぁ!!!!!????!?」

 

「え?」

 

「からからからからからからからからからからからからぁぁぁ!!!」

 

「大丈夫かなぎっち!」

 

「み、みずぅ…!」

 

「うおぉ!待ってろなぎっち!」

 

 だいりは何処からか持ってきたホースを、そのままなぎさの口に入れて蛇口をひねる。

 

「ガボボボボボ!?」

 

「ふぅ、危なかった」

 

「もうっ、佐倉さんの料理にはハバネロを入れてるから気をつけてって言おうとしたのに」

 

「ハァ、ハァ…。なんで杏子にだけ…」

 

「こういう攻撃をしてくる魔女もいるかも知れないじゃない。これは特訓よ」

 

 そう言うマミの顔からは悦の表情が抜けきっていない。やはりそういう目的か。

 

「それにしてもだいりさんの反応が薄かったのは残念だわ。一応同じものを出していたのだけど…」

 

「ん?あ、ホントだ。何かピリッとする」

 

「効かないなら、また別の方法を考えないと…」

 

「もう隠すことすらしなくなったのです…」

 

「ーーはっ!?あ、マミさん!料理凄く美味しいです!」

 

 こっちもこっちで目立った効果はないようだ。

 なんやかんやと揉めていると、クラスの奥から織莉子が現れた。

 

「可哀想なだいり。私の作ったスイーツで口直ししましょう」

 

「おりっち?何処行ってたんだ?ってか何だその服」

 

 織莉子の服装は私服からロングスカートのメイド服になっていた。頭のフリルカチューシャが妙に様になっている。

 

「実は私、少し前にここに転校したの。だから私もここのクラスメイトで店員というわけよ」

 

「そうなの!?」

 

「あの時は驚いたわ…」

 

 夏休み明けの登校日にいきなり織莉子はこのマミのクラスに入り込んできたのだ。突然現れた謎の転校生の正体が顔見知りだったのだ。当時のマミは思わず声を上げそうになった。権力者だからか、担任の教師が織莉子に対して妙に気を使っていたのが印象に残っている。

 

「はい、あーん」

 

「あむっ…めちゃんこ美味しい!」

 

「ふふっ、そうよね!」

 

 織莉子は珍しく感情を表にして喜ぶ。このために相当練習していたようだ。

 だいりがもう一口食べようとトレイにあるスプーンを取ろうとするが、織莉子から待ったがかかる。

 

「ん?」

 

「…私も食べたいわ。百江さんみたいに」

 

「ん?はい」

 

「…!」パァァ

 

 だいりがスイーツが盛られたスプーンを差し出すと、織莉子の表情は今日一番に明るくなる。織莉子はだいりとの距離を少しずつ縮めていく。

 

「あーん」

「あ、あーん…」

 

「ジャッ!!」

 

 が、織莉子がスイーツを食べようとするよりも一瞬早く、なぎさの激辛料理が盛られたスプーンが織莉子の口内に入り込んだ。パクリと織莉子はそれを食べてしまう。

 

「〜〜〜〜っ!!!!?!?」

 

「うおっ、おりっち!?」

 

 口内に直接攻撃を受けた織莉子はあまりの辛さに地面で悶える。数回咳き込むと、ありったけの恨めしさを込めた視線をなぎさに送る。それをなぎさは冷たい視線で迎え撃つ。

 

「………」

「………」

 

「おいおい、また面倒なことになってるぞ…」

「どうにかならないかしら。この二人の仲」

 

 自分原因で冷戦が起きているなどつゆ知らず、だいりは呑気に学園祭のパンフレットを見ている。

 

「マミっち!次は何処行こっか!」

 

「え、そうね…この辺りのイベントは私お気に入りよ」

 

「ていうかマミさんクラス開けて大丈夫なんですか?」

 

「えぇ、やることは午前にもう終わらせているわ」

 

「じゃ、そこに決定!早速行こうぜ!ご馳走様っ!」

 

 いつの間にやら昼食を平らげただいりはナプキンで口を拭いながら、席を立った。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「いやぁ、遊んだ遊んだ。楽しかったな〜」

 

