1、プリキュア合宿開始
8月6日の午前十時・・・
集合場所をナッツハウスにした一同、のぞみ達、咲達、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達、真琴とアン王女、そして、フラッピ達、シフォン、シプレ、コフレ、ポプリ、ハミィとピーちゃん、フェアリートーン達、ハミィに誘われたキャミー、キャンディ、グレルとエンエン、そしてダビィは、既に集まって居た。
半袖のワンピースを着ているのは、舞、こまち、えりか、れいかの四人!
スキニーパンツを穿いているのは、薫、りん、つぼみ、響、みゆき、やよいの六人!
短パンを穿いているのは、咲、満、ラブ、あかね、アコ、真琴の六人!
タイトスカートを履いているのは、かれん、美希、せつな、ゆり、なお、アン王女の六人!
ミニスカートを履いているのは、のぞみ、うらら、くるみ、祈里、いつき、奏、エレン、あゆみの八人!
集合した一同は、ワイワイと合宿についての話題で盛り上がって居ると、シロップが上空から急降下して来て、ナッツハウス前に降り立った。シロップの背からココが顔を出し、
「みんなぁ!お待たせココォォ!!」
「ココ!それに・・・」
のそみはココを見て微笑み、ココの後ろから続々と降りて来る妖精達を見た。それを見た一同は、ニコニコしながら微笑み、
『ようこそ!私達の世界に!!』
一同が笑顔で出迎える中を、ココとナッツ、タルト共に降りて来たのは、シャルル、ラケル、ランス、ぐらさん、アロマとパフの六人、六人はココ達に引率されて遊びに来た。グレルとエンエンは、久しぶりに会った妖精学校のクラスメート達を見て目を細めた。
「みんな、久しぶりだなぁ・・・元気だったか?」
「本当に久しぶりだねぇ・・・でも、今日はどうしたの?」
グレルとエンエンは、クラスメート達との再会に目を細めた。話し掛けられた妖精学校の生徒達も、元気そうなグレルとエンエンを見て目を細めた。シャルルは、ちょっと見ない間に逞しくなったような二人に、驚きながらも話し掛け、
「元気シャルよ!夏休みをどう過ごそうかと考えてたら、ココ先生達に誘われたシャル!!」
「折角だから、パフ達も遊びに来たパフ!」
「まっ、そういうこった!よろしくな!!」
「そう言えば、お前達、キュアエコーのパートナーになれたって聞いたロマ!」
パフ、ぐらさん、アロマも話に加わり、グレルとエンエンに話し掛けた。グレルは、エンエンと顔を見合わせてニンマリすると、
「オオ!色々あって、俺とエンエンは、あゆみのパートナーになったんだ!」
「フフフ、グレルとエンエンは、私に取って大切なパートナーよ!」
ニッコリ微笑み合うあゆみとグレルにエンエン、それを見たラケルは羨ましそうに、
「夢が叶う何て・・・凄いケル!」
「大丈夫ですよ!きっとあなたにも、素敵なパートナーが見つかります!!」
ニッコリ微笑んだれいかに、頭を撫でられたラケルは、デレデレした表情を浮かべ、
「もう・・・見付けたケル!」
「エッ!?そうなのですか?」
「ウン!ラケルのパートナーは・・・君ケル!!」
「エッ!?私ですか?」
デレデレしたラケルに指名されたれいかは、キョトンとした表情を浮かべると、すかさずシャルルがラケルに対し、お腹で体当たりをした。
「何寝ぼけた事言ってるシャル!れいかは、もうプリキュアになってるシャル!!」
「申し訳ありませんが、別の方を捜して下さい・・・」
「トホホケル・・・」
シャルルには怒られ、困惑したれいかにも拒否をされ、ラケルは耳が萎(しお)れた。
「そんな事より、暑いでランス・・・」
ランスはそんな話に興味が無いのか、日陰に避難しながらバテて居た・・・
一同は、この場にまだ来て居ない、なぎさ、ほのか、ひかりの到着を待って居た・・・
「なぎささん達、遅いですねぇ?」
のぞみに聞かれたゆりは、携帯をチェックしながら、
「もうとっくに出たから、そろそろ来る頃よ!噂をすれば・・・」
ゆりの視線に、昨日乗せて貰ったほのかの白い軽自動車が飛び込んで来た。あの時と違い安全運転のようで、ゆりは思わずクスリと笑うも、車から降りてきた三人の表情は優れず、一同は首を傾げた。
なぎさは、ピンクと黒のツートンカラーのブラウスと、花柄のフレアスカート姿で、ほのかは、フリルの着いた白のワンピース姿で、ひかりは、紐の付いたラメの刺繍が入ったタンクトップで、下はベージュのタックパンツ姿で一同の前に姿を見せると、
「みんな、遅れてゴメンね!」
「すいませんでした!」
なぎさとひかりが一同に謝り、ほのかはかれんを見付けると、慌ててかれんに近づき、徐にかれんの両手を握り、
「かれんさん!此処は車止めてても・・・大丈夫?」
「エッ!?ええ、ナッツハウスがあるこの公園自体、家の私有地ですし、大丈夫ですよ!」
「本当!?本当ね?」
「エッ!?エエ・・・」
ほのかに念を押され、困惑するかれん、それを見たゆりは、肘でなぎさを突っつき、小声でなぎさに話し掛けると、
「なぎさ、ほのかは一体どうしたの?」
「アハハハ!ほら、昨日四人で買い出しに行ったじゃない?ゆりを送ったあの後、ひかりを送って、私を送ってくれてる途中で、神様と会ってさぁ・・・」
「神様と!?」
「そう、それで車を止めて、神様が、私達に会わせたがってた人に会いに行ったんだけど・・・まあ、この話は合宿所に着いたら、改めてみんなにするけど、それで用を済ませて戻ったら・・・ほのかの車、レッカー移動されてて・・・」
「エッ!?成る程・・・それでほのかが、珍しく取り乱して居るのね?」
なぎさとゆりは、ほのかが、困惑したかれんに縋るような様子を、苦笑を浮かべながら見て居た・・・
ほのかが車で現われた事で、他の一同も興味深げにほのかの車に群がった。のぞみとラブは、窓から車の中を覗き込むと、
「へぇ、ほのかさん、車買ったんですねぇ?」
「良いなぁ・・・私も乗ってみたい!」
のぞみとラブのように、みゆきも窓ガラスにへばり付き、顔を変形させながらジィと車の中を覗き込むと、
「私も乗ってみたいなぁ・・・」
「じゃあ、戻って来たら乗ってみる?」
ほのかは、かれんに車を止めて居ても大丈夫だと言われた事で安心したのか、ニコニコしながら、のぞみ、ラブ、みゆきをドライブに誘うと、三人は見る見る嬉しそうな表情を浮かべ、
「「「良いんですかぁぁ?」」」
「エエ、良いわよ!」
「本当!?私も乗りたい!!」
響も羨ましそうに車を見つめながら言うと、ほのかはニコニコしながら、
「四人乗りだから、交代になるけど、それでも良いなら・・・」
『ワ~イ!』
ほのかから許可が出て、車に乗りたいメンバー、のぞみ、ラブ、みゆき、りん、うらら、つぼみ、えりか、響、あかねが喜びの声を上げた。なぎさは微妙な表情を浮かべると、
「止めなくて良いかなぁ?」
