第十二話:ムーンライト伝説!
1、
この日は、一同が再び希望ヶ花市の訪れる日だった・・・
本来なら、待ち合わせ場所を決める所ではあったが、此処、薫子が所長を務める植物園には、砂漠化していた時に一同も来ていたので、せつなは、みんなと待ち合わせた後、みんなと植物園に来る旨を、つぼみ達に伝えて居た。
つぼみとえりかは、薫子に頼まれ、和菓子屋の「はらの」へ大福を買いに出掛けていた。「はらの」の跡取り息子は、嘗てデザトリアンにされたものの、ブロッサムとマリンに救われた経緯があった。今では、自分の未熟さを理解し、祖父、父に負けず劣らずのあんこを作れるようになり、順調に後継者として成長していた。
そして、いつきとゆりは、植物園園長である薫子から、テーブルや椅子、コーヒーカップを借り、一同を迎え入れる準備をしていた・・・
「確か、こまちの家は和菓子屋さんだったわよね?」
「はい!ナッツが大福を大好きで、良く持って来てたって言ってましたよ」
「そう・・・ダブらなきゃ良いんだけれど?」
「多分・・・大丈夫じゃないでしょうか?かれんさんが以前言ってましたけど、こまちさんは、普段良く持ち歩いているのは、羊羹だそうですから」
「そう言えば・・・TAKO CAFEでも、大空の樹でも、ナッツハウスでも、こまちは、毎回食後に羊羹をくれたわね?」
「アハハハ!そうでしたね」
和菓子談義で盛り上がっていたいつきとゆり、買い出しを終えたつぼみとえりかも合流し、一同はなぎさ達がやってくるのを待ち侘びていた。
それから30分ぐらいして、アカルンの力を借り、一同が姿を現わした。
「ゆり、つぼみ、えりか、いつき、お待たせぇぇ!」
一同を代表したように、なぎさがつぼみ達に声を掛けると、つぼみ達は皆笑みを浮かべながら、
「皆さん、良くお越し下さいました!」
「みんな、待ってたっしゅ!」
「いらっしゃい!」
「良く来てくれたわね!さぁ、座って頂戴!!」
つぼみ達は、準備していたテーブルに、一同にランダムに座って貰い、接待役であるつぼみ、えりか、いつき、ゆりの四人は、それぞれバラバラに座り、客人であるなぎさ達を持てなした。
つぼみと一緒に座るのは、ほのか、舞、りん、せつな
えりかと一緒に座るのは、薫、のぞみ、うらら、美希
いつきと一緒に座るのは、ひかり、咲、くるみ、祈里
そして、ゆりと一緒に座るのは、なぎさ、満、かれん、こまち、ラブ
一同が和やかにティータイムを満喫していると、つぼみは少し緊張気味に一同に話し掛け、
「皆さん、私ちょっと、りんさんとせつなさんを連れて、家に行きたいんですが・・・よろしいでしょうか?」
「エッ!?つぼみ、私とりんに何か用事でもあるの?」
「はい!前に、植物園やりんさんのお店で・・・」
「エッ!?アァ、はい、はい、成る程ね・・・私は良いよ!せつなは!?」
つぼみの用事が、せつなにプレゼントする花の種の事だと気付いたりんが、ウンウン頷き、せつなに聞くと、せつなも嬉しそうな表情を浮かべ、
「私が拒否する理由が無いわ!でも、良いの?」
「はい!是非来て下さい!!」
「だったら・・・一時間ぐらい自由時間にでもしますか?」
それなら、折角だから自由時間にでもしましょうかといつきが一同に尋ねると、ゆりもその案に同意し、
「それも良いわね!じゃあ、つぼみ、えりか、いつき、私達で別れて、みんなにこの町を案内しましょう!!」
「「「はい!」」」
四人がそれぞれこの町を案内してくれると聞き、美希は目を輝かせながらえりかを見つめると、
「ねぇ、えりか!あたし、ちょっとえりかの家に行ってみたいんだけど・・・駄目かしら?」
「エッ!?別に構わないよ!そうだ!ゆりさんも一緒に行かない?最近ゆりさんが冷たいって、もも姉がいじけてたからさぁ」
「エェェ!?そ、そんな事は無いと思うけど・・・」
えりかの姉ももかが、ゆりに最近冷たくされてると聞き、思わず動揺するゆりだった。なぎさはニヤニヤしながらゆりを見つめると、
「ほのか、私達もえりかの家に行かない?えりかのお姉さんって、私達と同じ年みたいだしさ」
「別に良いよ!でも、大人数でお邪魔して、ご迷惑じゃないかしら?」
「大丈夫!大丈夫!家はフェアリードロップっていう洋服のお店やってるし、お客さんが多いのは、寧ろ喜ばれるから!ニヒヒヒ!!」
そう言うと、えりかはニンマリ微笑んだ。のぞみは少し考え込むと、
「私は・・・何処か美味しいお店にでも行きたいなぁ?」
「のぞみ・・・それはみんなが揃ってからにしましょうね?」
今大福を食べたばかりなのに、もう次の食べ物の事を考えて居るのぞみに、苦笑を浮かべながらかれんが諭すと、のぞみもそれもそうだねと納得した。
「じゃあ僕は、満さんと薫さん、かれんさんとこまちさんとくるみさん、ラブさんを案内してくるね!」
「いつきの家は、道場をやってるんでしょう?」
「この世界の武道って、興味があるわね!」
「平和になったとはいえ、何かの役に立ちそうだしね!」
「じゃあ、僕の家に行ってみますか?」
満と薫、くるみは、道場というものに興味があるようで、いつきの家に行くのを楽しみにしているようだった。ラブは腕組みしながら、
「道場かぁ・・・おもちゃの国を思いだすなぁ・・・」
ラブは、おもちゃの国に行った時、双六で止まったマスの影響で道場に飛ばされ、ブルース・リーの真似をしたようなおもちゃと戦った事があった・・・
「じゃあみんな、また一時間後に植物園で!」
ゆりの挨拶で、一同はそれぞれ別れ、自由時間を過ごす・・・
「此処が私の家・・・って、アレェ!?」
自分の家、HANASAKIフラワーSHOPに、りん、せつな、祈里、ひかり、咲と舞を連れて来たつぼみであったが、家の中に両親が見当たらず小首を傾げると、家の中からドタバタ出てきたつぼみの父陽一は、