「迷路ゲームにクイズ大会、ベースボールに鬼ごっこ。…流石に疲れたのです」

 

「だいりの奴は全然元気みたいだけどな。あいつこういう体力は底なしだしな…。マミさん、一旦どっかで休みません?」

 

「そうね、私たちは一旦休憩しようかしら」

 

「そう。ならだいり、二人で行きましょう」

 

 他3人と比べて織莉子は体力的にまだ余裕がある。というよりだいりと同行できるなら基本体力無視で行動できる。何よりだいりと二人きりになれるのだ。織莉子にとって、これ以上の幸せは無かった。

 だが、なぎさはそれを看過できなかった。

 

「だ、だったらなぎさもついていくのです!」

 

「あら、百江さん。無理をしてはダメよ。そんなに無理をしたら大切なところが育たなくなっちゃうわよ」

 

 主に胸が とテレパシーで付け加える織莉子。自身が気にしてることに触れられ、なぎさの怒りのボルテージは一気に跳ね上がる。

 

「織莉子ぉ!その喧嘩買ったのです!!」

 

「きゃー怖いわー助けてだいりー」

 

 そう言って織莉子はだいりに抱きつく。だいりは手に持ったパンフレットを横目に織莉子を受け止める。

 

「どした?おりっち。…ってなぎっち顔こわ!」

 

「だいり、どいてなのです!そいつ殺せない!」

 

「おっかな!?ちょ、なぎっちクールダウン、クールダウン!」

 

 怒り狂うなぎさをだいりはなんとか宥める。一旦なぎさは落ち着くがその釣り上がった視線は織莉子を離さない。

 

「おりっち、あんまりなぎっちいじめちゃダメだぞ。年上なんだから」

 

「えぇ、ごめんなさいね。面白くてつい……フフッ」

 

「うがーっ!!」

 

 だいりが二人の不毛な争いを止めていると、唐突にマミが声を上げた。

 

「あっ!そういえばそろそろライブが始まる時間だわ」

 

「ライブ?」

 

「えぇ、パンフレットにも書いてあるでしょう」

 

 だいりがパンフレットに目をやると、イベントプログラムの最後に『バクオン☆ライブ』と記載されており、説明欄には"今日1日の締めに最高のスーパーライブをお届け!"とある。

 

「今日1日の締めだから、是非見て欲しかったのよ」

 

「面白そう!」

 

「マミさんが行くなら当然アタシも」

 

「じゃあ決まり!おーい、二人とも!ライブいこーぜ!」

 

 初めてのライブに胸を膨らませただいりは、未だガンを飛ばし合っている二人の元に向かった。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 バクオン☆ライブの内容はシンプルだ。軽音部の面々がI時間にかけて行うライブだ。見滝原の軽音部は少人数ながら一人一人の音楽レベルが非常に高く、何度も賞を貰ったり、ライブ大会で結果を残している。だからこそ今回の学園祭の締めに選ばれたのだ。今日学園祭に訪れた人たちも、この軽音部の演奏目当てで来たと言う人も多い。

 そんなこともあって会場である体育館の席は殆ど満席だった。

 

「ありゃ、殆ど席埋まっちゃってる…」

 

「まだ始まるまで30分ほどあるわ。皆んなで席を探してみましょう」

 

 そう言ってだいりたちは体育館内の席の空きを調べてまわる。

 暫く探していると、マミはライブの楽屋の近くに生徒が何人か集まっているのを見つける。何人かは実行委員会の先輩たちのようだ。軽音部の面々も何人かいる。しかし皆一様に表情が暗く、困り果てていると言った感じだ。

 マミは何かあったのかと思い声をかける。

 

「あの、どうかしたのですか?」

 

「あっ巴さん。良かったわ、ちょっと困ったことになっちゃって…」

 

「何かトラブルでも?」

 

 マミの疑問に軽音部の一人が答える。

 

「メンバーが一人戻ってこないんです…」

 

 軽音部の面々が言うには、メンバーの一人が昼休みに売店に行ってから戻ってきてないのだと言う。昼休みは12時半から。今は3時半過ぎだ。流石に3時間も音沙汰なしとなると、少し妙だ。

 

「何回連絡しても、既読のひとつもつかないんです。何かあったんじゃないかって心配で…」

 