「のぞみ達も喜んでるし、それに、ここはかれんの家の私有地だそうだし、あの時のようにはならないでしょう?」
「まあ、こっちに来る時も一応大丈夫だったし・・・いっかぁ!」
ゆりから、水無月家の私有地である公園内なら、マナーが悪い運転手になど出くわす事など無いから大丈夫だろうと言われると、なぎさも苦笑しながら同意した。それよりゆりは、ひかりがナッツハウスの入り口前の階段に、グッタリしながら腰を下ろして居る事に気付き、首を傾げた。
「それよりなぎさ・・・ひかりの表情が優れないけど?」
「ああ、昨日の今日で、ひかりは、ほのかの運転ちょっと怖がっててさぁ!ひかり、最初は電車で行くって言ってたんだけど、ほのかに一緒に行こうって誘われて・・・ひかりは優しいでしょう?断れなくて一緒に車で来たんだけど、車の中であんな感じになっちゃった!」
なぎさとゆりは、舞や祈里に心配されて居るひかりを見ながら呟いた。なぎさとほのかは、持って来た荷物を車から降ろし、ほのかはナッツハウスの脇に車を止めた。せつなは、まるで引率の先生のように一同を呼び寄せると、
「じゃあ、みんな集まって!かれんさんの別荘に向かうわよ!」
「「ワクワク!ワクワク!!」」
みゆきとやよいが、同じような表情で両脇を広げたり閉じたりして興奮し、それを見て居たアコは呆れ、こまちとあゆみは苦笑を浮かべた。えりかも大はしゃぎで、
「よっしゃぁ!出発ぅぅぅ!!」
「ハァ・・・えりか、遠足じゃ無いんだから!」
「エェェ!?そういう美希姉ぇだって、荷物一杯持って来てるじゃん!」
えりかは変顔浮かべながら、不満気に美希の荷物を指差し抗議した。成る程美希のバッグは他の一同より大きく、指摘された美希は動揺するも、
「コ、コホン!こ、これは・・・色々よ!」
美希は、軽く咳払いをして誤魔化した。れいかは、なおのバックをチラリと見ると、海外旅行に行くかのような、キャリーバックが一つ、後はベージュのショルダーバックを肩から下げて居た。
「なお・・・随分荷物を持って来たんですねぇ?」
「エッ!?だってぇ、島に行くんだよ?」
「そうだけど、一体何を持って来たの?」
エレンも会話に加わり、興味深げになおのキャリーバックを指さした。なおはキャリーバックを開けると、思わずれいかとエレンの目が点になった。
「虫除けスプレーでしょう!それに、殺虫剤も・・・どんな虫が居るか分からないから、ゴキブリ用、蠅、蚊用、蟻用、蜘蛛用、ダニ用を三本ずつ、後は、ゴキブリホイホイや蚊取り線香も欠かせないよね!」
キャリーバックの中身が、全部虫撃退の商品だと知り、れいかは呆然としながらキャリーバックを指差し、
「ぜ、全部虫関係なのですか!?」
「だってぇぇ!別荘周辺には森とかあるんでしょう?想像しただけで・・・ヒィィィィ!!」
なおは、両手で頭を抑えながら変顔を浮かべた。なおにとって、虫の事を考えただけで、鳥肌が立ってくるようだった。アコは、呆れたようになおを見つめ、
「島中の虫を殺す気!?」
「可能ならば・・・」
「なおぉぉぉぉぉ!!」
「だってぇぇぇ・・・」
なおの過激な発言を耳にし、眉間に皺を寄せたかれんがなおに一喝し、なおはトホホ顔を浮かべた。それを見たラブは笑い出し、
「アハハハ、なおちゃんらしい!それに美希たん!美希たん、新しい水着買いに行ってたもんねぇ?」
「そういうラブも、あたしやブッキー、せつなと一緒に買いに行ってるでしょう?」
「アハハハ!そうでした!!」
ラブ達が水着を買いに行ったと聞き、薫の脳裏に、絵本の世界でのラブの姿が思い出されて居た。薫はラブのバックを指差し、
「まさかラブ・・・あの時のような貝殻ビキニを!?」
「あんな水着・・・二度と着るかぁぁぁ!」
ラブも絵本の世界での事を思い出したのか、顔を赤らめながら即座に否定した。貝殻ビキニという言葉に驚いた真琴とアン王女の二人は、
「貝殻ビキニ!?」
「それはどういう物ですか?」
「真琴、アン王女、興味があるなら・・・あたしが後で、ブルンで試着させてあげるけど?」
美希が楽しそうに二人にそう声を掛けると、祈里とくるみが慌てて美希に話し掛け、
「み、美希ちゃん!?」
「知らないわよ?」
「女同士だし、大丈夫よ!」
美希は大丈夫と済ました表情を浮かべるも、ラブも微妙な表情で、
「着た事あるから言うけど・・・タルトやココとナッツ、シロップにピーちゃん達だって居るよ?」
「まあ、あの五人なら大丈夫でしょう?魔王が居たら別だけど・・・」
美希は、魔王に受けた数々の辱めを思い出したのか、嫌そうな表情を浮かべながら呟いた。
「そう言えば、魔王の姿が見えないわね?」
魔王の話題が出た事で、せつなは辺りを見回し、魔王がこの場に居ない事に気付居た。ラブは苦笑しながら、
「みゆきちゃんに頼んで、魔王には内緒にして貰ったからね!でも、後で魔王にバレたら・・・ちょっと怖いかも!?」
ラブの心の中に、少し不安が沸き上がった・・・
その頃、魔王は・・・
みゆきの家で、退屈そうにテレビを見て居たが、あまり興味がありそうな番組はやってなかったのか、テレビを消すと、ソファーにゴロゴロ転がった。
「つまらないカゲェ・・・育代ママンは、博司と出かけて居ないし、みゆきとキャンディも、あかね達とどっか行ったし・・・美希ママの所にでも遊びに行くカゲかぁ!」
電気を消した魔王は、そのまま美希の家へと遊びに出かけた。レミと魔王は、妙なところでフィーリングが合い、二人は話が弾むようで、魔王は母親達の中でも、特にレミと親しかった。だが、美希の家はシャッターが降りていて張り紙がしてあり、16日まで休業すると貼ってあった。魔王はショックでヘナヘナ店の前で倒れ込むと、パート先のスーパーに向かって居た、ラブの母あゆみが通り掛かった。あゆみは、黄昏れた魔王に気付くと声を掛け、
「あら!?魔王ちゃんじゃない!」
「ン!?・・・ラブママ!」
魔王は、ラブの母であるあゆみを見ると、目を細めながらパタパタ宙に浮かび、側に寄って行った。あゆみは魔王の頭を撫でながら、
「魔王ちゃん、この前はありがとう!ところで魔王ちゃん、レミさんの家に用事でもあったの?」
「退屈だったんで、美希ママの家に遊びに来たカゲ!」
「そう・・・レミさんは、お知り合いとハワイに行って留守にしてるし、美希ちゃんはラブ達と・・・そう言えば魔王ちゃん!魔王ちゃんは、ラブ達と一緒に行かなかったの?」
「何の事カゲ!?」
「あら!?ラブったら、魔王ちゃんに話してなかったの?プリキュアのお友達と合宿するって、朝から出掛けて行ったわよ?」
あゆみの話を聞いた魔王は、見る見る困惑すると、
「そんなの聞いて無いカゲ・・・」
「そう・・・困ったラブねぇ?」
あゆみは首を傾げながら、魔王を除け者にしたラブに溜息を付いた。
(おのれラブ!おのれみゆき!俺を除け者にしようとしても、そうはいかないカゲェェェ!)
