第一話:悪夢
砂漠の王、デューンが遂に完全に力を取り戻し、地球は完全に砂漠化した。心の花を奪われた人々は結晶化し、地上にはデューンが送り込んだ、まるで古代の神話に登場するミノタウロスの身体に、何匹もの大蛇を身に纏ったような姿を想像させる、数十体ものデザートデビルが、我が物顔で闊歩する絶望的な状況であった。
花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの四人は、それぞれ、キュアブロッサム、キュアマリン、キュアサンシャイン、キュアムーンライトに変身し、つぼみの祖母キュアフラワー事花咲薫子の救助、そして、砂漠の王デューンを倒す為、薫子の妖精コッペと共に、デューンの居る惑星城へと乗り込んだ。
時を同じくして・・・
美墨なぎさは、目の前のありえない状況に呆然と立ち尽くしていた。
ドツクゾーンでの出来事では無い、現実に一昼夜にして、自分の住んでいたマンションが砂漠化し、愛すべき家族、父岳、母理恵、弟亮太の三人は結晶化していた。何とか砂地獄を掻き分けて外に出たなぎさに、更なる追い打ちが掛かる。見知った景色はそこに無く、街は完全に砂漠化し、人々の殆どが結晶化するという、非現実的な出来事を・・・
「う、嘘でしょう?何なのよ、これは!?ありえない・・・絶対にありえな~~い!!」
頭を抱え、目の前の信じられない状況にパニクるなぎさであった。
なぎさはこの時17才の高校二年、本来ならクリスマスも終わり、楽しい冬休みを迎える筈だったのが、砂漠の王デューンの宣戦布告、そして、地球砂漠化の波は、なぎさの住む街をも飲み込み、なぎさの住むマンションも、大切な家族まで結晶化した現実に、ただ呆然とするのみであった。なぎさの怒りの視線の先には、遙か向こうで闊歩する、巨大なデザートデビルに向けられる。
「お前か~~!!お前がこんな風に・・・」
なぎさの目に涙が溜まる・・・
拳を握りしめ振るわせる・・・
目の前に敵が居る・・・
だが、メップル、ミップル、ポルン達が、光の園に戻ってから約二年、何度か遊びに来た事はあっても、ジャアクキングとの決戦後以降、キュアブラックに、プリキュアになる事は無かった。
今の彼女は、無力だった・・・
「目の前に・・・目の前に敵が要るのに、何も出来ない何て・・・ほのかと一緒に、プリキュアにさえなれれば、あんな奴・・・そ、そうだ、ほのかは!?ひかりは!?みんなは無事なの!?」
なぎさの言うほのかとは、互いにプリキュアとして戦った大切なパートナー、キュアホワイト事雪城ほのか、ひかりとは、なぎさ達の後輩で、シャイニールミナス事九条ひかりの事である。
右手で涙を拭きながら、なぎさはほのか、ひかりの身を案じた。今は自分の出来る事を最優先させようと、なぎさはほのかの家に向かい走り出した。本来ならほのかの家には、電車で遊びに行く程離れている。しかし街の全ては砂漠化、都市機能は完全に麻痺していた。そこら中には、まるで結晶が墓標のように佇み、なぎさにとって悪夢のような状況が続いていた。
どれくらい走ったのか、なぎさにも分らなかったが、なぎさの視線の先に動く人影が見えてくる。
(エッ!?私以外にも無事な人が・・・あれって、ほのか!?)
なぎさにとって、見知ったシルエットが徐々に近づいてくる。長い蒼髪を靡かせ、ほのかもなぎさを見つけて駆け寄る。
絶望な状況の中、なぎさはとほのかは再会した。
この二年の間に二人も成長し、なぎさは、ボーイッシュさは残っているものの、女性らしさを醸しだし、ほのかは更に背が伸び、胸の膨らみも増し、色気を醸し出す女性へと成長していた。
「ほのか、無事だったんだ!良かった・・・良かったよ~~」
「うん、なぎさも無事で良かった・・・でも、この状況は・・・」
ほのかは、なぎさと会えた喜びもつかの間、辺りの状況に眉を潜める。この世の終わりを思わせる、絶望的な風景に・・・
なぎさと出会い、安心したのも束の間、ほのかの心を不安が蝕みはじめる・・・
「どうしてこんな状況になっちゃったんだろう・・・」
ほのかは辺りを見てポツリと呟くと、なぎさもほのかの言葉に同意する。
「本当だよねぇ・・・あの戦いの後、平和になったと思っていたのにさぁ」
「うん、私達が戦ってきた事は・・・無駄になっちゃったのかなぁ!?」
ほのかがポツリと本音を漏らすと、なぎさは答えに窮した。プリキュアとしてジャアクキングと戦い、光の園、そして、虹の園と呼ばれる自分達の住むこの世界を守ってきた。だが、この世界は砂漠化した。自分達のしてきた事は、無駄になってしまったのか?
(そんな事無い!そんな事無いよ!!私が、ほのかが、ひかりが、メップル、ミップル、ポルン、ルルン達と戦ってきた事が、無駄になる何て絶対ありえない!!)
「ほのか、ここで悩んでいても仕方ないよ・・・ひかりの所に行ってみよう!」
「そ、そうね・・・ひかりさんの所に行きましょう!」
ほのかも同意し、ひかりの居ると思われる、なぎさとほのかの先輩である、藤田アカネの店TAKO CAFEのある公園に向かおうとした。だがその方角に、巨大なデザートデビルが近づきつつある事に、二人は驚愕する。
「あ、あいつは!?ひ、ひかり~~、アカネさん、ひかる、無事で居てよ~~!!!」
「な、なぎさ、あれが街を砂漠化したり、人々を結晶化させた元凶なの?」
ほのかは初めてデザートデビルを見たようで、その巨大さと不気味さにたじろいだ。
「私にもわかんないよ・・・でも、そうとしか思えない!急ごう、ほのか!!」
「うん、ひかりさん、無事で居てね!!」
なぎさとほのかは、急ぎTAKO CAFEに向かい走り出した!!
第一話:悪夢
完