プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百十六話:スマイルプリキュアとバッドエンドプリキュア(前編)

1、あゆみとバッドエンドビューティ・・・あゆみを捜せ

 

 バッドエンド王国・・・

 

 バッドエンドプリキュア達は、なぎさ達にお仕事再開する旨を伝え、バッドエンド王国に戻って来た。バッドエンドサニーは、満から貰ったチョココロネを四人に渡し、五人はチョココロネを食べながら、各自状況を報告していたが、バッドエンドビューティから、なぎさは、自分達がバッドエンド王国を離れてくれる事を、信じて居るからと伝えられ、一同に微妙な空気が流れた・・・

 

「ブラック先輩はそう言うけど・・・」

 

「せやな、ウチら、バッドエナジーを集めな、消滅するっちゅう話しやし」

 

「ウン・・・」

 

「確かに向こうの世界は、美味しい物が沢山あるのは魅力的だけどさぁ・・・」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチも、なぎさには好意を持っているようで、複雑な胸中を語った。バッドエンドビューティは少し考え込むと、

 

「でも、確かにピースはバッドエナジーを集めたとはいえ、夏休みの間、私達はほとんどバッドエナジーを集めていないのに、私達の身体には何ら異変が起こらなかった事も事実・・・私達が初めてジョーカーに会った時、ジョーカーは、私達がバッドエナジーを定期的に回収しなければ、消滅すると言っていたのによ?」

 

「って事は・・・ジョーカーが、あたし達を欺まして居たって事か?」

 

「そう考えれば、辻褄は合うわね」

 

 バッドエンドマーチに聞かれた、バッドエンドビューティは軽く頷いた。頭の回転速い彼女は、以前ダークプリキュア5に言われた、ジョーカーに利用されているという言葉は、事実かも知れない事を悟った。バッドエンドハッピーは頬を膨らまし、

 

「エェェ!?酷~い!」

 

「そうだとしたら・・・どうする?」

 

「ジョーカーにウチらの実力・・・見せ付けたろうか?」

 

 バッドエンドマーチとサニーが、少し険しい表情でバッドエンドビューティに問うた。彼女達も、ジョーカーが自分達を欺ましていたのなら、許せない気持ちがあった。だが、バッドエンドビューティは首を振った。彼女もジョーカーに不信感は抱いていたものの、ジョーカーが自分達バッドエンドプリキュアを産み出した事は、否定できない事実だった。

 

「それは得策じゃ無いわねぇ・・・私達を産み出したのは、ジョーカーだという事は事実だわ。ジョーカーは、何か企んで居るのかも知れないし、迂闊な行動は慎むべきだと思う・・・今の所は、ジョーカーに言われた通り、バッドエナジーを集めましょう」

 

「「「「分かった!」」」」

 

 バッドエンドビューティの言葉に、他の四人は同意してコクリと頷いた。ジョーカーに不信感は沸いたものの、彼女達は気持ちの切り替えが早かった。バッドエンドハッピーは、何かを思い出したのか両手を一度叩き、

 

「そうだぁ!ねぇねぇ、スマイルプリキュアとソードには、明日学校で会うから良いけど、エコーの事はどうするの?」

 

 バッドエンドハッピーに聞かれた一同、バッドエンドサニーはポンと手を叩き、

 

「せや!あいつもスマイルプリキュアやったなぁ?」

 

「ウン!でもエコーは、ハッピー達とは別の町に住んで居るみたいだよ?」

 

 バッドエンドハッピーはコクリと頷き、バッドエンドビューティも同意し、頭の中でエコーのデーターを整理すると、

 

「ええ、確かエコーは、横浜って所に住んで居るようだわ」

 

「横浜かぁ・・・確か美味しい中華料理の店が、一杯有るとかって本で見たぞ」

 

「エヘヘ、折角だしみんなで見に行ってみようよ?」

 

 横浜の話題が出た事で、バッドエンドマーチは思わず本で読んだ中華街の事をイメージし、バッドエンドピースも興味有りそうな表情で、一同に横浜行きを頼んだ。バッドエンドハッピーも、興味有りそうに身を乗り出しながら同意すると、

 

「じゃあエコーには、みんなでお仕事再開した事を伝えに行こうかぁ?」

 

「「「「OK!」」」」

 

 バッドエンドハッピーの言葉に、他の四人も同意し、バッドエンドプリキュアの五人は、あゆみが住む横浜の地へと向かった・・・

 

 その頃あゆみは、学校から帰ってから、自分の部屋で情報雑誌を読んで居た。グレルとエンエンも、興味深そうにあゆみの側に近寄ると、あゆみが熱心に見て居るページを覗き見た。

 

「あゆみ、何の本読んでるんだぁ?」

 

「ン!?これ?情報雑誌で、今私が見てるのは、最近出来た美味しいクレープ屋さんの特集だよ」

 

 あゆみは二人にそう説明したものの、グレルとエンエンにとっては何の事か分からず、二人は顔を見合わせながら首を傾げた。エンエンはあゆみに問い掛け、

 

「クレープって?」

 

「そうかぁ・・・エンエンもグレルも、クレープってまだ食べた事無かったっけ?ひかりさんのお店にも有ったんだけど・・・そうだ、今から行ってみようか?」

 

「「行きたい!」」

 

 グレルとエンエンが、同時に行きたいと手を上げた事で、あゆみは思わず笑みを浮かべ、

 

「じゃあ、そうしようか・・・支度するからちょっと待ってて!」

 

 あゆみは、横浜の地にバッドエンドプリキュア達が来て居るとも知らず、エンエンとグレルをバッグに入れ、雑誌に載っていたクレープ屋へと向かった・・・

 

 

 バッドエンドプリキュアの五人は、プリキュア姿では目立つ為、七色ヶ丘中学の制服に着替え、みさき、あおい、やおい、なみ、れいなの姿となった。なみたっての希望で、中華街の入り口ともいえる善隣門に来た五人、れいなは一同に話し掛け、

 

「じゃあ、手分けして五人でエコーを捜しましょう。一時間後に此処で落ち合いましょう」

 

「「「「分かった!」」」」

 

 れいなの言葉に四人も同意し、五人は、それぞれ別れてあゆみの捜索に向かった・・・

 

 

 一時間後・・・

 

 再び中華街の善隣門前に集合した五人、先ずれいなが状況を一同に話し始め、

 

「私は、港の見える丘公園と、元町って所を捜してみたけれど、残念ながらエコーは見付けられなかったわ・・・マーチは?」

 

「見付けた!」

 

「エッ!?何所に居たの?」

 

 れいなは、なみがあゆみを見付けたと思って身を乗り出すも、なみは袋から肉まんを取り出すと、

 

「雑誌に載ってた肉まん、ようやく見付けたぁ!みんなの分も買っておいたから」

 

「「ありがとう!」」

 

「おおきに!」

 

「・・・・・」

 

 なみから肉まんを分けて貰い、みさき、あおい、やおいは嬉しそうに肉まんを頬張った。肉汁が口内に溢れ出し、四人は幸せそうな表情を浮かべるも、れいなは、呆然としながら肉まんを手にしたままだった。次に一同に報告したのはあおい、

 

「ウチは、おもしろ水族館ちゅう所に行ったんやけど、中々ブサイクな魚が居って笑ったわ」

 

 あおいが行ったのは、横浜中華街の中にある水族館で、色々変わった作りをしてあった。下駄箱の中に水槽が入って居たり、色々な実験コーナーがあったりして、あおいはそこそこ楽しめた様子で、一同に語って聞かせた。

 

「「「へぇ!?中々面白そうだねぇ?」」」

 

「・・・・・」

 

 肉まんを食べながら、あおいの話を興味深く聞くみさき、やおい、なみだったが、れいなは、ようやく肉まんを食べ始めるも、微妙な表情を浮かべ無言だった。次に報告したのはみさき、

 

「私は・・・公園で猫と遊んでたぁ!ニャァニャァ鳴いて可愛かったよぉ」

 

