プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百二十一話:ニクスとリリス(後編)

1、キュアミューズVSサキュバスのリリス

 

 サキュバスのリリスの放ったエロチックアイにより、プリキュア達は快楽の虜に沈もうとしていた。助けに現われたブルーによって救われたものの、プリキュア達は荒い呼吸を続け、立ち上がるのも困難な状況だった。ブルーは、プリキュア達を救う為、リリスと睨み合って居たのだが・・・

 

「私を許さない!?ウフフフ、随分威勢が良いのねぇ?でもあなたは、私のチャームからは逃れられない」

 

 リリスはそう言うと、両目を金色に輝かせ、ブルー目掛け投げキッスをした。だがブルーは、リリスをキッと見つめながら、

 

「僕にそんな攻撃は効かない。さあ、彼女達を元に戻せ!」

 

 リリスは、技を放った相手を魅了する技であるチャームを放った。チャームを受けた者は、リリスに魅了され、リリスの命じる事を実行に移す傀儡(かいらい)と成る技であった。だが、地球の神であるブルーには、リリスの放ったチャームは、まるで効果が無かった。リリスは目を見開いて驚き、

 

「まさか!?私のチャームが効かないとは・・・驚いたわ」

 

(リリスの誘惑に耐えた!?あの男、何者なの?)

 

 ニクスは、リリスのチャームを受けても、何事も無いように立つブルーに興味を覚えた。ニクスはリリスの隣に移動すると、

 

「リリス、どうやら少しは正気を取り戻したようね?」

 

「ニクス!?そう・・・また力の暴走をしたようね」

 

 リリスは、自分が暴走した事に気付き、思わず自分の両手を見つめた。リリスは、魔界に居た時でも、性のエキスを吸いすぎ、暴走した事があった。

 

(まるで私の中に、もう一人の私が居るかのよう・・・)

 

「リリス!?話を聞いてる?・・・ねぇリリス、その男の相手は私がするわ」

 

 自らの力の暴走を知らされ、呆然としていたリリスだったが、何度もニクスに話し掛けられ、ようやく我に返った。

 

「ニクスが!?・・・まあ良いわ、私はプリキュア達を、絶頂に導いて上げないといけないし」

 

「その前に、リコを移動させなさいよ?」

 

「ハイハイ」

 

「ま、待て!」

 

 ブルーは、リリスが再びプリキュア達に、エロチックアイを放とうとしているのに気付き、リリスを止めようとするも、ブルーの前にはニクスが立ち塞がった。尾鰭を器用に動かし、髪を靡かせながら宙を漂うニクスは、ブルーを指差すと、

 

「あなたの相手は、このマーメイドのニクスがしてあげるわ」

 

「クッ・・・」

 

 ブルーに焦りが生まれた・・・

 

 力を失っているブルーにとって、魔界の魔神を相手に戦う力は無かった。ブルーがニクスと対峙している間に、リリスはブルーが張った黄金の結界を打ち破った。まだ倒れながら、荒い呼吸を続けるプリキュア達にとって、再びエロチックアイを受ければ、直ぐに絶頂に達し、精気の全てをリリスに奪われかねなかった。

 

「さあリコ、あなたはそこを退きなさい」

 

 リリスに命じられたリコだったが、荒い呼吸をしながらも、激しく首を振りながら拒絶し、

 

「ハァハァハァ・・・い、嫌よ!リリスさん・・・もう、もうお願いだから止めてぇ!プリキュアに、恨みがある訳じゃ無いんでしょう?」

 

「そうね、彼女達に恨みは無いわよ・・・でもね、そうはいかないの。彼女達を倒し、何人か魔界に連れ帰らなければ・・・私達の大事な人の命に関わるの!」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

(ハァハァ・・・わ、私達の大事な人の命!?)