魔王の目に炎が灯った事を、ラブ達が知る由は無かった・・・
せつなのアカルンの力で、かれんの別荘がある島に着いた一同は、プライベートビーチに立つと、思わず感嘆の声を上げた。
『ウワァァァァァ!素敵ぃぃぃ!!』
正面には、別荘に続く長い階段があり、別荘だけでも、東京ドーム数個分は余裕でありそうな広さがあった。別荘の周りには、深い森が広がって居て、左右の脇には高い崖があり、この島の目印になりそうな配置をして居た。再びビーチ側を見てみると、クルーザーで来た時に止める桟橋があった。今立っているプライベートビーチには、百人以上は余裕で過ごせそうな広さがあり、更には正面に広がるオーシャンブルーの海が広がっていて、一同が感嘆するのも納得出来た。
「じゃあ、先ずは荷物を別荘に置きに行きましょう!」
「重たい物は桟橋にでも置いておいて、後で私が別荘まで持って来るから!」
かれんが一同に声を掛け、せつなは、重い荷物は後で自分が持って来るから、ここに置いておいて良い事を伝えた。かれんは一同を引き連れ、別荘へと案内し始めた。
一同が階段を上り、別荘に近付く度に歓声が沸き上がり、周りをキョロキョロ見回した。咲は大きなプールを見て仰け反り、
「す、凄い!?プールまである?」
「ほ、本当・・・此処、何処かのリゾートホテルみたいね!?」
流石のゆりも、驚愕しながら眼鏡を曇らせた。かれんは別荘だと言っていたが、初めて来た一同に取っては、何処かの高級リゾートホテルにしか見えなかった。プールサイドには、野外で食事も出来るように作られて居て、のぞみが得意そうに、
「前に来た時、取り立ての魚介を使って、バーベキューをしたんだよ!ねぇ、かれんさん?」
「エエ、もし釣りとかに興味有るなら、釣り竿もあるわよ?この近辺は、水無月家の所有だから、魚介類も取り放題だし・・・」
『す、凄い・・・』
一同は、かれんからの話を聞いて、思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。エレンは満面の笑みを浮かべながら、
「取れたての魚を食べられる何て・・・最高ねぇ!」
「でしょう!?あたし達も最初に来た時は、大喜びで魚介取りに夢中だったわ!なおも、魚なら平気でしょう?」
「ウン!魚なら平気かな!!」
りんに聞かれたなおも、嬉しそうに頷いた。れいかは首を傾げながら、
「でも、なお・・・釣り針には、沙蚕(ごかい)のような餌が必要ですよ?」
「ヒィィィ!れいかぁ!練り餌だって良いでしょう?嫌な事思い出させないで!!」
『アハハハハ』
怯えながられいかに抗議するなおを見て、思わず一同が笑い声を上げた。別荘の中に入るも、本当にどこかのリゾートホテルじゃないのかと思う程だった。かれんは一同に話し掛け、
「みんな、ゲストルームは二十室あるから、二人ずつで良いなら、好きな部屋を使って!」
「に、二十室!?」
「ホンマにホテルみたいやなぁ?」
ゲストルームが二十室あると聞き、舞が思わず驚きながら呟き、あかねも改めて室内を見渡した。好きな部屋を使って良いと言われ、えりかは目を輝かせて喜び、
「ウッヒョォォォ!何所でも良いの?何所にしようかなぁ・・・」
「まあ、部屋選びは後でも良いんじゃないかな?」
苦笑したいつきがえりかを諭した。のぞみは、一同の反応を見てニコニコして居たが、
「そうだ!かれんさん、この島をみんなに案内しようよ!」
「そうね・・・」
のぞみの提案に、かれんが賛成しようとした時、ゆりの眼鏡がキラリと光った。ゆりは一同を見渡しながら、
「良いわね!特訓を兼ねて・・・」
『エッ!?もう?』
困惑する一同を余所に、ゆりは眼鏡の位置を直しながら、
「当然でしょう!?此処に何しに来たと思って居るのかしら?」
「そうね・・・じゃあ、着替えたらみんなを案内するわ!」
かれんもゆりの提案に同意し、一同は、トレーニングウェアーに着替えると、かれんの別荘周辺を、ランニングしながら一周しに行った・・・
その間妖精達は、プールサイドで気持ち良さそうに眠って居たが、ランスだけは室内に残り、
「この暑いのに、外に居る何て間抜けでランス・・・ハァ、極楽でランス!」
コップに入ったグレープジュースを、美味しそうにストローで飲みながら、冷房の効いた涼しい部屋で、気持ち良さそうに昼寝を始めた・・・
2、咲には内緒!
