STARWARSーWHAT IF   作:AlexGarcia

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大きな覚悟

次の日、ガルは目が覚めると外はまだ薄暗く、辺りは静けさに包まれていた。

 

ガルは痛む体を慎重に起こしてぼーっと外の景色を見ていた。少しの間外の景色を見ていると外の空気を吸いたいという衝動に駆られた。ガルは最小限の動きで身支度を済ませ、体への影響を最小限に抑えた。

 

病室を静かに出て、通路に出る。この時刻には瞑想のための静寂を妨げないように、通路のグローロッドの光量は抑えられている。ほとんどのジェダイはまだ眠っているか、瞑想中のいずれかである。

 

ガルはそんな微量の明るさの通路をゆっくりと歩いていく。そして景色の良いバルコニーに着いた。外ではコルサントの夜間の灯火が所々まだまたたいている。日の出まではもう少しだろう。数台のエア・タクシーがスペース・レーンに向かって下降している。もう数十分ほど経てばこれらのレーンは交通車両でひしめき合う事になるだろう。

 

ガルは大きく深呼吸をした。

 

「はあ…………何やってるんだろうな俺」

 

彼は深呼吸をした後すぐに大きなため息を吐いた。

 

ガルの中には迷いがあった。ジェダイテンプルに来てから気がつけば一年以上が経ち、他のイニシエイト達とも仲良くなれた。しかし、そこまでの経験をしても自分がこの世界の住人だと実感することはできなかったのである。ガルにとってこの世界はどこまでもスターウォーズの世界だった。どこで何をしていようが彼は周りで起こることをまるで至近距離で映画を見ているかの様な感覚で過ごしてきたのだ。

 

でも今回の任務でガルは大きな事に気が付かされた。この世界は自分の知っている物語のスターウォーズでありながらもリアルな世界である事に。自分の行い一つで死ぬはずの運命じゃないキャラ達を死なせてしまう。ほんの一瞬の気の緩みや自分の間違った行いのせいで。

 

それはガルにとって悪い事に思われたが良いことでもあったのだ。今回のアイラ救出を得て彼の中には一つのしっかりとした目標が出来上がった。

 

 

かつてスターウォーズファンだった自分が出来る事……

 

 

それはこれから起こることに事前に対策を施してかつての推しキャラ達を死なせない事。

 

それをするにはシディアスよりも裏で根回しをして、暗躍しなければならない。

 

またガルの推しキャラはダークサイドのメンバーにもいるのだ。

 

この目標を成し遂げるにはそれなりの覚悟が必要になる。しかしガルの中でそれを決めるには時間がかからなかった。彼はコルサントの街並みを眺めながら心に誓った。自分の何を犠牲にしてでも推しキャラ達を死なせないことを。

 

 

徐々に空が赤くなり始めた頃、ガルは誰かがこのバルコニーに向かって歩いてきている事に気がついた。今の自分の姿をマスタージェダイ達に見られたら怒られると思った彼は急いで物陰に隠れてやり過ごそうとした。

 

気配はバルコニーまで来てちょうどガルの隠れているところから少し顔を出せば誰が来ているのか見れる様になった。ガルはそっと顔を出して様子を伺った。そこにいたのは彼の良く知る人物で親友のシャアク・ティだった。ガルはそこにいるのが彼女だと分かった途端、安堵した。そしてゆっくりと隠れている場所から出て、彼女の横に気配を消して並んだ。シャアクはガルの接近に直前までに気が付かなかったが、突然隣に現れた彼に何の反応もせずにただじっと日の出を迎えるコルサントの景色を見ていた。

 

ガルもコルサントの日の出に見惚れた。彼はバルコニーに手すりに手を置き、ゆっくりと明るくなっていく街をずっと見ていた。するとガルの手の上にシャアクが手を重ねてきた。それに驚いたガルがシャアクの方を向いて何か言葉を発しようとする。

 

しかし、彼が言葉を発する前に信じられない事が起きた。

 

 

 

シャアクがガルにキスをしたのだ。

 

 

 

