それぞれの世界が歩む道   作:???

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正直思いつきで書いてしまいました。
知らないことや、勘違いも多々あると思います。
もし間違っていたり、勘違いしているようなら教えていただけると幸いです。処女作なのでどうか宜しくお願い致します。



第一章 異世界
第一話 調査


・3020年6月15日 地球? ラグランジュポイント

 

静寂が支配する宇宙空間、普段であればそのまま静かに時は過ぎ去るのだがその日初めて変化が起る。

突如として宇宙空間に揺らぎが生じた。5分ほど経っただろうか、揺らぎは発光する異空間へと変わり、その中から巨大な隕石が出現し始め、その隕石が異空間より抜け出ると異空間は消え隕石もその場で停止した。

その隕石には、良く見ると無数の人工的建造物が存在し、人工的な光源が存在している事から人が存在している事を示唆し、しばらくすると中から小型の宙間戦闘機や人型機が出てその周辺を飛び始めるのだった。

 

 

・星間国家「日本」第11長期殖民惑星調査任務艦隊所属移動要塞「暁」ブリッジ

 

先ほどまで静寂に包まれていたブリッジでは、多くの人員が忙しそうに動き回っていた。

 

「跳躍成功、座標位置確認開始します」

「前方に中規模クラスの惑星を確認、要塞周辺に生物反応なし」

「光学シールド発信装置の射出展開及び、各種撹乱粒子散布開始します」

「フォースフィールドは低出力で展開」

「フォースフィールドの規定出力・撹乱粒子戦闘濃度まで、後120秒」

「各防衛指揮所は、戦闘態勢のまま待機願います」

「第1101・1102・1103・1104戦機大隊、及び航宙機隊は、要塞周辺の偵察を開始してください」

「調査班は、調査用無人機(ファントム)を惑星周囲に展開し、調査を開始してください」

「各指揮者は、担当部署の異常がないか巡回を開始してください」

「負傷者は、不調を感じるものは急ぎ医療部に出頭してください」

「後続の戦艦群到着まで後270秒、所定位置にゲートが開きます。各偵察班は注意してください」

………

 

報告や通達が飛び交う中の一番後ろから周りを見渡せる席に、日本人らしい黒髪・黒目で周りより背は少し低く、のほほんとしたやさしい顔をした30代中ごろくらいの男が座りながらお茶を啜っていた。

 

そんな彼の後ろに控えるように立っていた見た目から彼よりも年が上で眼鏡をかけ真面目そうな長身の初老の男が声をかける。

 

「司令、跳躍成功おめでとうございます。毎度毎度未調査宙域への跳躍は、ひやひやさせられますな」

 

声をかけられた男は、日本国第11長期殖民惑星調査任務艦隊兼要塞司令官、山本重雄(やまもとしげお)中将であり、声をかけた男は彼のもっとも信頼する彼の艦隊の参謀を束ねる参謀長佐藤守(さとうまもる)であった。

 

山本は、佐藤の言葉を聞きながら自分の座席に深く座り直し、ぬるくなった緑茶を飲みながら恐らく何事もなく成功したであろう跳躍に内心胸ををなでおろしていた。

 

もともと未踏破宙域での跳躍には、数多くの確認作業を経ているとはいえ、事前調査の段階で安全は確認していても、実際跳んでみると何が起こるかわからないのが宇宙の怖さであり、山本自身それをいやというほど身に染みていた。実際に過去においてゲート通過後が長期殖民惑星調査任務艦隊での損傷艦や死傷者の発生率が多いとされ今まで多くの事故が起こっていた。その為、彼は胸をなでおろしていた。

 

山本は、一度忙しそうに動いている部下たちを見回し、頷きながらディスプレイに移る赤と青の大地を有する惑星を眺めてから返す。

 

「ん、そうですね、これで一段落ですね。ですがこれからの調査も気は抜けませんから」

 

