グランダムの愚王   作:ヒアデス

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第12話 合流

「門だ!」

「助かった!」

「どけ! 俺が先だ!」

 

 東端の都市では、街を囲む外壁にいくつか設けられた門の近くに多くの住民たちが殺到していた。

 ガレアに占領されたコントゥアから送られたマリアージュの襲撃から三日。

 侵略の魔の手が自分たちに及ぶことを危惧した近隣の都市から増援の部隊が送られてくることが度々あるものの、未だマリアージュを追い払うことが出来ないどころか、すでに都市の八割がマリアージュの手に落ちていた。

 故に住民は皆、一刻も早くこの街から脱出したいのだ。

 その門の向こうでは、

 

「やっと出られた」

「――あ、あれは!」

 

 外壁の門を抜け、街から脱出してきた市民たちの目の前に大勢の軍隊の姿が見えた。

 必死の思いで何度ももう限界だと思いながらも、疲れ切った足に鞭打って、ようやく街から出ることが出来た自分たちの目の前に現れる数万もの軍隊。

 それを目にした人々の多くは、

 

「そんな……」

 

「必死に逃げてきたのにこんなところにまで」

 

「ふざけんなこんちくしょお! 俺たちが何をしたっていうんだ!?」

 

 これで助かったと思っただけに、それを裏切られたと思った住民たちの絶望感は計り知れない。

 あまりの衝撃に膝から崩れ落ち、地面を殴りつける者まで現れた。

 

「い、いや待て。この軍旗はまさか――」

 

 だが、商人や学者など、貴族や王宮と縁を持つ者の中には軍の正体に気付く者もいた。

 街の外にいる軍は、東から入り込んだ怪物たちと違い皆人間で、多くの兵が馬に乗っている。

 

 

 

 

 

 飛行部隊に遅れながら騎兵を中心に編成したうえで馬を走らせ、休息を最低限にとどめながら可能な限り道を急ぎ、ようやく都市に到着したグランダム本軍。その数三万。

 さらに国家存亡の危機とあってほとんどの都市から援軍を出すという言伝が届き、兵はあと後二万は増える見込みだ。それが叶えば最終的な兵の数は5万になる。

 それでも敵軍より倍にも届かないが、かつてのディーノ戦では一万対三万でそのうえ野戦という圧倒的に不利な状況だった。それに比べれば今回は自国での都市戦で、戦力も二倍差。

 加えて現在街には、闇の書から召喚されディーノ戦で戦果を挙げた守護騎士という勇士と、《闇の書の主》ケント王がいる。

 ディーノ戦に比べれば救いはあるのだ。

 多くの兵が自らにそう言い聞かせて、この戦に臨んだ。

 

 

 

 

 

 三万の軍勢の先頭では煌びやかな鎧装束をまとった将軍が、装束で飾った馬に乗りながら空を見上げた。

 

(ケント陛下らしき方の姿は見えんな。まったく、王たる御方が自ら先兵を率いて出陣されるなど困った御方だ。しかし、そんな御方でなければ独立国を取りまとめるなどできんのかもしれん。それにあの御方は闇の書を完成させベルカ統一の果たすという、父君の悲願を背負っておられるしな)

 

 一通り思いを巡らせてから将軍は馬首を反転させ、自らが率いる兵たちを見る。

 将軍はいくつか数えるほどの時を待ってから、声を張り上げた。

 

「グランダムの精兵たちよ! 悪名高き蛮国ガレアは我らが国王陛下との交渉を提案しながら、早々に約を破り我が国に攻め込んできた!

 それも善良な民が生活を送る市街地で、無法の限りを犯すという卑劣極まりない所業をもってである!

 あの都市にいるのはお前たちの友かもしれん、親かもしれん、子かもしれん、伴侶かもしれん、将来を約束した恋人かもしれん、その住民たちが今も敵軍の陰に震えながら取り残されているかもしれんのだ!

 これを見過ごすためにお前たちは鍛錬を重ねてきたのか?

 否! 賊軍を征伐し民の暮らしを守るためだ!

