プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百二十五話:次世代を担う少女達(後編)

1、きらら再び

 

 ホープキングダム・・・

 

 花、海、星で構成された資源も豊富な美しい国・・・

 

 国民の多くは、国王の善政のお陰もあり、豊かな生活を送れては居たが、五年前のある事件を切掛けに、この国の民から笑顔が消えた。この国には、妖精、人間や獣人のような姿をした者も多く住んで居て、魔法界のように多民族国家とも呼べた。王族関係者の耳は尖った形になって居て、その姿は魔界に住むエルフを連想させた。湖の畔にたつ美しい城ホープキングダム城、百年前、世界の危機に立ち上がったプリンセスプリキュアが使用し、ホープキングダムが秘宝として、12個のドレスアップキーと呼ばれるアイテムを、城で厳重に管理して居たが、五年前、キュアフローラが変身する時に使用して居たドレスアップキーだけは、この場から消え去り、11個のドレスアップキーが祭られて居た。この城に住むカナタ王子は、ドレスアップキーが祭られている祭壇へとやって来た。

 

「ここに来るのも、トワが居なくなって、僕が探しに来たあの日以来か・・・」

 

 カナタ王子の本名は、プリンス・ホープ・グランド・カナタと言い、容姿は、薄い紫色の髪をし、母親譲りの褐色の肌をして居た。白い王族衣装を身に纏い、頭部にはティアラを着けて居た。

 

(トワ・・・君は今何処に居る?)

 

 カナタ王子がトワと呼んだ名は、彼の妹でプリンセス・ホープ・ディライト・トワと言う。だが妹トワは、五年前忽然とその消息を絶った。王国から笑顔が消えたのもそれからだった・・・

 

 カナタ王子が物思いに更けていると、祭られていた11個のドレスアップキーが、何かに共鳴するかのように、眩い光を点滅させていた。カナタ王子は思わず目を見張り、

 

「こ、これは!?五年前のあの時と同じ輝き?」

 

 カナタ王子の脳裏に、五年前の出来事が思い起こされていた。五年前にも、今居るこの場所で同じ現象が起こり、嘗てキュアフローラが、変身する時に利用したドレスアップキーに導かれたカナタ王子は、人間界に赴き、一人の少女と出会って居た。

 

「まさか、あの時のようにドレスアップキーが!?」

 

 カナタ王子の考えは的中し、嘗てキュアマーメイド、キュアトゥインクルが変身する為に使用していたドレスアップキーが、眩い輝きを放ってその姿を消した。

 

「これは一体!?」

 

 カナタ王子は、呆然としながら虚空を見つめた・・・

 

 

 天ノ川きららは、社長である舘響子が運転する車の後部座席に座って居た。助手席にはきららの母で、響子の親友でもあるステラが、トップモデルで忙しい中、娘きららの為に時間を取り、母校私立ノーブル学園の見学をした。ステラは、金髪のロングへアーをしていて、海外でスーパーモデルとして活躍して居た。突然のステラの来訪であったが、在学時代は生徒達からの信頼厚く、寮母である白銀の口添えもあり、娘きららの見学を許可されたが、ステラの突然の来訪は、伝統あるノーブル学園の生徒達をも驚かせ、大騒ぎになった。だが、教師達や、この秋に新たに生徒会長になった海藤みなみという生徒が、そんな生徒達を窘め、きらら、ステラ、響子は、ノーブル学園を見学して回った。そのノーブル学園の帰り道、車中で三人はカインの宣戦布告を聞いて居た。

 

「さっきの何だったのかしら?」

 

「さあ!?取り敢えずせっかく夢ヶ浜に来たし、何処かで食事でもしましょう」

 

 響子に話を振られたステラだが、俄かには信じられない事で、ステラはさして気にせず、懐かしい夢が浜で食事でもしようと持ち掛けた。そんな二人とは対照的に、きららはさっきのカインの声が気になって居た。

 

(さっきのあいつ、プリキュアに恨みを持ってるぽかったよねぇ?)

 

 きららは、やよいの母千春がプロデュースした、母子ファッションショーに参加した時、バッドエンドピースと揉め事になり、アカンベエに襲われた所を、プリキュア達に救われた事があった。きららの表情が優れない事に気づいたステラは、

 

「きらら、どうしたの?ノーブル学園のイメージでも違ったのかしら?」

 

「エッ!?ウウン、そうじゃないんだけどさ・・・」

 

 響子も浮かない顔できららに話し掛け、

 

「それじゃあ、やっぱりきららもさっきの声を気にして?」

 

「ウン・・・そんな感じかなぁ」

 