ガルは一瞬驚いた表情を見せただけで決して彼女のキスを拒む事はしなかった。二人はコルサントの朝日に照らされながらキスをし続けた。この瞬間を誰かに見られでもしたら二人は直ぐにでもジェダイから追放をされるだろう。少しの時間が経ち、二人は顔を離した。シャアクは何も言わずにガルに抱きつき、彼の胸に顔を押しつけて涙を流し始めた。ガルはただ呆然と立ち尽くしていた。何のせいで今こんな事になっているのか全く予想も理解もできなかったからだ。シャアクは簡単には泣き止まず、ガルはずっと彼女を抱きしめ続けた。

 

 

やっと落ち着いたシャアクと一緒にガルは自分の病室に帰っていた。二人はさっきとは打って変わって終始無言でお互いの顔を見ることさえしなかった。病室に入り、部屋のドアを閉めて少ししてからやっとシャアクは口を開いた。

 

「さっきはごめんなさい。感情のコントロールが効かなくて……」

 

「い、いや別に気にしなくていいよ……」

 

二人の間にまたも気まずい沈黙が訪れる。

 

最初に沈黙を破ったのはガルだった。

 

「シャアクがそういう気持ちを持っていてくれたのは嬉しいよ」

 

その言葉を聞いたシャアクは顔を赤くして下を向いてしまった。

 

「べ、別にあなたが好きとかそういうわけじゃないの。五日前にあなたが意識不明の重体で聖堂に運ばれてきたとき私どうしていいか全く分からなくて……」

 

その後シャアクはガルが意識不明だった間に何があったのかを包み隠さずに話した。

 

 

六日前ガルがアイラを救い、ガンダークによって瀕死の怪我を負わされたあの日。ガルはその場にたまたま駆けつけたディルによって救出された。ディルは直ぐにクインランのコムリンクから彼のマスターであるソルメに連絡を取り、自分の船で一旦応急処置をすると告げた。その後ディルの船で応急処置を受けたガルは死ぬ事は無かったが依然意識は戻らず、フォースで彼の命の危険を感じたソルメはそのままジェダイ聖堂に彼を送ってほしいと頼んだのだった。

 

次の日、ジェダイ聖堂でガルが帰ってくると聞いていたシャアクとオビ=ワンは彼の帰りを楽しみに待っていた。しかしプラットフォームに着いた船は行きに乗っていた船と違い、周りのジェダイマスター達が慌てて何かを準備していたのを見て二人は物凄く不安になった。船から最初に降りてきたクインランは体のあちこちに傷やあざがあり、いつもの元気な彼とは全く違った雰囲気を醸し出していた。医療班が到着し、クインランをタンカーに乗せて連れて行く。次に降りてきたのはもう既にタンカーに乗せられていたガルと見知らぬ男と少女だった。それを見たオビ=ワンはすぐにタンカーに近寄り、ガルの名前を呼びながら医療班に着いて行った。しかし、シャアクはあまりの恐怖にその場を動く事ができずにいた。その後なんとか平静を取り戻した彼女は緊急治療室に向かった。

 

部屋の外ではさっきの男と少女とオビ=ワンが待っていた。オビ=ワンが男からガルの状況を聞いていたがシャアクはその話よりも泣きながら緊急治療室の扉に手を置き続けているトワイレックの少女が気になった。シャアクには彼女から流れるフォースが感じられた。

 

「なんで泣いているの?」

 

シャアクが優しく話しかける。

 

「お兄ちゃん苦しんでる。私と繋がってないとまた暴走しちゃう」

 

そう答える少女にシャアクは困惑した。

 

ガルが暴走したとの発言にも驚いたが、それよりも彼女が言った繋がっているという発言がシャアクの心に引っかかった。彼女はこの任務が始まる当初自分とガルの関係にとって良くない存在が現れることを感じていたがここまでの事が起こるとは予想もしていなかった。この時、ガルとアイラの間にはシャアクが入る事ができないほどの強い繋がりが既に存在していたのだ。

 

その後、無事手術を終えたガルは前に使っていた病室に移されたが意識はまだ戻らなかった。もしもの事を恐れたマスタージェダイ達はシャアク、オビ=ワン、シーリの病室への立ち入りを禁止したのである。しかしアイラの出入りだけは禁止されなかったため、シャアクの不安は更に大きくなっていった。

 