 さあ武器を取れ! 我が息子たちよ!

 東から来た畜生どもに、我らの怒りを思う存分ぶつけてやろうではないか!!」

 

ウオオオオオオオオオオオォォォォ!!

 

 

 

 

 

 

 城門前に集結した本軍の到着を、空から街を俯瞰しながら敵軍を攻撃していた飛行部隊が即座に気付く。

 その中には、外壁の上に陣取っていた守護騎士の参謀役シャマルも含まれていた。

 

(やっと本軍が到着した。これで戦況はマシになるはず。それに数を増やしたこちらに対して、敵も何らかの手を打ってくるに違いないわ。その時こそ……問題はヴィータね。マリアージュの自爆の事を伝えようとしても返事を返さず、もう三日も経つわ。まさかもうあの子……)

 

 

 

 

 

 

「あなたもイクスヴェリアの糧になりなさい」

「ぐっ――この!」

 

 シグナムの腹に剣筋が入るが、シグナムも返しざまに相手の胴を断ち切る。守護騎士の将としてやられるだけでは済まさない。

 しかし、未だ彼女の目の前には二十体ものマリアージュがいる。

 マリアージュを斬り伏せていって三日目。

 再生機能による回復を繰り返しながら不眠不休で戦い、二万以上の敵を討ち取ってきたが、さすがのシグナムもそろそろ精神的な疲労が出てきたようだ。

 

(くっ、数日間戦い続けるのも大軍を相手にするのも、これが初めてではないが、今回は慣れてないのが痛いな。守護騎士として数え切れぬほどの戦いを重ねたが、こんな怪異どもと戦うのはさすがに初めてだ)

 

 シグナムはカートリッジをリロードし、剣を弓状に変える。

 

「シュツルムファルケン!」

 

 シグナムが放った矢はマリアージュに命中し、そのまわりにいたマリアージュも巻き込み一矢で十体ほど討ち取った。

 

「ぐあっ!」

 

 しかし、疲労のあまり他の敵の動きに気を配れなかったシグナムの横腹を、長い槍による一突きが襲う。

 

「あなたもイクスヴェリアの――」

 

 もう何十回も聞いた文句を吐きながら槍を構える個体をはじめ、自身に矢を射かけようとする者、剣を構える者、その他十体近くと対峙し、シグナムは剣を構える。

 

(まだだ。もう少しすればまた再生機能で回復できる。それまで持ちこたえれば)

 

 敵とシグナムが互いの得物を振り上げる。

 その時、不意に横から矢が飛んできて矢はマリアージュの側頭部に命中した。

 思わず矢が飛んできた方に顔を向けたシグナムの目に映ったのは……

 

 

「シグナム卿!」

「ご無事ですか!?」

 

 それは馬に乗って駆け付けてきた、十騎以上のグランダムの兵士だった。

 彼らのうちある者は弓を構え、ある者は剣を抜いている。

 彼らの姿には見覚えがある。

 皆、シグナムが王宮でしごき鍛え上げた兵たちだ。

 剣も弓も手心を加えず徹底的に叱責しながら教えてきた。

 厳しくしごいたために正直憎まれてるとも思っていた。そんな彼らに助けられるとは。

 

「シグナム卿、ここは我らにお任せを!」

 

 敵を斬り倒しながら兵の一人が言い捨てる。だが――

 

「ま、待て! そいつらは死ぬと」

 

 シグナムが言おうとする間に敵の死体が爆発するが、兵士たちは寸前で馬を止める。

 爆発による砂埃を前に、兵士は振り返ってシグナムに笑みを見せた。

 

「自爆するんでしょう。ここに来るまでに嫌ってほど見ました。だからもう大丈夫」

「シグナム卿は下がってください!」

 

 師の返事も聞かず、教え子たちはマリアージュに向かって行く。

 そんな弟子を見送りながらシグナムは苦笑いを浮かべた。

 

(まさか私が誰かに助けられる時が来るとはな)

 