「それにもうすぐライブの本番なのに戻らないってのはおかしいです!あいつ音楽のことだけは真面目な奴なんで!」

 

「…私たちも売店や校内を一通り探したのだけれど、どこにもいなかったわ。校内放送でも来ないし、彼を見かけたって人もいない…」

 

「にしても困ったな…。彼ボーカルだから彼がいないとライブができないぞ」

 

 事態は思ったよりも深刻なようだ。突然のライブメンバーの行方不明。売店にも校内にもいない。校内放送ではおろか、見かけた人すらいないのだ。マミの中で一つの可能性が出てくる。

 

(魔女…?)

 

 もしくは誘拐か。どちらにしろあまり当たってほしくない予想だ。どこかで寝ているという可能性も十分ある。

 すると背後からだいりの声が聞こえてきた。

 

「おーいマミっちー!席見つけたぞー……ってどした?」

 

「だいりさん。ごめんなさい、このままじゃライブができなくなるかもしれないわ」

 

「え、まじ?」

 

 

 ーーー

 

 

 マミは戻ってきただいりたちに魔女の可能性も含めて一通りの事情を伝える。

 

「魔女かぁ…。でもここに来るまで魔力のまの字も感じられませんでしたよ」

 

「なぎさも感じなかったのです」

 

 確かにこういった祭典の場は魔女にとっては絶好の餌場だ。しかし、一行はここに来るまで魔女の気配を全く感じなかった。かえって不気味なほどに。

 

「…とにかく何とかしないといけないわ。開始までもう5分もない」

 

「…ところでだいりは何処かしら?」

 

「確かにあいつどこに行ったのです?」

 

 もしかして先に探しにいったのだろうか。そう思っていると、奥の楽屋の方からだいりの声が聞こえてきた。

 

「うおぉぉ!すっげーーっ!かっけーっ!」

 

「なんや、エレキギター見んのはじめてか」

 

「おう、テレビとかでしか見たことないんだよなー!」

 

「ちと弾いてみるか?」

 

「いいの!?」

 

「ええで、これ本番使わんやつやし」

 

「おぉ!じゃあ早速…」

 

 

「何サボってるのです!」

 

「あんたもよ!」

 

「あだ!?」

「あたぁ!?」

 

 だいりと軽音楽部員は仲良く頭を叩かれずっこける。

 

「このままじゃ、ライブそのものができなくなるっていうのに呑気ねあんたは」

 

「あはは…すまんすまん」

 

「オメーは何勝手に楽屋に入って遊んでるのです!」

 

「いだだだだだ!?やめてぇ!?」

 

(ぎゅいいぃぃぃ!?や、やめるんだなぎさ!)

 

 だいりはなぎさの春日ロックを受けて苦悶の声を上げる。ついでにキュウベェも。それを見てマミは苦笑いを浮かべ、一呼吸置く。

 

「…とにかく、いなくなった部員を探さないといけないことには変わりないわ。先輩、本当にその部員のことは誰も見てないんですか?」

 

「うーん…、あ、そういえば、2年生のクラスの方に歩いていったってことは聞いたわ。でもそれ以外は本当に何もないのよね」

 

「2年生のクラス…」

 

 2年生のクラスといえばあの宗教軍団の集まりだ。何らかのトラブルに巻き込まれたといわれるには十分にあり得る話である。少し億劫にはなるが、マミはそこに探しに行く決意をする。

 

「みんなはここで待っていて、私はその部員を探しにいってくるわ」

 

「何言ってるんですか。マミさんが行くところにアタシがついて行かないわけないですよ」

 

「乗りかかった船なのです。それにもし魔女なら見逃せないのです!」

 

「だいりの邪魔になりそうだし、私も行くわ」

 

「……ありがとう。先輩、こっちは2年生のクラスの方を探してみます!」

 

「分かったわ!…でもライブには間に合わないわ。それは分かってちょうだい」

 

 そう、例え今探してすぐに見つかってしまったとしてもライブにはもう間に合わない。既に開始まで後わずかだ。ライブの定時開始は既に絶望的だった。ひとまず、欠員が戻ってくるまで放送で時間を稼ぐしかと考えていると。

