第十話:プリキュアになって・・・
蒼乃美希にとって、散々だった美墨なぎさ達の街での出来事も過ぎた・・・
数日後、次に一同が訪れたのは、日向咲、美翔舞、霧生満、霧生薫達の街、海原市夕凪町・・・
「本当は、冬より夏に案内したかったんだけど・・・でも、冬の海も中々良いもんでしょう?」
正月休みも終わりに近づいたこの時期に、一同を冬の海に案内する咲、舞、満、薫は、冬の海風が冷たいものの、やはりこの街を案内するのに、海は外せないと一同を案内するのだった。ひょうたん岩の不思議な形に興味を持つ者、冬の海の違った味わいに興味を持つ者が居た。
冬の海岸を散歩する21人の少女達の中で、花咲つぼみは、特に興味深げに辺りを見ていた。
「私は元々鎌倉に住んでいましたので、とても懐かしく思えます!」
そう言いながら、咲達四人にニッコリ微笑んだつぼみは、海風を大きく吸い込み深呼吸する。鎌倉に住んでいた頃を懐かしく思い出すつぼみだった。つぼみが鎌倉に住んで居たと聞き、咲達は驚きの声を上げる。
「へぇ、つぼみちゃん、鎌倉に住んでたんだ?意外とご近所さんだったんだね!」
「本当、何処かで会っていたかも知れないわね!」
つぼみが鎌倉に住んでいた事に驚きながらも、思わずつぼみに話し掛け笑顔を向ける咲と舞だった。つぼみも笑顔を向けると、
「そうですね・・・もっとも、その頃はお父さんもお母さんも仕事で留守にすることが多くて、お婆ちゃんに預かって貰う事が多かったですが・・・」
「そうだったんだ・・・」
不意に寂しげな表情を浮かべたつぼみに、舞は悪い事を聞いたかしらと思い、咲も小さい頃を思い出したのか、
「何となく分かるなぁ、家もパン屋だから二人とも忙しくて・・・もっとも、私はお構いなく遊び回ってたけどね。アハハ!でも、妹のみのりは、時々寂しそうにしてたなぁ・・・私も中学に入学したら、ソフトボール部に入部して遊んであげられなかったし・・・でも、満や薫が頻繁に家に来てくれるんで、みのりも此処数年は大喜び何だぁ!」
「私の方こそ、みのりちゃんの相手が出来て学べる事も多かったわ!」
咲も、つぼみが言っていた事に共感出来る面があったようだった。
咲は、妹みのりも幼い頃のつぼみのように、寂しそうにしていたが、満、薫というお姉さんが出来て大喜びだと一同に語ると、薫は少し恥ずかしそうにしながらも、自分の方こそみのりには色々教わることがあると答えていた。元々ダークフォールで生まれた二人には、自分達に懐いてくれるみのりという存在が、当初は不思議だった。だが、いつしか二人にも掛け替えのない存在になり始めていた。
同じ思いをした事があるほのか、かれんも会話に加わり、
「そうね・・・私の家も、両親が海外に演奏旅行で出掛けている事がほとんどだから、寂しかったわね・・・でも、両親には心配させまいと我慢していて、一人になった時には何度涙を流した事か・・・今思えば、爺やにも心配させたでしょうね・・・」
「うん、私もそうだった・・・私は元々お婆ちゃまも一緒に暮らしていたから、他の人達よりは良かったんでしょうけど、やっぱり子供の頃は寂しくて、泣いた事があったわ」
かれんとほのかも、子供の頃を思い出し一同に語っていた。
つぼみは大きく頷くと、
「はい、私もそうでした!でも、ある時堪えきれなくて大泣きしたんですが、たまたま忘れ物を取りに来た両親がその姿を見て、これじゃいけないと二人で相談して、二人で仕事を辞め、そこで元々花が大好きだった家の両親は、お婆ちゃんの家を改装して、お花屋さんを始めたんです。その事が、私がプリキュアになる切掛けになるとは思いもよりませんでしたが・・・」