 

 ビートは、荒い呼吸をしながらも、リリスが言った大事な人の命と言う言葉が気になった。リリスはリコに手を差しだし、

 

「さあリコ、私の手を掴んで立ちなさい。立たないと、無理矢理移動させるわよ?」

 

「嫌よ!」

 

 リコは、リリスの言葉に首を振って拒絶した。リコにとって、プリキュア達は大切な友人となっていた。その時、鳥の鳴き声が聞こえたかと思うと、ピーちゃんが羽ばたきながら現われた。ピーちゃんは木の上に止まり、心配そうにプリキュア達を見つめた。ピーちゃんに気付いたシプレ、コフレ、ポプリ、キャンディ、グレルとエンエンは、ピーちゃんが止まった木の下に慌てて集まり、

 

「ピーちゃん、大変ですっ!」

 

「ブロッサム達が、大変何ですぅ!」

 

 慌てるコフレとシプレを見たピーちゃんは、木の上から降りてシプレ、コフレ、ポプリ、キャンディの話に耳を傾けた。ちょうどそこへ、ピーちゃんの後を追って、ハミィとアコが駈けて来た。

 

「ピーちゃん、どうしたニャ!?」

 

「何か調べの館で・・・・・エッ!?」

 

 やって来たアコは、思わず立ち止まり、目の前の光景に呆然とした。目の前では、サキュバスのリリスに翻弄され、荒い呼吸をしながら横たわって居たり、座り込んでいるプリキュアの仲間達が居た。ハミィは妖精達に合流し、アコはプリキュア達に話し掛けた。

 

「バッドエンドプリキュアまで!?みんな、一体どうしたの?」

 

『ハァハァハァ』

 

 アコは、バッドエンドプリキュアまで居る事に驚いたものの、荒い呼吸を続ける一同の様子を見て表情を険しくした。

 

「一体、みんなに何が起こったの!?」

 

「アラァ!?もう一人お客さんかしら?」

 

 やって来たアコに気付き、振り返ったリリスの口に微笑が浮かんだ。呼吸を整えたメロディは、潤んだ瞳でアコを見ながら、

 

「ハァハァ・・・ア、アコ、逃げてぇぇ!」

 

「エッ!?」

 

 メロディに逃げるように言われたアコは動揺した。メロディの言葉を素直に受け取れば、微笑を浮かべるリリスと、ブルーの動きを牽制しているニクスの二人を相手に、バッドエンドプリキュア達も加わったプリキュア達は、戦闘不能状態にされたと受け取れた。リリスは、動揺するアコに近付くと、舌なめずりをしながら、

 

「フフ、あなたもプリキュアなのかしら!?」

 

「やはりあなたがみんなを!?そうよ、私は・・・ドドリー!」

 

 アコがドドリーを呼ぶと、ドドリーがアコのキュアモジューレに装着された。アコはキュアモジューレを構えると、

 

「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」

 

「爪弾くは、女神の調べ!キュアミューズ!!」

 

 アコがキュアミューズに変身し、リリスと向かい合った。ブルーは、ミューズが現われた事でホッとしたものの、リリスのエロチックアイを受ければ、ミューズとて只では済まないかも知れないと思った。

 

「ミューズ、その者の妙な技に気を付けるんだ!他のプリキュア達は、その者が放った妙な技で、精気を吸い取られた」

 

「神様・・・精気!?何の事だか良く分からないけど、気を付けるわ」

 

「ウフフフ、ダメよ・・・もうあなたは、私の手の内に居るんだから」

 

「エッ!?」

 

「さあ、あなたはどんな声で悶えてくれるのかしら?受けてみなさい、エロチックアイ!」

 

 リリスは、ウインクしながらミューズ目掛け投げキッスを放ち、思わずミューズが呆然とした。ミューズの頭上に、巨大な目が現われると、地面に魔方陣の紋章が浮かび上がり、地面からピンク色の輝きがミューズを覆った。ミューズは動揺しながら、ピンク色に染まった周囲を見渡し、

 

「何!?これは?」

 

『ミューズゥゥ!』

 

 自分達と同じように、ミューズ目掛け放たれたエロチックアイを見て、プリキュア達がミューズの身を案じて叫んだ。リリスは、勝利を確信したのか笑い声を上げ、

 

「ウフフフ、さあ、あなたの声を・・・・・エッ!?」

 

 リリスは、目の前のミューズを見て二度三度瞬きし、思わず右手で目を擦った。何故なら、目の前では呆然としたミューズが、首を傾げながら平然と佇んで居たのだから・・・

 

「これが・・・どうかしたの?」

 

『アレェ!?』

 

 プリキュア達は、平然としているミューズを見て、思わず全員首を傾げた。リリスは信じられないといった表情を浮かべるも、直ぐに我に返り、

 

「わ、私とした事が、つい力を加減してしまったようね・・・さあ、最大威力のエロチックアイを受けてみなさい!」

 

