他の二人と別れたあとシャアクは洞窟を走りながら進んでいた。
「絶対に私が一番に外に出てみせる」
そう呟きながら洞窟の奥へ進んでいくと先の方から光が見え始める。
彼女がその光を目指してフォースダッシュで近づいていくと外に繋がっていることがわかった。恐る恐る外の様子を確認するとそこには広大な草原、広い海、少しのマグマが存在していた。
これが何を意味しているのか分からなかった彼女は草原に足を踏み入れ、遠くに見える土煙を目指すことにした。
シャアクは一切歩くスピードを落とさずにどんどんと草原を進んでいく。何も恐れる事は無いと言わんばかりに。
数分走り続けると土煙が上がっている場所を目で確認する事ができるようになっていた。そこにあったのは墜落したあり得ないほど大きい艦だった。
「あのサイズは今まで見た事がない……」
シャアクは多少の不安に駆られながらもその艦の残骸に近づいて行く。触れる事のできる距離まで来てやっと彼女は気がついた。この艦の全長はこれよりももっと大きいということに。
何故なら今彼女の目の前にあるのはその宇宙船の半分より後ろの部分だけなのだ。
「これは軍事用の船?あまりにも巨大すぎるわ」
彼女は艦の残骸をかき分けながらボロボロの艦内へと足を踏み入れる。艦内の設備を確認しようとしたが、特にめぼしい物は無く、ただの鉄の塊だった。
捜索を諦めて外に出ようとすると近くで誰かがうめき声を上げた。恐る恐る声の方向に向かって歩いていくとそこにはトワイレックの女性が怪我をして倒れていた。
「大丈夫ですか??」
彼女が慌てて駆け寄るとその女性はシャアクの顔を見て安堵の表情を浮かべた。
「無事だったのねシャアク。助かったならよかった」
そんな事を言う女性の顔を見ながらシャアクは自分の前にいる人物が大人になったアイラなのだと気がついた。大人になった彼女の顔立ちは物凄く美人で、体型は文句のつけようがないほど完璧だった。
そんな彼女の姿を見てシャアクは自分の負けを確信した。ここまでの逸材を自分は敵視していたのかと思うとかえって恥ずかしくなるのだった。
「ええ、私は無事よ。大丈夫、ガルが助けに来てくれる」
そんな事を彼女はいつもの口癖で言ってしまう。その言葉を聞いたアイラはキョトンとしていた。
「どうしたの?」
シャアクが焦って聞くとアイラは答える。
「ねえ、ガルって誰?」
「えっ?」
シャアクは驚いてアイラの顔を見る。
「そのガルって人は誰なの?」
アイラは至って真面目な顔で彼女の方を見ていた。
ガルを知らないと言った彼女の顔に嘘はなかった。しかし、シャアクは全く意味が分からなかった。ガルの事を知らないアイラにどういう対応をするべきかも考えられなかった。
「ううん、なんでもない。私があなたを守るわ」
シャアクはそう言いながらアイラの応急処置をし始める。
すると突然アイラの顔が恐怖に染まる。
「音がする……」
「なんの?」
「やつの……サイボーグの音が……」
シャアクが耳を澄ませるとこちらに向かってくる機械の足音のような物が聞こえてきた。
「ここにいて…」
シャアクは怯えるアイラを置いて音がする方に向かって静かに歩いてゆく。足音は彼女が艦の外に出る直前に止まった。そして次に訪れたのは静寂だった。
彼女は腰にかかっているライトセーバーに手をかけ、起動した。
ライトセーバーの起動音が広い艦内に響き渡る。彼女の構えるライトセーバーの光刃の色は深い青色だった。
そしてまた静寂が訪れる。シャアクは緊張していた。
彼女の額を一滴の汗が流れる。
次の瞬間アイラが叫んだ。
「上よ!!」
シャアクはその声を聞き、上を見上げるよりも前に自慢のフォースダッシュで後ろに後退した。
そして彼女が去ったその場所にはなんとも表現のしづらい全身が機械で覆われた虫のような人物が地面に機械の足が刺さったまま立っていた。恐らくアイラの警告がなければシャアクはタダでは済まなかっただろう。その人物は何も言わずに腰にある二本のライトセーバーを起動させてシャアクを睨んだ。
「あなた何者?」
シャアクは警戒をしながら問いかける。
その人物はシャアクの問いに答えるはずもなく一直線に彼女の元へと走り出した。
また、シャアクもその人物に向かって走り出す。