 

 突然ライブ前の照明がふっと消える。会場はライブの定時前になると、自動的に正面の照明が消える仕組みになっているのだ。それを見てマミは急いで駆ける。

 

「急ぎましょう!」

 

「はいマミさん!」

 

 マミたち4人は2年のクラスに急ぎ、そのまま体育館を出た。

 

 

「あいつ大丈夫かな…」

 

「大丈夫やて!きっとどっかで寝とるだけやって!」

 

「そうだといいのだけれどね」

 

「…さて、とりあえず私は放送で、ライブの遅延を伝えに行くわ」

 

「お願いします」

 

「……あれ?」

 

「どうかした?」

 

「いや、ここに置いてあった練習用のギターが無いんだよ」

 

「練習用の?そういえばさっきあの金髪のお姉さんに貸してたよね」

 

「おう、貸しとったけど…あり?そっからあいつどこ行きよったんや?」

 

 

 すると突然ライブ会場の照明がパッと光った。軽音部の面々はその方向に顔を向ける。

 ライトの先にはエレキギターを引き下げた人物が一人。観客の注目はその人物に一気に集まった。しかしそんな視線を気にも留めず、その人物はギャーーン!とギターを鳴らし、観客のいる方向に視線をぶつける。

 

 

『イェーイ!今日はライブに来てくれてありがとうだぜベイベー!野郎ども!今日という日を存分に楽しんでいけーい!!』

 

 

 そこにいたのはバカ(雪野だいり)だった。

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「あれ、そういえばだいりは?」

 

「そういや居ないな」

 

「だいりなら今ライブ中よ。さっきギターを持って壇上に上がっていたわ」

 

『え』

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 観客たちは困惑していた。軽音部のライブを今か今かと期待していたところに現れたのは明らかにここの学校の生徒ではない人物だ。

 フードと仮面をつけているせいで顔はわからないが、声と体型からして恐らく女性だろうか。ギターの扱いも慣れており、素人目でも上手いことはわかる。

 だが、自分達は今日軽音楽部の演奏を聴きに来たのだ。断じてこんな誰かもわからない演奏を聴きに来たのではない。結果を残したチームの演奏を聴きに来たのだ。

 痺れを切らした観客の何人かが声を荒げようとしたその時。

 

 

 

『〜〜♪』

 

 

 

 歌が聞こえた。歌声を聞いた瞬間に観客たちの動きが止まる。

 ギターに合わせてだいりの歌声が響き渡る。空間に歌が染み渡っていくにつれて、観客たちは一人、また一人と動きを止めて聴き入っていく。ついにはここにいる全員が歌っているだいりに釘付けになる。もはや目の前のシンガーに野次を飛ばそうとする人はいなくなっていた。

 ギターと歌声。この二つだけでだいりはこの体育館内にいる人たち全員の心を支配していた。

 

 だいりは少しずつテンポを上げていく。それにつられて観客たちの気持ちの昂りも上がっていき、思わず席を立つ人も出てきた。

 ギャーーン!!とエレキギターを鳴らしたあと、歌は最高に盛り上がるサビに入った。観客のほとんどが席を立ってリズムに合わせて、飛び跳ねる。会場のボルテージは最高潮に達し、歓声と熱気に包まれた。

 

 

 後に観客の一人は語る。

 

 最初出てきた時はなんだコイツなんて思ってましたけど、いざ歌えばもう、度肝抜かれましたよ。あんな歌声は今まで聞いたことがなかったです!俺も色々心打たれる曲を聞いてきたつもりですけど、あれは何というかそういうのとは次元が違ったっていうか、もうとにかく凄かったです!あの歌を聴いた瞬間、こう、頭の中がブワァってなって、本能っていうんですかね?感情みたいなのが溢れ出してくるんですよ!それでテンションが高くなっちゃって。あんなの初めてでしたよほんと!

 え?一言で分かりやすく?うーん…難しいなぁ…。まあ、個人的な感想ですけど…、

 

 

 

 

 強いて言うなら、人を支配できる歌声ですかね?

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 ひゃっふぅ!!たっのしぃー!