 真顔になったリリスは、再びミューズにウインクし、投げキッスをして渾身のエロチックアイを放った。ミューズの身体を包んだピンクの輝きが、一層激しく輝いたものの、ミューズは二度三度瞬きし、再び不思議そうに首を傾げた。

 

「だから・・・これが何なの!?」

 

「エッ!?」

 

「ミューズ、凄いクルゥゥゥ!」

 

 リリスは思わずポカンと口を開き、妖精達は、エロチックアイを受けても平然としているミューズを見てはしゃぎ、キャンディは嬉しそうに声援を送った。リリスは我に返るも、激しく取り乱した。

 

「ど、どういう事よぉぉぉ!?何であなたには、私のエロチックアイが効かないのぉぉ?」

 

「そんなの、私が知る訳無いでしょう?」

 

 リリスには、何故ミューズにだけ、エロチックアイが効かないのか理解出来なかった。ミューズは、平然とエロチックアイのテントリー内から出ると、リリスに身構えた。

 

(何故あの子には効かないの!?・・・・・ハッ!?)

 

 リリスは、ある事に気付いた。

 

 エロチックアイには、最大の弱点があった事を・・・

 

「あ、あなたまさか・・・まだ初潮が来てないの?」

 

「初潮!?」

 

 リリスがミューズに聞いた初潮とは、女の子が初めて経験する月経(生理)の事だった。エロチックアイは、対峙した女性の子宮を刺激し、性的欲求を増幅する技ではあるが、初潮を迎えていない少女に対しては、その効果は無かった。それは、リリスの中に潜在的に眠る、清純に対する憧れが、エロチックアイの効力を無効にしているのかも知れなかった。

 

「そ、その反応・・・まだ来てないのね?」

 

 リリスは、まだ荒い呼吸を続けるプリキュア達を見ると、動揺しながら一同を指差し、

 

「ちょっとあなた達ぃぃ、まだ初潮も来てないお子様を、プリキュアとして戦わせて良いわけぇ?」

 

「お子様じゃ無いわよ!」

 

「お子様よ!エロチックアイが効かないのが何よりの証拠・・・何て事なの?まさかプリキュアの中に、初潮も来てないお子様が居た何て・・・」

 

「さっきからお子様って・・・」

 

 ミューズは、リリスに子供扱いされた事で頬を膨らませた。ミューズにとって、子供扱いされる事は一番嫌な事だった。

 

「何だかよく分からないけど、ミューズは子供だから、そいつの攻撃が効かないんだね?」

 

「良いぞ、お子様バンザ~イ!」

 

 少し身体の火照りも治まったメロディとマリンは、ついミューズの事を子供扱いしてしまい、ミューズの目が光った。ミューズは、無言のままメロディとマリンに近づくと、二人をゴロゴロ転がして、先程自分が受けたエロチックアイのテントリー内に入れた。

 

「「アァァン、ヤ、ヤメてぇぇ!オシッコ・・・漏れちゃうぅぅぅぅ!!」」

 

「もう子供扱いしない?」

 

「「アァァン、しませぇぇん!」」

 

 メロディとマリンは激しく悶えながら、ミューズを子供扱いしない事を誓い、ミューズは二人を再びゴロゴロ転がし、仲間達の下に戻した。

 

「「オシッコ洩らすかと思ったぁぁぁぁ」」

 

 半泣き顔のマリンとメロディが、グッタリしながら呟くと、リズムとブロッサムは呆れ顔で、

 

「二人共、何やってるの?」

 

「マリン、メロディ、ミューズを怒らせてどうするんですかぁ?」

 

 放心したようにグッタリするマリンとメロディを、他の一同が呆れ顔で見つめた。リリスは、ミューズが初潮を迎えていないプリキュアだと知り、激しいショックを受けていた。今まで自分に向かってくる者の中で、初潮を迎えていない人間体の容姿をした人物は、初めてだった。

 

(まさか、初潮も来てない女の子が、プリキュアの中に居る何て・・・)

 

「何だかよく分からないけど、今がチャンスね」

 

 ミューズは、動揺するリリスの隙を付いた。

 

「今度はこっちの番よ、シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!シャイニングサークル!!」

 

 ミューズは、まるで分身の術を使ったかのように、四人の幻影を出すと、五芒星のようなサークルを描き、リリスの動きを封じた。先程ミューズに対して、最大級のエロチックアイを放った事で、リリスの力は半減していた。シャイニングサークルを振り解こうと試みるも、逆に疲労を早める結果になった。