 みさきが歩き疲れて休憩したのは、横浜中華街内にある山下町公園、関帝廟通り入り口には、二匹の狛犬が居たり、中華街のシンボルツリーと言われるけやきの大木があったり、肉まんなどを買った観光客が、座って休める屋根付きベンチがあった。みさきはそこで猫を見掛け、思わず猫をあやしていたら時間がどんどん過ぎ、集合時間が近付いて居た。みさきは、その時を思い出したのか、幸せそうに頬擦りするようなジェスチャーをすると、あおい、やおい、なみは、肉まんを食べながらコクコク頷きながら、

 

「「「へぇ~」」」

 

「・・・・・」

 

 だが、れいなは瞬きもせず固まった。最後に報告したのはやおいで、

 

「私は、横浜大世界って所に行ったのぉ!トリックアートが面白かったよ」

 

 やおいが行ったのは、横浜大世界という場所で、一階はお土産物屋や点心屋台、二階にはコンフォートフロア、三階には飲茶喫茶などがあり、四階~八階は、やおいが行ったトリックアートミュージアムがあった。四階には、身体を使って錯覚を楽しむ体験コーナーが有り、五階には、大学博士や現代作家などが作成した、アート作品を集めたコーナーが有り、六階には、大型スクリーンによる3D映像や、動画作品コーナーが有り、七階と八階には、写真撮影OKで、見学者も参加出来るトリックアートコーナーがあった。

 

「ほな、これから行ってみるぅ?」

 

「「良いねぇ!」」

 

「本当!?じゃあ、案内するね!・・・ン!?ビューティ、どうしたの?」

 

 れいなの周囲で冷気が漂いだし、あおい、みさき、なみ、そしてやおいの表情が見る見る焦りだした。れいなは、キッと険しい視線で四人を見つめると、

 

「あなた達ぃぃ・・・一体ここに何をしに来たのかしらぁぁぁ?」

 

「ビュ、ビューティ、落ち着いてぇぇ!」

 

「捜す、真面目に捜すよってぇ・・・」

 

「エ、エコー、何所かなぁ?」

 

「アレェ!?見当らないねぇ?」

 

 みさき、あおい、やおい、なみが、あゆみを捜す振りをするも、その態とらしい行為は、益々れいなを苛立たせ、れいなの姿がバッドエンドビューティに変わった。

 

「あなた達をあてにした、私がバカだったわ!このままエコーを誘き寄せる・・・世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!白紙の未来を、黒く塗りつぶしなさい!!」

 

 バッドエンドビューティは、まるで鬱憤を晴らすかのように、黒い絵の具を黒き書を開いて、白紙のページに勢い良く叩き付けると、横浜中華街の空が紺色に染まり、辺りに冷気が漂った。バッドエンドビューティの下へ、中華街に居た人々から発せられたバッドエナジーが集まり、ピエーロ完全復活の目盛りが上がった。みさき達四人も、バッドエンドプリキュアの姿に変化すると、

 

「ビューティ、ご機嫌斜めやなぁ?」

 

「どうしたんだろうねぇ?」

 

「逆らわない方が良いよ」

 

「ここはおとなしくするか」

 

 バッドエンドサニー、ハッピー、ピース、マーチの四人は、自分達の行動が、バッドエンドビューティを怒らせた自覚が無いようで、バッドエンドビューティの視界に入らないように、四人はビルの死角に隠れた。

 

「さあ、出て来なさい!キュアエコー!!」

 

 本来、お仕事再開をあゆみに知らせに来ただけの筈が、仲間達の行動で怒ったバッドエンドビューティもまた、当初の目的を忘れて居た。

 

 バッドエンド空間が発生した異変は、直ぐにグレルとエンエンにも感じられた。二人はハッとすると、

 

「あゆみ、向こうの方で嫌な感覚がするぞ」

 

「また何か現われたみたい」

 

「エッ!?・・・本当だ!あれは、中華街の方だわ・・・」

 

 あゆみは、一瞬みゆき達に知らせるべきか迷ったものの、そのまま中華街目指して駈け出した。懸命に駈け続けたあゆみは、空に浮かぶバッドエンドビューティに気付いて顔色を変えると、

 

「あなたは、バッドエンドビューティ!?」

 

 あゆみがようやく現われた事で、バッドエンドビューティは口元に笑みを浮かべた。

 

「ようやく現われたわね、キュアエコー!私達は、バッドエナジーを回収する事を再開するわ。今日はほんの挨拶、次に会う時は・・・」

 

「待って!?次に会う時って・・・もうあなた、バッドエナジーを奪って居るんじゃないの?」

 

「エッ!?・・・そう言えば?」

 

 バッドエンドビューティは、あゆみに言われて何時もの冷静さを取り戻すも、跋が悪そうな表情を浮かべながら、ゆっくりあゆみの目の前に降り立った。

 

「エ、エコー、と、とにかくちゃんと知らせたわよ?」

 

 バッドエンドビューティはそう告げると、慌ててバッドエンド王国に戻って行った。他の四人は、慌ててビルの死角から飛び出してくると、

 

「「「「ビューティ、待ってぇ!」」」」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチは、軽くあゆみに手を上げて帰って行き、バッドエンド空間は解除された。人々は、どうしたんだろうかと首を傾げながらも、中華街は何時もの日常を取り戻した。あゆみは呆然としながら、消え去ったバッドエンドプリキュアが居た場所を見つめ、

 

「結局あの子達、バッドエナジーを奪う事だけが目的だったのかしら?」

 

 あゆみは首を傾げながらも、家に帰ってみゆきに電話で状況を報告した。

 

 

2、みゆきとみさき・・・みゆきの思いとみさきの思い

 

 みさき達は、屋上にみゆき達と真琴を呼び出した。みゆき達にも、それがどんな内容なのかは、あゆみから連絡を受けて、分かっては居たのだが、真琴以外の一同は、みさき達バッドエンドプリキュアと戦う事に消極的だった。みさき達は、少し硬い表情で話し始め、

 

「もう他のプリキュアから聞いているかも知れないけど・・・私達、バッドエナジー集めを再開するからねぇ」

 

「止めるちゅうなら、腕ずくできぃや!」

 

「負けないよ!」

 

「じゃあ・・・早速始めるか?」

 

「そうね・・・」

 

 あおい達の姿がバッドエンドプリキュアに変わり、みさきもバッドエンドハッピーの姿に変わろうとした時、みゆきがみさきの右手を掴んだ。みゆきは俯いたままみさきに小声で話し掛け、

 

「一緒に来て」

 

「エッ!?」

 

 バッドエンドサニーが黒き書を取りだすも、みゆきはそのままみさきを連れて駆け出した。あかね達は、突然のみゆきの行動に驚いて思わず声を掛け、

 

「みゆき!?」

 

「「みゆきちゃん!?」」

 

「「みゆきさん!?」」

 

「ハッピー、どこ行くんやぁ?」

 

 バッドエンドサニーもみさきに声を掛けるも、みさきは戸惑いながら、

 

「私に聞かないでぇぇ・・・」

 

 みさきの言葉が終わる前に、足音が遠のいて行き、あかね達も、バッドエンドプリキュア達も、皆呆然と入り口を見つめた。

 

「ちょ、ちょっと、何の真似?」

 

 みさきは、困惑しながらみゆきに話し掛けるも、みゆきは振り向きもせず、ただ黙って駈け続ける。校舎から出ても、尚もみさきの手を引っ張るみゆきの行動に、

 

「いい加減にしてよ!」

 

 みさきは、少し口を尖らせてその場で抵抗して立ち止まると、ようやくみゆきも止まった。みゆきがゆっくり振り返ると、その目には涙が滲み、思わずみさきは呆然とした。我に返ったみさきは、

 

「な、何で泣いてるの?」

 

「嫌・・・だから」

 

「エッ!?」

 

「みさきちゃん達と、また戦う何て・・・絶対嫌ぁ!」

 

「な、何言ってるのよ!?私達、元々敵同士でしょう?」

 

「でも・・・仲良くなれたもん」

 

「仲良くって・・・そうかなぁ!?」

 

「そうだよ!お婆ちゃんも喜んでた・・・みさきちゃん、夏休みの間に何度か、私のお婆ちゃんの家に遊びに行ってくれたんでしょう?」

 