「オッ!つぼみ、良い所に帰ってきた!!」
「お父さん!?慌ててどうかしたんですか?」
大慌ての陽一を見て、小首を傾げたつぼみが訳を尋ねると、少し無理をしたのか、妊娠中のつぼみの母みずきが、貧血で倒れたと聞き、つぼみも真っ青になるも、今は奥で休んでいるから大丈夫と聞きホッと安堵する。どうしても出掛けなければならない配達があって、困っていた所だと陽一は語った。つぼみは、後の事は自分に任せてと陽一を送り出すと、
「皆さん、折角来て頂いたのに、ドタバタしてすいません・・・」
「ううん、気にしないで!ねっ、みんな!」
「そうだよ!私達の事は良いから、早くお母さんの様子を見てきて上げなよ!!」
りんと咲の言葉に甘え、つぼみは母の様子を見に部屋の中へと入っていた。ちょうどその時、花を買いに来たお客さんがやって来て、同じく花屋をやっているりんが応対する。そのテキパキしたやり取りに、他のメンバーも感心していたが、そういう時に限って、他にもお客さんがやってきしてしまい、咲は慌ててつぼみを呼びに行こうとするも、
「咲、待って!今はつぼみを、お母さんと一緒に居させて上げましょう?いらっしゃいませ!何かお探しでしょうか?」
せつなは咲を引き留め、此処は自分達で対応しようと話し掛け、分からない事はりんに聞き、客商売に慣れているひかりと咲、不慣れながらも、つぼみの為に奮闘していたせつな、祈里と舞も、花の包装などで懸命にフォローしていた・・・
奥から出てきたつぼみは、自分を心配させまいとお客さんへ対応してくれた一同に、深い感動を覚えていた。
(皆さん・・・・・私、せつなさんにプレゼントするお花が決りました!)
目をウルウルさせながら、つぼみはせつなへの花の種のプレゼントを決めるのだった・・・
一方、明堂院家に見学に来た一同・・・
「私達・・・何で稽古着を着ているのかしら?」
「エェと・・・私達、見学に来ただけよねぇ?」
「ちょっと・・・足が痺れてきたんだけど」
明堂院家に見学に来た満、薫、かれん、こまち、くるみ、ラブ、何故か一同は、いつきの祖父明堂院厳太郎より、稽古着に着替えるように言われ、道場の隅で、正座で待機していた。かれんとこまち、そしてくるみは、何故こんな事になったのか、理解に苦しむようだった。
「いつきちゃんのお爺ちゃんって・・・ちょっと怖そうだよねぇ?」
「そう!?武道家って、あんな感じじゃないの?」
「前に読んだ本のイメージ通りだわ!!」
ラブは、厳しそうな厳太郎に少しビビリながら、満と薫に話し掛けると、二人はイメージ通りだとさしたる動揺はしていなかった。
一同の前では、門下生達が組み手を行っていた・・・
気合いの籠もった声が、道場に響き渡る。その様子を、正面で威厳漂わせ正座しながら見つめる厳太郎、その隣に立って居た髪の長い青年が、一同に近付いて来ると、
「やあ、いらっしゃい!話はいつきから聞いています・・・いつもいつきがお世話になっています!私はいつきの兄で、明堂院さつきと申します!!」
好青年さを醸し出したさつきが、恭しく一同に頭を下げると、一同も礼を返す。さつきは苦笑を浮かべながら、
「お爺様が、ただ見学するだけでは、我が流派を知る事にはならないって仰って・・・私といつきで、皆さんをご指導致しますので、今回は体験見学という事で・・・」
「「体験見学ですかぁ!?」」
思わずハモったかれんとこまちが思わず驚き、改めて練習している門下生を見つめる。自分達もあのような事をやらされるのだろうか?二人の表情が引き攣った。武道着に着替えたいつきも現われ、苦笑を浮かべながら、
「皆さん、じゃあ折角なので、明堂院流の基本をお教えします・・・よろしくお願いします!」
いつきとさつきが頭を下げると、慌てて一同もその場で頭を下げた・・・
「やるからには・・・手加減無用よ!」
「エエ、私達も遠慮はしないわ!」
「満ちゃん!薫ちゃん!勝負じゃないんだからぁぁ?」
「いつき!さつきさん!お手柔らかに・・・」
やる気満々の満と薫を慌てて静止し、ラブとかれんは、引き攣った笑みを浮かべながら、お手柔らかにと二人に頼んで居た・・・
「ただいまぁ!もも姉、ゆりさん来たよ!!」
フェアリードロップにやって来た一同、オシャレな服の数々に、なぎさとほのか、のぞみとうらら、そして美希は、興味津々で店内を見渡した。えりかに呼ばれたももかが、二階から降りてくると、ゆりを見付けるや、猛ダッシュで駆け下り、ゆりを苦笑させる。
「もう、ゆりったら久しぶりじゃない!電話しても忙しいって、何度振られた事か・・・アレェ!?」
ももかに気付いた一同も近寄り、ももかに挨拶すると、慌ててももかもお辞儀を返すも、大勢の少女達を見て戸惑った。自分のファンだという少女が、時折フェアリードロップを訪ねてくる事はあったが、どうも見た限りでは、えりかやゆりの知り合いのようで、ももかは小首を傾げた。
「この人達・・・えりかやゆりの知り合いなの?」
「エへへへ!仲間っしゅ!!」
「えりか!・・・まあ、訳あって知り合った友達よ!紹介するわね!!」
ついうっかり、プリキュアの事を喋ってしまいそうなえりかを窘めたゆりは、ももかになぎさ達を紹介するのだった。自分の知らない所で、えりかは兎も角、大勢の友達を作っているゆりを、羨ましくもあるももかだったが、なぎさは気さくにももかに話し掛け、ほのかを伴い、自分達がももかと同じ年だと伝えると、ももかも嬉しそうに談笑する。
えりかは、美希をももかに紹介すると、美希は嬉しそうに目を輝かせ、