 

「クッ!?しまった?」

 

「リリス!?」

 

 ミューズによって動きを封じられたリリスに気付き、ニクスはブルーに背を向けて、リリスの援護に向かおうとするも、その前にようやく少し力を取り戻した、十人の闇のプリキュア達が立ち塞がった。ニクスは眉根を顰め、

 

「あなた達、何の真似かしら!?」

 

「ハァハァ、行かせないわよ」

 

「さっき受けた屈辱、あんたで晴らして上げるよ!」

 

 ダークドリームと、バッドエンドマーチの声を合図にしたかのように、十人の闇のプリキュア達が、ニクスに対して身構えた。ブルーは、そんな闇のプリキュア達を心配そうに見つめながら声を掛け、

 

「君達、戦えるのかい!?」

 

「ここは私達が、あなたは他のみんなを」

 

「すまない」

 

 ダークミントの言葉に頷いたブルーは、闇のプリキュア達に後を任せ、ブラック達の下へと駆け寄った。

 

(このまま少し体力を回復させれば、エロチックアイを使わなくても、あのお嬢ちゃんだけなら・・・)

 

 相手がミューズ一人なら、少し体力を回復させれば、苦手な肉弾戦でも圧倒する事は出来ると判断したリリスだったが、背後から異様なプレッシャーを感じて、思わず振り返った。リリスの視線には、ブルーの加護を受け、蹌踉めきながらも立ち上がった、ブラック、ホワイト、ムーンライト、ブルーム、ドリーム、ピーチを見て、思わず鳥肌が立った。何故なら、6人の背後からは、ゆらゆら揺らぐ炎のようなオーラが、メラメラ燃えていたのだから・・・

 

「ちょっ、ちょっとぉ・・・暴力反対!」

 

 リリスは、幻惑系の攻撃を得意としていたが、格闘に関しては苦手な方だった。ましてや、ミューズに放った最大級のエロチックアイや、ミューズに拘束された事で、体力を消耗していた。六人のプリキュアから発せられる威圧感に、リリスは暴力反対と訴えった。

 

「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

 

 だが、無言のまま一歩一歩近付いて来る、六人のプリキュアの迫力に、さしものリリスの顔は引き攣っていった。

 

「エッ、エェェと、これには深い訳があって・・・」

 

「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

 

 リリスが再び話し掛けるも、まるで耳に届かないとばかり、六人のプリキュアは無言のまま更に近付いて来た。ミューズは肩を竦めると、リリスに聞かせるかのように、

 

「アァア、みんな怒ってるよ・・・私、知~らない」

 

 ミューズは、リリスに舌を出してその場を離れ、リリスの顔からは大量の汗が流れ出した。

 

(やっぱり・・・怒ってるぅぅぅ!?)

 

 数秒後、リリスの悲鳴が響き渡った・・・

 

 

2、闇のプリキュアVSマーメイドのニクス

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライト、ブルーム、ドリーム、ピーチによって、お仕置きされたリリスは、目をグルグル回しながら気を失った。

 

「リリス!よくもぉぉぉ・・・」

 

「ハァハァ、それはこちらのセリフよぉぉ!ダークネススター!!」

 

 ニクスに対して身構える、ダークプリキュア5とバッドエンドプリキュア達だったが、エロチックアイを受けた疲労がまだ見て取れた。ダークドリームは、自らの気を高めようとするかのように叫び、ダークネススターでニクスに攻撃を仕掛けるも、ニクスは難なくダークネススターを回避した。

 

「人魚のくせに、空を自在に飛ぶ何て・・・」

 

「フフフ、人魚が宙を泳ぐ事が不思議かしら?私に取って、空中も海の中と一緒・・・こういう事も出来るのよ?バキューム・サイクロン!」

 

 ニクスは、手のひらを合せて右の腰に当て気を高めると、一気に前方に突きだした。ニクスが繰り出した見えない攻撃に、9人の闇のプリキュアは全く反応出来なかったものの、只一人バッドエンドマーチは、瞬時にバッドエンドシュートを前方に蹴り上げた。バッドエンドシュートは、掃除器に吸い込まれたかのように、激しく回転をしながら消滅した。

 

「やっぱりそうか・・・お前ら、気をつけな!こいつはあたし同様、風を自在に操る事が出来るようだ」

 