(何しろ跳躍が成功しても、周辺にもし知的生命体が存在したら下手に動けば、中国やアメリカのようにそこに住む相手と全面戦争になるかもしれないからな。今まで我が国が戦闘にならなかったのは正直偶然としか言いようがないのだし)

 

そう言って、緑茶をすするとぬるくなっているのに気づき少し顔をしかめてから部下達と、正面のディスプレイに次々と映し出される情報をを注意しながら眺めるのだった。

 

 

 

そんなやり取りをしながら2時間ほど仕事をしていると、あわてたような調査班の主任が、報告をもってあがってきた。あらかじめ佐藤に置いて行くよう言われていたのだろう、彼の席に報告書を置き去っていく。山本はその様子に、普段から見てあまりにも慌てていた為、少し不審に思いながらその置いて行った資料を佐藤のデスクから取り上げ読み始める。

 

しばらく読みふけっていたが、報告書を読み進める度にだんだんとその内容から山本の顔が険しくなっていく、ちょうど他の部署での仕事を終え佐藤が戻ったのはちょうどその時だった。

 

机に腰を掛け険しい表情で報告書と思しきものを読み進めている山本を見て不審に思い、近づくと声をかけた。

 

「司令いかがされました?その資料は調査班からですか?何か報告にまずいことでも?」

 

相当集中して読んでいたのであろう、山本は佐藤が近づくまでその存在に気づいていなかった。

 

「ああ、佐藤さんですか、戻ってきた所申し訳ないが急いで、あやなみ 以下5隻をあの惑星への調査に向かわせる手続きを始めてください。」

 

そう言って山本は自分の席へと戻り机に先程まで読んでいた報告書を置き考えはじめる。

 

「かまいませんがどうかされたのですか?知的生物でも見つけましたか?」

 

「いや、下手をするとそれ以上のまずいことと言ったところでしょうか。私としては正直これが事実でない方がうれしいのですが………実は座標から彼の惑星が、私たちの良く知る地球人類の母星である地球というデータが出たそうです。そこまでなら問題は無い、いえまあ、それも問題ではあるのですが、惑星直上のステーションの形状が違う上に軌道エレベータは見受けられない。また、量子コンピュータの天表春(アメノウワハル)が、観測データから20世紀の地球に酷似しているとはじき出し、さらには軌道上へと向かっていた無人機(ファントム)が、地表から発信されている電波を受信したらしいのです、それも今では骨董品と言って良いレベルのものを…………」

 

そう言って報告書の内容を自分でも反芻するかのように内容を語った。

 

「地球?跳躍ミスでしょうか?だが、当要塞の天表春(アメノウワハル)は、最新式のもののはずだからありえないか………それに20世紀末ですか」

 

その言葉を聞いた後、山本は持っていた報告書を佐藤に渡し、受け取った佐藤も報告書を読んでいくうちに顔が険しくなっていく。

 

その間山本はただ静かに目をつぶり現状について反芻しながら彼が読み終わるのを待った。

 

「どうです、この調査報告を見て佐藤さんあなたはどう思います?」

 

正直信じられなかった、むしろあり得ないとさえ思っていた。

だが今渡された調査報告書は、調査班ひいては国が誇る新式電算機が導き出したものだ一概に否定することはできない。

 

「申し訳ありません。正直情報が少なすぎます。これだけの情報ですと、跳躍のショックでコンピュータ関連がイカレタという事もできますので、とにかくもう少し情報を収集したいと思います。」

 

そう言い調査部隊の編成を急ぎ自席に座り、各所へと指示し始めるのだった。

 

その隣で山本は、目をつむり今後の事を思案し始めた。

 

 

 

・3020年6月18日 衛星軌道上 調査戦隊 旗艦 あやなみ級航宙巡洋艦「あやなみ」巡航ブリッジ

 

急遽軌道上へと調査に贈られた あやなみ 以下5隻は各種妨害装置を働かせながら、今まさに調査位置につかんとしていた。

 