『ファイトォ!ファイトォ!』
「ヒィィィィ!?虫ぃぃぃぃぃ!」
左右に広がる深い森の中を、三十三名の少女達が、掛け声合わせてランニングして居ると、時折なおの悲鳴が沸き起った。その後では、泣きながらなおが大量の殺虫剤を撒き、
「なお!止めて頂戴!!」
この島の主であるかれんが、なおを背後から羽交い締めにして止める。そんな光景が何度か続くと、ようやく一同は森を抜け、再び海岸へとやって来た。ゆりは一同を止めると、
「足腰の鍛錬にもなるし、修行は主に此処でやりましょう!」
『はい!』
一同がゆりに返事を返した。なぎさは、ゆりに話し掛けると、
「ねぇ、ゆり・・・初日だしさぁ、最初は軽く汗を流す程度にしない!?」
「どうして?」
「ほら、持ち主のかれんや、来た事があるのぞみ達は兎も角、私達は初めてだしさぁ・・・」
「晩ご飯をどうするかとかも、決めなきゃならないもんね?」
「そうそう!流石ほのか!!」
なぎさをすかさずフォローするほのかの言葉に、なぎさは我が意を得たりと何度もコクコク頷いた。ゆりも、そういう理由ならばと納得したのか、
「そうね・・・そういう事なら、1時まで基礎鍛錬をして、その後は自由時間で良いわよ!」
『ヤッタァー!!』
自由時間が長く取れそうだと分かり、一同が喜んだ。なぎさは小声でほのかとゆりに話し掛け、
「ねぇねぇ、咲には内緒で、明日の咲の誕生パーティーやるのを、みんなにも伝えて置かない?多分、舞や満と薫は、咲の事お祝いしようと思ってるだろうし・・・」
「そうね・・・なら、私が咲を連れ出すから、その間にみんなと打ち合わせしておいて!」
「「OK」」
ゆりの提案を聞き入れたなぎさとほのか、ゆりは咲を呼ぶと、
「咲、もう一週走れるわよね?」
「エェェ!?あたしだけ?」
「咲は、部活があって明日の夜には帰るでしょう?他のみんなは、なぎさとほのかの指示に従って!じゃあ行くわよ、咲!!」
「そういう事なら・・・でも、扱かれてるみたいでトホホなり~・・・」
咲が変顔浮かべながら、悄げる姿を見た舞は、少し表情を曇らせ、
「だったら、私も・・・」
「アッ!?舞さんは、私達と一緒に・・・」
「どうしてですか?」
ほのかに呼び止められた舞は、少し不服そうにほのかをジィと見て居ると、なぎさが舞の背中を押しながら、
「まぁまぁ!じゃあゆり、よろしく!!」
「エエ、そっちもね!」
「よ~し、気合い入れ直すぞぉぉ!」
「咲、その意気よ!」
咲は気合いを入れ直し、ゆりの後に続いて再び階段を上ってランニングを始めた。舞は恨めしそうに、なぎさとほのかを見つめると、なぎさとほのかは、苦笑しながら一同を手招きし、
「ねぇ、舞!満!薫!あんた達、明日の咲の誕生日に、何かしてあげようと考えてるんでしょう?」
「エッ!?なぎささん、知ってたんですか?」
なぎさが咲の誕生日を知って居た事で、舞が目を見開いて驚いた表情を見せた。なぎさはひかりを指さすと、
「ウン!前にひかりに聞いた事あるから・・・そこで、折角みんな揃ってるし、咲に内緒で、みんなで咲をお祝いして上げようって考えててさ・・・みんな、どう?」
『異議無し!』
なぎさの提案を、満場一致で一同が受け入れた。それを見た舞の目はウルウル緩み、
「みんなぁぁ・・・ありがとう!咲もきっと喜ぶと思うわ!!」
「何で舞が泣くのよ?」
くるみは怪訝そうな表情で、涙を流す舞を見て首を傾げると、舞は涙を拭いながら、
「だってぇ・・・嬉しくて・・・」
「アハハハ!舞ったら感動しすぎだよ!!で、当然ケーキも用意してあげたいよねぇ?」
「エエ・・・満さん!満さんは、咲さんのお店で手伝っているのよねぇ?」
「エエ、手作りケーキでお祝いしてあげようって事なら、喜んで作らせて貰うわ!」
「じゃあ、私も手伝うわ!」
咲の店でアルバイトをしている満、実家がカップケーキ屋で、デザート作りが得意な奏も、満を手伝うと立候補した。更に元気良く手を上げた響が、
「ハイハイ!じゃあ私も!」
「響は駄目よ!」
奏は首を左右に振りながら、響の立候補を却下した。響は不満そうに口を尖らせると、
「何で!?」
「折角のケーキが・・・響の摘み食いで無くなっちゃうわ!」
「人聞きの悪い事言わないでぇぇぇ!!」
『アハハハハハ』
何時も通りの痴話喧嘩を始める響と奏に、一同は思わず笑い出した・・・
30分後・・・
再びゆりと咲が戻って来た事で、一同は別荘へと戻って行った・・・
かれんとこまちの二人は、受験生である為、かれんが普段利用している部屋を利用する事が決まった。他の一同が部屋割りをどうしようか決め始めると、のぞみが一同に話し掛け、
「ねぇねぇ、折角だし、ペアで泊るのを、くじ引きで決めてみない?」
「面白そうやん・・・ウチ賛成!」
『良いわよ!』
「あたしは、明日で帰っちゃうから、あたしと同じ部屋は三人にしない?」
『OK!』
のぞみの提案に真っ先にあかねが賛同し、他の一同も聞き入れた。咲の提案にも一同が賛成し、各部屋の二人組をくじ引きで決めた。なぎさと真琴、ほのかと舞、ひかりとくるみ、咲とのぞみ、そしてなおの三人、満と奏、薫とアコ、りんと響、うららといつき、ラブとあゆみ、美希とえりか、祈里とエレン、せつなとあかね、つぼみとみゆき、ゆりとやよい、れいかとアン王女が同部屋と決った。
「じゃあ、残った部屋を、ココ達で使って!」
「分かった!みんな、集まってぇ!!」
「部屋に移動するぞ!」
かれんに言われた、人間姿のココとナッツが頷き、妖精達を呼び寄せるも、二人の側に、見慣れない大人の女性が一人混じって居た。濃い青紫色のショートヘアーで、眼鏡を掛けて居る女性の姿に、なぎさは首を捻りながらかれんに話し掛け、
「ねぇ、かれん・・・あの人、お手伝いさん?」
「いえ、私も今初めて見た方で・・・」
かれんも初めて見る女性に、困惑しながらなぎさに告げると、徐に真琴が会話に加わり、
「あれは・・・ダビィです!」
「何だ、ダビィかぁ・・・・・エッ!?」
「ダビィって、人間姿になれたかしら?」
なぎさとかれんは、ダビィが人間姿になれる事は、今初めて聞いたような気がして首を捻ると、真琴はダビィを見ながら話し始め、