 みゆきは、祖母タエの事をみさきに話すと、みさきの表情が優しげに変わった。みさきにも分からなかったが、タエと一緒に居ると、みさきは心が和み、夏休みの間に何度かタエの家に遊びに行っていた。

 

「お婆ちゃんも、喜んでたんだよ。可愛いお友達が出来たって」

 

「本当!?」

 

「うん!」

 

 みさきは、タエに可愛い友達が出来たと言ってもらったと知り、心の底から嬉しく思って居た。みゆきは、そんなみさきの両手を握ると、

 

「ねぇ、みさきちゃん」

 

「何!?」

 

「ダークドリームに言われた事・・・覚えてる?」

 

 みゆきに聞かれたみさきは、ダークプリキュア5と戦いながらも、奇妙な感覚に囚われた事を思い出していた。何所か他人とは思えないダークプリキュア5、ダークドリームは、何時か自分達とバッドエンドプリキュアが、共に並んで戦う日が来ると言って居た事を・・・

 

「覚えてるよ・・・私達とダークプリキュア5が、何時か共に並んで戦う日が来るって言った事でしょう?」

 

「ウン!でもそれは・・・私達プリキュアとみさきちゃん達が、何時か共に並んで戦う日が来るって事だよ」

 

「・・・ブラック先輩にも言われたし、サニーもブライトに、もう私達とは戦いたく無いって言われたって言ってた」

 

「本当!?みんなもそう思ってるんだよ・・・私達は同じプリキュアだもん」

 

「でも、私達は闇のプリキュアだもん!あなた達とは違うよ」

 

「同じだよ・・・光だろうと、闇だろうと、同じプリキュアだもん・・・私、友達になれるって信じてるから!」

 

 みさきは、みゆきの目を見てそれが本心だと分かった。でも、この時のみさきには、自分が本当はどうしたいのか、それが分からなかった。一つ言える事は、確かに自分の心の中で、キュアハッピーとキュアブラックとだけは、戦いたく無い気持ちが芽生えて居た。そんな気持ちを押し殺したみさきは、

 

「は、話はそれだけ!?私、みんなの所に戻るから!」

 

 みさきは、みゆきから逃げるように駈け出した。このままみゆきと話し続けたら、自分の気持ちに嘘を付けなくなるから・・・

 

 

3、あかねとあおい・・・海外から来た留学生

 

 9月に入り、みゆき達のクラスに、イギリスからの留学生が、二週間滞在する事になった。その海外留学生は、あかねの家でホームステイをする事を聞き、みゆき達は驚いた。みゆきは恥ずかしそうにするあかねに話し掛け、

 

「エェェ!?あかねちゃん、ブライアンくんと一緒に住んでるの?」

 

「ま、まあな・・・ウチの母ちゃん、ウチの英語嫌い克服させよう思ったさかい、父ちゃんと相談して、留学生の受け入れ先に立候補してたようや」

 

 あかねは、照れながらもみゆき達に説明をし、チラリとブライアンを見た。眼鏡を掛けた優しそうな少年で、日本に興味を持って留学生として日本にやって来て居た。やよいは目をキラキラ輝かせると、

 

「その年で同棲だ何て・・・あかねちゃん、何かあったら教えてね?」

 

「ど、同棲ちゃうわ!小っ恥ずかしい事言わんといて」

 

 あかねは、やよいに同棲と言われて、見る見る顔を赤くして動揺した。なおは、少し首を傾げながらあかねに問い、

 

「でも、ブライアンくんって、日本語出来るの?」

 

「「「「確かに・・・」」」」

 

 最初の挨拶では、確かに日本語は多少出来るようではあったが、何か知ってる日本語を並べて居るようにもみゆき達には感じられた。あかねは苦笑しながら、

 

「ブライアン、日本が好きなようで、日常会話ぐらいなら何とか出来るようやで?」

 

「成る程・・・あかねさん、折角ですからブライアンさんに、日本語を教えて差し上げたら如何ですか?」

 

 れいかに言われたあかねは、思わず苦笑した。何故なら、父にも同じ事を言われて居たのだから・・・

 

「父ちゃんにも言われたわ・・・代わりに英語教えて貰えって」

 

「素晴らしい事ですね」

 

 れいかは、微笑みながら何度も頷いた。その様子を、教室の前側ドアにへばり付いたみさき達が覗き込み、聞き耳を立てていた。みさきは他の四人に話し掛け、

 

「外人だってさ?」

 

「あたしらも外人みたいなもんだよなぁ?」

 

 なみは、バッドエンド王国である自分達も、ある意味では外人と言えるのではないかと思い、仲間達に問い掛けると、やおいは首を傾げながら、

 

「どう何だろうねぇ?」

 

「ある意味ではそうね」

 

 れいなは考えながらも、なみの言葉に同意してポツリと呟いた。教室内を覗き見て居たあおいは突然騒ぎだし、

 

「お、おい、あの外人、こっち来よったでぇ?」

 

 みさき達に気付いたブライアンは、あかねとみさき達を交互に見比べて目を輝かせると、突然大声を出し、

 

「ワンダフォー!あかねぇは、ブンシン出来るんですかぁ?」

 

「ハァ!?ブライアン、あんた何言うて・・・」

 

 あかねはそう言いながらも、ブライアンが自分とあおいを見て、分身していると勘違いしているようだと気付いた。あかねは慌てて席を立ち上がると、あおいの側に早足で近寄り、

 

「ウチとあんたの姿が似取るさかい、ブライアンの奴、ウチが分身しとると勘違いしとるやないかぁ」

 

「何やそれは!?ウチは関係あらへん」

 

「オォォ!?一人、ボケツッコミですねぇ?」

 

「「ちゃうわぁぁ!!」」

 

 あかねとあおい、二人が同じような仕草で同時に否定し、ブライアンに取っては、正に分身して居るように見えて居た・・・

 

 

 その夜から、あかねはブライアンに日本語を教え始めた。逆にブライアンは、あかねに英語を教えた。普段の男勝りな性格が影を潜めた事で、あかねの弟、元気はあかねをからかい、

 

「姉ちゃん、まるで借りてきた猫やなぁ?」

 

「やかましぃ!元気、勉強の邪魔や」

 

「へいへい、邪魔者は退散しますぅ」

 

 元気は、ニヤニヤしながらあかねの部屋を後にした。元気にからかわれた事で、あかねは、昼間やよいに言われた言葉が頭を過ぎった。

 

(な、何でウチが、ブライアン何て意識せなならんねん?)

 

 そう言いながらも、あかねは自分の頬が赤くなった事には、気付いては居なかった。あかねは、ブライアンに英語を教わり、苦手だった筈の英語を、徐々に好きになっていった・・・

 

 だが、時は残酷に過ぎて行った・・・

 

 ブライアンの帰国が近づくと、あかねの乙女心は複雑な胸中になっていた。みゆきは、何気なく仲間達にブライアンの話題を語り掛け、

 

「ブライアンくん、明日で帰っちゃうね?」

 

「せ、せやね・・・」

 

 ブライアンと言う名が出ただけで、あかねは思わずドキリとし、やよいは少し首を傾げ、

 

「あかねちゃん、何か変だけど大丈夫?」

 

「な、何言うとんねん、ウチは何時も通りやで」

 

「本当に!?」

 

「な、なおまで・・・」

 

 なおにまで疑われ、あかねは大いに困惑した。れいかは、単刀直入にあかねにブライアンの事を切りだし、

 

「あかねさん、明日はブライアンさんのお見送りに行くんでしょう?」

 

「な、何で、ウチが・・・」

 

「「「「ジィィィィ」」」」

 

「い、行くわぁ!」

 

 四人の疑惑の視線を受け、あかねは顔を真っ赤にしながら見送りに行くのを認めた。そんなあかねの様子を、廊下から眺める視線があった。それはあおいで、あおいは、何所か乙女っぽさを出し始めるあかねを、苦々しく感じていた。

 

(何や!?最近のあいつは、何所か腑抜けとるやんけ?)