「へぇ、私の攻撃に対応出来るとは・・・流石はプリキュアと言ったところかしら!?」

 

(他の奴らじゃ、今はまだこいつの技に対応出来ないようだな・・・)

 

 バッドエンドマーチはそう判断した。自分がサポートに回らなければ、ニクスの攻撃に対応する事は無理だと判断した。ブラックは、苦戦している闇のプリキュア達に気付くと、

 

「みんな、私達も加勢するよ」

 

「大丈夫、ここは私達に任せて」

 

「ブラック先輩達は、そのサキュバスを見張ってて」

 

「もしまたさっきの技を受けたら、ミューズ以外本当に全滅しかねないわ」

 

 ブラックが加勢しようとするのをダークアクアが制止し、リリスを見張っているようにバッドエンドハッピーとバッドエンドビューティに頼まれた。ブラック達は頷くと、

 

『分かったわ』

 

 それを見たバッドエンドマーチは、闇のプリキュア達に声を掛け、

 

「あたしがサポートに回る!あんた達は、あの人魚を」

 

『OK!』

 

 バッドエンドマーチに同意した一同は、ニクスの動きを制限させようとするかのように、一斉に四方に散った。ニクスは目で一同の行動を追い、頭の中でどう動くか素早くイメージを浮かべた。

 

「フフフ、私の動きを制限しようと考えているのでしょうけど・・・エアーウェーブ!」

 

 ニクスは両腕を水平にすると、ゆっくり上下に動かし始めた。ニクス目掛け、四方から近付こうとした闇のプリキュア達だったが、まるで波に飲まれたかのように、宙を回転しながら押し戻された。

 

(い、息が・・・)

 

 エアーウェーブに飲まれた一同は、呼吸する事が出来ず、皆苦しそうな表情を浮かべた。それに気付いたホワイトは顔色を変え、

 

「バッドエンドマーチ!他のみんなは、呼吸出来ないようだわ!!」

 

「何だと!?」

 

 バッドエンドマーチは、ホワイトの助言を受け、慌てて力を加減したバッドエンドシュートを放ち、闇のプリキュア達に当て、エアーウェーブから脱出させた。ゴホゴホ咳き込みながらも、体勢を立て直した闇のプリキュア達に、バッドエンドマーチが合流した。

 

「無事か、お前ら!?」

 

「何とかね・・・ゴホッ・・・バッドエンドビューティ、耳を貸して」

 

「何の用!?」

 

 ダークアクアは、バッドエンドビューティに何か囁くと、二人はニクスをキッと見つめた。ダークアクアが宙に飛び上がると、

 

「お返しよ!ダークアロー!!」

 

 ニクスに対して、アクアのサファイアアローに似た黒き水の矢、ダークアローを放つも、ニクスは口元に笑みを浮かべると、

 

「この私に、水属性の攻撃が効くと思って居るのかしら?」

 

 ニクスは、水の技など避けるまでも無いと、口元に笑みを浮かべたままその場に留まった。

 

「エエ、思って居ないわ・・・でも」

 

「こういう攻撃も出来るのよ・・・バッドエンドブリザード!」

 

 ダークアクアの言葉を引き継ぎ、バッドエンドビューティがダークアロー目掛けバッドエンドブリザードを放つと、ダークアローは黒き氷の矢となって、ニクスに向かって勢いを更に付けながら飛んで行った。

 

「しまった!?」

 

 油断したニクスは、咄嗟に二人の連携技を躱し続けるも、一本の黒き氷の矢が、ニクスの尾鰭を擦った。

 

「クッ!?」

 

 ニクスの顔が思わず苦悶に歪むと、ニクスの黄緑色した長い髪の色が、徐々に赤く変化していった。

 

「やってくれたわねぇ・・・」

 

(あいつの周辺の空気が変わった!?)