 いやぁ、テレビで見てた時から憧れてたんだよなぁこういうの!勝手にギターやら借りちゃったけど、観客の人たちも楽しんでるみたいだし、結果オーライだよね!

 

 にしても不思議だなぁ。ギターなんて初めて見たのに使い方がどんどん流れてくるんだよね。…というよりギター自体なんか初対面な気がしないっていうか、懐かしいっていうか…。

 

 ま、細かいことはいっかー!とりあえず、マミっちたちがどっか行ってる生徒連れてくるまで時間稼いでみるか!歌いたいのも沢山あるし!次はどんなアニソンにしよっかなー!歌うのが楽しみだぜ!!イェーイ!ライブサイコー!!!

 

 

 

 

『サイコーーーッ!!』

 

 

『『サイコォーーーッ!!!』』

 

 

 

 観客ノリノリじゃん!

 いいね!そう来なくちゃ!

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

「…いたわ、多分彼よ!」

 

「あっさり見つかったのです」

 

「まぁ、見つかったのが魔女の結界なのは不幸中の幸いだな。おかげで見つけやすかったぜ」

 

 4人たちは無事軽音部員の生徒を見つけることができていた。だが彼がいたのは魔女の結界だ。2年のクラス。この全体を魔女は結界としていたのだ。彼は魔女の近くで虚ろな目でただ立ち尽くしていた。

 

「それにしても他人に寄生するタイプの魔女なんて初めて見るわね」

 

「まったくだ。なんか変だと思ったらこいつら全員魔女に操られてたんだな」

 

 そう目の前に群がる2年の生徒たち。そしてその奥にいる一際大きな頭を持った生徒がいた。

 あれこそは盲信の魔女。魔女自身は人間を苗床とし、規制対象そのものを結界とする性質がある。それは使い魔も同じで、虫ほどに小さな使い魔は人に寄生し、その人が最も好きなものを狂信させる性質がある。つまり、この学年が急に宗教まがいの出し物を始めたのはこの魔女の仕業というわけだ。

 

「あの人たちは魔女を倒したら元に戻るのです?」

 

「わかんねぇよ。けど、あのあからさまな頭でっかちを倒せば一件落着だろ!」

 

 杏子はそのまま飛び上がり魔女の元へと向かう。だがそうはさせまいと使い魔に取り憑かれた生徒が人の壁となって杏子の行手を阻む。

 

「邪魔はさせないわ!」

 

「杏子!さっさとやるのです!」

 

 だが寄生生徒たちはマミのリボンで縛られ、なぎさのシャボンで閉じ込められ、動きを封じられていく。杏子はそのまま真っ直ぐ魔女の元へと近づいていく。

 身の危険を感じた魔女はその巨大な頭の眼球からレーザーを放ち、攻撃する。予想以上に速い攻撃に杏子は虚をつかれる。

 

「見えてるわよ」

 

 それらは全て織莉子の水晶が放ったレーザーによって迎撃され、消滅する。杏子は魔女の目の前にまで迫る。そしてそのまま槍を突き刺そうとする。

 

 が、体の中心から突如生えてきた魔女の触手に杏子は顔面を貫かれた。

 

 ぶらんと、杏子の体が垂れ、ぼたぼたと、魔女の顔に血がかかる。確かな手応えを感じて、魔女は奇怪な笑い声を発する。

 

 

「下だよ」

 

『!!?』

 

 下を向くとそこにはさっき貫いたはずの杏子がいた。

 貫いた方の杏子が虚像となってゆらりと消えるその前に、杏子は魔女を刺し貫いた。

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 歌が終わり、ギターの音も止む。

 

 

『ありがとーーーっ!!』

 

 

『ワアァァァァァーーーーーーッ!!!!!』

 

 

 

 

 一通り歌い踊り満足しただいりは歓声を身に受けながら、壇上から退場する。降りる途中、ちょうどなぎさたちが戻ってきたのが見えた。

 楽屋に戻り、なぎさたちと合流する。

 

「あっお帰り!!」

 

「お帰りじゃないのです!!何勝手にライブしちゃってるのです!?」

 

「いーじゃん いーじゃん、上手く行ったんだし。そっちも行方不明部員見つかったんでしょ?」

 