 

 あおいは、何所かあかねをライバル視していた。自分と外見が似て居るのはもちろん、言葉遣いもそっくりで、あおいにとっては、そんなあかねが目障りながらも気になった。そんなあかねの腑抜けた姿を見たあおいは、

 

(腑抜けたキュアサニーに、ウチが活をいれてやろうやないかぁ!)

 

 あおいの目がキラリと怪しく輝いた事を、あかねが知る由も無かった。

 

 

 翌日・・・

 

 ブライアンは、お世話になった日野家の人々に別れの挨拶をしていた。大悟と正子も、優しく明るいブライアンを気に入っており、別れを惜しんだ。

 

「ブライアン、また何時でも遊びに来いや」

 

「ホンマや、またお好み焼き食べさせたるさかいなぁ」

 

「でも姉ちゃん、ちょっと出てくるって出かけたわりに、中々帰って来ないなぁ?」

 

 げんきは、中々戻って来ないあかねに痺れを切らし、辺りを見に行ったものの、あかねの姿は見当らなかった。大悟は軽く舌打ちし、

 

「チッ、全くしょうがねぇ奴だなぁ・・・」

 

「いえ、あかねも色々忙しいですよ・・・それじゃあ、パパさん、ママさん、ゲンキ、お世話になりましたぁ!あかねにも、よろしく伝えて下さい」

 

 ブライアンは、そろそろ出発する事を伝えると、正子は申し訳無さそうな表情を浮かべながら、

 

「そ、そう!?ブライアン、ゴメンなぁ・・・あかねが帰って来たら、直ぐ後を追わせるよって」

 

「ハハハ、では皆さん・・・グッバァイ!」

 

 ブライアンは笑顔を浮かべながら、気さくに右手を挙げて、大悟、正子、げんきの三人に手を振りながら、イギリスに戻る為、空港へと向かった。

 

 

 あかねは、ブライアンの見送りに行くつもりだったのだが、いざブライアンの帰国がもう目の前に迫ってくると、思わず逃げるように家を飛び出して居た。どんな顔でブライアンを見送れば良いのか、あかねには分からず、宛てもなく歩いて居た時、あかねの前にあおいが現われた。あおいは、あかねを学校に連れ出すと、あかねは怪訝な表情で、

 

「何の用や!?ウチは今、メッチャ忙しいねん」

 

「忙しい!?ハン、腑抜けのくせに用言うわ」

 

「ふ、腑抜けやとぉ?」

 

「自分の顔、鏡で見てみぃや!今にも泣きベソかきそうな顔しとるでぇ?」

 

「な、何やとぉ・・・」

 

 あかねは、あおいの言葉を否定しようとしたものの、その先の言葉が出て来なかった。あおいの言う通り、確かに今の自分は、腑抜け同然かも知れなかった。あおいは、自分に言い返して来ないあかねにイライラし、バッドエンドサニーの姿に変化すると、

 

「何で言い返せへんのやぁ?今のアンタ見とると・・・メッチャ苛つくわぁ!さっさとプリキュアに変身しぃや!ウチがアンタのその根性・・・叩き直したるぅ!!」

 

 あかねは、バッドエンドサニーの言葉は本心だと知り、自分もサニーに変身して、この場をやり過ごさなければ、バッドエンドサニーは、本気で自分を倒しに掛かる気がした。あかねは渋々ながらスマイルパクトを取り出すと、

 

「しゃぁない・・・プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!!」

 

 七色ヶ丘中学校校庭で、二人のサニーが向かい合った。先に仕掛けたのはバッドエンドサニー、素早い動きでサニーを翻弄し、近付くやいなや、パンチが、キックが、サニーに容赦無く浴びせられ、サニーが吹き飛ばされる。バッドエンドサニーは軽く舌打ちし、

 

「チッ、やっぱ腑抜けとるやんかぁ!どないしたぁぁ!!」

 

 再び容赦無いバッドエンドサニーのパンチとキックの連打が、サニーに浴びせられた。

 

「何を悩んどるのか知らんけど、どうやら無駄になりそうやなぁ?」

 

 バッドエンドサニーの、何気ない一言を聞いたサニーは思わずハッとした。

 

(無駄になる!?・・・ちゃうわ!無駄な事に何かならへん。ウチはブライアンのお陰で、英語が楽しく思えてきたし、ブライアンと過ごした時間は、決して無駄やない!離ればなれになっても、一緒に過ごした時間は消えへんのやぁぁ!!)

 

 サニーの迷いが吹っ切れた時、サニーの目に闘志が宿り、バッドエンドサニーのパンチを受け止めた。

 

「フン、ようやく何時ものアンタらしゅうなったやないか」

 

「ある意味、アンタのお陰や・・・」

 

「フン、お世辞言っても何もあらへん・・・勝負は預けるでぇ!」

 

 バッドエンドサニーは、口元に笑みを浮かべながらその場を後にした。迷いを吹っ切ったサニーはあかねの姿に戻り、ブライアンの見送りに向かう為、急いで家路に着いたが、あかねは、大悟、正子、げんきの叱責を受けた。

 

「あかね、何モタモタしてたんやぁ」

 

「ブライアン、さっき帰ってしもうたでぇ」

 

「姉ちゃん、はよう後を追わんと」

 

「分かっとる!」

 

 あかねは、全速力で駆けて空港行きのバス乗り場に向かった。バス亭には、既にみゆき達が来て居た。

 

「あかねちゃん、遅いよぉ!」

 

「バス20分前ぐらいに行っちゃったよ!」

 

「クッ、アカンかったかぁ・・・」

 

 みゆきとやよいから、バスが出てしまった事を聞き、あかねの表情が曇った。なおはれいかを振り返り、

 

「れいか、ブライアンくんが乗る飛行機の時刻は、何時って言ってたっけ?」

 

「確か、12時35分発の便だと言っていました」

 

 れいかは、先程ブライアンを見送った時の記憶を思い出し、一同に教えると、なおが慌ててバスの時刻表を調べた。

 

「って事は、今は10時30分だから・・・駄目だ!次のバスは一時間後だから、待って居たら間に合わない」

 

「だったら、タクシーを!」

 

 みゆきは、タクシーの前に両手を振って飛び出し、タクシーが慌ててブレーキを掛けて止まった。運転手の怒声混じりの声がみゆきに飛ぶも、みゆきは必死にタクシーの運転手に話し掛け、

 

「すいません!空港まで大至急でお願いします!」

 

「空港!?週末のこの時間じゃ、途中で渋滞に嵌るかも知れないけど・・・」

 

「それでも構いませんから・・・あかねちゃん、乗ってぇぇ!」

 

「みゆき・・・」

 

「あかね、あたし達のお財布事持っていて」

 

「何かの足しにはなる筈です」

 

「あかねちゃん、ちゃんとブライアンくんにお別れ言うんだよ」

 

「なお、れいか、やよい・・・おおきにぃ!」

 

 仲間達の友情に目頭を熱くしたあかねは、タクシーに飛び乗り空港へと向かった。そのタクシーを、みゆき達は見えなくなるまで見送った。あかねが無事ブライアンと、お別れの挨拶が出来ますようにと祈りながら・・・

 

(成る程、それでサニーは腑抜けになってたんか?)