「ももかさんの仕事ぶりは、雑誌で参考にさせて貰っています!私も、ももかさんみたいなトップモデルになれるように頑張ります!!」
「エェと、美希ちゃんだっけ!?ウン!大丈夫!!美希ちゃんのスタイルなら、私以上のモデルに何て、直ぐになれるわよ!!」
何気に奥で子供達のやりとりを聞いていた、えりかとももかの母さくらは、美希の容姿をジィと見て居ると、突然美希に駆け寄り、
「美希ちゃんって言うの?ねぇ、あなたのお母さんって・・・ひょっとして、レミさんって名前じゃ?」
「エッ!?母をご存じ何ですか?確かに母の名前は、蒼乃レミですけど・・・」
「まぁ!やっぱりレミさんの・・・美希ちゃん、大きくなったわねぇ?若い頃のレミさんにそっくりだから、もしかしたらと思ったら・・・ももか、えりか、あなた達も小さい時、美希ちゃんには会った事あるのよ!!」
「「エェェ!?」」
「そ、そう何ですか?」
突然のさくらの告白に、美希、えりかとももかの三人は大変驚き、思わず三人で顔を見合わせた。さくらはニコニコしながら頷き、
「もっとも、えりかはまだ一歳だったし、美希ちゃんも二歳ぐらい、ももかも四歳の時だから、覚えて無くても当然かしら?」
さくらの話によれば、若い頃トップモデルだったさくらは、モデルやタレント業をやっていた美希の母、レミと親交があったそうで、互いに家庭を持って忙しくなり、近年は年賀状だけの挨拶になってしまっていたと伝えた。
「これも何かの縁なのかしらねぇ?美希ちゃん、何時でも家に遊びにいらっしゃい!レミさんにもよろしくね!!」
「は、はい!」
さくらはそう言い残し、やって来たお客さんの応対を始めた。なぎさ達やのぞみ達も、美希とえりかにそんな接点があるのは驚いたようで、
「へぇ・・・美希とえりかに、そんな接点があった何てねぇ」
「うん!凄く運命的だよねぇ・・・」
なぎさの言葉に、のぞみもウンウン頷き、人の縁を実感していた・・・
合流して一緒に植物園に戻ったつぼみ達とえりか達、先に戻って居たいつき達だったが、かれんとこまち、ラブはテーブルに顔を付き、グッタリし、くるみはミルクの姿に戻ってバテていた。
「皆さん、ただいま戻りました!」
「どうしたの!?疲れた顔して?」
つぼみとえりかは、疲れ切っているかれんとこまち、ラブに話し掛けると、いつきが苦笑を浮かべながら、
「アハハハ、かれんさん達は、僕の家の道場を見学に来たんだけど、ひょんな事から、明堂院流の体験をする事になってね」
「いつき、良い勉強になったわ!」
「ええ、今後の役に立ちそうだわ!」
バテているかれん達と違い、満と薫はいつきに礼を言い、生き生きしていた。ラブはそんな二人を見ると、
「満ちゃん、薫ちゃん、良く平然としてるね?私何か・・・もうクタクタだよぉぉぉ」
疲れ切ったラブが、元気そうな満と薫を見て、グッタリすると、一同が笑い声を上げた。
「フフフ、みんな、お帰りなさい!」
そんな一同の声が聞こえたのか、奥からつぼみの祖母薫子が現われ、一同はこの間お世話になった謝辞を述べた。薫子も加わると、一同の顔をマジマジと見つめ、
「こんなにプリキュアが増える何て・・・想像もした事が無かったわぁ!あの時は、私とゆりちゃんだけだったし・・・」
感触深げにゆりを見つめながら、薫子がポツリと言葉を漏らすと、のぞみは興味があったのか、ゆりに話し掛け、
「そういえば、ゆりさんは最初、一人で砂漠の使徒と戦ってたんですよねぇ?」
「ええ!五十年振りに、再び活動を再開した砂漠の使徒・・・薫子さんの後を継いだ私は、コロンと共に、砂漠の使徒と戦った・・・」
なぎさとほのかは、この前ゆりからプリキュアになった話を聞いていたが、他のメンバーは知らないらしく、身を乗り出して聞く耳を立てた。
「ゆり!折角だから、みんなにも話して上げたら?」
「別に良いけど・・・大した話じゃないのよ?」
「「「「聞きたい!!」」」」
咲、のぞみ、ラブ、えりかが、ゆりに聞きたいと頼むと、ゆりは目を閉じ、頭の中で整理すると、一同にゆっくりと話し出した・・・
2、
キュアフラワーと、砂漠の王デューンとの戦いから五十年の月日が流れた・・・
今地上に、再び砂漠の使徒が暗躍しようとしていた・・・
月に浮かぶ砂漠の中に、城のような建物があった・・・
その中で、茶色い軍服を着た体格の良い大男が、画面に跪き、会話をしていた・・・
「デザートよ、再び我らが動く時が来た!我らの配下に加わったサバークと共に、今度こそこころの大樹を枯らし、この星を砂漠に変えるのだ!!」
「ハッ!お任せくださいデューン様・・・必ずやこころの大樹を見つけ出し、この星を我らの安住の地にしてみせます!!」
「侮るな!こころの大樹は、必ずプリキュアを差し向けてくる・・・用心しろ!!」
「ハハァァ!!」
デューンとの会話が終わったのを見計らい、背後からデザートに声を掛けた者が居た。
「いよいよ出番ですね?デザート子爵!」
「そうだ!クラゲールよ、直ちにこころの大樹を捜しだしてくるのだ!」
「お任せを!!」
薄茶色の軍服のような服を着た褐色肌の男・・・
名はデザート子爵、彼はデューンから全権を任されていた。配下のクラゲールは、茶色いブレイズヘアーをした肌白い細身の男、彼は不敵な笑みを浮かべながら、その場を後にした・・・
月影ゆりは泣いていた・・・
大好きな父が、フランスで消息不明になって以来、彼女から微笑みが消えた・・・
毎日学校から帰って来ては、父から便りがないかポストを開けるも、父から手紙が届く事は無かった・・・
泣き止んだゆりは、もう17時近い事に気付き、慌てて明堂学園中等部の制服を脱ぎ始めた。ゆりは不意に、誰かの視線を感じ振り向くと、窓に妙な物体が張り付いていた。
(な、何!?あの変なのは?)