「みんなで妖精学校に行った時、ココとナッツから教わったそうです!」
一同にもダビィが人間姿になれる事が分かり、皆感心したようにダビィを、見つめ、
『ヘェ!』
「「ああ、あの時・・・」」
真琴の説明を聞いた瞬間、のぞみとこまちの軽蔑の視線が、ココとナッツに飛んだ。二人は見る見る顔から汗を流し、
「お、おいおい!あの時ちゃんと説明しただろう?」
「また蒸し返すつもりか?」
「「別にぃぃ・・・」」
のぞみとこまちは、同じような仕草でソッポを向き、慌てるココとナッツを見た一同が笑みを浮かべた。そんな騒動も気付かないように、ダビィはキョロキョロ辺りを見回すと、ランスの姿が見当たらない事に気付いた。
「そう言えば・・・ランスの姿が見えないわねぇ?」
「エッ!?・・・大丈夫だとは思うけど、人間界に慣れて居ない、ランスだけ残すのは不味いね!」
「ああ、少し部屋の中を捜してみるか?」
全員揃わないと、部屋に移動出来ないというココとナッツの声を聞き、アン王女は見る見る表情を曇らせ、
(あの子の性格からして・・・)
「わたくしに思い当たる節がありますので、かれんさん、わたくしと一緒に来て頂けますか?」
「エエ、構いませんけど・・・」
アン王女は、今別荘で冷房が掛けられている部屋を聞くと、そこに向かった。大広間へとやって来た二人は、そこで気持ち良さそうに寝ているランスを見付けた。かれんはクスリと笑い、
「フフフ、気持ち良さそうに寝て居ますねぇ!ココ達には後で・・・アン王女!?」
かれんは、気持ち良さそうに寝ているランスを、このまま起こすのも悪いと思ったものの、アン王女は無言でランスに近付くと、片手でランスの頭を持ち上げ、かれんは思わず呆然とした。気持ち良さそうに寝ていたランスだったが、突如魘され目を開けると、そこには、口元に笑みを浮かべながらも、目には殺気すら放って居るアン王女と目が合った。
「ランスゥゥ・・・ちゃんと皆さんと行動しなくては、駄目ですわぁぁ!」
「ゴ、ゴメンでランスゥゥゥゥゥ!」
その瞬間、ランスの口から魂が抜けたかのように、ランスはグッタリし、振り向いたアン王女は、困惑するかれんに、満面の笑みを浮かべ、
「さあ、皆さんの下に戻りましょう!」
「アン王女・・・確認するようですけど、その子、生きてますよね?」
「まあ!?かれんさんったら・・・当然ですわ!フフフ!!」
アン王女は、片手でランスの頭を掴みながら、かれんと共に大広間を出て行った。かれんはこの時、アン王女を怒らせるのだけは、絶対止めようと心の中で誓った・・・
3、プリキュア!エクスクラメーション!!
部屋に戻った一同は、折角やって来たんだから、水着に着替えて海に行こうという美希の提案を受け入れ、水着に着替えた・・・
先にビーチに来て居た妖精達は、ココやナッツ、ダビィを手伝い、ビーチパラソルや、ビーチベッドの準備を始めた。そこに、水着に着替え終えたなぎさ達一同が現われ、思わずココとナッツは視線に困り、困惑して居た。
上下紐で結ぶビキニを着ているのは、満、薫、のぞみ、ラブ、美希、祈里、せつな、真琴の八人・・・
フレア付きビキニを着ているのは、なぎさ、ひかり、咲、舞、りん、うらら、くるみ、つぼみ、えりか、いつき、響、奏、アコ、みゆき、あかね、やよい、なお、あゆみの十八人・・・
ワンピースタイプを着ているのは、ほのか、こまち、かれん、ゆり、エレン、れいか、アン王女の七人・・・
ある者は堂々と、ある者は恥ずかしそうに、ビーチへとやって来た!のぞみはココの前にやって来ると、
「ココォ!どう!?似合ってる?」
「エッ!?・・・ウン、可愛いよ!」
「エェェ!?それだけ?」
のぞみは、頑張ってビキニにチャレンジした自分の姿の感想を、もっとココから聞きたかったものの、ココは恥ずかしがり、ジィと凝視する事は出来無かった。一同の水着姿を見た、ラケルの心臓の鼓動は速まり、
「な、何だか、胸がドキドキして凄いケル・・・」
「シャル!?ラケル、気分が悪いなら、ちょっと休んでいると良いシャルよ!」
「そうさせてもらうケル!」
ラケルは、美希にブルンで出して貰った、妖精用のサングラスを掛けると、妖精用のビーチベッドに横になった。だが、サングラスの視線に映るのは、水着姿の一同で、それを見たラケルは、ニヤニヤするだけだった。
『何だか・・・妙な視線を感じるような?』
一同は、魔王でも居るのかと困惑気味にキョロキョロするも、特に見当らず、準備運動をして海へと入って行った・・・
「みんな、急に深くなるから、奥に行くなら気を付けてね!」
かれんからの忠告を聞き、泳ぎが得意な者は奥まで泳ぎ、苦手の者は波打ち際で水の掛け合いをしてハシャいだ。
なぎさは、ほのかとゆりを誘い、ビーチパラソルの下で、ビーチベッドに寝転びながら、昨日のブルーとメランとの出来事をゆりに語って聞かせた・・・
「そんな事があったのね・・・」
「ウン!それで、私とほのかは、エンプレスのお墓参りをしたんだけど、私達その時、エンプレス、マジシャン、プリーステスが、プリキュアエクスクラメーションを放つ姿が浮かんで来たんだよね!」
「まるで三人の意思が、私となぎさに技を伝授するかのように、ハッキリと見えたの!」
少し興奮気味に話すなぎさとほのか、ゆりは二人の顔をマジマジと見つめながら、
「プリキュアエクスクラメーション!?それを私達で試して見ようという事?」
「ウン!折角合宿に来てるしさ・・・ゆりはムーンタクト持ってるから、光の槍の代わりに使えないかなぁって思ってさぁ!!」
「そうねぇ・・・折角のプリキュア合宿だし、それも良いわね!」
なぎさの提案に、ゆりは少し考える表情を浮かべた。結果的に役立つかも知れないのなら、試して見る価値はあるだろうと思ったゆりは、なぎさの言葉に同意した。なぎさとほのかは、顔を見合わせて笑みを浮かべ、
「本当!?じゃあ早速試して見よう!」
「「私達が見たのは・・・」」
なぎさとほのかは立ち上がると、背中合わせにビーチにしゃがみ、昨日見たエンプレスとプリーステスの構えを真似た。
「今私とほのかが構えてる姿が、エンプレスとプリーステスの構えで、ゆりが真似るマジシャンは、後ろで中腰になって私達の間に立ち、光の槍を構えるんだけど、取り敢えず今はイメージ特訓で・・・」
