ガルは怖かった。
自分の知らない過去を知るのではないかと。何か忘れたいと思っていた事を思い出すのではないかと……
だから彼は進めなかった目の前の洞窟に。
「はあ………」
ガルは深いため息を吐く。そしてゆっくりと地面に腰を下ろそうとした。
しかし、彼が地面に手をつくと洞窟全体に嫌な音が響いた。
ピシッ
「えっ……なんか嫌な予感がっ!」
次の瞬間、洞窟の地面が崩壊しガルはなす術なく下へと落ちていくのだった。
目が覚めると彼は上質なフカフカのベッドの上にいた。部屋の窓からは爽やかな朝日が差し込んでいた。
彼は瞬時に理解した。ここは地球だと。
しかし、この部屋と家具は彼にとって初めて見る物だった。
ガルはベッドから体を起こして部屋を出ようとする。すると突然ベッドの脇に置いてあったラジオが流れ出す。
「やあみんな!もう朝だよ!まだ寝てるのかい?それじゃあ今日も番組を始めようか!1962ね……」
ラジオを直ぐに消すガル。
「あっなんか今重要な事を言いそうな気がしたけどまあいいや」
そう言いながら彼は寝ていた部屋から廊下に出た。
廊下はとてもオシャレだった。色の濃い木材が良い味を出していた。そして西洋風の作りでお城を連想させるような内装になっていた。恐らくこの建物は物凄い豪邸だろう。
彼が壁に見惚れたり、家具に見惚れたりしながらゆっくりと廊下を進んでいく。
『アレックス?もう起きたのかい?』
後ろから突然男性が声をかけて来る。
ガルが振り返るとそこには一人の若くてイケメンな男性が立っていた。
『早起きだね。まだみんなは眠ってるよ。そうだ、散歩でもするかい?』
ガルは何も答えなかったが彼は一人で先に歩き始めてしまった。
ガルは急ぎ足で彼の後を追っていく。あの男性にガルは見覚えがある気がした。彼の名前や関係は思い出せなかったが。
『今日の朝ごはんは何がいいかい?』
彼はキッチンで冷蔵庫の物を確認しながら言ってくる。
「なんでもいいです」
『そっか。了解』
そう言いながら彼はまだ冷蔵庫を漁っていた。
そしてガルは重大な事に気がついた。今自分の前にいる男は今まで一切言葉を発していなかったという事に。
彼の声はガルの頭の中に響いて聞こえていただけだった。
「あの、あなたの名前は?」
ガルは居ても立っても居られなくなり彼の名前を尋ねた。
「ん?アレックス大丈夫か?」
初めて彼は口から言葉を発した。
彼はガルの事を心配そうに見ながら顔を見つめ、自分のこめかみに右手の人差し指と中指をを当てた。
「不思議だ。今日は君の心が読めない」
「それであなたの名前は?」
「残念だがそれは答えられない。これは君の欠けてしまった記憶の一部だ」
彼は申し訳そうな顔をしながら続ける。
「君が私達の事を知らなくても私達は君の事を知っている」
「そうですか……」
「そんな悲しい顔をするな。いずれ思い出せるさ」
「それなら良いんですけどね」
「こんな風に君とゆっくり話すのは懐かしいな……」
「………………」
「もう覚えてないだろうけど、ここは私達の全ての始まりの場所だよ」
「始まり……」
「一緒に訓練をし、戦い、酒を飲んだ。バラバラになっても結局全員がここに戻ってきた」
彼はそう言いながら大きなリビングの壁にかかっている一つの写真を複雑な表情で見つめた。
「彼女以外は…………」
ガルもその写真に目を移す。そこには一人の女性の写真が飾られていた。その女性はとても綺麗でガルは写真から目が離せなくなった。
「おっと、残念だけど私の時間はもう終わりみたいだ」
「えっ?これって時間制なんですか?」
「ああ、じゃあまたいつかな。これだけは忘れるなよ。私達全員は君がいたから助かったんだ。自分を責めるなよ」
彼はそう言いながら優しく微笑んだ。すると徐々にガルの目の前が光に包まれていく。
『アレックス、これだけは忘れるな。真の集中力は怒りと平静心の間だ』
全てが光に包まれる直前にそう彼の声がガルの頭に響いた。
次にアレックスが立っていた場所は何とも言えない古代風の修道院の様な広い部屋だった。
「ようこそ。ミスター・アレックス、お茶をどうぞ」
そう言いながらスキンヘッドでジェダイのチュニックに似た黄色の服を着た女性が部屋の陰から現れる。
ガルは湯呑みを受け取り、恐る恐る舐めてみる。
「美味しい…」
「こうやって話すのも久しぶりですね。お元気にしてましたか?」
「え……ええ、まあなんとか」
「やはり私達の事は覚えていませんか……」
彼女はガルの心を読んだかの様な顔をする。
「どうやったら記憶を戻す事ができますか?」
「そうですね。では魂で記憶を治す方法をお教えしましょう」
「魂?」