 

 そんなみゆき達の行動を、バッドエンドサニーが物陰から見て居たが、真相を知ると何処かに消え去った。

 

 空港を目指していてタクシーだったが、20分程進むと、運転手が危惧したように渋滞に嵌ってしまった。

 

「他に裏道無いんかなぁ?」

 

「下手に裏道進むと、返って時間掛かるよ?」

 

 あかねはタクシーの中からキョロキョロ裏路地を見て見るも、確かにそちらも渋滞でほとんど動かないようだった。痺れを切らしたあかねは、

 

「空港に行くには、どう行けばエエの?」

 

「ン!?後はこの道を真っ直ぐ進めば標識も出てくるけど」

 

「ほな、此処でエエわ!おおきに、お代はいくら?」

 

「エッ!?まだ10キロ近くはあるよ?」

 

「ウチ・・・走るわ」

 

 あかねは、仲間達から借りたお金でタクシー代を払い、タクシーから降りると、空港目指して駈け出した。9月の下旬に入ったばかりだったが、まだ夏の名残が続き熱かったが、あかねは懸命に走った。顔から汗がダラダラ流れてくるのを、時折手で拭いながら、あかねは空港目指して駈けた。どれくらい走ったのか、運転手が言っていたように空港までの標識が見えた時、あかねは思わず油断して足が縺れて転んだ。

 

(クッ!?こんな所で倒れ取る場合じゃ無いちゅうのに・・・)

 

 立ち上がったあかねは再び走り出すも、先程のような軽やかな走りは出来なかった。

 

(此処まで来たっちゅうのにぃ・・・)

 

 思わずあかねの目から涙が零れ落ちた時、背後から突然声が掛かった。それはバッドエンドサニーで、再びあかねを険しい表情で見つめた彼女は、

 

「チッ、また腑抜ける気かよ!目障りだ!!」

 

「なっ、何やと!?」

 

 あかねは、バッドエンドサニーの奇襲を受け、為す術も無く上空高く持ち上げられた。このまま地上に落とさされれば、プリキュアに変身する前に地上に落下するかも知れない脅威が、あかねの心に沸々沸いてくる。

 

(こ、こんな所でやられる訳にはイカンのやぁ)

 

 カッと目を見開いたあかねだったが、ある事に気付き思わず呆然とした。何故なら、あかねの視線の先には、自分が向かおうとしていた空港が、どんどん近付いて居るのだから・・・

 

「バッドエンドサニー・・・アンタ、ウチを空港まで!?」

 

「さて、何の事や?ウチは、アンタを怯えさせようと空に連れ出しただけや・・・けど、あんま効き目無さそうやなぁ」

 

 バッドエンドサニーは、そう言うとどんどん下降し、空港にあかねを下ろすと、そのまま何も言わず飛び去った。周りがざわめく中、あかねは腰が抜けたかのように、呆然と座り込んだまま放心していると、あかねの目の前に手が現われた。ハッとしたあかねが手の主を見ると、大丈夫というTシャツを着たブライアンが、優しげな笑みを浮かべながら、手を差しだしていた。

 

「あかね・・・大丈夫や?」

 

「ブライアン・・・アホ、それはウチのセリフや」

 

 そう言いながら、あかねは嬉しそうにブライアンが差し出した手を握って立ち上がった。あかねはこの日、優しい仲間達、好敵手、そして、自分に英語の楽しさを教えてくれた、ブライアンと出会えた事を、心の底から感謝した・・・

 

 

4、やよいとやおい・・・主役は、わ・た・し!

 

 ブライアンが帰国してから数日後・・・

 

 やよいの母である千春は、家で頭を抱えて居た・・・

 

 千春は、キッズファッションの関連会社で企画を担当していたが、明日の母娘ファッションショーに参加予定だった子供達が、ノロウィルスに感染してしまい、明日のファッションショーには出られない旨の連絡を受けていた・・・

 

(どうしよう!?今更延期に何か出来ないし・・・)

 

 千春は、藁にも縋る思いで、携帯を掛けた・・・

 

「もしもし、来海先生ですか?何時もお世話になっております。黄瀬ですけど・・・」

 

 千春が携帯を掛けた相手は、えりかの母である来海さくら、元ファッションモデルで、美希の母レミとも交流があった。今はファッションショップ、フェアリードロップを経営して居るオーナー兼デザイナーで、千春の会社とも取引をしていた。千春は、現状をさくらに説明すると、

 

「そう、それは困ったわねぇ・・・で、母娘ファッションショーっていうのは、あくまでも小学生のお子さんまでの対象なのかしら?」

 

「いえ、今回は合同企画でして、下は幼稚園から、上は大学生でも大丈夫何ですけど・・・」

 

「あら!?だったら、あなたの娘さんと一緒に出たら?」

 

「エッ!?やよいと?で、でも、私は現場のスタッフですから・・・」

 

「そう、ちょっと待ってね・・・・・ももかぁ!えりかぁ!ちょっと来てぇ!!」

 

 さくらは、娘でカリスマファッションモデルである来海ももか、えりかの姉妹を呼ぶと、状況を二人に説明した。ももかはさくらに拝むような仕草をし、

 

「ゴメェン!私、明日は仕事が入ってて・・・」

 

「そう・・・えりかは?」

 

「あたし!?あたしは別に良いけど・・・」

 

「じゃあ、決まりね!千春さん、私と娘のえりかが、参加させて貰うわ。それと、私の方から知り合いに声を掛けて聞いてみるわ」

 

「本当ですか!?そうして頂けると助かります・・・ハイ!ハイ!私の方でも何人かに当ってみますので・・・来海先生、本当にありがとうございます」

 

 そんな千春の会話を、部屋の中からやよいとやおいが盗み聞きしていた。ミラクルピースの、次作の構想を打ち合わせしていた二人は、思わず顔を見合わせ、

 

「ママ、何か困ってたなぁ・・・」

 

「やよい、ファッションショーって何だっけ?」

 

「ファッションショーっていうのはね・・・」

 

 やよいは、やおいに簡単にファッションショーについて説明すると、見る見るやおいの目が輝いた。やよいは恥ずかしり屋なのに対し、やおいは目立ちたがり屋だった。部屋から出たやおいは、目をウルウルさせながら千春に話し掛け、

 

「相方のママのピンチに、私黙って何か居られない・・・私で良ければ、ファッションモデルやっても良いです」

 

「エッ!?やおいちゃんが?」

 

「ウン!それとも・・・お母さんが居ないとダメでしょうか?」

 

 そう言うと、やおいは落ち込んだ表情を浮かべた。やおいの演技に欺まされた千春は、慌てて首を振り、

 

「ありがとう、やおいちゃん・・・じゃあ、お言葉に甘えてお願いしちゃおうかしら?」

 

「ハイ!やよいもやるよねぇ?」

 

「エェェ!?私もぉぉ?」

 

「ママのピンチ何だしさぁ?」

 

「ウ、ウン・・・そうだ!ママ、人数は多い方が良いの?」

 

「ウ~ン・・・多すぎても困るけど、来海先生母娘は参加して頂けるから、母娘なら、あと最低7組は欲しいわねぇ・・・後は、お子さんのファッションショーで誤魔化しが聞くし・・・」

 

「年齢はバラバラの方が良いの?」

 

「そうね、今回は色々な世代をターゲットにしてるし・・・出来れば下は幼稚園から、上は大学生ぐらいまで、幅広い方が盛り上がるかも知れないわね」

 

「じゃあ、みゆきちゃん達に頼んでみようか?」

 

「エッ!?そうね・・・それはママから、育代さん達に話してみるわ」

 

「分かった!じゃあ私は、知り合いに連絡してみる」

 

 やよいは、プリキュアの仲間達に、ママのピンチを助けて欲しいと連絡を入れた・・・

 

 その結果、さくらから連絡を受けたレミは、美希を半ば無理矢理説得して母娘で参加、レミは更に、あゆみ、尚子にも連絡を入れ、ラブ、せつな、祈里も母娘で参加、えりかはつぼみといつきも誘い二人が参加、千春に頼まれた育代と静子は、娘のみゆきとれいかと共に参加するも、店がある正子と、妊娠中のとも子は遠慮し、あかね、なお、あゆみ、真琴とアン王女は個人で参加、他にはほのか、薫、のぞみ、かれん、エレン、アコが参加する事になった。

 

「ウ~ン、まだ母娘が二組足りないなぁ・・・」

 

「そうだ!私に考えがあるよ」

 

「やおいちゃんに?」

 

「ウン!アクアとアン王女を欺ましてさ・・・」

 

 やおいは、やよいに何やら耳打ちすると、見る見るやよいの表情が曇った。そんな事をしたら、かれんとアン王女が怒り出しそうな気がして、やよいは思わず背筋がゾッとするも、母である千春のファッションショーが成功するなら、後で二人に怒られても良いと思うやよいだった・・・

 

 

 そして、ファッションショー当日・・・

 