戦隊指揮官福本武(ふくもとたけし)少将は、先月初旬に昇進して、今回はじめての戦隊司令官を務める事になった事と、事前に佐藤より聞いていた報告書の内容から少し緊張していた。

 

「全艦所定の位置に到着しました。」

 

そう言いながら、あやなみ艦長石島進(いしじますすむ)大佐が状況を報告しに隣までやってくる。

 

「了解した。たかなみ の調査準備完了まで各艦そのまま、そう簡単に此処の奴らに見つかるとは思わんが、一応光学シールドの展開と撹乱粒子は戦闘濃度まで散布しておけ」

 

そう言って石島に指示を出しながら彼らの前方のかなり離れた位置に浮くステーションを見た。

 

「了解、光学シールドの展開と撹乱粒子は戦闘濃度まで散布、僚艦にも通達」

 

指示を復唱し石島は的確に指示を出していく。

 

二分ぐらい足っただろうか石島は指示を出し終え、少し時間が空いたのであろう司令である福本に自身の疑問をぶつけてくる。

 

「司令、質問してもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「何故、今回惑星の調査任務にもかかわらず、本来調査部隊では無い我々が調査を行う意味はなんでしょうか?また、戦機(せんき)まで満載で、艦隊上層部は戦闘が起こると考えておられるのでしょうか?」

 

そう、今回調査に割り振られたのは全て戦闘艦であり、調査を主に担当する たかなみ に至っては情報収集特務艦である。

 

彼らにしてみれば調査任務であるのに、要塞に配備されている調査艦艇でなく自分達が選ばれた事に、不安と強い疑問を抱いても無理からぬことだろう。

 

それが解っている福本は、自分の見解を述べる。

 

「だろうな、でなければ戦機(せんき)と航宙機を満載で出航させる必要はなかろう。調査だけであれば無人機(ファントム)でこと足りるだろうからな」

 

そう答えると石島は、予想通りだったのだろう残念そうな顔をして言った。

 

「小官は、正直戦闘が無く無事に調査任務が済むことを祈りたいところです。部下たちを何もわからない戦場に出したくありません。」

「そうだな………私もそう願うよ……」

 

福本は同意しながら、自分の上官とその参謀を思い出す。

 

(だが、山本中将や佐藤参謀長が戦機(せんき)満載を指示したのなら、何か戦闘に類することが起こる可能性が高いのだろうな)

 

そんなことを考えながら石島に同意し戦闘ブリッジのディスプレイに、映し出されたステーションとその下に広がる不思議と緑の少ない大地を見つめ続けていた。

 

それから丁度一時間後、調査任務は開始される。

 

 

 

・同日 調査開始から30分後 衛星軌道上 調査戦隊 旗艦 あやなみ級航宙巡洋艦「あやなみ」巡航ブリッジ

 

突如として警報が鳴り響いた。

 

すぐさま福本はオペレーターに怒鳴った。

 

「何が起きている!」

無人機(ファントム)が攻撃されています!」

 

そう聞くとすぐに福本は現地住民からの攻撃だと予測し聞き返す。

 

「現地軍か!」

 

だが攻撃されているせいか、それとも何かの原因か幻日より送られてくる画像データは鮮明さに欠けていた。

 

「解りません。ですが光線兵器のようです!」

「損害は!」

「今の所ありません!」

「偽装して出したはずだな艦長!」

 

斜め前方の艦長席に座っていた石島は、冷静にすぐに答える。

 

「は、全機予定の通り隕石に偽装して出撃させております」

 

艦内はハチの巣を突っついたような騒ぎになっていた。

 

当初の予定の通り調査の為に たかなみ から地表へと降下させた偵察用無人機(ファントム)幻日(げんじつ)が攻撃を受けたからだ、しかも小型の隕石に偽装して送り出したのにもかかわらず10機中8機が、何者かに光線兵器を照射されていた。

 

「何故だ、燃え尽きる隕石だぞ攻撃される理由が解らん」

 

予想外の状況に椅子から立ち上がり福本は苛立ち言い放つ。

 

