蝶結び   作:春川レイ

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燃える闘志

 

 

──チリン

 

優しい風が吹いて、祝福のような音が聞こえた。

煉獄結火は瞳を開く。

日輪刀を手に取ったまま、顔を上げると、そこにはかつてカナエから贈られた風鈴が揺れていた。紅の花火が描かれた風鈴は結火の視線に答えるように再び小さな音をたてる。

 

──チリン

 

揺れる風鈴を見つめ続けていた結火は、小さく呟いた。

「……カナエ」

蝶屋敷を出てから、長い時が流れた。もう随分と胡蝶カナエの顔を見ていない。

あの美しい顔を見たい。優しい声を聞きたい。少しでいいから、触れたい。

苦しくて切なくて胸が引き裂かれそうな感覚になる。

こんな気持ちになるなんて。

覚悟していたはずなのに。

カナエに会いたくて、会いたくて、たまらなかった。

「……馬鹿か、私は」

自分を詰って、大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーん」

蝶屋敷の調合室にて、胡蝶しのぶは机の前に座っていた。液体の入った試験管を手に持ち、難しい顔でそれを見つめ続ける。

「……これを扱うとなれば」

しのぶは小さな声を出した。

「有利になるかしら……こちらが上手く使えば……いえ、でも……」

深く考えながらブツブツと呟いていたその時だった。

コンコンと扉が軽く叩かれる音が響く。しのぶは慌てて試験管をテーブルに置くと、声をあげた。

「はい、どうぞ」

しのぶの声に答えるように扉が開かれる。

同時に誰かがゆっくりと部屋に足を踏み入れた。入ってきた人物を見て、しのぶは目を見開く。

それは一人の大柄な男性だった。その髪は、炎のように輝いている。

「あなたは──」

男性はしのぶと目が合うと、深く頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蝶屋敷の庭にて。

胡蝶カナエは、一人静かに佇んでいた。

風が吹いて、ザワザワと緑が揺れる。日の光が少しずつ弱くなってきた。カナエはゆっくりと深呼吸を繰り返す。息抜きと気分転換のために庭へと出てきたが、そろそろ戻った方がいいかもしれない。今夜も、しのぶや珠世とともに薬の研究をする予定だ。時間は限られている。もう少しで成果が出そうなのだから、集中しなければならない。

そんなことを考えていたカナエは、ふと、何かに気づいたような顔をして、顔を上げた。憂いを秘めたような寂しげな表情を浮かべて、どこか遠くを見つめる。

「カナエ様ー!」

大きな声で名前を呼ばれて、ハッとしたようにカナエは顔をそちらへと向けた。

きよ、なほ、すみがパタパタと駆け寄ってくる。

「あらあら、どうしたの?」

カナエが言葉を返すと、三人娘は楽しそうに口を開いた。

「隠の後藤さんから、ようかんを貰ったんです!」

「皆さんでどうぞって!」

「一緒に食べましょう!」

その言葉に、カナエは微笑みながら三人娘の頭を撫でた。

「よかったわねぇ。それじゃあ、お食事の後に皆でいただきましょう」

「はい!」

三人娘が揃ったように返事をして、嬉しそうに笑った。カナエはそんな三人娘を見つめ、ふと首をかしげた。

「……後藤さんはなぜこちらにいらっしゃったのかしら?何かお仕事で?」

その問いかけに、三人娘は笑顔から一転、気まずそうな顔をする。お互いに顔を見合わせ、小さな声を出した。

「……結火様が、戻ってきていないか確認しに来たみたい、です」

「結火様、どこにもいないから、心配してるみたいで……」

「帰ってきてないですって言ったら、後藤さん、すごく残念そうな顔をしていました」

三人娘が悲しそうな顔で次々にそう言う。カナエも少し顔を伏せ、

「……そう」

と、短く答えた。

きっと、後藤は結火を心配して、わざわざようかんを購入し、ここを尋ねてきたのだろう。後藤もまた、結火の身を案じているのだ。その気持ちは痛いほど分かる。

カナエはすぐに顔を上げると、無理矢理笑顔を作って口を開いた。

「結火さんはようかんが大好きなの。いつ戻ってきてもいいように、残しておきましょうか」

三人娘がパッと笑顔を作り、揃って、

「はい!」

と頷いた。

「それじゃあ、そろそろ屋敷の中へ戻りましょうか。食事の準備をしないと」

「私達もお手伝いします!」

カナエは会話しながら屋敷の方へと足を向ける。

しかし、その途中で突然足を止め、後ろを振り向いた。

「……」

何かを考えるように庭の景色を見つめる。

「カナエ様?どうされました?」

三人娘が不思議そうな顔で呼びかけると、ハッとしたように顔を背けて再び笑った。

「……いいえ。なんでもないわ。さあ、戻りましょう」

そう言うと、ゆっくりと屋敷の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煉獄結火は、そんなカナエの後ろ姿を静かに見送った。