 

 ニクスから、殺気を帯びた気を感じたバッドエンドマーチは、思わずゾッと鳥肌が立った。その異変は、他の一同にも感じられたが、バッドエンドピースは、そんなニクスを生意気と見て取り舌を出すと、

 

「ベェ!そんなハッタリ効かないよぉだ・・・バッドエンド・・・サンダー!!」

 

 バッドエンドピースは、バッドエンドサンダーを放ったものの、ニクスは高速の動きで攻撃を躱しまくり、その視線にバッドエンドピースを捉えた。

 

「さあ、踊りなさい!ブラッディ・ダンス!!」

 

 ニクスは、バッドエンドピースに狙いを付け、高速の動きから尾鰭を使った乱舞を、バッドエンドピースに浴びせ続けた。

 

「キャァァァァァァ!」

 

 ニクスのブラッディダンスを受け、バッドエンドピースの身体が、縦横無尽に吹き飛ばされる姿は、正に踊らされているかのようだった。次第にバッドエンドピースの唇が切れ、血が滴り落ちた。尚もニクスは、バッドエンドピースにブラッディダンスを浴びせ続け、

 

「さあ、そのまま自らの血で、血の海に沈みなさい」

 

「アウゥゥゥ・・・」

 

「「「「ピース!」」」」

 

「このままじゃ・・・ダークネス・ウィップ!」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、マーチ、ビューティが、バッドエンドピースの身を案じ、ダークレモネードは、咄嗟にダークネスウィップを放って、バッドエンドピースの身体に絡めて、バッドエンドピースを引き寄せた。九人の闇のプリキュアは、バッドエンドピースを庇うように、円になってニクスからの攻撃に備えた。

 

「あ、ありがとう・・・もう、完全に怒ったからねぇ!」

 

 バッドエンドピースは、一同に礼を述べながらも、ニクスに視線を向けると大きく頬を膨らませた。ニクスが再び、バキュームサイクロンの構えを取ったその時、

 

「ダァァァァァァァァ!」

 

「チッ!」

 

 雄叫びと共に急降下してきたキュアブラックの蹴りを、ニクスは舌打ちしながら回避した。

 

「「「「「「ブラック!?」」」」」」

 

「「「「ブラック先輩、どうして!?」」」」

 

 他のプリキュア達と共に、リリスを見張っているように頼んだキュアブラックが加勢し、闇のプリキュアが驚いた表情を見せるも、ブラックは自分の服を指差し、

 

「まあまあ、私もブラックだからさ・・・ダァァァ!」

 

 ブラックは、闇のプリキュア達にウインクすると、雄叫び上げながらニクスに向かって行くも、ニクスはブラックの攻撃を回避し、今度はブラックをブラッディダンスの餌食にしようと一旦距離を取った。

 

「ブラック先輩!?・・・バッドエンドシャワー!」

 

「ダークネスプラズマ!」

 

 それに気付いたバッドエンドハッピーとダークミントが、そうはさせまいとニクスに攻撃し、ニクスは二人の攻撃を回避した。ブラックは、闇のプリキュア達に合流すると、一同に話し掛け、

 

「私があいつに攻撃を仕掛けるからさ、みんなはその隙に・・・」

 

「でも、あいつ素早くて・・・」

 

「本当、頭来ちゃう!」

 

 バッドエンドハッピーが思わず呟くと、バッドエンドピースも同意して頬を膨らませた。ダークルージュはニクスを見つめながら、

 

「だったら、あいつが避けきれない技を放てば良いんじゃない?」

 

「そうね、私達のダーク・ローズ・エクスプロージョンと、あなた達が言ってたバッドエンドバーストなら・・・」

 

「確かに・・・」

 

 ダークアクアの言葉に、バツドエンドビューティも同意した。ダークドリームは一同を見渡すと、

 

「そうと決れば・・・みんな、行くよ!」

 

『OK!』

 

 ダークドリームの言葉に一同が同意し、先ずブラックが行動に出た。

 

「ダダダダダダダダ!」

 

 ブラックは雄叫び上げながら、ニクスに怒濤の連続パンチを浴びせるも、ニクスはブラックの攻撃を躱し続けた。だがニクスは、次第に焦りだしていた。

 

(何!?パンチの勢いが、どんどん加速してるの?)

 

 ブラックのパンチのスピードが徐々に上がり、ニクスは躱しきれなくなってきて、両手でガードし始めた。それを見た十人の闇のプリキュア達は、それぞれ動き出した。ダークプリキュア5は目を閉じ、精神を集中させ、

 

「「「「「我らがマスター!ダーククイーン・・・私達に力をお貸し下さい!!」」」」」

 

 そんなダークプリキュア5の心に、気高き声が聞こえてくる。

 

(親愛なるダークプリキュア5!例え離れていようと、あなた方の声は私に聞こえています!!さあ、あなた方に力を授けましょう・・・)

 

 ダークプリキュア5の頭上が輝くと、五人の手に黒いフルーレが装着される。五人は軽くフルーレを振ると、

 