たしかに今無人機(ファントム)自体に目立った被害は全く無かったが、燃え尽きると考えられる隕石に攻撃などしてこないものと考えていただけに彼は出ばなを挫かれいらだっていた。

 

しかも、現地が20世紀末の地球と言う事を知っていた彼は、精確に隕石に照射される等と言う事は有り得ないものと予想し、相手の実力を見誤った自分自身にも苛立ちを覚えるのだった。

 

すぐさま福本は命令を下した。

 

「全艦に戦闘態勢、こちらの意図がばれているなら敵が上がってくるかもしれん、ステーションからの砲撃も予想される、後退戦闘になるかも知れんぞ!もしこのまま幻日(げんじつ)への攻撃が続いた場合、作戦を中止し作戦機を回収しつつ要塞へ帰還する!」

 

(ここで下手に攻撃すれば此処の住民と戦争になるかもしれん、相手が明確になるまでは手だけは出せん。それだけは避けなければ!)

 

その指示に続くように石島が続ける。

 

「了解、全艦に戦闘態勢を通達。待機中の戦機(せんき)・航宙機パイロットはコクピット内で待機、何時でも動かせるようにしておけ!」

命令を受け即座にブリッジは戦闘態勢に移行していく、その姿を見て自分の指揮する部下たちを頼もしく見るのだった。

 

 

だが、結局戦闘態勢に移行したことは無意味だった。

 

数十秒たった頃だろうか、艦橋の一同がかたずをのんで見守る中ディスプレイに映し出される幻日(げんじつ)が、規定高度に達し偽装を爆破解除、それと同時に妨害装置の稼働を開始しするとすべての機体への攻撃が止んだ。

 

「司令、攻撃止みましたな」

 

石島は隣に立つ参謀の矢也勝義(やなりかつよし)から発せられた言葉に頷きつつその理由について意見を求める。

 

「理由を推測で構わん言ってみろ」

「は、偽装排除と各種妨害装置の作動を持って光学兵器による照射が止んだ所から見るに、先の攻撃は恐らく隕石の排除が目的だったと考えられます。また機体への攻撃がない事から妨害装置は、相手方に相応の効果を要するものと判断いたします。この事から一定の大きさで且つ大気圏外から飛来するものに、自動で対処する無人兵器であった可能性が高いのでは無いかと推測します。また我々が現状発見されていないのであれば、作戦はこのまま続行しても構わないのではないかと考えます。」

「ふむ、そうか」

 

(恐らく矢也が言うとおり攻撃が止んだのは、隕石が排除されたから、または妨害に感づいて我々の出方を見るつもりということも考えられる。確かにこちらの機体自体への攻撃は無い以上任務を中止する理由にはならんが…本当にばれていないか少しばかり不安が残る。これがばれていて後々外交上の問題にならないかというところだな…)

 

しばらく俯いていたが、虎穴にいらずんば、虎児を得ずと考え指示を出す。

 

「ふむ、不確定要素が多いのは確かだが、未確認勢力からの攻撃も止んだ、再度攻撃が行われ危険だと思われるまで我戦隊は調査任務を続行する。各自戦闘態勢を維持しつつ調査任務を続行せよ」

 

そう言って福本は調査任務の続行を指示するのだった。

 

しばらくして無人機が各地に降り立つと早速調査ははじめられた。

 

その情報は瞬時に たかなみ へと送られそこから、あやなみのブリッジへと送信された。

 

調査結果は、気付き始めていた事態の異常性を推測から確信へと変えていく事になる。

 

調査はまず新大陸と思しき場所へと送り込まれた無人機からの報告から始まった。

 

一番頻繁に電波を放出していることから、人類が存在しているものと推測されたからだ。既に傍受した通信内容から、それが英語であることは判明していた。その為、翻訳などのロスタイムなくニュースやラジオ等様々な通信を、傍受することで彼らの良く知る国家名や20世紀の世界である事、その多くの国家の多くが亡命政府となっている事等あまり穏やかでない言葉や、戦線がどうの等という言葉も頻繁に聞かれ何者かと地球規模で戦っている事を確認することができた。