 前までの主のもとではそんなことは起こりえなかった。逆に主の私兵の盾にされることがほとんどだった。

 苦い記憶を思い返しながらふと傷跡を見ると、ようやく再生機能が働き、負傷していたのが嘘のように傷が塞がっていた。

 

(存外私も現金な奴だな。初めてだ。戦うことが誇らしいと思えるのは)

 

「レヴァンティン、甲冑の修復を」

『Verstanden.(了解)』

 

 媒介に騎士甲冑を修復させてから、シグナムは体の向きを変え駆ける。

 次なる戦いの場へ向かうために。

 

 

 

 

 

 

 パキンという音とともに剣が折れる。

 

「くそ、こんな時に!」

 

「あなたもイクスヴェリアの糧になりなさい」

 

 共に戦っていた味方がやられて孤立した上得物を失ったグランダム兵に、剣の腕を振りかぶったマリアージュが襲い掛かる。

 

(――これまでか)

 

 兵士は観念し目をつぶった。

 

「うおおおおお!」

 

(……?)

 

 しかし、いくら待ってもとどめの一撃が来ない。

 その事に違和感を覚えた兵士は思わず目を空ける。

 

「――!」

 

 彼の眼前に移ったのは筋骨隆々の男が、素手でマリアージュの胸元を貫いてる姿だった。

 続けざまに彼は、マリアージュを他のマリアージュに向けて蹴り飛ばす。

 間髪入れずマリアージュは、他の個体も巻き込んで自爆した。

 

「ザフィーラ卿!」

 

「いつかの門番か。あの時驚かせて以来だな」

 

 彼は数日前に狼の姿のザフィーラと居合わせた門番だ。彼は本来なら、今日も王宮の門を守っていたはずの男だった。

 しかし、男がちょうど非番だった日にガレアからの侵略が起きて、救援のために編成された軍に急遽組み込まれてしまったのだ。

 正直不運でしかなかった。よりによってあの日に非番でなければ、自分は今日も安全な王宮の前を立ってるだけですんだのに。

 だが何の縁か、嫌々来ることになった戦場で、あの狼の正体である御仁と再会するとは。

 

「武器が折れたくらいで抵抗する気も失うとは。国の要とされてる割に兵士とは意外と脆弱なものだ。ふむ、今の主は寛容な方だし、一度私が皆に稽古をつけてやってもいいかもしれん」

 

「武器を持ってる敵に素手で向かえるのはあなたくらいですよ……いや、もう一人いたな、陛下のご友人だっていうどこかの王子――ってそんな場合じゃなかった!」

 

 一人突っ込みができるくらい立ち直った兵士に、ザフィーラは苦笑いをする。

 

「それで、お前はこれからどうするんだ? お前の方は私やどこかの王子とやらと違って素手では戦えないようだが」

 

 ザフィーラの問いに兵士はうなる。

 こういう時は味方から予備を借りるか、敵兵の死体から奪うか、本陣まで戻るものだが、今は味方がザフィーラしか見当たらない。敵の武器は腕と一体化しており使い勝手が悪そうなうえに、なにより気持ちが悪い。かといって、マリアージュがひしめく街の中を本陣まで戻るのは危険すぎる。

 そのため今の兵士に取れる行動は一つだけだった。

 

「ザフィーラ卿、大多数の敵に対して卿お一人だと危ないでしょう。よろしければ私が周辺の注意を払うくらいはさせていただきますが」

 

 味方の兵と合流できるまで側においてくれということか。

 

「よかろう。私は眼前の敵に専念する。周囲の事はしばらくお前に任せたぞ」

「はい!」

 

 兵士の本音をザフィーラは正確に見抜いていた。だがひょっとすれば、獣の自分には気付けないところを見抜くことがあるかもしれない。そう思い、彼の口車にあえて乗ってやることにした。

 

 

 

 

 

 

「シュヴァルツ・ヴァイス!」

「セイ!」

 