 会場には大勢のお客さんが入って、千春はホッと胸を撫で下ろした。既に控え室には、今日のショーに参加するメンバーも控えて居た。

 

「急な頼み事だったけど、最低限の人数確保出来て良かったわぁ。みんなに感謝しないと・・・」

 

 そんな千春に、背後から声を掛けた者が居た。千春が振り返ると、思わず笑みを浮かべて手を差しだし、

 

「館さん、ご無理を言って申し訳ありませんでした」

 

「いえ、こちらこそ、こういうショーを沢山経験させる事は、きららの役に立ちますわ」

 

 千春が挨拶をしたのは、芸能プロダクションの社長である館響子、元々はファッションモデルをして居たそうで、その容姿は美しかった。黒色のショートヘアをしており、眼鏡を掛けた姿は、どこか知的に見えた。半袖をした緑色の服と、黒色のスカート姿で、薄い紫色のタイツを履いて居る姿は、今回のファッションショーに参加しても、注目を浴びるだろうと思われる。千春は、そんな彼女に頭を下げ、

 

「そう言って貰えると助かります」

 

「いえ、もう一つのご要望には残念ながら、ステラは海外のショーの準備で忙しくて・・・」

 

「急なお願いでしたから・・・きららちゃんが出て頂けるだけでも、大変感謝しております」

 

 千春はそう言うと、笑みを浮かべた。

 

 控え室では、素人同然の一同が緊張しまくっている中、レミとさくらは、こういう舞台に慣れて居て、久々の再会に会話を弾ませて居たが、

 

「でも不思議よねぇ!?あの方と何処かであったような気がするんだけど・・・」

 

 さくらはそう言うと、談笑する育代と静子、あゆみと尚子を見て首を傾げた。レミはあっけらかんと、

 

「アラ!?だって、夢の中で・・・」

 

「ちょ、ちょっとママァァ!?」

 

 レミはついうっかり、ファレオに呪われて生死を彷徨う娘達を救う為に、魔王に呼ばれて、夢の世界に行った事をさくらに話しそうになり、変顔浮かべた美希が慌てて止めた。そんな賑やかな控え室で、一人の少女が一同から離れた所で黙々と何かの勉強をして居た。少女の名前は、天ノ川きらら、今売り出し中の小学生モデルで、茶髪のツインテールをしていて、髪留めには、星の飾りが付いたゴムを付け、黄色い服装を好むのか、黄色のワンピース姿をして居た。母はカリスマトップモデルであるステラ、父は大物俳優である高天原健で、両親とも不在の時が多く、事務所の社長で、ステラの親友でもある響子が、きららを公私共に面倒見て居た。きららの事は、美希やももかも知っていて、二人もきららには一目置いていた。美希は、母レミを見張っているようにえりかに頼むと、きららの下に近付き声を掛けた。

 

「きららちゃん、あたしは蒼乃美希、今日はよろしくね」

 

「ハイハイ、よろしくぅ」

 

 きららは、美希に視線を合わせる事無く、そのまま黙々と書き物をしていた。何気にチラリと美希が見てみると、数学の勉強をしているようだったが、小学生の問題としては、難しいように美希には感じられた。

 

(最近の小学生って、こんな問題までやるのかしら?)

 

 美希が思わず驚いていると、視線に気付いたのか、きららが徐に嫌そうな表情で顔を上げ、

 

「いくら先輩でも、人の物を覗き見るのはどうかと思うけど?」

 

「ゴ、ゴメンなさい、悪気は無かったの」

 

 美希は、きららを可愛げない子だなぁと思いながらも、非があるのは自分の方だと素直に謝り、仲間達の下へと戻った。ラブとのぞみが美希に近付き、

 

「美希たん、あの子と何かあったの?」

 

「さっき私が話し掛けた時も、何か素っ気なかったなぁ・・・」

 

「何か勉強してたようだし、邪魔しないで置いてあげましょう」

 

 美希がそう二人に告げたのも束の間、やおいはゲスイ表情できららに近づき、小声で話し掛けると、

 

「精々私の引き立て役として頑張ってねぇ?」

 

「ハイハイ、あたしの引き立て役として頑張って」

 

「ハァ!?あんたが、私の・・・」

 

 きららに言い返され、やおいが言い返そうとした時、そろそろ衣装に着替えて欲しい旨を、スタッフから一同に告げられた。真っ先に立ち上がったのはきららで、その目はキラキラ輝いて居た。美希は思わず目を見張り、

 

(あの子の雰囲気が変わった!?)

 

 そんな美希の耳に、レミとさくらの会話が聞こえてきた。二人もきららの変化に気付いたようで、レミはさくらに話し掛け、

 

「見て、さくらさん、あの子の雰囲気・・・変わったわ」

 

「本当、あの子確か、ステラのお子さんでしょう?」

 

「ステラちゃんの?成る程、それならあの年で独特のオーラを持って居ても驚かないわ」

 

(ステラ!?あの子、トップモデルのステラの娘なの?)

 

 これが、トップモデルとして生涯のライバルとなる、美希ときららの最初の出会いだった・・・

 

 

 説明をしにきたスタッフから、大まかな説明が着替えを終えた一同に説明がされた。先ず、子供達から順にファッションショーを始め、最後に母娘ファッションショーをやると説明があった。トップバッターは天ノ川きらら、後は、慣れて居ないだろうかという配慮で、順につぼみといつき、ほのかとのぞみ、あかねとなお、あゆみと薫、せつなとエレン、やよいとやおい、その後から母娘ファッションショーを始め、さくらとえりか、桃園あゆみとラブ、尚子と祈里、育代とみゆき、静子とれいか、アン王女と真琴、かれんとアコ、トリにレミと美希で、最後に全員で舞台を一回りする手順を説明された。

 

「「ちょっと待って下さい!」」

 

 顔色を変えながら、同時にスタッフに待ったを掛けたのは、アン王女とかれん、二人はこめかみを痙攣させながら、

 

「何故、私達が母親役なのでしょうか?」

 

「姉なら納得出来ますけど・・・」

 

「ハァ、そう言われましても・・・」

 

 アン王女とかれんはスタッフに詰め寄るも、慌てて千春が手を拝みながら駆け付け、

 

「ゴメンなさいねぇ・・・母娘役の人数が足りなくて、二人なら喜んで協力してくれるってやおいちゃんに聞いたから、てっきり話が通ってるものだと・・・」

 

「「やおい!?」」

 

 かれんとアン王女の視線が、ニンマリしてピースするやおいと、申し訳無さそうにペコペコ謝るやよいの姿を目にした。

 

((嵌められた・・・))

 

 二人は、恨めしそうな視線をやおいに浴びせるも、このままショーを台無しにする訳にも行かず、渋々ながらアン王女は真琴の母親役を、かれんはアコの母親役を引き受けた。薫は小声でかれんに話し掛け、

 

「かれん・・・何なら私がアコの母親役代わってあげるわよ?」

 

「代わって欲しいのは山々だけど・・・今回はやよいのお母さんの為だし、我慢するわ」

 

 こうして始まろうとしたファッションショーだが、やおいは、さも当たり前のように身構えるトップバッターのきららに、不快感を覚えていた。

 

「あの子の服に切り込み入れて、舞台で赤っ恥かかせてやろうかしら?」

 

「や、やおいちゃん、それはダメだよ!」

 

「だって、あの態度・・・アァァ、もうムカツクゥゥ!」

 

「や、やおいちゃん!?」

 

 やおいは、やよいが止めるのも聞かず、舞台裏から駈け去ると、瞬時にバッドエンドピースの姿に変化した。

 

「こうなったら、バッドエンドピースで主役になっちゃうもんねぇ」

 

 バッドエンドピースが突然舞台に現われると、ファッションショーが始まったのかと一瞬響めいた。きららは突然現われたバッドエンドピースに表情を険しくし、慌てて舞台に飛び出すと、

 

「ちょっとぉ!何よ、アンタは?」

 

「私!?私はバッドエンドピース、このショーの主役は、わ・た・し・なのぉぉ!」

 