恐る恐る近付くと、縫いぐるみのようで、ゆりはホッと安堵し、窓を開けた。
「ヤァ!僕の名前は・・・」
「イヤァァァァ!!」
ゆりは、咄嗟にしゃべり出した縫いぐるみを、手で叩き落とすと、縫いぐるみは地上でピクピク痙攣していた。私服に着替えたゆりは、さっきの縫いぐるみが気になり、下に降りていくと、縫いぐるみはヨロヨロ立ち上がり、
「い、いきなり殴るとは失敬だねぇ?僕の名はコロン!こころの大樹の妖精さ!!突然だけど、君は最近、妙な夢を見た事ないかい?」
「エッ!?どうしてそれを縫いぐるみが・・・」
「違う!僕は縫いぐるみじゃなくて妖精さ!!」
「妖精!?」
ゆりは、突然縫いぐるみが話し出した事にも驚いたが、自分が毎日のように見る夢の事を、コロンと名乗る妖精が知っている事に、更に驚きを見せた。
コロンの言うように、ゆりは毎日同じ夢を見て居た・・・
大きな大木が上空で見守る中、巨大な大男を、光るワンピースを着た女性が、小箱を抱え閃光を放つ夢を・・・
「やっぱりそうだ!君こそ、キュアフラワ-の後継者に選ばれた、僕のパートナー何だ!!」
「エッ!?キュアフラワー!?後継者!?一体何の事?」
頭の中が混乱するゆりに、コロンは植物園に行くように進言する。植物園はゆりも大好きな場所で、何度も訪れていたが、この妖精は、自分に何を伝えようとしているのか、ゆりは気になった・・・
ゆりは、植物園に行って来ますと置き手紙を書くと、コロンと共に向かった。
植物園に着いたゆりは、園長である薫子と親しげに会話するコロンを見て、驚愕の表情を浮かべると、
「え、園長さん・・・その妖精を知ってるんですか?」
「エッ!?ゆりちゃん?コロン・・・まさか?」
「キュアフラワ-!そう、彼女こそ・・・こころの大樹によって、あなたの次に選ばれたプリキュア!」
「ゆりちゃんが、プリキュアに!?」
薫子は、ゆりの顔を見ると愕然とした・・・
花を大好きで、頻繁に顔を出していたゆり、植物学者である父の失踪後、ゆりの心は傷ついていた・・・
そんなゆりを、こころの大樹はプリキュアに指名し、戦わせようというのか?薫子は胸が痛んだ・・・
50年前、自分がデューンとの戦いに決着を付けていれば、ゆりを同じ目に合わせなくても良かったのにと・・・
その時、植物園の近くで大きな物音が響き渡った。顔色を変えて外に飛び出した薫子を、ゆりとコロンもその後を追った。そこには、猫の姿をした大きな怪物が暴れて居た。
「僕は猫が好きなんだぁぁ!でも、飼いたいって言ったら、きっと怒られる・・・」
「ハァハッハツハ、人間とは、下らん事で悩むものだなぁ?」
側に居たクラゲールは、そんなデザトリアンの心の声を嘲笑した。ゆりの心に沸々怒りが沸き上がってきた。誰にでも人に言えない悩みはある。それを嘲笑う何て、許せないと・・・
「デザトリアンにされたのは、この少年だよ!」
コロンは、丸い球体をゆりと薫子の下に持って来た。球体の中には、膝を抱えた少年が、苦しげな様子で呻いていた。ゆりは目を見開いて驚き、
「これは一体!?」
「人は皆、心の中に花を咲かせているの・・・私も、ゆりちゃんも、みんなね!」
薫子の言葉を引き継ぐように、コロンはゆりに話し掛け、
「デザトリアンにされた人は、心の花を枯らされ、全ての心の花を枯らせてしまうと・・・二度と目覚める事は、出来なくなってしまうんだ!」
「そんなぁ!?」
動揺するゆりを尻目に、薫子はクラゲールの前に駆け出すと、
「お止めなさい!」
「ン!?貴様の胸に掛かっているペンダントは・・・そうか、貴様がキュアフラワーか?」
クラゲールは口元に笑みを浮かべると、束ねた髪の毛を、触手のようにして薫子に攻撃を始めた。その時、一陣の花びらが舞うと、眼鏡を掛けた青年が現われ、薫子を抱き抱えると、クラゲールから距離を取った。
「何者だ、貴様!?まあいい・・・どうした、何故プリキュアに変身せん?クククク、デザート子爵の仰った通りだな!キュアフラワー、貴様はデューン様との戦いで、もうプリキュアになる事は出来ないようだなぁ?」
「クッ!」
「ハァハハハハ!プリキュアの居ないこんな世界など、直ぐに砂漠に変えてやる・・・デザトリアン!もっと暴れてしまえ!!」
クラゲールの言葉を受け、デザトリアンが益々暴れ始める。それと同じように、球体の中の少年が、益々苦しげに呻き始める。
「本当に私に、あの怪物と戦える力があると言うの?」
「うん!君なら出来るよ・・・」
ゆりはキッと顔を上げると、ゆりの身体が光に包まれ、目の前に妙な物体が出現した。薫子は目を見開き驚くと、
「あれは、ココロパフューム!じゃあやっぱり、ゆりちゃんこそ私の後を継ぐプリキュア!!」
「時間が無いから一度しか言わないよ!僕が君にプリキュアの種を授けたら、手に持っているココロパフュームに嵌めてこう叫ぶんだ・・・プリキュア!オープンマイハートってね!!」
コロンはそういうと、紫色した丸い物体をゆりに射出した。ゆりは片手で受け取ると、言われるままにココロパフュームにセットし叫んだ。
「プリキュア!オープンマイハート!!」
香水のように身体に振り掛けていくと、ゆりの身体を、銀色の衣装が覆い始めていく。右手には、紫色をした長い手袋を嵌めていた。髪も薄紫色に変化し、変身を終えたゆりが戸惑っていると、
「さあ、新しいプリキュアの誕生だ!君の好きな名前を付けて!!」
「私の好きな名前?・・・」
ゆりの視線に、デザトリアンに街灯を破壊され、辺りに光が消えかける。だが、月の光が鮮やかに自分を照らす姿に、ゆりは名前を決めた・・・
「私の名前は・・・月光に冴える一輪の花・・・キュアムーンライト!!」
新たなるプリキュア、キュアムーンライトが誕生した瞬間だった!!