最初はギコチ無かったものの、次第に形になって来た事で、夜にでもプリキュア姿になって、一度試して見ようと話は纏まった。
その時、ラブ、美希、祈里、せつなの悲鳴が響き渡り、一同は何事かと四人を見つめると、肩まで肌を出したラブが、顔を赤らめながら叫びだし、
「みんなぁ!気を付けてぇぇ!!海の中に何か居る!!!」
『エッ!?』
ラブの忠告を聞き、一同が驚く中、咄嗟に響が海の中に潜ると、確かに何か黒い物体が居た。黒い物体が響の側を通り過ぎた瞬間、響は溺れたかのように、バシャバシャ海で藻掻き、心配そうに奏が響に話し掛け、
「響!どうしたの?」
「み、みんなぁ、ラブさんの言う通り、海の中に黒い何かが居る!そいつが・・・擦れ違った瞬間、私の水着を取っちゃって・・・」
「エッ!?じゃあ響は今・・・」
「ウン、何も着てない・・・・・」
恥ずかしそうに響がポツリと呟くと、奏は大慌てで、
「た、大変!?今バスタオルを・・・キャァァァァァ」
「奏!?ワァァァ?」
「りんちゃん!?どうしたの・・・エェェェェ!?」
ラブ達四人に続き、響と奏、更にはりんにのぞみと、被害者は徐々に広がり、海の中は少女達の悲鳴でパニック状態になって居た。サングラスを外して、ジィとれいかを見て居たラケルは、ワンピースなのに、まるで水着だけ掃除器で強引に吸引されたように、水着を剥ぎ取られたれいかの姿を見て、興奮のあまり鼻血を吹き出し、ピクピク痙攣した。
「ラケルゥゥゥ!どうしちゃったシャル!?」
「う、生まれて来て・・・良かったケル!」
「ハァ!?何言ってるシャル?」
シャルルは、ラケルが顔を赤らめながら、幸せそうに悦に浸った表情を浮かべる姿を見て、呆れたように見つめた。被害は更に深刻な状況になり、ビーチに居たなぎさ、ほのか、ゆり以外のみんなが、着ていた水着を剥ぎ取られて居た。人間姿のココ、ナッツ、シロップが心配して近づこうとするも、のぞみは慌てて両手を振って来ないでアピールをした。
「ダメェェェ!こっちに来ないでぇぇぇ!!」
「いや、しかし・・・それじゃ!?」
このまま一同を放っておく訳にも行かず、ココ、ナッツ、シロップが困惑していると、
「私が、みんなの分のバスタオルを持って来るわ!」
人間姿に変化したダビィが、慌てて人数分のバスタオルを取りに行った。なぎさ、ほのか、ゆりにも、一体海で何が起こって居るのか理解出来なかった・・・
「何!?海の中で何が起こってるの?」
「分からない・・・でも、何かが海の中に居るらしいわ!」
「なぎさ、ほのか、私達も行きましょう!」
慌ててみんなが居る海に駈け出そうとした時、そんななぎさ、ほのか、ゆり、三人の背後から声が掛かり、
「カゲカゲカゲ!お前達、よくも俺を除け者にしてくれたなぁ!!」
「「「魔王!?どうしてここに?」」」
「カゲカゲカゲ!俺は、お前達の気配が分かるカゲ!!」
踏ん反り返って高笑いを浮かべる魔王だったが、そんな魔王を、なぎさ、ほのか、ゆり、そして海の中に居る一同の視線が、射るように見つめた。
「カゲカゲカゲ!そんな目で睨んだって駄目カゲ!俺を除け者にしたお前達が・・・」
「あんたの仕業かぁぁぁぁ!」
「最低だわ!」
「魔王、みんなに水着を返しなさい!」
なぎさ、ほのか、ゆりに凄まれた魔王だったが、何の事かさっぱり分からないように首を傾げ、
「水着!?お前達、何の事言ってるカゲ?」
「惚けるなぁ!いくら除け者にされたからって、腹いせにみんなの水着を奪う何て・・・許せない!!」
「水着!?ちょ、ちょっと待つカゲ!俺は今来たばかりで・・・」
そう言いながらも、頭の回転が速い魔王は、今海の中に居る一同は、裸で居るのではないかと想像し、パタパタ宙に浮かぶと海へと近付いて行った。魔王の視線が一同をゆっくり見つめ、ラブへと向けられた。ラブは思わずドキっとした表情を浮かべ、
「な、何よ、その顔はぁ!?」
「ラブ、呼んだカゲ!?」
「よ、呼んでない!呼んでないからぁぁ!!」
「良く聞こえ無いカゲェェ!」
魔王はフワフワ浮かびながら、スケベ顔でラブに近付いて行くと、ラブは慌ててシッシッとジェスチャーしながら、
「こ、こっちに来ないでぇぇ!」
「何て言ったカゲェェェ!?」
「来ないで・・・・・イヤ」
近づいてくる魔王から逃げようとしたものの、ラブは顔を覆って泣き出した。せつなはラブに近付いて慰めながら、険しい表情で魔王を睨み付けた。それを見たなぎさは、全速力で駆け出して魔王を右手で叩き付けると、魔王は目をグルグル回しながら、ビーチにゴロゴロ転がった。
「なぎさぁぁ!何するカゲェェ!!」
「あんた!最低だよ!!そりゃあ、あんたがエッチなのは知ってたけど、みんなの水着を無理矢理剥ぎ取る何て・・・もう絶交だよ!!!」
怒ったなぎさは、少し目に涙を溜めながら、魔王からソッポを向いた。絵本の世界から続く魔王との日々、何だかんだ言っても、魔王もまた大切な仲間の一人になって居たが、その魔王に裏切られた気がして、なぎさは悲しそうな表情を浮かべた。海の中からも、次々に罵声を浴びせられた魔王は、
「俺は、何もしてないカゲェェ!何で信じてくれないカゲ?」
「信じられるかぁ!大体、黒い物体でこんな事するようなの、魔王しか居ないじゃない!!」
『最低!』
「魔王!内緒にしたのは悪かったけど・・・こんな事する何て、酷いよ!!」
次々と魔王へと浴びせられる罵声、みゆきを含めた一同に嫌われた魔王の目に、ジワリと涙が浮かんだ時、美希は慌てて一同を止めた。
「みんなぁ、待って!あたしも、魔王じゃ無いと思う!!」
「ウゥゥゥ・・・美希ぃぃ!」
「ヒィィィ!こっち来なくて良いから!!」
顔をクシャクシャにしながら、嬉しそうに美希に近付こうとした魔王を、美希は変顔浮かべながら拒絶した。
「美希、何も魔王何か庇わなくても・・・」
美希が魔王を庇う姿を見て、困惑しながらなぎさが美希に声を掛けるも、美希は首を振り、
「ウウン!そうじゃないの・・・あたしの考えが確かなら、あたし達の水着を剥ぎ取ったのは・・・絶対魔王じゃ無い!!あたし、この感触に覚えがあるの!!絶対に忘れられない、幼い頃この腕に感じた感触が・・・この感触・・・間違い無い!!タコよ!!!」