「ハァ!?さっさと神聖な舞台から降りなさいよねぇ!」

 

 何やら言い合いを始めた二人に会場がざわめき、異変は他の一同にも知れ渡った。レミとさくらは首を傾げ、

 

「何かしらあの娘!?飛び入りかしらねぇ?」

 

「さあ!?千春さんは何も言って無かったけど?」

 

 美希達もバッドエンドピースに気付いたものの、身内が居てはこの場で変身出来ず困惑した。それに気付いたラブの母あゆみは、レミと尚子を促し、さくら、育代、静子に声を掛け、

 

「皆さん、ちょっとスタッフさんに事情を聞いて参りましょう!ラブ、せっちゃん、あなた達は此処に残ってて」

 

 あゆみは、ラブとせつなにウインクすると、母親達を舞台裏から連れ出した。それを見たほのかは、一同に語り掛け、

 

「私と薫さん、アン王女は、その隙にあの子を助けるから、みんなはバッドエンドピースをお願い」

 

『ハイ!』

 

 なぎさと満がこの場に居ない為、プリキュアになれないほのかと薫は、アン王女と共にサポートに回った。ラブは、念の為持って来たクローバーボックスを、ほのかに預けると、

 

「分かった、預かるわ」

 

「お願いします!」

 

 ラブは一同を振り返り、リンクルンを手に持って声を掛けると、

 

「みんな、行くよ!」

 

『分かった!』

 

 ラブの合図に頷き返し、一同も変身アイテムを手に持った。

 

「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」

 

「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」

 

「プリキュア!ラブリンク!!」

 

「大いなる、希望の力!キュアドリーム!!」

 

「知性の青き泉!キュアアクア!!」

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ、キュアベリー!!」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ、キュアパイン!!」

 

「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション!!」

 

「「「「レッツ!プリキュア!!」」」」

 

「大地に咲く一輪の花・キュアブロッサム!」

 

「海風に揺れる一輪の花・キュアマリン!」

 

「陽の光浴びる一輪の花・キュアサンシャイン!」

 

「「「ハートキャッチプリキュア!!」」」

 

「爪弾くは、魂の調べ!キュアビート!!」

 

「爪弾くは、女神の調べ!キュアミューズ!!」

 

「勇気の刃! キュアソード!!」

 

 仲間達が続々プリキュアになる中、みゆき達は困惑していた・・・

 

「どうしよう!?私達、出来ればバッドエンドプリキュアとは・・・」

 

「そうは言うても、このままには出来んやろう?」

 

「せっかくのやよいちゃんのお母さんの企画が、台無しになっちゃうし」

 

「そうですね・・・致し方ありません!」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

 せっかくのファッションショーを、メチャメチャにしそうな勢いのバッドエンドピースに、みゆき達は苦渋の表情を浮かべながらも、スマイルパクトを手に持った。あゆみは、そんなやよいの気持ちを察したのか、

 

「大丈夫、ここには他のプリキュアのみんなも居てくれる。私達は、少し様子を見ましょう?」

 

「「「「そうだね」」」」

 

「あゆみちゃん」

 

 あゆみの提案に一同も同意し、やよいは嬉しそうに目を輝かせた。だがその間にも、きららに散々罵声を浴びせられたバッドエンドピースは、

 

「もう、あの子生意気で頭来ちゃう!世界よ、最悪な結末に変わっちゃって!白紙の未来を黒く塗りつぶしちゃおう!!」

 

 バッドエンドピースは、黒き書を取りだし、黒い絵の具を黒き書を開いて、白紙のページに勢い良く叩き付けると、空が不気味に黄色く変化し、その周りを落書きで描いたようなイラストが覆っていた。会場中の人々がネガティブな言葉を発し、きららもまた膝から崩れ落ちた。

 

「あたしが、ママみたいなトップモデルになれる訳・・・」

 

「エヘヘ、そうそう、主役は私に任せておけば良いの!」

 

 きららがネガティブな言葉を発し始め、バッドエンドピースが嘲笑し始めた時、きららの瞳に再び光が宿った。立ち上がったきららは、

 

「あたしは、天ノ川きらら!何時か世界の檜舞台で、ママと共に共演する時まで、挫けて何かいられますかって言うの!!」

 

「な、生意気ぃぃぃ!?アカンベエ、出て来てぇぇ!」

 

 バッドエンドピースは、以前ジョーカーから貰った銀鼻のアカンベエを召喚すると、ファッションショーの看板が、帽子を被ったアカンベエの姿に変えられた。バッドエンドピースは、きららを指差し、

 

「アカンベエ、あの子をエンエン泣かせてあげてぇ!」

 

「アカンベエ!」

 

 バッドエンドピースの命を受け、アカンベエがきららに近づいてくると、流石のきららも狼狽へた。

 

「な、何あれ!?」

 

「泣いたら許してあげるぅ」

 

「ベェ!誰が泣きますかって言うの」

 

「プンスカプン!アカンベエ、傷付けない程度にやっちゃってぇ」

 

 きららは、バッドエンドピースに舌を出し、バッドエンドピースの命を受けたアカンベエは、きららに狙いを定めると、パンチを繰り出した。きららは何とか躱すも、風圧で身体が吹き飛ばされ宙に浮いた。そのきららを、何者かが空中でキャッチした。

 

「大丈夫!?後はあたし達に任せて!」

 

「エッ!?」

 

 きららを助けたのはキュアベリー、ドリームとアクア、ピーチ達、ブロッサム達、そして、ビートとミューズがアカンベエを取り囲み、アカンベエが狼狽えた。ベリーはその隙に、ほのかと薫、アン王女にきららを託すと、キッとバッドエンドピースを睨み付けた。

 

「何でこんな事するの!」

 

「だってぇ・・・あの娘生意気何だもん」

 

「だからって、せっかくのショーを台無しにしようだ何て、あたし達が許さないわよ!」

 

「ベェェだ!もう今度会ったら敵同士だって、ちゃんと伝えたもん、遠慮しないからぁ・・・アカンベエ!!」

 

 バッドエンドピースの命を受け、アカンベエがプリキュア達に攻撃を開始した。帽子を手に取ると、ブーメランのようにプリキュア達目掛け飛んで来るも、プリキュア達は躱し続ける。勢いが弱まった所で、ドリームとピーチが帽子を蹴り返し、体勢を崩したアカンベエに、ブロッサム達三人とビートが加わり、アカンベエを蹴りで転倒させた。アクアは一同に檄を飛ばし、

 

「此処で戦い続けたら、会場の人々に被害が出てしまうわ」

 

「私に任せて!シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!シャイニングサークル!!」

 

 ミューズは、四人のミューズの幻影を生み出し、五芒星のようなサークルを描き、困惑するアカンベエの動きを封じた。ピーチは、仲間達に声を掛け、

 

「みんな、後は任せて!ベリー、パイン、パッション、行くよ!!」

 

「「「OK!」」」

 

「クローバーボックスよ、私達に力を貸して!!!」

 

 ピーチの言葉を受け取ったかのように、ピーチが念の為持って来てほのかに預けたクローバーボックスが開き、クローバーボックスから放出された光が、リンクルンに力をもたらした。

 

「プリキュアフォーメーション!」

 

 ピーチの合図を受け、四人が一斉にしゃがみ込み構えると、初めて見たバッドエンドピースときららは、思わず目を見開いて驚いた。

 

「レディー・・・ゴー!!」

 

 再びピーチの合図で今度は走り出した四人、

 

「ハピネスリーフ!セット!パイン!!」

 

 パッションから始まったハピネスリーフ、パッションはパインに投げると、

 

「プラスワン!プレアリーフ!ベリー!!」

 

 受け取ったパインが、プレアリーフをセットしベリーに投げる。

 

「プラスワン!エスポワールリーフ!ピーチ!!」

 

 受けたベリーが、エスポワールリーフをセットし、ピーチに思いを託し投げる。

 

「プラスワン!ラブリーリーフ!!」

 