 きららはそうポツリと呟くと、窓の外を見た。きららの目に、まるで流れ星のように、何かが空から落ちて来たように見えた。きららは、その光の輝きを見ると、自分でも分からないが、何か惹きつけられる魅力を感じた。きららは慌てて響子に話し掛け、

 

「社長、ストップ!車を止めて!!」

 

「「エッ!?」」

 

 突然車を停めるように言われ、響子は思わず車のウインカーを左に出し、直ぐにハザードランプを転倒させた。車が停まると、きららは何かに引き寄せられるかのように車から降り、流れ星のような何かが落ちた場所目掛け走り出した。

 

「確か、こっちの方に・・・」

 

「「きらら!?」」

 

 ステラと響子は、きららの異変に驚き、思わずきららの名前を呼ぶも、きららは二人の声が聞こえないかのように走り続けた。すれ違う人々は、そんなきららを見て不思議そうにするも、直ぐに何事も無かったように歩き出した。きららは、黄色い光を発光させる何かに近づくも、擦れ違う人々は、まるで興味無さそうに素通りして行った。きららは、落ちていたアイテムを拾うと、発光していたアイテムは何事も無かったかのように光が収まった。

 

(エッ!?あたしが触ったら、光が止まった?)

 

 きららが首を傾げたその時だった・・・

 

「キャァァァ!怪物よぉぉぉ!!」

 

「逃げろぉぉぉぉ!」

 

 突如人々の悲鳴が沸き起こり、ハッと我に返ったきららの四方を、牛の顔と蜘蛛の身体を持った牛蜘蛛、宙を彷徨巨大な人喰い生首である餓首、巨大なヤモリの化け物ピエラ、全身びしょ濡れで、長い黒髪で顔を覆った不気味な魔ピグの四体の魔物が、まるで光を追って来たかのように怪物が取り囲んで居た。物怖じしない性格のきららではあったが、目の前に現れた怪物を前にしては、動揺は隠せなかった。真っ先に口を開いたのは餓首、

 

「忌々しい光を追ってみれば・・・小娘、貴様の仕業か?」

 

(う、嘘!?怪物が喋った?)

 

 きららに取って信じられない光景だった・・・

 

 バッドエンドピースが出現させたアカンベエを見た事はあったが、今目の前にいる怪物は、小さい頃に見た妖怪や怪物のような出で立ちをし、きららの目の前で人の言葉を喋ったのだから・・・

 

「さっきの忌々しい光は・・・お前の仕業かと聞いているんだよぉぉぉ!」

 

 そう言って両腕を前に突き出しながら、きららの首を絞めつけようとしたのはピグだった。ピグの両手がきららの首に近づいた瞬間、再びきららが手に持つドレスアップキーが光り輝き、ピグを吹き飛ばした。

 

 その瞬間、きららは見た!

 

「エッ!?人?あ、あなたは!?」

 

 きららの目には、一瞬だが光り輝いた瞬間、輪状に結った黄色のロングヘアーに、前髪には赤色のメッシュが入り、黄緑色の衣装を着た少女を見た。その姿は、以前見たプリキュア達にどことなく似て居た。だが、きららがその少女を見たのはほんの一瞬で、光は再び輝きを消した。きららにも今の出来事が錯覚だったのか分からなかった。

 

(幻だったの!?)

 

 きららが呆然としていると、そんな彼女を現実に返すかのように、魔物達が咆哮を上げた。

 

「おのれ、小娘ぇぇぇ!」

 

「食ってやる!食ってやるぞぉぉぉ!!」

 

 餓首とピグがきららに狙いを付け、牛蜘蛛は、きららを心配して近づいたステラと響子に狙いを付け、牛蜘蛛の口から糸が吐き出され、ステラと響子の身体を捕らえた。

 

「「キャァァァ!」」

 

「ママァァ!社長!」

 

 きららが二人の身を案じて叫ぶも、餓首は不気味に笑い、

 

「クククク、貴様の知り合いか?直ぐに会わせてやろう・・・地獄でな!」

 

 餓首が大きな口を耳元まで裂けながら開け、きららを丸齧りしようとしたその時、光に導かれたかのように、二人のプリキュアが駆け付けた。真っ先に行動に出たのはキュアレモネード、

 

「させませんよ!プリキュア!プリズムチェ~~ン!!」

 

 レモネードの両拳の蝶の飾りが光輝くと、二つの光のチェーンが飛んで行き、餓首を完全に捕らえた。

 

「ダークアクア、今です」

 

「OK!プリキュア・・・」

 

 レモネードの合図に頷いたダークアクアは、必殺技であるダークアローの体勢に入った。それを見た牛蜘蛛は、慌ててダークアクアに話し掛け、

 

「ま、待て!そのまま餓首を攻撃すれば、捕らえたこいつらを窒息死させるぞ!!」

 