「タコ!?みんなの水着を奪ったのが、タコだって事?」
なぎさが聞き返したその時、突然海から三本の足が洗われ、吸引力の優れた掃除器のように、なぎさ、ほのか、ゆりの水着を吸い取った。
「「「キャァァァァァ!?」」」
三人は、手で身体を隠しながら、慌てて海に飛び込んだ。その瞬間、海から20メートル前後ありそうな、巨大な黒いタコのような怪物が現われ、一同は驚愕した。更に驚かされたのは、タコの足には、一同が奪われた水着が吸盤に吸い付き、戦利品のように風に靡いていた。
「タッコでぇす!海は広くて迷ったが、ようやく見付けたぞ、プリキュア!!」
八本の足をウネウネ動かしながら、魔界の魔獣タッコが姿を現わした。キャミーは一同に知らせるように、
「みんな、気を付けるニャ!タッコの足の吸盤は・・・あらゆる衣服を吸い取るニャ!!」
「衣服を・・・吸い取る!?」
「じゃ、じゃあ、あいつの仕業だったの!?」
咲が、なぎさが、キャミーの忠告を聞き、改めてタッコを見た。勝ち誇ったように足を振り回すタッコの姿を見て、魔王は目を吊り上げると、
「だから、俺じゃないって言ったカゲ!」
キャミーの忠告を聞き、一同は呆然とした。キャミーの話が本当ならば、自分達は美希の言う通り、魔王に濡れ衣を着せていたのだから・・・
『ゴメンなさい・・・』
魔王を疑った事を反省し、一同は素直に魔王に謝った。魔王はタッコを睨むと、
「大体、こんな事になったのも全部お前のせいカゲェェ!・・・アッ!?でも、裸にしたのは出来したカゲ!!」
『オイ!』
何気に裸にした事は褒める魔王に、一同からツッコミが起こった。魔界の魔獣タッコが現われた事で、妖精達も騒ぎ、メップル達、フラッピ達、シプレ達は、互いのパートナーの下に向かおうとすると、シロップが巨大化し、
「みんな、シロップの背に乗るロプ、ココ!ナッツ!あいつらの変身アイテムを・・・」
「分かった!」
人間姿のココとナッツは、預かっていた変身アイテムをシロップに積み込み、シロップの背に乗ると、ココとナッツは妖精姿に戻った。それはなぎさ達一同への配慮で、妖精姿ならば、恥ずかしさも少しは薄れるのではないかという思いからだった。シロップは、水着を剥ぎ取られ、どうする事も出来ないなぎさ達一同の下へと飛び立った。ピーちゃんは魔王を促し、タッコの注意を惹きつけるべく、タッコの周りを飛び回った。その隙を付き、真琴以外の一同が、次々に変身アイテムを手にすると、瞬時にプリキュアへと変身した。
「プリキュア!お前達を倒し、俺がシャックス様に推薦されて新たなる魔神に・・・」
「シャックス!?」
「あいつなら・・・この前マーチに倒されたで?」
シャックスの名を聞き、瞬時にマーチが不快感を表し、サニーが、マーチによって既にシャックスは浄化された事を伝えた。これにはタッコも驚き、
「エッ!?」
驚くタッコに鋭い視線を向けたムーンライトは、
「みんな!わざわざ向こうから、今夜のおかずが現われてくれたわ!!」
「エッ!?エェェ?」
「あれを・・・食べるの!?」
「え、遠慮するわ・・・」
更に驚いたタッコが、思わず自分の足を自分に向けると、ムーンライトの口元がニヤリと上がった。マリンとベリーは変顔浮かべながら首を振り、タッコはホッと安堵した。ブラックは、ブルーム、ドリーム、ピーチ、ブロッサム、メロディ、そしてハッピーにアイコンタクトすると、七人はシロップの背に乗り、上空高く飛翔すると、タッコ目掛け一気に飛び降りた。
「よくもあんな恥ずかしい目に遭わせてくれたわねぇ・・・みんな、行くよ!プリキュア!!」
「「「「「「「コラボレーションパ~ンチ!!」」」」」」」
ピンクチームの七人が、ブルーム、ドリーム、ピーチ、ブロッサム、メロディ、ハッピー、そしてブラックの順番で、タッコの頭目掛け、急降下しながらのパンチを浴びせた。軟体動物であるタッコだったが、思わずその威力に口から泡ならぬ墨を吐いて悶えた。
「よくも私達に恥をかかせてくれたわね!」
アクアの周囲で波が高まると、アクアはブルーチームの仲間を見た。アクアが手を上げると、波はアクア、ベリー、マリン、ビート、ビューティの身体を持ち上げた。突然の出来事に動揺する四人に、
「みんな、流れに身を任せて!行くわよ・・・プリキュア!」
「「「「「コラボレーションキ~ック!!」」」」」
まるでウォータースライダーをやっているかのように、五人の身体がタッコ目掛け滑り降りて行った。アクア、ベリー、ビート、ビューティの流れるような蹴りを受け、タッコがバランスを崩し、最後にマリンの攻撃が決るかと思われたが、マリンはその勢いのまま海にダイブし、目をグルグル回して海に浮いて居た。
「マリン・・・大丈夫?」
「いきなりやらないでぇぇ!死ぬかと思ったよ!!」
心配してマリンに近付いたアクアが、マリンを介抱すると、マリンはプンプン怒り、アクアは苦笑しながら謝った。油断していた二人の背後から、タッコが口から種のような黒い何かを吐き出すも、ルミナス、ミント、サンシャインが攻撃を防ぎ、レモネードとミューズが、プリズムチェーンとシャイニングサークルでタッコの動きを封じた。そんなマリンに代わるかのように、上空からイーグレット、ブライト、ウィンディが、後方からルージュ、パッション、パイン、サニー、マーチが、タッコに攻撃を喰らわせた。
「よ~し!私も頑張っちゃうぞぉぉ!!プリキュア!ピース・・・」
「ピース、止めて!」
「海でピースサンダー使ったら・・・」
慌ててリズムとエコーがピースを止めた。雷は拡散し、近くに居た一同を巻き込む恐れがあった為である。ブラックは、ホワイトとムーンライトに話し掛け、
「ホワイト、ムーンライト、あの技・・・試して見ない?」
「此処で!?・・・そうね」
「良いわよ!」
「「「みんな、離れて!!」」」
突然三人で構え始めたブラック、ホワイト、ムーンライトを見て、一同は慌ててタッコから離れたものの、裸のままの真琴とアン王女は、海から上がるに上がれず困惑していると、ベリーが二人に近付き、
「取り敢えずこの姿で我慢してて!」