かれん、そしてほのかの話に、似た境遇を感じたつぼみはその頃を思い出し、えりか、いつき、ゆり、そして、一同を見つめると、
「でも、そのお陰で私は、えりか、いつき、ゆりさん、そして、大勢のプリキュアの仲間達に出会う事が出来ました!!」
つぼみは満面の笑顔を浮かべ一同を見ると、えりかは大喜びし、一同も朗らかな笑顔をつぼみに向けるのだった・・・
場所を移動した一同は、咲の店、ベーカリーPANPAKAパンに立ち寄り、好きなパンを購入すると、咲達が特に来て欲しいと言っていた大空の樹の下にやって来た。
神秘的な大きな木の下で、少女達は興味深げにそれぞれ過ごしていた・・・
なぎさは、大空の樹から見える眺めに喜び、
「うわぁ、良い眺めだねぇ・・・前に咲が此処を薦めてたのが分かるわ!」
「本当ねぇ・・・色々な季節に此処からの眺めを見てみたいわね」
なぎさの言葉にほのかも同意し、二人は目に焼き付けるように眺め続けた。
「不思議な感じがする木ね・・・こころの大樹とはまた違う、神秘的な何かを感じるわ!」
ゆりは、大空の樹を直に触れて見ると、指先から伝わる神秘的な力を感じ、こころの大樹を思い出すのだった。つぼみ、えりか、いつきも、こころの大樹を思い出していたのか、ゆりの言葉に頷いた。
「これが大空の樹・・・私と舞が、子供の頃に偶然出会ったのもこの大空の樹の下だったんだぁ!」
「ええ、子供の頃の縁日の日に、蛍のような光に誘われて、一人で大空の樹の下に来た時、同じように咲がやって来たわ・・・」
咲も舞もあの頃を思い出し、互いを見つめ微笑むと、
「そして、舞がこの街に引っ越して来た時、再び私達はこの樹の下で出会った。その時、フラッピとチョッピと出会い、そして、プリキュアになったの!」
「子供の頃に見た蛍のような光が、フラッピやチョッピだったのもその時知ったのよね!」
咲と舞の神秘的な内容の話を聞いていたなぎさは、
「何か羨ましいなぁ・・・私とメップルは、流れ星だと思ってお願いしてたら、その光が私の部屋に一直線に向かって来て、最初は躱してたんだけど、結局額に当たってバタンって倒れちゃってさぁ・・・光は私の部屋で飛び跳ねてて、姿を現わしたのが、携帯電話のような姿をした・・・これ!」
側に居たメップルを持ち上げ、一同に指さすなぎさの姿に、一同から苦笑が漏れる。メップルは頬を膨らましなぎさに抗議する。
「これとは酷いメポ!」
「ゴメンゴメン!メップルがミップルの気配を感じて出掛けたのが、この間みんなに話したあの遊園地!そこでミップルを手にしてたほのかと会って、ふたりでプリキュアになったのよね・・・」
「ええ、あの時のなぎさったら、プリキュアになってパニックになってたわね・・・ウフフ!」
「そりゃあ、なるでしょう・・・ほのか見たいに楽しいかも、何て普通思わないって!!」
当時を思い出し二人で見つめ合って笑い合ったなぎさとほのか、ラブも昔を思い出しシフォンとタルトを見ると、
「私も、プリキュアになった事は驚いたけど、シフォンやタルトと初めて会った時はもっと驚いたよぉ・・・フェレットが普通に関西弁で話し掛けてきたんだもん!思わずこれは夢だと、もう一度目を閉じてから開いても、ニッコリ微笑み掛けるタルトが居たんだもん・・・なぎささんの気持ちも分かるなぁ!!」
「そりゃあ、わいとシフォンは、プリキュアを探してピーチはん達の街に行ったさかい、プリキュアを見付けて、思わずニコニコになるのもしょうがあらへんわ」