 受け取ったピーチは、ラブリーリーフをセットし、四つ葉のクローバーマークを完成させる。ピーチが四つ葉のクローバーマークを投げると、それは巨大化し、四人はそれぞれのマークの上に乗って、クローバーの中心部に居るアカンベエの上で下降し、アカンベエを巨大な水晶の中に閉じ込めた。

 

「「「「ラッキークローバー!グランドフィナーレ!!」」」」

 

 ラッキークローバー・グランドフィナーレの力は、凄まじい輝きを放ち、アカンベエを光の輝きの中で包み込んで浄化した。悔しがるバッドエンドピースに、ソードが攻撃を仕掛け、

 

「バッドエンドピース、遂に本性を見せたわね!私が相手よ」

 

「何よぉ、ソードは私のパシリのくせにぃ・・・」

 

「パシリって呼ばないで!」

 

 ソードは、思わず頬を膨らませながらも、バッドエンドピースに攻撃を始めた。ソードの攻撃を躱し続けたバッドエンドピースは、悲しげに自分を見つめるやよいの姿を見ると、思わず胸がチクリと痛んだ。

 

「きょ、今日の所は見逃してあげる」

 

 バッドエンドピースはそう言うと姿を消し、バッドエンド空間が解除された。それに合わせるかのように、プリキュア達は一斉に舞台から消え、人々は正気を取り戻した。きららは、側に居たほのか、薫、アン王女に話し掛け、

 

「今の・・・何なの?」

 

「エッ!?エェェと・・・プリキュアかしら?」

 

「プリキュア!?あの横浜の?でも、あの黒いのもプリキュアっぽかったよねぇ?」

 

 困惑気味にほのかが答えるも、バッドエンドピースの姿もプリキュアに似て居た事で、きららは首を傾げた。薫は、困惑するほのかに助け船を出したかのように、

 

「さあ、邪魔者は消えたし、舞台裏に戻りましょう」

 

「そうですわ!あなたはトップバッターなのですから」

 

「ウ、ウン・・・」

 

 きららは、薫とアン王女に促され、舞台裏へと戻った。ハプニングはあったものの、15分遅れで、ファッションショーを開幕するアナウンスが場内に流れた。美希はきららに声を掛け、

 

「きららちゃん、頑張って」

 

「当然っしょ!」

 

 可愛くない態度を取るきららに、美希は思わず苦笑を浮かべると、美希の背後から声が掛かり、

 

「姉御、あの生意気な子、やっちゃいましょうか?」

 

 物騒な言葉を放ったのが、えりかだと思った美希は、険しい表情を浮かべると、

 

「姉御!?えりかぁ、何て事を・・・」

 

「み、美希姉ぇ、あたしじゃないよぉ」

 

 えりかは、自分が疑われている事に気づき、変顔浮かべながら右手を振ると、美希もえりかじゃ無いと気付き、慌てて背後を振り返った。そこには、何所で見付けたのか、昭和時代のチンピラが掛けて居たような、サングラスをしたやおいとやよいの姿があり、思わず美希は呆然とした。

 

「な、何で、あなたが此処に!?」

 

「エェェ!?だってぇ、私出場者だよ?」

 

 やおいは、先程の騒動を引き起こしたのも何のその、何食わぬ顔で舞台裏に戻って来て居た。他の一同は呆れ返り、かれんは窘めるようにやおいに話し掛け、

 

「こんな騒動引き起こしておいて、よくもヌケヌケと言うわねぇ?」

 

「あれは・・・バッドエンドピースの仕業だもん」

 

 のぞみも開いた口が塞がらないとばかり、やおいの性格に呆れ返り、

 

「だから、それはあなたでしょうが?」

 

「エヘヘ、今はやおいだもん・・・ねぇ、やよい」

 

「ウン!戻って来てくれて良かった」

 

『良い性格してるわ・・・』

 

 一同は思わず、微笑みながらピースするやおいを見て呆れ返った。

 

 遂に開幕したファッションショー・・・

 

 トップバッターのきららは、堂々とした姿で会場を盛り上げ、その姿に引っ張られたように、つぼみといつき、ほのかとのぞみ、あかねとなお、あゆみと薫、せつなとエレン、やよいとやおいが場を盛り上げた。母娘ファッションショーも、十数年振りにモデルとして復帰した、さくらとえりかで場を盛り上げ、桃園あゆみとラブ、尚子と祈里、育代とみゆき、静子とれいかが、仲が良い母娘の雰囲気で盛り上げ、アン王女と真琴、かれんとアコは、母親役の二人が引き攣った笑みを浮かべながらも、何とか乗り切り、トリでレミと美希が、美人姉妹のようなスタイルの良さで観客達を魅了した。

 

(へぇ、中々やるねぇ)

 

 舞台袖で見て居たきららは、美希がモデルとして中々の素質を持っている事を見抜いた。最後に全員で舞台を一周し、ファッションショーは大成功を収めた!

 

 千春は、今日の功労者である一同に深々とお辞儀をして礼を述べ、

 

「皆さん、本日はお疲れ様でした!ささやかですが、打ち上げのパーティーでも開きたいと思っておりますので、お時間の都合が付く方は、このままお待ち頂き、レストランの方にお出で下さい」

 

 一同が歓声を上げる中、きららは興味無さそうに立ち上がり、事務所の社長である響子に話し掛けると、

 

「ほんじゃ社長、あたし帰るんで!」

 

「分かったわ」

 

「それで社長、仕事の方何だけど・・・」

 

「分かってるわ!ノーブル学園の受験が終わるまでは、ちゃんとセーブするから安心して」

 

「了解!そんじゃ、お先ぃ!!」

 

 きららは軽く一同に挨拶し、響子が一同に頭を下げて、共に控え室を出て行った。やおいはやよいに話し掛け、

 

「エェェ!?何あの娘、感じ悪ぅぅい・・・やよい、次作にあの娘出して、酷い目に遭わせてやろうよ」

 

「アハハハ・・・無理」

 

 やよいは、何と言葉を返して良いか分からず、笑って誤魔化しながらも、ハッキリ否定し、やおいは頬を膨らませた。美希は、思わず溜息を付き、

 

「ハァ、あんたが言うか・・・全く」

 

 室内からは、笑い声が響き渡った・・・

 

 

 社長である響子の車に乗り込んだきららは、青空を見つめながら、その先のビジョンを浮かべていた。

 

(ママと同じノーブル学園に入り、あたしは、ママが学んだ何かを吸収して、トップモデルとしてママに追いつき、追い越すんだからぁ!)

 

 響子は、そんなきららを見て一抹の不安を感じて居た。ステラときららでは、決定的に違うものがあった。ステラはその明るい性格で、仲間達と共に自分の魅力を高めて行ったが、きららは、自分の殻の中だけで、魅力を高めようとしていた。

 

(きらら、私やステラが忠告しても、あなたは聞く耳を持たないでしょう。ノーブル学園で、良い仲間と出会いなさい!そうすれば、あなたは必ず世界に羽ばたくわ!!)

 

 響子の想像通り、後にきららはノーブル学園に入り、一人の少女と出会った事で、プリキュアとして目覚め、そして、一流モデルの夢に近付く事になるのだが、それはまた別のお話・・・

 

 

     第百十六話:スマイルプリキュアとバッドエンドプリキュア(前編)

                    完

 




 第百十六話投稿致しました!
 今回と次回は、みゆき達とみさき達の交流に重点を置きましたが、ゲストキャラも登場させました。きららはちょっと感じ悪い子っぽく書きましたが、続編で徐々に本編のような性格になる予定です。

 魔法つかいプリキュア・・・前回が実質最終回だ何て書いてスイマセンでしたぁぁ!魔法つかいらしいハチャメチャな最終回で楽しかったです。準レギュラーの声優さんが総登場した作品も、歴代では初じゃ無いでしょうか?現場は賑やかで楽しかっただろうなぁと想像出来ます。いちか登場は想像しましたが、プリキュアになって魔法組の援護するとは思ってませんでした。賛否はあるでしょうが、面白い試みでした。

 魔法つかいプリキュア関係者の皆様、一年間楽しませて頂きありがとうございました!
 次作のキラキラ☆プリキュアアラモードも、楽しみにしております。
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