 軽音部員を背負ったマミが前に出る。

 

「えぇ、なんとかね。意識もはっきりしてるわ」

 

「なら後は本番だけだな!」

 

「でも彼、魔女に取り憑かれてたみたいなの。少なくとも今日一日は安静にするべきだわ」

 

「え?じゃあライブは…」

 

「どちらにしろ出来ないわね…」

 

「そんなぁー」

 

「ごめんなさい。私たちが戻ってくるまで時間稼ぎをしてくれていたのに…」

 

「まぁ仕方ないかぁ…」

 

 そうだいりが落ち込んでいると、楽屋の外にいた杏子が駆け込んできた。

 

「おいだいり!お前何したんだ!?」

 

「どした、あんこちゃん?」

 

「あんこじゃねぇ杏子だ!取り敢えず外見ろ外!」

 

 言われるがままにだいりは楽屋の扉から会場の様子を見る。その目に映ったのは、

 

 

 

『『アンコール!!!アンコール!!!アンコール!!!』』

 

 

 

 アンコールを望む声と熱気で満たされている会場だった。

 

「なんだこれ…?」

 

「アタシが知るか!あんたがやったんだろうが!」

 

「凄い熱気なのです」

 

「だいりさん、行ってきたら?」

 

「え、いやでも、これあの人らのライブだし…」

 

 勝手にライブを乗っ取っておいて今更であるが、だいりは飽くまで本番の軽音部のライブまでの時間稼ぎをしていたに過ぎない。今回の主役たちを差し置いてまで前に出ようとは考えていなかった。

 

「別にええで俺らは」

 

「え?」

 

 楽屋の奥から軽音部の面々が出てくる。

 

「どうせアイツが動けないんだったら十分な演奏もできないしね…。そんな状態で演奏しても来てくれた人に失礼だよ」

 

「だったら今観客を満足できるあなたが出るのが一番良いと思うよ。何より、俺らもあなたの演奏、もう一度聴きたいからな!」

 

「ホンマやで!久々に心ぶち抜かれたって感じやわ!やから頼む!もっかい壇上に立ってライブしてくれんか!?俺らはあんたの歌と曲が聴きたいねん!」

 

 軽音部の3人はだいりにそう頼み込む。ここまでされればだいりの選択は最早一つだった。

 

「…いーぜ、やってんよ!ちょーど歌い足りないって思ってたからだからな!」

 

 そう言ってだいりは仮面をつけて走り出し、再びアンコールの鳴り響く舞台に躍り出る。そしてマイクを構えて、言い放つ。

 

 

 

『野郎ども!!俺っちはまだ歌い足りない!!しこたまアンコールしたんだ!最後までとことん付き合ってもらうぞぉ!!!』

 

 

『『ワアァァァァァーーーーーーッ!!!!!』』

 

 

 

 

 

 

 結果的に予定外の謎の仮面シンガーによるソロライブは大盛況となり、止まぬ歓声の中ライブは学園祭とだいりの笑顔と共に幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 ーーー

 ー

 

 

 

 

『現在SNSに投稿されている動画が話題を呼んでいます。投稿内容はソロライブの様子の10分ほどの動画ですが、そのシンガーの歌が素晴らしいと多くの声が集まっています。初投稿にも関わらず、再生回数が2日で300万回を超え、今最もアツいシンガーとなっています!今後の活躍が楽しみですね』

 

『そうですね、私もこの動画見ましたけど、凄かったですよ。こう、言葉では言い表し難い感覚に襲われたんですよね。ニュースを見てる皆さんも是非一度聴いてみてください!オススメですよ!』

 

『それにしてもこのシンガーは何者なんでしょうね。仮面とフードをつけて顔が全く見えないですが、女性のように見えますね』

 

『その辺りはネットで議論されているみたいですよ。学生だとか、著名なシンガーが変装しているだけとか。私としてはこのライブ会場自体がかなり安易に感じたので、学校の催しか何かなんじゃないかと思いましたので学生の可能性が…』

 

 

 

 

 

 

 

 学園祭が終わって3日目が経った頃のことだった。

 何の気無しにテレビをつけてみればなんとだいりがお馴染みのニュース番組に映っているではないか。思わず朝食を吹き出した二人は、丸い目でテレビを見る。

 