3、
「「「「オォォォォ!!」」」」
ゆりの話を聞いていた一同が、ムーンライト誕生秘話を聞いて身を乗り出す。薫子は苦笑を浮かべながら、
「私から見ても凄かったわぁ!とても初陣とは思えない戦い振りだった・・・」
薫子は目を閉じ、その時の様子を思い出した・・・
素早い動きのデザトリアンだったが、ムーンライトの動きは更に上だった。格闘戦で圧倒するムーンライトを見て、クラゲールは、先程のように自分の髪の毛を触手のように操り、ムーンライトに攻撃する。ムーンライトが必死に避けていると、
「ムーンライト、タクトを使うんだ!」
コロンはそう叫ぶと、ムーンライトにタクトを呼び出す方法を伝えた。ムーンライトは、コロンの言葉に頷くと、
「集まれ、花のパワー!ムーンタクト!!」
タクトを手に持ち、クラゲールの攻撃を弾き続けるムーンライトは、助走を付けて上空にジャンプすると、
「ハァァァァ!!」
タクトを右、左に振ると、その風圧は、鎌鼬のようにクラゲールの髪を切り落とした。
「バカなぁ!?俺の髪を切り落としただとぉぉ?」
困惑するクラゲールを余所に、ムーンライトは猫のデザトリアンに向き合うと、
「ムーンライト、今だ!フォルテウェーブでデザトリアンを浄化するんだ!!」
「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェ~~イブ!!」
ムーンライトは、コロンから聞いた、花の形をした光の光弾フォルテウェーブで、デザトリアンを浄化した。
「クッ!伝説の戦士プリキュア、この時代にも現われやがるとは・・・デザート子爵に報告せねば!!プリキュア、次はこうはいかんぞ!!!」
クラゲールは捨て台詞を吐いて撤退した。
コロンは、見事な戦い振りを見せたムーンライトを、笑みを浮かべながら称えていたが、
「これから・・・ハッ!?こころの種が生まれそうだよ!」
何かを伝えようとしたコロンの動きが止まると、こころの種が生まれそうだとムーンライトに伝えた。何の事か分からないムーンライトは困惑し、
「エッ!?こころの種って・・・エェェ?」
「プリプリプリプリリ~ン!」
急にお尻を振り、黄色いこころの種を生み出したコロンに、ムーンライトは絶句する。薫子は苦笑を浮かべながら、
「こころの大樹の妖精は、デザトリアンが浄化されたこころの花から、種を生み出す事が出来るの!その種が沢山集まると、こころの大樹は一層元気になるわ!!」
「そ、それは兎も角、こころの種を生みだすのは・・・あんな方法しか無いんですか?」
「それは仕方無いわね・・・私の妖精コッペもそうだったから」
ムーンライトは、呆れたように溜息を付くと、薫子と目が合い、思わずクスリと笑みを浮かべた・・・
初陣を見事にこなしたゆりは、薫子の協力の下、益々力を付けていった・・・
コロンは、デザトリアンの探知能力に優れていて、デザトリアンが現われるや、直ぐにゆりはムーンライトとして駆け付け、デザトリアンを次々に浄化していった・・・
遂には苦戦の末、砂漠の使徒の幹部であるクラゲールさへ、薫子の指導の下で覚えた、フォルテッシモで浄化する事に成功した。ムーンライトは、砂漠の使徒と戦うプリキュア、最大の技とも呼べるフォルテッシモを、一人で使えるまで成長していた・・・
(ここまで凄い何て・・・一人でフォルテッシモを扱えたプリキュアは、私を含めても数人だけだったと聞いているのに・・・この子は、私以上のプリキュアになれる素質を持っているわ!!)