 

ヨーロッパへと派遣された機体からは、パリ・ベルリン・ウィーン・ローマ等の主要都市にあたる場所にはすでに都市は無く、ただ一面に続く荒野と、戦車や大型の戦機(せんき)らしき残骸、謎の構造物がそびえ立ちその周りには地球上の生物とは思えない存在が闊歩しているのが確認することができた。そしてそれが恐らく新大陸で傍受した敵なのであろうと予測することができた。

 

アジア各地に降下させた機体もヨーロッパで確認したのと同様な生物を確認したが、こちらは多くが戦場であった。まずは都市部から調査ははじめられた。

そんな中で日本がまだ無事であると知ると安堵の空気が広がった。

どんなに生活圏が地球から離れ、地球に行く機会がいかに減ろうともやはり皆、日本が好きである事には変わらないということだろう。

 

しかし、ここまでで得た情報から、どう考えても彼らの知る人類発祥の地 地球(現在は外交の舞台であり、各星への中継地になっている) とはかけ離れすぎていた。

 

アジア・ヨーロッパの大部分が廃墟に変わり、見たことも無い奇妙な生物が、巨大な建造物を作成し闊歩し、対して人類は、アメリカや日本、オーストラリアなどの一部地域にのみ存在している状況だった。いっそ古典SF小説に出てくる世界ではないかと思うぐらいに…

 

彼らの知る20世紀末の地球にしたってこんな世界ではない、歴史の講義で受けた当時の世界は、確かに余り褒められた物では無かったが、安全性という一つの点においてはこの世界より遥かにましだったはずだ。間違ってもこのような世界ではなかったなのである。

 

調査は戦場にも及び、人類とこの奇妙な生物との戦いは圧倒的に、人類に分が悪く戦っているどの戦線を調査しても負け戦、その物量の前に敗北し、どんどんとその生存地域を減らしているようだった。滅亡までのカウントダウンが刻一刻と迫っているのが疑いようも無い事実であることをどの情報も示していた。そんな中、各地の戦線で確認された大型の戦機らしき機体を、朝鮮半島で調査任務を継続していた一機が、戦闘で擱座したと思われる比較的損傷の少ない物と、そこに座っていた死体の回収に成功し、現地軍に見つからないように迂回路を駆使し たかなみ からの回収用舟艇とのランデブーポイントまで輸送して確保することにも成功した。回収の際に映し出されたコクピットに横たわる眠るように死んでいた成人に達していないであろう女性というには幼さの残る少女の死体は、少なくない精神的なダメージをその場にいた全員に与えた。

 

その他にも、半ば予想されていたことではあるが、当時使われていたシステムが一致したことで、戦隊は一部調査任務を変更し10機中、5機の幻日(げんじつ)を、あらゆる存在が確認できた国の軍事回線に進入させ、ばれる事無く根こそぎデータを抜き取らせる事に成功する。そのデータは全て たかなみ のデータバンクに格納させる事になった。

 

 

そのようにして調査任務はその後も着実に進行していった。

 

そんな中福本は艦内食堂で、遅めの夕食を矢也と石島の二人と一緒に取っていたが、正直食欲は無かった。

このままでは食堂の主といわれる士官に怒鳴られてしまうことは解っている。

彼は食堂でもめ事を起こす輩や、暗い顔して飯食う奴には容赦がない。

むろん士官であろうが容赦がない。

だが、どうしても回収した大型戦機に搭乗していた少女の事を思い出してしまうのだ。

彼には、部下に茶化されるほど溺愛するちょうど同じくらいの娘がいる。

どうしてもその娘と重ね合わせてしまい食欲を減退させていた。

 

「お気持ちは解りますが、食事をお取りください。彼に睨まれてます。正直何時怒鳴り込んでくるか気が気じゃありません」

「確かに直ぐにでも乗り込んで来るんじゃないかという顔してますね…あれはそろそろ突っ込んで来るんじゃないかって顔です」

 