 俺の剣がマリアージュの首を、ティッタの大剣がマリアージュの胴を貫き、俺とティッタはすぐさま息絶えたマリアージュから離れた。

 その直後、マリアージュの死体は爆発し四散する。

 

 

 

 三日前、ティッタの助力を得てから、俺たちは休む暇なくマリアージュたちとの戦いを続けていた。

 時折兵站が置いてある外壁を行き来して水と最低限の携行食の補給を行いながら。眠気はドーピング魔法で抑えている。

 敵兵が人間だったら、あちらも食事や睡眠をとらざるを得ない。そのためこちらも同じように食事と睡眠を摂る機会がある。

 しかし、今回の敵は食事も睡眠も摂らずひたすら虐殺を続ける人外が相手だ。こちらも切り詰める必要があった。

 外壁で待機しているシャマルからは何度も、本軍が来るまで休息を取るように言われた。

 だがそれは断った。

 この街に住む住民が犠牲になるだけ、マリアージュは数を増やして他の都市にまで手を伸ばし、しまいには本軍でも手に負えなくなる恐れが強くなる。その不安を抱えたまま休んでいられるほど俺は肝が強くはない。

 そうシャマルに訴えた結果、ティッタを側につけることを条件に彼女は折れてくれた。

 それから俺は、ある時は空から攻撃を仕掛け、ある時はこうしてティッタと共に地上でマリアージュを斬り伏せていった。

 

 

 敵は飛行兵の事を歯牙にかけてないため彼らの犠牲は多くなく、シャマルによれば守護騎士もほとんど無事らしい。あいつを除いては。

 

(ヴィータ、お前はここで死ぬタマじゃないだろう。無事でいろよ)

 

「あなたもイクスヴェリアの――」

「うおおお!」

 

 不意に現れたマリアージュに、俺は剣を振りかぶり顔面に叩きつける。

 

 

 

「セイ! ――!」

 

 ティッタもまた、突然目の前に現れたマリアージュを斬りつけてからケントの方を振り返り、気付いた。

 

「兄様後ろ!」

 

「ぐああ!」

 

 眼前の敵を倒したと同時に腹に激痛が走った。

 焼けるような痛みに関わらず、無意識に俺は後ろを向く。

 

「あなたもイクスヴェリアの糧になりなさい」

 

 今まで家だった廃墟にいたのだろうか? いつの間にか後ろに張り付いていたマリアージュが、剣を俺の腹に突き刺しながら詰め寄っていた。

 

「兄様!」

 

 ティッタが駆け寄ろうとする。しかし――

 

「来るな!!」

 

 俺が倒したマリアージュからは、どくどくと油と思われる黒い血が流れだしている。そろそろ爆発する頃だ。

 

「逃げろ……今すぐ」

 

「そ、そんな嫌だよ。あんたとはまだ話してないことが」

 

 俺が逃げろと言ってるにもかかわらず、ティッタはただ立ち尽くしている。

 俺を刺したマリアージュは向きを変え、ティッタの方へ迫っていく。俺をマリアージュにするより先に邪魔者を片付ける気らしい。

 普段のティッタならばマリアージュを倒すことは容易だ。しかし、今のティッタはマリアージュを倒すか、俺を助けるかで迷っていて動くことが出来ない。

 馬鹿な。俺だけならともかく、やっと会えたばかりの妹まで巻き込んでしまうの

 

「ちくしょううう!」

 

うっせぇぞ、馬鹿主!

 

 ――?

 

「でりゃああああ!」

 

 突然声がしたと思ったら、爆発寸前のマリアージュの死体が何かの衝撃で勢いよく吹き飛び、その先で爆発を起こした。

 マリアージュがいた場所を見てみると、そこには彼女がいた。

 二つに分けられた三つ編みの赤毛、黒い鎧に長いスカート、見間違えようがない。

 

「ヴィータ!!」

 

「うおおおお!!」

 

 ヴィータは槌を振りかぶり、ティッタに迫っていたマリアージュにそのまま叩きつけ、側面の方へ飛ばした。

 

「あんた、あの時の!」

 