薫子は、ムーンライトの急激な成長振りに目を見張った・・・
「これは一体どういう事だ!?僕はサバークと協力しろと命じた筈だが?」
「ハッ・・・ハハァ、も、もう一度、私めにチャンスを・・・」
「良いだろう・・・ただし、これが最後のチャンスだという事を忘れるな!!」
数々の失態を見せるデザートに、痺れをきらしたデューンは、怒りを露わにしていた。デザートは大変動揺し、その姿を後方で見て居た、銀の長髪に仮面を付けたサバーク博士は、背後で畏まる三人の人物に対し、
「お前達の出番も近いようだな・・・」
「任せるぜよ!」
「最初からこの僕に任せて貰えれば」
「サバーク博士、出撃の許可を頂きたいですわぁ!」
三人は、自分が出撃すると揉め始めるも、サバークは、デザートのお手並み拝見とでもいうように、三人に待機を命じた。背後を振り返ったデザートは、
(クッ!サバークめぇ・・・貴様は部屋に籠もって研究でもしてれば良いんだよ!!こうなれば、嘗て当時の王に追放されたあの男を捜しだし・・・いや、それでは私が王に反乱した事になってしまう・・・)
デザートは、自らムーンライトと戦う事を誓うのだった・・・
4、
来海ももかは寂しかった・・・
雑誌で表紙を飾る程の売れっ子モデルになったものの、クラスメイト達は、何処か余所余所しく接していた。本来ももかは、えりか同様明るい性格をしているのだが、まるで学校に居る間は、仮面を被って生活しているようで寂しかった。
(どうしよう・・・もうすぐテストなのに・・・)
モデルの仕事で海外に行っていて、一週間学校を休んでいたももかは、テスト間際なのに、何所を勉強すれば良いのか戸惑っていた。パラパラ教科書を捲っていたももかに、スッと何冊かのノートが視線に入ってきた。ももかにノートを差し出したのはゆりだった。
「良かったら、使って!一週間も休んでいたら大変でしょう?」
「月影さん・・・ありがとう!あのぅ・・・良かったら、教えて貰えるともっと助かるんだけどぉ・・・」
「フフ、良いわよ!」
「本当!?ありがとう!!」
何処かなぎさとほのかの関係を思い起こさせる、ゆりとももかだった・・・
帰り際、鞄の中から顔を出したコロンは、
「ムーンライト、今日はやけに楽しそうだねぇ?」
「エッ!?そう?何時もと変わらないと思うけど・・・」
コロンは最近ゆりが明るさを取り戻した事を、自分のように喜んで居た。プリキュアになっても、彼女は自分の部屋でよく泣いていた。そんなゆりを眺めているのが、コロンは辛かった。何とかゆりの力になりたいと思って居た。そんな優しいコロンと触れ合い、ゆりの心も、次第に明るさを取り戻そうとしていた・・・
そんな彼女達だったが、突然コロンの顔付きが変わった・・・
「ムーンライト、デザトリアンの気配を感じる!その側に、得体の知れない気配も・・・」
「得体の知れない気配!?とにかく行ってみましょう!」
二人はデザトリアンの気配のする方向に駆け出した!
「妻にも、娘にも・・・会わす顔が無いんだぁぁ!」
「エッ!?」
スーツ姿に似たデザトリアンが、自分の妻と娘に会わせる顔が無いと叫んでいる姿に、ゆりは戸惑った。コロンはそんなゆりを叱咤し、変身するように促すと、ゆりはムーンライトに変身して向かいうった。
「現われたか、キュアムーンライト!我が名はデザート子爵・・・クラゲールの仇、この俺自ら取らしてもらうぞぉぉ!」
デザート子爵は、懐から二丁拳銃を取り出すと、ムーンライト目掛けエネルギー波を乱射した。素早い動きで走り、攻撃を避けながら前進するムーンライトだったが、
「娘に会いたい・・・でも、こんな情けない姿を見せられない・・・」
(まさか、お父さん!?)
一瞬の油断が、ムーンライトの右足を打ち抜いた。
「キャァァァ!」
「ムーンライト!!」
吹き飛ばされたムーンライトの側に向かうコロンだったが、デザートは不適な笑みを浮かべながら、照準をムーンライトに向けた。パンと放たれた攻撃を、間一髪コロンが割って入り、バリアで攻撃を防ぎ続けた。
「ムーンライト、立つんだ!ムーンライト!!」
(私は・・・何の為に戦っているの?私は・・・)
デザトリアンに、自分の父の姿を重ねてしまったムーンライトは、戦意を喪失しそうになるも、
「ムーンライト!!!!」
コロンの声がはっきりと聞こえた時、我に返ったムーンライトは、自分を懸命に庇ってくれるコロンに気付いた。
「コロン!」
自分は何をしていたのか?
この星を砂漠に変えようとしている、砂漠の使徒と戦う事を選んだ筈なのに・・・
キッと表情を引き締めたムーンライトは、右足の痛みに耐えて立ち上がると、
「ムーンライト、右足を怪我している君には、地上戦は不利だ!空中で戦うんだ!!」
そう言うと、コロンはマントの姿に変化し、ムーンライトの首に巻き付いた。ムーンライトはマントを広げ宙に飛ぶと、ムーンタクトを取りだし、上空からフォルテウェーブでデザトリアンを浄化した。
「チッ!ムーンライトぉぉぉ!!」
デザートも宙に飛び、ムーンライトに肉弾戦を挑んできた。パンチとパンチが、蹴りと蹴りが相殺する。デザートの右ストレートがムーンライトの顔面にヒットすると思われた時、ムーンライトはその場で宙返りし、ムーンサルトキックでデザートを吹き飛ばすと、
「集まれ!花のパワー!!プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」
瞬時の判断で、空中でフォルテッシモを繰り出すムーンライト、雄叫びを上げながら、フォルテッシモを耐え続けるデザートだったが、遂にフォルテッシモが貫き、地上に着地したムーンライトが叫んだ。
「ハートキャッチ!ハァァァァァァァ!!」
「おのれ、おのれぇぇぇ!!」
爆発と共に地上に落下するデザートを、タクトをクルクル廻したムーンライトは、砂漠の使徒の大幹部デザート子爵を浄化する事に成功する。妖精姿に戻ったコロンと微笑み合った時、目の前に四つの人影が現われた。
「貴様がキュアムーンライトか?我が名はサバ-ク!」
「俺はクモジャキーぜよ!」
「あたしはサソリーナよぉぉん!」
「そして、僕が真打ちのコブラ-ジャさ!」
デザート子爵を打ち破ったのも束の間、目の前にサバ-ク、クモジャキー、サソリーナ、コブラ-ジャを名乗る人物が現われ、ムーンライトに緊張が走った・・・
「これは僕からの挨拶代わりさ!」
コブラ-ジャは、自分のブロマイドカードをムーンライトに投げつけるも、ムーンライトは、興味が無さそうに片手で全て払い落とした。
「や、やるじゃないか?次は・・・」
「待て、コブラ-ジャ!キュアムーンライトよ、今日は挨拶代わりだ・・・だが、我らをデザートと同じように思って居たら、痛い目を見る事を忘れるな!!」
そう言い残し四人は姿を消した・・・
「サバーク・・・新たなる敵!でも、何処か懐かしさを感じたような・・・」
呆然としながら、ムーンライトは四人が消え去った場所を見つめていた・・・
5、
「あの時は、サバークが私のお父さんだった何て・・・夢にも思わなかった!」
「私が、もっと早く気付いて上げられる事が出来たら・・・」
「薫子さんのせいじゃありません!!」
ゆりの心情を思うと、聞いていた一同は掛ける言葉が思い浮かばなかった。自分の父親が、敵として自分の目の前に現われるなど、想像出来なかった。
そしてキュアムーンライトと、新たに実権を握ったサバークとの戦いが始まった・・・
ムーンライトは強かった!