現在、結火は蝶屋敷の庭にて、誰にも見られないようにひっそりと大きな樹木の枝に座っている。

ここにこっそりと戻ってきたのは、数分前の事だった。鍛練を中断してまで戻るべきではない、と分かっていたが、どうしても一目でいいからカナエの顔を見たかった。

「……」

想い人の元気な姿を見るだけで、胸がいっぱいになる。暗く濁っていた心が一気に回復するのを感じた。

 

──会って、話がしたい

──少しでいいから彼女に触れたい

 

結火は大きく息を吐くと、カナエが入っていった蝶屋敷を静かに見つめた。

どんなに渇望していてもカナエに会おう、とは思わなかった。会ってしまうと、きっとすがり付きたくなってしまうだろうから。彼女から離れることが出来なくなってしまうから。

だからこそ、こっそりと遠くから姿を見るだけに留めておいた。それだけで、満足すると思ったのに。

「……」

顔を見ると、どんどん欲望が出てきて止まらなくなる。そんな自分が情けなくて、不甲斐なくて頭を抱えた。

それに、小さく心に引っ掛かる事が一つある。

気のせいかもしれないが、先程のカナエの様子が少し不自然だった。もしかすると、結火がここにいたことに気づいていたのかもしれない。

気づいていながら、結火の気持ちを慮って、何も知らないふりをしてくれたのだろうか──

「……よもやよもや」

結火が呟いたその時だった。

「……あ」

小さな声が聞こえた。

「ん?」

結火は視線を下にずらす。

樹木の下に小さな人影が見える。それは、竈門禰豆子だった。

「……」

「……」

お互いに無言になり見つめ合う。禰豆子はキョトンと首をかしげた。

結火は少し躊躇った後、人差し指を口元に当てると、

「シーっ」

と声をあげた。

禰豆子は何が面白いのか、顔を輝かせる。そして幼子のように無邪気に笑いながら、結火と同じように人差し指を口元に添えて、

「シーっ!」

と声を出してクスクスと笑った。

可愛らしいその姿に、結火の表情も少し柔らかくなる。そのままヒラリと禰豆子の側に舞い降りた。

禰豆子と正面から向き合う。禰豆子がニコニコと笑ったまま結火を見返す。鬼だというのに、相変わらず純粋で穏やかな瞳をしている。

──きっと、優しい子なのだろう。この子の兄と同じように。

結火はそう思いながら、囁くように声を出した。

「……ここで私を見たことは内密に」

「う?」

禰豆子が意味が分からないと言うように首をかしげる。結火は困ったようにしながら、懐に手を入れた。

「これを……」

懐から取り出したのは木の実やら綺麗な石だった。どれも山や森で鍛練をしている時に拾ったものだ。小さい頃、幼馴染みの耀哉に贈るために拾っていた事が癖になっており、今でも目に入るとつい拾ってしまう。

結火がそれらを差し出すと、禰豆子は顔を輝かせながら受け取ってくれた。

「あ、あり、がと」

たどたどしくお礼を言う禰豆子に結火は無言で頷く。そしてそのまま風のように屋敷から立ち去った。

 

 

 

 

 

数分後。

「カナエ様、何か仕事は残っていますか?」

「ううん。大丈夫よ。そろそろ私はしのぶと一緒に研究に戻るから、後片付けだけお願いね」

カナエとアオイは会話をしながら屋敷の廊下を歩いていた。

「あれ?禰豆子さん?」

ふと、屋敷の一室で、畳の上に座り込む禰豆子の姿が視界に入る。

「何をやっているんですか?」

アオイが声をかけると、禰豆子は顔を上げ、ニッコリと笑った。

「も、もらった」

そう言いながら、畳を指差す。

「ん?」

三人が覗き込むと、畳の上に木の実や石が散らばっていた。嬉しそうな禰豆子の様子に、カナエは微笑んだ。

「……誰かからもらったみたいね。善逸くんか伊之助くんかしら?」

「え?柱稽古に行ってるはずですが……こちらに帰ってきたんですかね?」

アオイが不思議そうな顔をする。その時、カナエが何かに気づいたような顔をした。その場に腰を下ろし、禰豆子と視線を合わせるように問いかける。

「禰豆子ちゃん、これ、誰からもらったの?」

その問いかけに禰豆子はキョトンとした後、人差し指を口元に当てた。

「シーっ!、なの」

その答えにアオイはポカンとする。

カナエは困ったような顔をしたが、小さく頷いた。

「そう……ありがとう、禰豆子ちゃん」

そのまま蝶屋敷の庭へと視線を移す。

「カナエ様……?」

アオイが声をかけたが、カナエは庭を見つめたまま何も答えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──コホッ」