「アストラルディメンションでならあなたの記憶を修復する事はできるはずです。かなりの時間がかかってしまうと思いますが……」
「アストラルディメンション?何を言ってるんですか?」
「おや?それも忘れてしまいましたか?なら一度体感してもらいましょう」
彼女はそう言うとガルの腕を掴んで彼の体を勢いよく引き寄せた。そして引き寄せられるガルの体の胸の辺りに向かって素早くて力強い綺麗な張り手をした。すると彼の体は力が抜けたかの様にグッタリしてしまった。しかし、その様子をガルは自分の体の外で少し上の高さから見る事ができていたのだ。
「これどうなってるんだ…?」
ガルは自分の半透明になった体を見ながら混乱する。
「今あなたが存在しているそこがアストラルディメンションです」
「これが……ここでなら記憶を修復できると?」
「ええ、そこでなら少しずつなら思い出すことができると思います」
「そうですか……」
そう言いながらガルは自分の身体へと戻った。
「あなたはほぼ全ての事を忘れてしまっているのですね」
「ええ、残念な事に」
「やはり無理に別の世界線に行くのは体に悪影響だった様ですね……」
「別の世界線?」
「それも覚えていないのですか……なら、これをするしかありませんね」
彼女はそう言いながらガルのおでこに親指を当てながら言う。
「目覚めなさい。さあ!」
するとガルの体はいきなり後ろに吹き飛ばされた。
そしてガルは目を奪われるほど綺麗な色で作られた世界に飛ばされる。
『マルチバースには無限の宇宙が存在します』
彼女がそう言うとガルはまたどこか別の場所へ飛ばされて行く。
次に彼の目の前に現れたのは鏡の様なクリスタル状の物に囲まれた世界だった。
『終わりのない世界』
『善意に溢れ命を育むものや、悪意と欲望に満ちた物もある』
「こんな事……ありえるのか?」
『ええ、あなたなら理解し、適応できます』
『このマルチバースをまたにかけてあなたが存在する意義とはなんでしょうミスター・アレックス』
「意義…………」
『もっと話していたいところですが残念です。私の時間はこれで終わりの様ですね。忘れないでください私が見えなかった未来をあなたが見せてくれたのです。またお会いしましょうアレックス』
そして彼の体は勢いよくどこかへ吹き飛ばされた。
「うわあああああああああ!」
今、ガルは終わりの見えない穴をあり得ないほどのスピードで落ち続けている。途中、フォースを使ってスピードを抑えようとしたが失敗に終わり、他にも色々試したがことごとく失敗していた。
「あっワシの番か。忘れておったわい」
そんな声が穴に響き渡る。
するとさっきまで先が見えなかった穴の先が見えて来た。そう、物凄いスピードで近づいてくる地面だ。
「嘘嘘嘘嘘これは無理!」
ガルは急いでフォースを地面に向かって放ったがもう既に手遅れだった。そして大きな音と土埃を立てて彼は地面に落下した。
「いってえ……これは絶対に骨が何本か逝ったわ」
ガルは地面にグッタリと寝たままでいた。
「すまぬすまぬ完全に忘れておったのじゃ。呼び出してすまないのお」
ガルにそう言いながら近づいてきたのはファーザーだった。
「あなたが何故ここに??」
ガルは地面でグッタリしたまま喋る。
「まあそれは後で話すとしてまずは立ち上がってくれぬか?」
「無理です。あなたが俺の存在を忘れていたせいで骨が折れました。治してくれないと立てません」
さらっと嫌味を言うガル。
「そんな事を言わんで立ってくれぬか?もし怪我をしたなら自分で治してみると良いぞ。体の中でフォースを循環させて痛む箇所に集中させるのだ」
ガルはファーザーに言われた通りにしてみる。
目を瞑り、自分の体全体にフォースを循環させる。そして痛みがある部分に重点的にフォースを流し、徐々に治していく。
「うむ。初めてにしては上出来じゃな」
「そりゃあどうも」
ガルはチュニックについた土を払いながら立ち上がる。
「さあついて来い。そなたとは話したいことがたくさんあるのじゃ。この世界の未来を知る者、ガル・アーラよ」
ファーザーとガルは遠くに見える大きなタワーに向かってゆっくりと歩き始めた。
さてさて、ガル(アレックス)の素性が少しづつ分かってきましたね〜
彼は一体何者で何のためにこの世界に存在しているのか……残念ですが彼の詳しい素性、出身や謎の人物達の名前はこのStarWars-What Ifシリーズでは解明されません!断言できます。これは大きな伏線なのです。(彼の素性に関する別シリーズをもう既に用意しているのでお楽しみに)
それではまた次回の投稿でお会いしましょう。フォースと共にあらん事を!