クモジャキー、サソリーナ、コブラ-ジャ、次々と挑んでくる三幹部を、悉(ことごと)く圧倒した。だがサバークは、それすらも計算にしていたかのように、三幹部にある指令を出していた。
「クモジャキー、サソリーナ、コブラージャ、お前達、キュアムーンライトの細胞の一部を、手に入れてくるのだ。可能なれば、奴を連れ去ってくるのか一番だが、それはおそらく不可能!髪の毛一本で良い・・・良いな?」
「「「お任せ下さい!!」」」
そう言って自分達の部屋に戻ったものの、三幹部は不満だった・・・
「ムーンライトの髪の毛ぐらいで、何もあたし達三人掛かりじゃなくても良いんじゃない?」
「そうぜよ!それぐらい、俺だけで十分じゃきぃ」
「おやぁ!?そう言いながら、毎回のように逃げ帰ってくるのは、何処の誰だい?」
「それは、おまんとて同じじゃろうがぁ!」
仲が良いのか、悪いのか、特にクモジャキーとコブラージャは、よく意見が衝突していた。サソリーナは、呆れたように首をすくめると、真っ先にムーンライトの下へと向かった。
「アァァ!?ま、待つぜよ?」
「抜け駆けとは感心しないねぇぇ?」
サソリーナを追うように、慌てて二人もその後を追った・・・
(プリキュアの力に対抗できる者・・・それは、プリキュアだ!!)
サバークの仮面の中の瞳が怪しく輝いた!!
ムーンライトに向かって行ったサソリーナ、クモジャキー、コブラ-ジャだったが、連携がなっていない三人の攻撃を利用し、ムーンライトが圧倒していた・・・
「ちょっとぉぉ!このままじゃ、サバーク博士に会わせる顔が無いじゃないよぉぉ!!」
「クッ・・・こげん強かとは・・・」
「こうなれば・・・スナッキー!!」
コブラ-ジャは、大量のスナッキーをムーンライトに向かわせるも、シルバーインパクトを受けて、一分持たず星になった・・・
「ゲェェ!?何、あの勝ち誇った顔・・・ムカツクゥゥ!ムカツクわぁぁん!!」
「こうなれば仕方無い、サバーク博士の命令を最優先しよう!」
「仕方ないぜよ・・・サソリーナ!」
三幹部は頷き合うと、まずコブラ-ジャがブロマイドでムーンライトに攻撃し、時間差で、サソリーナが髪の毛で攻撃した。その攻撃すら見切ったムーンライトだったが、死角に隠れていたクモジャキーが、抜刀して斬りかかるも、ムーンライトはその攻撃すら躱した。だが、髪の毛を少し斬られ、ムーンライトの表情が険しくなり、クモジャキーをシルバーインパクトで吹き飛ばす。
「何か様子が変だ!?ムーンライト、気を付けて!!」
「大丈夫!私は負けないわ!!」
タクトを取り出したムーンライトが、フォルテウェーブを放つも、三幹部は這々の体で何とか逃げ帰った・・・
「良くやった!キュアムーンライトの細胞と、こころの大樹を研究して作り上げたこれを使えば・・・」
「サバーク博士、それは何ですのぉん?」
「これか!?今はまだお前達が知らなくてもいい!」
サバークは、目の前の機械にムーンライトの髪の毛を、大事そうに入れた・・・
月日は流れた・・・
高校生になっていたゆりは、ももかを親友と呼びあう間柄になっていた。プリキュアとして、三幹部が繰り出すデザトリアンを浄化していったムーンライトは、ある日薫子に呼ばれ、植物園にやって来た。そこには、コロンに似た二人の妖精の姿があった。
「君達は!?」
「シプレですぅ!」
「コフレですっ!」
コロンに聞かれた二人、シプレとコフレは、フワフワ浮かびながら、一同に挨拶すると、一同も挨拶を返した。
「僕の名はコロン!キュアムーンライトのパートナーさ!!そして、あそこに居られるのが・・・」
「知ってるですぅ!コッペ様ですぅ!!」
「コッペ様は、僕達の憧れですっ!」
コッペは、そんな言葉も耳に入らないかのように、ボーとしていた。
「二人も妖精が生まれたという事は・・・ゆりちゃん、あなたの活躍で、こころの大樹が元気を取り戻した証拠よ」
「いえ、私は・・・」
そう謙遜しながらも、ゆりは嬉しかった。自分とコロンが必死に戦ってきた事が報われた気がした。だが薫子は、表情を曇らせると、
「でも、シプレとコフレ・・・二人のプリキュアの妖精が誕生したという事は、こころの大樹は、危機を感じているのかも知れない」
「危機・・・ですか!?」
「ええ、プリキュアの妖精が現われたという事は・・・ゆりちゃん、あなたと共に戦うプリキュアが、誕生しようとしている!」
「私と共に!?」
「それは心強い!ムーンライト、さっそく君の仲間になりそうなプリキュアを捜そうよ!!」
薫子の言葉を聞き、ゆりは複雑な胸中だった。共に戦ってくれる仲間が居るのなら心強い、だがそれは、自分と同じ道を歩むという事を意味していた。
「薫子さん、コロン、私は大丈夫!」
二人を心配させまいとするように、ゆりは笑みを浮かべると、心配そうなコロンは、
「ムーンライト、君は仲間が居なくて大丈夫なの?」
「大丈夫!今までだって一人で戦って来たでしょう?薫子さんだって、一人で戦って来たんだもの!!」
「それはそうだけど・・・」
「あのサバークと言う男・・・油断はならない!ゆりちゃん、用心して?」
「はい!」