刀を振り上げながら、不意に咳き込んでしまい、煉獄結火は腕を止めて顔をしかめた。

少し胸が痛む気がする。投与する毒を増やすべきだろうか。

そう思いながら、日輪刀を手に持ち、素振りを再開しようとしたその時だった。

「カァーっ」

聞き覚えのある鳴き声がして、顔を上げると、1羽の鎹烏の舞うように降りてきた。

「芯……久しぶりだな」

結火が優しく声をかけて手を伸ばす。芯はすぐさま腕に着地し、嬉しそうにすり寄ってきた。

「息災だったか?腹は減っていないか?」

結火がそう話しかけると、芯は再び「カァーっ!」と鳴き、脚を差し出してきた。

「うん?」

脚には白い紙のような物が括りつけてある。どうやら手紙のようだ。

「……誰からだ?」 

結火は首をかしげながらその手紙を芯の脚から手に取る。そして手紙の内容を目を通し、眉をひそめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中、胡蝶しのぶは夜道を歩いていた。

夜空に美しい月が浮かんでいる。今夜、しのぶはある目的のために、薬の研究をカナエと珠世に託し、蝶屋敷から出てきた。気は進まないが仕方ない。これは重要な事なのだから。そう心の中で自分に言い聞かせ、歩みを進める。目的地まではもう少しだ。

ふと夜空を見上げる。満点の星空が広がっていた。鬼の出没が止まってからは随分と夜が過ごしやすくなっている。静かで穏やかな夜の空気が、しのぶは好きだった。

やがて目的地へと到着した。しのぶは小さな家の前に立つと、門戸を軽く叩いた。

「……どうぞ」

掠れたような声が帰ってきて、しのぶは一瞬だけ顔をしかめる。だがすぐに真顔になるとそのまま門戸を開けた。

「失礼します」

家の中に足を踏み入れる。

中に入ると、部屋の真ん中で煉獄結火が正座しているのが見えた。

ここは煉獄結火の住まいだ。しのぶは知らなかったが、元々は隠をしていた時期に住んでいた家らしく、蝶屋敷から出た結火はここを拠点として鍛練をしているそうだ。

今回、しのぶはある目的のために会いたいと記した手紙を結火へと送った。結火からはすぐに返事が来て、しのぶはこの家に呼び出されたのだった。

結火はしのぶに向かって軽く頭を下げる。

「──お久しぶりです」

相変わらずの掠れた声で挨拶をする。そんな結火と目が合ったしのぶは、しばし呆然とその場に立ち尽くした。

その様子に結火は首をかしげ問いかける。

「……?蟲柱様、どうされました?」

その声に我に返ったようにしのぶは目を瞬かせて口を開いた。

「あ、いえ……」

しのぶは慌てて門戸を閉めると、そのまま結火に近づいた。まじまじと彼女を見つめながら向かい側に腰を下ろす。

「結火さん……変わりましたね」

しのぶの言葉に、結火は微かに眉をひそめた後、「ああ」と自分の黒髪に触れた。

「髪が伸びたから……」

ほとんど切っていない黒髪は、いつの間にか背中まで伸びていた。もう少しで腰にも届きそうだ。今は、カナエから贈られた赤い髪紐で一つに結ばれている。

しのぶが困惑しながらゆるゆると首を横に振った。

「いえ、あの……そうではなくて……」

どう言えばいいか分からず口ごもる。そんなしのぶの様子に結火は怪訝な顔をした。

久しぶりに会った煉獄結火は、以前とは違っていた。明らかに、しのぶの知っている結火ではない。

しのぶの知っている煉獄結火は、物静かで線が細く朧気な姿をしていた。消えゆく蝋燭の火のように儚い雰囲気の女性だった。

だが、今の彼女は違う。

初めに目が合った時に感じたのは、凄まじい威圧感だった。思わず身体が固まってしまうほどの、大きな力を感じる。身体から発している空気が明らかに違う。こちらを追い詰めるような迫力が、内面から滲み出ている。

何よりも、その瞳は業火のように燃えていた。

 

──ああ、これが

──かつての炎柱だった彼女の姿なのか

 