「5つの闇に!」

 

「「「「希望を乗せて!」」」」

 

「「「「「プリキュア!ダーク・ローズ・エクスプロージョン!!」」」」」

 

 五人のフルーレの先端に、黒い薔薇が姿を現わした。一方のバッドエンドプリキュアも右手を合わせ、

 

「「「「「ドラゴンよ!私達に力を!!」」」」」

 

 バッドエンドプリキュア五人の思いが一つになった時、五人の身体から黒いオーラが沸き上がった。黒いオーラは竜へと代り、竜から放たれた黒い光が、バッドエンドプリキュア五人の手に注がれた。五人の手には、先端に竜の顔を象ったロッドが握られ、見る見るバッドエンドプリキュアの姿を変えていった。

 

「ダークプリンセスハッピー!」

 

「ダークプリンセスサニー!」

 

「ダークプリンセスピース!」

 

「ダークプリンセスマーチ!」

 

「ダークプリンセスビューティ!」

 

「「「「「バッドエンドプリキュア!ダークプリンセスフォーム!!」」」」」

 

 バッドエンドプリキュアが、ダークプリンセスフォームに変化すると、思わずダークプリキュア5は、口元に笑みを浮かべた。

 

「轟け!絶望の闇!!」

 

「「「「堕ちよ!闇の世界へ!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!バッドエンド・バ~~スト!!!!!」」」」」

 

 巨大な闇の竜の背中に乗ったバッドエンドプリキュア達は、巨大な闇の竜の口から黒いブレスを放った。ダークプリキュア5は、バッドエンドプリキュアと呼吸を合わせるように、

 

「「「「「ハッ!!!」」」」」

 

 五人がフルーレを前に突き出すと、フルーレから放たれた黒い薔薇が合わさり、巨大な黒薔薇となって、ニクスに向かって飛んでいった。これには、身体の火照りも治まったプリキュア達も、思わず目を見開いて驚いて居た。

 

「す、凄い、ダークプリキュア5と、バッドエンドプリキュアが同時に・・・」

 

「え、ええ、ダークローズエクスプロージョンと、バッドエンドバーストを同時に放つ何て・・・」

 

 ローズに話し掛けられたアクアは、思わず呆然とした。サニーは少し変顔を浮かべながら、

 

「あんなん、躱せへんやろう?」

 

「あれをまともに受けたらと思うと・・・ゾッとするわね」

 

 ルージュは思わず背筋がゾッとなり、今は味方で良かったと改めて感じていた。ハッピーは、目を輝かせながら、

 

「私達のロイヤルレインボーバーストと、バッドエンドプリキュア達みんなのバッドエンドバーストを、何時か一緒に放って見たいなぁ・・・」

 

 ハッピーの脳裏に、そんな姿が目に浮かんだ・・・

 

 後に悲しみの中で、それは現実となるのだが、この時のキュアハッピーには知る由も無かった・・・

 

 闇のプリキュア達から放たれた合体技は、ニクスを大いに動揺させた・・・

 

「な、何!?何が起きたの?」

 

「彼女達を甘く見ない方が良いよ!これが彼女達の本当の力!!」

 

「彼女達の、本当の力!?・・・・・クッ!?バキューム・サイクロン!」

 

 ブラックは、そうニクスに言い残し、ニクスから距離を取った。ニクスは咄嗟にバキュームサイクロンを放って、両チームの技を吸い込み、無効化しようと試みた。闇のプリキュア達が放った技が、ニクスのバキュームサイクロンに吸収されていくものの、ニクスの顔からは血の気が引いていった。

 

(きゅ、吸収仕切れない!?こ、これ程の威力なの?)

 

 ニクスのバキュームサイクロンを打ち破り、ダークローズエクスプロージョンと、バッドエンドバーストが、動揺するニクス目掛け突き進んだ。

 

(クッ!?このままじゃ・・・)

 

 ニクスは、咄嗟に周囲にエアウェーブを放ち、空気を歪めて直撃こそ免れたものの、その威力の前に大きく吹き飛ばされた。

 

「キャァァァァァァァァ!」

 

(ニクス!?)