(ゆりちゃんは、自分と同じような境遇の子を作りたくないのね!一人で戦うなら、あの力は必ず必要になるわ!!ゆりちゃんの実力なら、試練を乗り越えられるかも知れない・・・そろそろ彼女を、プリキュアパレスに連れて行く時が来たのかも知れないわね)
薫子は、虚空を見つめながらそう考えた・・・
何時ものように、サソリーナが放ったデザトリアンを倒したムーンライト、毎回のように悔しがりながら撤退したサソリーナと入れ替わるように、黒い衣装を着た片翼でオカッパ頭の少女が姿を現わした。突然現われた少女に、ムーンライトは動揺し、
「あなたは・・・誰!?」
「私の名は・・・ダークプリキュア!キュアムーンライト、お前を倒す為に生まれたプリキュアだ!!」
「ダークプリキュア!?プリキュアが何故私を?」
「私は、サバーク博士によって生み出された存在!サバーク博士の邪魔をするキュアムーンライト・・・お前を倒す!!」
「クッ!?」
突進してくるダークプリキュアを、真っ向から迎え撃ったムーンライト、パンチが、キックが相殺し、技と技がぶつかり合った。
「信じられない!?ムーンライトと互角・・・いや、あの動きは、まるでムーンライトじゃないか?ダークプリキュア・・・恐るべき相手だ!!」
驚愕するコロンの前で、痺れを切らしたムーンライトは、
「集まれ、花のパワー!ムーンタクト!!」
ムーンライトが、ムーンタクトを取り出すのを見たダークプリキュアは、口元に笑みを浮かべるや、
「闇の力よ、集え!ダークタクト!!」
ダークプリキュアが、タクトを軽く振って身構えると、ムーンライトは思わず目を見張った。
「タクトまで!?だったら・・・花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェイブ!!」
「フッ!ダークフォルテウェイブ!!」
ムーンライトの放った銀色の花の形をした光弾を、ダークプリキュアが放った赤黒い花の光弾と激突し、相殺して爆発する。二人は爆風で飛ばされるも、直ぐに体勢を整え、
「クッ!なら・・・集まれ!花のパワー!!プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」
「無駄だ!闇の力よ、集え!プリキュア!ダークパワー・フォルテッシモ!!」
「バカな!?フォルテッシモまで?」
激突し合うフォルテッシモ同士の戦いを見て、コロンは驚愕する。
「「ハァァァァァ!!」」
二人のフォルテッシモは互角のぶつかり合いをして、両者は弾き飛ばされ地面に激突した。
「クッ・・・つ、強い!」
「おのれぇ、キュアムーンライトめぇぇ!」
ヨロヨロ立ち上がった二人、コロンは心配そうにムーンライトに駆け寄り、黒い稲妻と共に現われたサバークは、よろめくダークプリキュアを支えると、
「良くやった!これでお前なら、ムーンライトを必ず倒せると確信した!!今日の所は引くぞ!!」
撤退した二人を見て、ムーンライトは唇を噛んだ・・・
「ムーンライト、痩せ我慢をしてる時じゃ無いよ!シプレとコフレのパートナーとなるプリキュアを、みんなで捜すべきだよ!!」
「コロン、前にも言ったでしょう?私一人で大丈夫!現にキュアフラワーだって、たった一人でデューンを追い返したそうじゃない?私は大丈夫!!」
困惑しているシプレとコフレの頭を、微笑みながら撫でるムーンライトを、コロンは心配そうに見つめていた。
今後の事を心配したコロンは、薫子に相談すると、薫子はゆりを呼び寄せ、
「ゆりちゃん、一人で戦うと言うのなら・・・あなたには試練を受けてもらうわ!」
「試練・・・ですか?」
「そう、私も嘗て体験した試練・・・それを乗り越えた時、プリキュアに新たな力が与えられるの!やってみる?」
「はい!よろしくお願いします!!」
薫子は頷くと、植物園の奥へと一同を案内した・・・
こうしてムーンライトは、プリキュアパレスの試練を受ける筈だった・・・
だが、ダークプリキュアは、その行動が分かっていたかのように、このタイミングで襲撃してきた。迎え撃ったムーンライトと、こころの大樹の側で激闘が開始された・・・
中々試練を受けに来ないムーンライトを訝しみ、薫子がコッペに様子を見に行かせた時、全ては最悪な結末を迎えていた・・・
悲しげな表情を浮かべたゆりは、その時を振り返り、
「私は慢心していた・・・一人で戦えると高を括ってた。その結果、私はコロンを失うという、取り返しのつかない事をしてしまった・・・」
そう言うと、悲しさが甦ってきたのか沈黙するゆり、聞いていた一同の目にも涙が溜まった・・・
「ゆり・・・」
ゆりの気持ちを思うと、なぎさも掛ける言葉が無かった。
「ウゥワァァァン!ゆりさんが、ゆりさんが可哀想だよぉぉぉ」
「グスッ・・・うん」
号泣するラブ、手で溢れる涙を拭い続けるのぞみ、ゆりは顔を上げ、一同を見つめると、
「プリキュアの力を失い、こころの花を枯らしていた私を、つぼみ、えりか、いつきの思いが、私を再びプリキュアへと導いてくれた!そして、なぎさやほのか達みんなが、私にプリキュアとは何なのか、もう一度考えさせてくれる機会を与えてくれた・・・みんな、ありがとう!!」
そう言うと、ゆりは一同に微笑んだ・・・
今の自分の姿を、魂となったコロンも必ず見守っていてくれると信じて・・・
第十二話:ムーンライト伝説!
完