二人はお互いが近づいた瞬間に回避行動をとった。そしてフェイントの攻撃を繰り出す。シャアクの光刃は相手の二本の光刃を弾き返す。そして空いている方の手でフォースを使い、相手の腰にかかっている残り二本のライトセーバーの内の一本を取り、起動しながら間合いを取る。
自分のライトセーバーを一本取られた相手は怒りの目つきになった。そして相手の攻撃は一気にスピードが増す。シャアクでも防ぐのが精一杯なほどのスピードでライトセーバーをグルグル回しながら徐々に彼女を追い詰めていく。
そんな中、彼女は気がついた。相手の腕が機械である事を。
「くっ……」
追い詰められていくシャアクは苦し紛れの奇策に出た。
一度間合いを取り、一本のライトセーバーを相手に目掛けて投げる。そしてそのライトセーバーと同じスピードで相手に近づき、相手がシャアク本体に気を取られている隙に飛んできたライトセーバーに持ち替え、回避行動をとりながら相手の腕を目掛けて攻撃をする。
そして彼女の作戦は成功した。しかし、もう一度間合いを取ろうと飛び退いた彼女の脇腹には鋭い激痛が走った。その箇所を見ると丸い穴が空いていて皮膚が焼き切れていた。
「マズい……」
痛みを堪えながら相手を見ると何故が腕の数が二本から三本に増えていた。そして三本全てにライトセーバーを握っていた。
その光景を見ながら彼女は全身の力が抜けていくのに気がついた。
『あっかなりマズい。ガルがここにいればこんな事には……』
ゆっくりと倒れていく彼女に対して機械の男は容赦なく光刃を振り下ろそうとしていた。
『ガル…………助けて』
そう心の中で祈りながら彼女の意識は遠のいていった。
完全に瞼が閉じる直前に機械の男が何者かによって吹き飛ばされているような気がしたがそれは彼女には分からなかった。
次に目が覚めると彼女は土煙が上がる荒野に倒れていた。
彼女は痛む体を起こしながら辺りの様子を伺う。そして自分の周りにあるものを見て絶句した。
彼女の周りには無数の死体があったのだ。
あまりの光景にシャアクは吐き気がしたが我慢した。目をよく凝らすと遠くで座っている人影が目に入った。
彼女は周りの死体を踏まないようにしながらその人影に向かって歩いていく。
徐々にその人物の背中が見えて来る。そしてその後ろ姿にはどこか見覚えがあった。
「ガル!」
彼女は名前を叫びながら彼に近づいた。
大人の顔になったガルはゆっくりと後ろを振り向き、彼女の顔を見て優しい笑顔を見せた。
「シャアクか……」
彼は少し口を開いたが、彼の声は元気が無く、擦れていた。
「大丈夫?」
彼女が心配そうに問いかけるとガルは静かに頷いた。しかし、シャアクはすぐに気が付いた。ガルが全然大丈夫ではない事に。
よく見ると彼の顔にはいくつもの切り傷があり、腕や手は血まみれになっていた。
そして一番の衝撃は彼の片目が無くなっていた事だった。
「シャアク……すまなかった。守れなくて」
そう言い始めるガルの言葉は後悔と悲しみに満ち溢れていた。
「こんな事を言うのもなんだが……君の活躍をこの目で見られなかった事を後悔してる」
「どういう意味?」
シャアクは意味が分からなかった。しかし、彼女の問いに彼は答えなかった。
「これを使うといい」
ガルは自分の足元にあったボロボロのライトセーバーのヒルトをフォースでこじ開け、中から青色のライトセーバークリスタルを取り出した。
「あ、ありがとう」
「じゃあな」
「え?」
「君たちに会えて本当によかった」
そう言った彼の姿はもう既に薄くなりかけていた。
「今思えば一度も君達に愛してると伝えられなかったな………………」
彼の全身は砂のように粉々になって上空に向かって飛んでいってしまった。
そして彼女の周りにあった物全てが砂のように消えてゆく。気がつくとシャアクは少量の涙を流しながらホールに立っていた。
次回から二話ぐらいは色んな人に怒られそうな話になると思います多分ww
まあ楽しみにしていてください。
最近口癖が疲れたと眠いになってきて嫌気がさしてます。やっぱり普段から健康的な生活を心がけないといけませんね。
それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を。