 そこでティッタはヴィータの事を思い出す。ついこの間、グランダム城の城門を隔てる格子を挟んでいがみ合った、口の悪い少女騎士だと。

 

「おう、あの時の入営志願者か。おい主、こいついつの間に軍に加えてたんだよ? てか兄様って何? こんな時に何の遊びしてんだよ」

 

「そ、それにはいろいろ事情があってな――それより、お前こそ今まで何をしていたんだ? 念話しても三日間応答がないって、シャマルが心配してたぞ」

 

「ああ。マリアージュを倒すとき自爆するとは知らなくて、つい燃焼系の魔法使っちまってな。それで爆発をもろに喰らってレンガの下敷きになるわ、下半身丸々ちぎれるわで、再生するのに丸一日かかっちまった。まっ、生き埋めになったのが逆に功を奏して、マリアージュどもに見つからずにすんだけど」

 

「ちぎれたって……ちゃんとついてるように見えるが?」

 

 スカートにまとわれたヴィータの足を見ながら俺は言う。

 

「再生したって言っただろう。じろじろ見るなエロ主」

 

 俺を睨みながら、ヴィータは足を隠そうとスカートを直しだした。

 

「再生……守護騎士ってそんなこともできるのか? じゃあ、シャマルからの思念通話に応えなかったのは?」

 

「もう知ってると思うけど、シャマルって口うるさいだろう。マリアージュが自爆するなんてこの身で体感したし、返事なんて返したら余計くどくど言ってくるからなあいつ。だから無視してた」

 

「……なるほど」

 

 確かにそこはヴィータらしい。

 

「……」

 

 得心している俺の後ろでティッタが呆然としている。守護騎士の事を知らないティッタには話についていくことができないようだ。

 

《陛下! 聞こえますか陛下?》

 

 俺の脳裏にシャマルの声が響いてきたのはそんな時だった。

 

《ああ、シャマル。こっちは何とか無事だ。ヴィータも発見した》

 

《ヴィータを!? 本当ですか? あんた三日も返事しないでどうしてたのよ?》

 

《また始まった。だから返事したくなかったんだって》

 

 ヴィータとシャマルが思念越しに喧嘩を始める。三日ぶりに言葉を交わす彼女たちを好きにさせてやりたいのは山々だが……。

 

《シャマル、すまないが後にしてくれ。さっきの口ぶりだと、何か俺に伝えたいことがあって思念通話をしてきたんじゃないのか?》

 

《あっ、申し訳ありません陛下! では改めて報告します。王都から本軍が到着しました》

 

 それを聞いて、俺は思わず目を剥いた。

 

《本当か!》

 

《はい。すでに街の各所に展開し、マリアージュの掃討を始めています。ですが、こちらに対して敵も手を打ってくるものかと》

 

 それはそうだろうな。この街が未だに陥落していないのは、マリアージュの向こうにいるガレアの高官も気付いてるだろうし。

 

《どんな手を使ってくると思う?》

 

《はい。おそらく――》

 

 

 

 

 

 

「敵本軍らしき大軍の存在を確認。操主からの命令通り全僚機は直ちに殲滅行動に移行せよ」

 

 マリアージュを率いる軍団長のその通達と命令は、念話に似た仕組みで速やかに全僚機にいきわたった。

 

 

 

 

 

 

「おい! あれを見ろ!」

 

 いきなり大声を上げたヴィータにつられて、俺もティッタも空を見る。

 そこには……。

 

 

 

 

 

 

「飛行形態へ移行……上昇開始します」

 

 地上にいるマリアージュがそうつぶやいて次々に空中へ飛んでいき、一定の高度につくとその場で停止した。

 その中には先ほどまでグランダム兵と切り結んでいた個体もいたが、飛行魔法が使えない兵士は何もできずにそれをただ見ているしかなかった。

 

「指定高度に到達……残りの僚機の到達まで待機。敵兵から攻撃された個体のみが反撃行動をとります」

 

 

 

 

 

 その時、都市の空中は次々浮かんでくるマリアージュに覆われた。

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