 

「ニ、ニクスさぁぁん!」

 

 ニクスが悲鳴を上げながら、激しく地上に叩き付けられ、ニクスの赤く染まった髪が、元の黄緑色した色に戻った。ようやく気付いたリリスと、動揺したリコは、思わずニクスの身を案じて叫んだ。

 

「イェ~イ!」

 

「やったね!」

 

「エエ」

 

 バッドエンドピースが右手を挙げ勝利を喜び、バッドエンドハッピーは、ダークドリームの前に両手を突き出すと、ダークドリームも両手を前に突き出し、両者はハイタッチをして互いに笑みを浮かべあった。そんな三人を、他の七人の闇のプリキュアとキュアブラックは、笑み混じりに見つめた。

 

「ま・・・まだ・・・よ」

 

『エッ!?』

 

 プリキュア達は思わず驚きながら、か細い声が聞こえた出所を見た。そこには、今激しく地上に激突したニクスが、額から血を流し、蹌踉めきながら再び上体を起こして居た。

 

「ま、まだ・・・勝負は・・・付いてない」

 

 そんなニクスの側に、蹌踉めきながらソードが近付いて行った。アン王女は顔を顰め、

 

「ソード、どうしたのです?」

 

「まだあの変な攻撃のダメージ残ってるのかなぁ?」

 

「迂闊に近付いたら危ないわよ」

 

 ピースが不思議そうに首を傾げ、イーグレットがソードに忠告したその時、ブルーは一同に知らせるようにソードを指差し、

 

「違う!あれは、リリスだ!!」

 

『エェェ!?』

 

「エエ、私達は・・・負けられない」

 

 プリキュア達がブルーの言葉に驚く中、ニクスの言葉に同意するかのように、ソードの姿が瞬時にリリスに代り、リリスもニクスの側に蹌踉めきながら歩いて来た。

 

「エッ!?何時の間に?」

 

「今までここで気を失ってたのに?」

 

 気絶していた筈のリリスが起き上がった事で、ハッピーとブライトが思わず背後を振り返ると、リリスに何かされたのか、目をグルグル回しながらソードが気を失っていた。

 

「ソード!」

 

「大丈夫ですか?」

 

 アン王女とルミナスが、心配そうにソードに声を掛けると、ソードはハッと我に返り、

 

「す、すいません、油断しました。リリスが気付いたから、彼女を見た途端、急に目眩がして・・・」

 

 一同の視線が、再びニクスとリリスに向けられた。合流した二人は、キッとプリキュア達を見つめると、

 

「「シーレイン様の為にも・・・私達は・・・負けられない!」」

 

(エッ!?シーレインの為?やっぱり、あの二人・・・)

 

 ビートは、最早戦える身体では無いのに、気力だけで立ち上がって並び立ったニクスとリリスを見て、シーレインに何かあったと直感した。

 

「フフン、あんなボロボロの二人、後は私達だけで楽勝だもん・・・ハッピー、サニー、マーチ、ビューティ、もう一回バッドエンドバーストで倒しちゃおう」

 

「待って!もう勝負は付いたでしょう?」

 

 バッドエンドピースの提案を受け入れ、バッドエンドプリキュア達は、再びバッドエンドバーストを放とうとしているのに気付き、リコは慌ててバッドエンドプリキュア達を止めようとするも、バッドエンドプリキュアは、再びダークプリンセスフォームに変化していた。

 

「止めてぇぇぇ!」

 

 リコが慌てて掛けだしたその時、リコの視線の先で、まるでニクスとリリスを守ろうとするかのように、一人のプリキュアがバッドエンドプリキュアの前に立ち塞がった。

 

『ビート!?』

 

 プリキュア達が驚く中、彼女達の視線に映ったのは、キュアビートだった・・・

 

「弾き鳴らせ、愛の魂!ラブギターロッド!」

 

 ビートはラブギターロッドを取りだすも、バッドエンドプリキュア達は、バッドエンドバーストの体勢を止めず、

 

「轟け!絶望の闇!!」

 

「「「「堕ちよ!闇の世界へ!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!バッドエンド・バ~~スト!!!!!」」」」」

 

『ビートォォォォ!』

 

 巨大な闇の竜の背中に乗ったバッドエンドプリキュア達は、巨大な闇の竜の口から黒いブレスを、キュアビートとその背後に居るニクスとリリス向けて放った。プリキュア達は、ビートの身を案じ絶叫した・・・

 

            第百二十一話:ニクスとリリス(後編)

                    完




二ヶ月半振りの投稿となり、申し訳ありませんでした。
まだ完治してませんが、また再開したいと思います。
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