そう言って振り向かずに返却台の、後ろを指すとそこにはこちらをじっと見つめる人物がいた。

 

確かにこのままではまずかった。このままだと今後一週間不味い飯しか彼には出されない。

 

それには福本もまずいと思ったのだろう。

 

「む、すまん。そんなに顔に出ていたか。すぐに食べてしまおう」

 

といって思考を無理やり切り替え食事を無理やり胃におしこめた。

 

 

「司令、今回の調査以降、我が調査艦隊はどうなるのでしょう」

 

食事を終え、ブッリッジから呼びだされた石島を除き、食堂で二人はコーヒーを飲んでいた。

 

そんな中で矢也は唐突に福本へと質問した。

 

「わからんな、どうしてそんなことを聞く?」

 

逆に福本が訪ねる。

 

「此処の人々の紛争に介入するのかどうかが気になるからです。司令は山本閣下を良く知っていらっしゃはずですから…それに、我が戦隊の一部の若い連中のなかには、すぐにでもこの紛争に介入し日本を救おうじゃないかという者が少なからずおり、要塞に帰投後恐らく上申書が提出されるという事態になるでしょう」

 

「ほう、お前さんもそう考えている一人か?」

 

福本は飲んでいたコーヒーを、テーブルへと置き矢也の目を見つめながら訪ねる。

 

「いえ、私個人の心情としては吝かではありませんが、参謀としてであれば反対です」

 

「何故だ?」

 

「我々は調査艦隊です。その責務はあくまで調査であり戦闘ではありません。今回の調査には民間人も多数参加しておりますから。彼らに被害が出るような事態は避けるべきです。それに現在の装備は再編前よりも劣り、支援するにもその物資は足りないでしょう。そして何より現地とのパイプは確保できておりません。そんな状態で仮に艦隊の力であの妙な生物を倒せたとしても、こちらの力を恐れた、現地軍に敵対され全面戦争になってしまっては本末転倒になってしまうと考えられるからです。ですからできればきちんとした支援体制を確立した上で介入するべきかと考えます。」

 

「ふむ、ということは君は直ぐにでなければ、彼らの支援をしたいそう言いたいんだな」

 

福本のその言葉に矢也は頷き答えた。

 

「はい、やはりこのまま見捨てるというのはどうもすっきりしないのです。司令も同じお考えであると私は思っております。」

 

確かに福本は、どうにかして彼らを助けることはできないかと考えていた。

 

それはやはりあの死体を見た時からだろう、あの少女は明らかに若すぎる、そう死ぬには若すぎるのだ。

 

親として娘を溺愛する彼には、どうしてもそれは許容することはできなかった。

 

その為どうにかして山本を説得する方法がないか考えていたのだ。だが一人騒いだところでどうしようもない。しかも自分は多くの部下を守るべき立場なのだ。だからこそ困っていた。

 

だからこそ暗い顔にもなった。

 

だからこそあの士官にも睨まれた。

 

だが、今自分の目の前にいる部下は私にそれをやれと言っている。

 

こいつは恐らくそれらを全てわかっていて話している。

 

皆そう感じていると…そう望んでいると…

 

そう言っている。

 

福本は今まで悩んでいたことが馬鹿らしくなり笑った。

 

「そこまで言われちゃ仕方がない。山本閣下は、佐藤参謀長から説得してもらってやる。いやきっとその必要もないだろうが…だから、君は私が納得するような上申書を作成しろ、期間は要塞へ戻るまでだ。急げよ」

 

そう言ってテーブルに置いてあったコーヒーをつかみ一気に飲みほした。

 

そのコーヒーは、さっきまでの味がしないものと違い何時ものコーヒーの味がした。

 

それから2日、一連の調査任務を終了し多くの情報を手に入れた戦隊は任務を終了して、一路要塞へと帰還していく二つの世界をつなぐかもしれない一つの上申書を携えながら。

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