日に日にガルとの繋がりが強くなる彼女を見てシャアクは自分がまるで二人に置いていかれてしまったような錯覚に陥ってしまった。

 

そして今日突然朝早くに目が覚めた彼女は何を思ったか日の出が見たくなりあのバルコニーを訪れたのだ。

 

 

「それで結局私はあなたにキスをしたって事……」

 

「要するにアイラに嫉妬して自分が先に行動を起こそうと思ってキスをしたと」

 

「はい…………」

 

「そっか」

 

ガルはそう言って笑った。

 

「あいつはどうせ俺以外の奴と恋に堕ちるだろうよ」

 

ガルの中でこの事に関しては自信があった。彼の知っている限り彼女と恋に堕ちるのはノートランのジェダイ、キット・フィストーだからだ。

 

しかしその自信も一瞬で打ち砕かれる事になる。

 

病室のドアが突然開き、アイラが入ってくる。彼女はガルのいるベッドに向かってまた飛び込んできた。

 

そして何を思ったか彼女は

 

「おはよガル、大好き」

 

と言ってガルの頬にキスをした。

 

この瞬間部屋の空気は真夜中のホスよりも寒くなった。

 

近くに座っていたシャアクは固まって動かなくなり、ガル自身も今起きた出来事を処理するのに精一杯で目を見開いたまま硬直していた。そんな中状況が理解できないアイラだけがガルにちょっかいを出し続けていた。

 

 

色々ゴタゴタがあった後、ガルは瞑想中のヨーダの部屋を訪れていた。

 

「元気になったようで何よりじゃ。呼び出してしまってすまんの」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「ガルよ、そなたには謝らなければいけないのう。今回の任務は評議会で新しく決まったイニシエイト強化プログラムによるものなのじゃ」

 

「そうだったんですか……」

 

「最近フォースの暗黒面が強くなってきていてな。皆が焦ってしまっていたのじゃ」

 

「それは自分も感じます」

 

「やはりか」

 

「ええ」

 

「とにかく少しの間は安静にしていてほしいのじゃ」

 

ヨーダがそう言った後に部屋にジェダイ評議会のメンバーのメイス・ウィンドゥが入ってきた。

 

「失礼しますマスターヨーダ、アイラ・セキュラの検査結果が出ました」

 

その言葉を聞いたヨーダは立ち上がり、部屋を出ていった。

 

ガルもその後について行こうと部屋を出ようとしたがメイスに止められた。

 

「君には今回の任務の事で聞きたい事がある」

 

「分かりました」

 

「助かる。今回の任務でアイラ・セキュラを助けるためにわざとガンダークの前に飛び出したというのは本当か?」

 

「はい。あの場面で彼女を助けるためにはあの方法しか無かったと思います」

 

ガルは彼の目を見ながら堂々とした態度で答えた。

 

「そうか。ならあながちこのプログラムも失敗というわけではないな。君は私が聞いていたよりも優秀なジェダイのようだ」

 

「ありがとうございます」

 

そう答えながらもガルは褒められた事に驚きはしなかった。ジェダイの中で自己犠牲が評価されるのはとうに知った事だったからだ。

 

「そういえばディーラーはどうなりましたか?」

 

「ああ、あの後ディルからマスターソルメが身柄を引きついだ。どうやらハットの側近と手を組んで商売をしていたらしい。急にワンパ達が暴れ出したのもその側近がやったそうだ」

 

「そうですか。それでは自分はこれで失礼します」

 

ガルはお辞儀をしてから部屋を出た。

 

「あ〜なんかめっちゃ疲れたわ今日」

 

ガルは自分の部屋に帰る途中に久しぶりにオビ=ワンとコルサントの街に出て飯を食べようと思うのだった。




今回の回で多くの読者様が離れていくような気がする〜 
えーと散々悩んだ挙句、恋愛の描写も書くことを決めました。理由としては自分はコメディを描くのが苦手というところとコメディか恋愛の描写がないとシリアスすぎてなんか全体的に話が暗くなってしまうような気がしたからです。
まあムンディさんは一夫多妻だしね?許してくれるよね?

あっあとこの場を借りてキット・フィストー様にはお詫び申し上げます。アイラを勝手にガルのヒロインにしてごめんなさい……

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。

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