 

「た、だだだ、だいりがテレビに出てるのです…!」

 

「どどどどーなってんだ!?何で俺っちが…!?」

 

 

「ふふ、答えは簡単よ」

 

「「!?」」

 

 振り返るとそこにはリビングで寛いでいる織莉子がいた。当然二人は織莉子を家に入れた記憶は無い。驚いた二人を置いて織莉子は話を続ける。

 

「あの時のライブ映像を録画して動画投稿サイトに投稿したのよ」

 

 そう手に持ったスマホを二人に見せる。そこには織莉子が作っただいりのアカウントと、先程ニュースでも見た動画がある。チャンネル登録者も既に5万を超えていた。

 

「うわすっご…」

 

「凄いも何もこれは貴方の出した成果よ。はいこれ」

 

「ん?」

 

 だいりは織莉子から手帳のようなものを受け取る。開いてみると、それは通帳だった。既に通帳の金額欄には0がいっぱい書いてある。

 

「……」(絶句)

 

「貴方がこの2日で稼いだ金額よ。SNSはシビアな世界だけど、ハマればこんなものよ」

 

 織莉子の投稿している動画サイトは一定の再生数を稼げばある程度の手続きが必要なものの、即資金が降りれる仕組みになっている。これならばアルバイトで失敗続きのだいりでも容易に資金を稼ぐことができるのだ。何せだいりが歌ってその動画を投稿すれば良いだけなのだから。

 

 

 

「さて、だいり。これで貴方は大きくアイドルに近づいたわ。つまりこれで貴方のファンクラブを合法的に作れるというわけよ!」

 

 

「ふざけんなバカぁーーーッ!!!」

 

 

 

 織莉子の顔面にだいりのドロップキックが炸裂した。

 

 

 




補足

雪野だいり:今回大暴れした結果、とんでもないしっぺ返しを最後に受けることになった。実は歌がめっちゃ上手く、生前の幼い頃から色んな賞を大量に取っていたりしていた。

百江なぎさ:学園祭は普通に楽しかったが、織莉子がさらに嫌いになった。摩ー等教がトラウマになる。だいりがテレビに出て一番びっくりした人。

美国織莉子:実は学園祭のトラブルは既に予知で知っており、この機を逃すまいとだいりファンクラブ結成計画を進めた。どんだけだいりのこと好きなんだ…。めでたく見滝原中学に転校。マミと仮初の親交を深めている。最近はだいりのことを特定しようとする不埒な輩を始末しているらしい。

巴マミ:今回だいりたちを案内するために結構周到な準備をしていた。最近では精神的余裕も出てきてクラス内でのお友達もでき始めたとか。

佐倉杏子:巴マミ公認『マジカル☆リボン団』を結成した団長兼教祖。活動資金と家族のために片っ端から働けるバイトを探している。最近では、マミさんの魅力は人生における森羅万象の必須科目!などと訳の分からないことを供述している。

キュウベェ:鞄。〈ワケガワカラナイヨ

見滝原中学2年生:ちゃうねん、いつもはもっとまともやねん。ただし、まっそー教と摩ー等教を除く。全員無事でした。

まっそー教:筋肉だ!!筋肉は全てを解決する!! 筋肉があればインド像にだって勝てる!!

摩ー等教:全十三支部あるが、現在進行形で支部は増えている。それぞれが好きな女の趣味趣向を信仰する。織莉子の手によって見滝原を追放されたが、多分今後も出てくる。

見滝原中学軽音部:メンバーは4人と少ないが、数々のライブ大会で賞をもぎ取っている実力チーム。メンバー全員が人格者で、周囲の好感も高い。

盲目の魔女:2年生の奇行の元凶。別名『グロいウツロイド』。人に取り憑き、寄生対象が思う好きなことを狂信させて、その信仰心を食べるという変わった性質を持っている魔女。使い魔も同様の能力を持っているが、虫のように小さく戦闘能力は無い。実はバイト中の杏子に対抗意識を燃やしていた。





 次回「織莉子、死す!(大嘘)」

 デュエルスタンバイ!!



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