ベリーはブルンを呼び出すと、二人に何やら水着を着せて上げた。
「ありがとう!」
「これなら海から上がれ・・・・・エッ!?」
「「キャァァァァ!」」
ビーチに出た真琴とアン王女だったが、二人が着ていたのは白い貝殻ビキニ姿で、二人は恥ずかしそうにその場でしゃがみ込み、ラケルの鼻からは再び鼻血が吹き出した。戻って来たダビィによって、真琴とアン王女はバスタオルを渡して貰った。バスタオルを身体に巻いたアン王女と真琴は、海から戻って来たベリーを、恨めしそうに見つめると、
「ベリー!何て格好をさせるんですの?」
「もう・・・酷いです!」
「イヤァ!二人共、貝殻ビキニに興味持ってたようだから、つい・・・ね」
「こんな水着、もう懲り懲りですわ!」
珍しく取り乱すアン王女を見て、ラケルとランスが笑って居ると、ギロリとアン王女に睨まれ、二人は慌てて視線を逸らした。慌てて近付いたアクアは、
「ベリー・・・アン王女をからかうのは、止めた方が良いわ!」
「どうして・・・・エッ!?」
ベリーの視線に、右手にラケル、左手でランスを掴んだバスタオル姿のアン王女が、無言のまま別荘に戻って行く姿を見た。ベリーの背筋はゾッとし、思わず自分がアン王女に頭を捕まれ、引き摺られている姿が思い浮かんだ。
「後で・・・アン王女に謝ってきます!」
「エェ・・・その方が良いわ!」
アクアはコクコク頷き、真琴はそんな二人を見て首を傾げた。
プリキュアエクスクラメーションの体勢に入った、ブラック、ホワイト、ムーンライトの三人、ムーンタクトに、黒い稲妻と白い稲妻が落ち、目映い発光を始めた。
「このままじゃ・・・終わらんチュゥゥノ!!」
タッコは、ブラック、ホワイト、ムーンライトの三人目掛け、三本の足を必死に伸ばした。それと同時に、ムーンタクトが一層輝き、三人の身体が光に包まれた。
「「「プリキュア!エクスクラメーション!!」」」
三人の叫びと共に、ムーンタクトから目映い光が一気に解放され、タッコの巨大な身体を一瞬で包み込み、遥か先の海で目映い巨大な閃光を放ち、やがて治まった・・・
「フゥゥ!成功した・・・のかなぁ?」
三人が力を使い切ったかのように息を吐くと、他のプリキュア達は目を点にして驚いた。技の威力もそうだが、一同が驚いた理由・・・
それは・・・
「ココォォ!見ちゃ駄目ぇぇぇ!!」
ドリームが慌ててココの目を塞いだ・・・
「ナッツさんも!」
ミントがナッツの前に立ち、前を塞いだ・・・
「シロップもだよ!!」
レモネードが、シロップの身体を後ろに向けた・・・
「タルト!こっちにいらっしゃい!!」
パッションが、タルトを無理矢理瞬間移動で移動させた・・・
「コフレ!あんたもさっさとこっちに来なさいってば!!」
変顔浮かべたマリンが、コフレを脇に抱えてビーチ後方に下がった・・・
「ピーちゃん、こっちおいで!」
メロディが両手を広げ、ピーちゃんを呼び寄せた・・・
「アレェ!?魔王の姿が・・・」
ハッピーは、辺りをキョロキョロ捜すも、魔王の姿が見当らなかった・・・
「ブラック、ホワイト、ムーンライト・・・」
「あのぅ・・・三人の衣装が、さっきのタコさんに・・・」
困惑した表情で、ピーチとブロッサムが三人に話し掛け、三人の衣装が、タッコによって剥ぎ取られた事を伝えた。一瞬の沈黙の後、互いの姿を見た三人は、
「「「エッ!?・・・キャァァァァァ!」」」
タッコの最期の足掻きで、三人のプリキュア衣装は全て剥ぎ取られ、三人は、全裸のまま慌ててその場にしゃがみ込んだ。
「ありえない!ありえない!ありえな~い!」
ブラックが絶叫し、ダビィからバスタオルを貰ったルミナスが、慌てて三人にバスタオルを渡すと、三人は慌ててバスタオルを身体に巻いた。
「オォォイ!お前達、無事カゲかぁ?」
「「「魔王!?こっちに来ないでぇぇ!!」」」
何所に潜んでいたのか、魔王は、バスタオル姿のブラック、ホワイト、ムーンライトに海から近付いて来た。取り乱した三人は、こっちに来ないように魔王に告げるも、
「エェェ!?良く聞こえ無いカゲェ?」
魔王が更にスケベ顔で近付き、それを見た三人の目は一気に吊り上がり、無言で再びプリキュアエクスクラメーションの体勢になった。しゃがみ込んだブラックとホワイトのバスタオルが捲れ、健康的な太股が露わになり、見えそうな魅惑のデルタゾーンを見て、魔王は興奮して一層近付いたものの、
「「「プリキュア!エクスクラメーション!!」」」
「カゲェェェ!?」
目映い閃光が魔王の脇を貫き、魔王の顔から大量の汗が滴り落ちた。魔王は、恐る恐る背後を振り向くと、先程同様、巨大な閃光が海の彼方で輝いた。
「お、お前達、俺を殺す気・・・・・カゲ!?」
「「「プリキュア!エクスクラメーション!!プリキュア・・・・・・」
「ギャァァァ!魔王殺しぃぃぃ!!」
魔王目掛け、プリキュアエクスクラメーションの連射が飛び、魔王は海の上で必死に躱し続けた。その余波を受け、遠くの海が荒れ、次第に島に高い波が押し寄せ、ビーチに大量の魚が打ち上げられ、ピチピチ跳ねて居た。
「わ、私の島が・・・・・」
「ちょ、ちょっと、止めないとヤバくない?」
アクアは思わずよろめき、慌ててミントとベリーがアクアを両脇から抱え、顔色変えたドリームは、ルージュ、ピーチ、パッション、メロディ、ビートと共に、ブラック達三人に抱き付き、攻撃を止めさせた。
魔王はゾッとし、この三人を怒らせるのだけは、絶対止めようとこの時心の中で誓った・・・
こうして、波乱に富んだプリキュア合宿一日目は終了した・・・
第百八話:水着泥棒は誰!?
完
百八話投稿しました!
今回は、プリキュア合宿初日の模様を書いてみました。海と言えば水着という事で、ちょっとエッチな話にしてみましたw
魔法つかいプリキュア・・・先週のモフデレラというスマイルのプリキュアロボ並のカオス回に爆笑しました。カオス回なのに、重要アイテムを知らない間に入手するという凄い話でしたねぇ!そして今週、新たなる幹部が二人も登場しましたねぇ、何気に声優さんも豪華でした。まだ仲間が居そうで、どのような展開になっていくのか、楽しみです!!
尚、来月からはまた町内会行事が始まりますので、更新は遅くなります・・・