タルトも腕組みしながらその頃の事を思い出し、ラブの話に頷いていた。
「ベリーはん、パインはんも直ぐに見つかり・・・まあ、最初は敵だったパッションはんが、プリキュアだったのには驚いたんやけど」
タルトの言葉に、せつなは苦笑を浮かべながら、あの頃の事を思い浮かべる。ラビリンスの幹部、イースとしてラブ達プリキュアと戦った事、自由に生きるラブ達を、心の底では羨ましく思っていた事、そして、自分がプリキュアだった事・・・
「それは私自身が驚いたわ!私にプリキュアの資格があるとは・・・とても思え無かった。私は幸せを求めちゃいけないと思い込もうとしてた。でも、そんな私の心を、ラブが、美希が、ブッキーが晴らしてくれた!もちろんシフォンやタルトもね!!」
せつなは、仲間達を見て笑顔を見せ、ラブ達一同も、せつなに満面の笑顔を向けた・・・
「私も、ココとの出会いは運命的だったんだよ!ねぇ、ココ?」
うっとりした目で一同に語ると、ココは苦笑を浮かべ、くるみは不機嫌そうに頬を膨らませていた。
「はいはい、のぞみの妄想はみんな聞きたく無いわよ!」
「何よ!本当だもん!!」
くるみに妄想と言われ、思わず頬を膨らますのぞみに、ココとナッツは溜息を付き、やれやれといった表情でのぞみとくるみを宥めた。
「でも、学校の図書館でのぞみと再会したのは、確かに運命的だったココ・・・あそこでのぞみはプリキュアに選ばれ、ピンキーを集めてパルミエ王国を復活させると誓ってくれたココ」
「うん、そうだったね!」
互いに見つめ合い、あの時の事を思い出すのぞみとココ、そしてココの視線は、りん、うらら、こまち、かれんに向けられ、
「りん、うらら、こまち、かれん、みんなものぞみに導かれるようにプリキュアになって、ココやナッツの為に頑張ってくれたココ」
ココの言葉にナッツも大いに頷き、
「ナッツに、再び信じる心を教えてくれたのは・・・のぞみ達ナツ」
ナイトメアの企みとは気付かず、罠に嵌ってパルミエ王国崩壊の切っ掛けを作ってしまったナッツの心を、再び開いたのはのぞみ達のお陰だった。ナッツは、その頃を思い出し笑顔になった。りんはかれんを見つめると、少し意地悪そうに、
「かれんさんは一度、プリキュアになるの拒否されてましたけどねぇ?」
「あれは・・・もう、り~~ん!!」
りんにからかわれ、見る見る顔を赤くするかれんに、のぞみ達は笑顔を向けた。
「そう考えれば、私達が咲と舞がプリキュアとなったこの場所で、プリキュアになれたのも感慨深いものがあるわね」
「そうね・・・ゴーヤーンとの戦い後、精霊達のお陰で蘇れた私と満は、闇の力を失った」
「あの巨大な敵と戦う、咲と舞の力になれない事が悲しかった」
「でも、ムープとフープが、私達に新たなる力を目覚めさせてくれたわ」
満と薫は、大空の樹を見ながら、デザートデビルに苦戦するブルーム、イーグレットの為に、プリキュアとして覚醒した時の事を思い出していた。ムープとフープもあの時を思い出したのか、嬉しそうにフワフワ満と薫の周りを飛び回っていた。
「私達は、プリキュアになれて良かった・・・」
「ええ、咲と舞以外に、こんなに素晴らしい仲間と出会えたんだから・・・」
一同を見る満と薫が、満面の笑みを見せる・・・
この世界に来た頃の彼女達からは、想像も付かない笑顔を・・・
そんな満と薫に、咲、舞を始めとした少女達も、満面の笑みを二人に向けた・・・
大空の樹は、そんな少女達を見守り、穏やかにサワサワと葉を揺らせていた・・・
第十話:プリキュアになって・・・
完