しのぶは何と言っていいか分からず、誤魔化すように笑った。

「……鍛練、頑張っているようですね」

結火は顔を伏せ、頷いた。

「はい。お陰さまで」

しのぶは結火の正面に腰を下ろすと、全身を観察しながら口を開いた。

「体調はどうですか?毒はどのくらいの間隔で投与していますか?」

「まだ少し頭痛と吐き気はあります。眩暈はほとんどなくなりました。現在のところ、毒は一週間に一回は投与していて──」

医師として身体状況の確認を行うしのぶに、結火は淡々と答え続けた。

しのぶは結火の答えに何度か頷き、やがて荷物の中から注射器を取り出した。

「手紙でも書きましたが、あなたの血液を採取させてください」

その言葉に結火は頷き、腕を差し出す。

しのぶは無言で大きな針を準備すると、躊躇いなくその白い腕に刺した。そのまま結火の腕からかなりの量の血液を採取する。

「……なぜ私の血が必要なのです?」

「あなたの血液が、毒の影響で変化してるみたいなんです」

結火の問いかけに、しのぶは苦笑しながら答えた。

「変化、というと……」

「あ、大丈夫ですよ。あなたの身体に不調がなければ、気にすることありません。些細な変化ですから」

「……」

眉をひそめる結火に、しのぶは慌てたように言葉を重ねた。

「そういえば、あなたに渡したい物があるんです」

「私に?それは──」

結火の言葉を遮るようにしのぶは素早く声をあげた。

「姉さんからではありません」

「……」

結火の口が閉じる。その表情は変わらなかったが、明らかに動揺したように瞳が揺れたのをしのぶは確信した。

「残念でしたねぇ?姉さんは他の事で忙しいんですよ」

「別に、残念だとは……」

結火がそう言いながらしのぶから目をそらした。

しのぶは小さく鼻を鳴らすと、荷物の中から大きな包みを取り出し、結火に差し出した。

「どうぞ」

「……?」

結火が不思議そうな顔でそれを受け取る。

「これは……?」

「開けてみてください」

しのぶに言われるままに、結火はその包みを開く。そして、大きく目を見開いた。

「これ──」

思わず絶句したように結火は言葉を止める。

包みの中から出てきたのは、羽織だった。白地に、美しく燃える炎が描かれている。

「む、蟲柱様……これは……」

「あなたに渡すように頼まれました。あなたへの贈り物です。言っておきますが、弟さんからではありませんよ?」

千寿郎ではない、ということは。

これを贈ってくれたのは──

「……よもや」

たった一人しかいない。

もう随分と目にしていない、大きな背中を思い出す。結火が幼い頃から尊敬していて、憧憬したあの姿を。

結火は震える手で、その羽織を広げる。しばらく無言で見つめると、やがて決心したように立ち上がると、それを肩にかけた。

「……あまり似合ってませんね」

しのぶが複雑そうな顔で呟く。それに構わず、結火は微かに微笑み、目を閉じた。

本来ならば、結火はこれを羽織ることは許されない。これは、炎柱のみが装着することを許された羽織なのだから。

だが──

「きっと、私が最後の持ち主となるだろう」

心から、それを確信していた。

「……今の私には、重すぎる。柱としての責務を全うできなかった私が、これを羽織る資格がないのは自覚している。承知しているんだ。だが──」

日輪刀を手に取る。腹の底から、電流のような戦意が湧いて、全身を駆け抜けた。日輪刀の鞘尻をトンと床に当て、同時に目を開く。仁王立ちをするように足を軽く開き、日輪刀の柄に両手を添えた。

その燃えるような闘志あふれる姿を見たしのぶが思わず息を呑む。

結火はそれに構わず言葉を紡いだ。

「全て、背負っていく。煉獄の剣士として。今までの想いを、信念を、誇りを。──そして炎を」

幾重の願いを、想いを、魂に刻み込んでこの世に生を受けた。

夜明けに向かって進もう。

絶対に諦めない。未来へ向かって、想いを繋ごう。

──きっと、それが、自分の最後の役割であり、責務だ。

結火はしのぶと真っ直ぐに目を合わせ、ゆっくりと微笑んだ。

「共に、見届けよう……共に、進もう──」

 

 

 

 

「共に、炎を燃やそう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──なあ、杏寿郎

 

私にできることはもはやほとんどない

 

弱い私ができることは限られている

 

それでも私は

 

最後まで自分の意思を貫く

 

最後まで戦うと決めたんだ

 

お前と同じように

 

だから、頼む

 

私と共に燃やしておくれ

 

心を、燃やしておくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴉の声が夜の空気を裂くように響いた。

「緊急招集―――ッ!緊急招集―――ッ!」

さあ、始まる。

「産屋敷邸襲撃ッ!産屋敷邸襲撃ィィ!!」

最後の戦いが。

鬼殺隊の剣士達が一斉に産屋敷に走り出す。ほとんど同時に大きな爆発音が聞こえた。燃え盛る屋敷を見て、息を呑む。

結火は一瞬だけ目を閉じて、冥福を祈った。

友人として、耀哉のために祈りを捧げた。

すぐに目を開くと、刀を手に一歩前に踏み出す。

 

──ありがとう、耀哉様

 

無駄にはしない。

あなたの命を、絶対に無駄にはさせない。

 

そして、結火は終焉へと向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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