「「ウッウゥゥゥ」」

 

「ママ!社長!」

 

 牛蜘蛛は、捕らえたステラと響子の糸を締め付け、二人から苦悶の声が漏れ、きららが激しく動揺した。レモネードとダークアクアは、二人を人質に取られては攻撃出来ず、悔しそうな表情を浮かべた。

 

「「ひ、卑怯よ!」」

 

「何とでも言え・・・さあ、餓首を捕らえた鎖を外せ!」

 

 牛蜘蛛に更に迫られたレモネードは、言う通りにしなければ、二人を絞殺されない現状に、レモネードは苦渋の決断で、餓首を捕らえたプリズムチェーンを緩めようとしたその時、

 

「レモネード、その必要は無いわ!」

 

「「パッション!」」

 

 そう言って現れたのはキュアパッション、パッションは、瞬間移動で牛蜘蛛の懐に入り込み、蹴りを浴びせると、ステラと響子を捕らえていた糸事、二人を瞬間移動させて魔物達から引き離した。レモネードはホッと安堵し、

 

「パッション、向こうの様子はどうですか?」

 

「アクアやピース、ダークミントが調べて居るわ。こっちを済ませて、アクア達に合流しましょう」

 

「そう、それを聞いて安心したわ」

 

 パッションの報告を聞くと同時に、宙に飛んだダークアクアは、餓首に狙いを定めると、

 

「プリキュア!ダークアロー!!」

 

「お、おのれぇぇぇぇ!」

 

 ダークアクアから放たれた黒き水の矢の連射が、餓首目掛け炸裂した。餓首は恨みの咆哮を上げながら闇に帰った。きららは、慌ててステラと響子に近づき、二人の身体を揺すりながら声を掛け、

 

「ママ!社長!しっかりして!!」

 

「大丈夫、気を失っているだけだわ・・・あなたもここから動かないで」

 

「エッ!?ウ、ウン」

 

 パッションは、きららにこの場から動かないように忠告すると、パッションハーブを取り出し、再び瞬間移動で牛蜘蛛の側に現れるやいなや、

 

「吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア!ハピネス・ハリケーン!!」

 

 パッションは、パッションハープを高く掲げて高速回転すると、赤いハート型エネルギー波が、まるで羽毛のように激しく舞いながら、旋風と共に牛蜘蛛を包み込んで浄化した。残ったヤモリの怪物ピメラと、全身びしょ濡れのピグは恨みの咆哮を上げると、

 

「おのれぇ、よくも餓首と牛蜘蛛をぉぉ!」

 

「恨めしい・・・お前達の五体を、この手で引き裂いてくれる!」

 

 ピメラは壁を伝いながら、ピグは両出を前に突き出しながらレモネード、ダークアクア、パッションに向かって行った。

 

「ウゥゥ・・・ちょっ、ちょっと気色悪いです」

 

「大丈夫、私とパッションが付いてるわ」

 

「ハイ!よ~し・・・プリキュア!プリズムチェ~~ン!!」

 

 レモネードは、ピグの不気味な動きを見て、少し怯えた表情を浮かべたものの、ダークアクアに励まされ、再びプリズムチェーンをピグ目掛け放った。

 

「ウゥゥオォォォォォ!」

 

 アンデット系のピグに取って、光の鎖であるプリズムチェーンは効果覿面で、ピグはその光の輝きに身を包まれ消滅した。だが、最後に残ったピメラは厄介だった。壁を伝い素早く移動する為、迂闊な攻撃は出来なかった。きららは、徐にピメラを睨み付け、

 

「よくもママと社長を・・・プリキュアを怖がって、逃げ回ってるくせに」

 

「何だと!?小娘ぇ、小癪なぁぁ・・・貴様から殺してやる!」

 

 ピメラはきららの挑発に乗り、動きを止めて長い舌をきらら目掛け伸ばした。その舌目掛け、レモネードがプリズムチェーンを飛ばして絡め取り、ピメラを地上に引き落とした。

 

「パッション、ダークアクア、今です!」

 

「「OK!」」

 

 パションは右側から、ダークアクアは左側から攻撃態勢に入り、

 

「吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア!ハピネス・ハリケーン!!」

 

「プリキュア!ダークアロー!!」

 

 パッションとダークアクアのコンビネーション攻撃を受け、ピメラはもがきながらきららを睨み、

 

「お、おのれ、小娘に気を取られなければぁぁぁ」

 

 ピメラは、きららに恨み言を述べながら、パッションとダークアクアの技を受け浄化され、きららはホッと安堵した。レモネードはきららに話し掛け、

 

「大丈夫ですか?」

 

「ウン、おかげ様でね・・・そう言えばこの前助けられた時も、あっちの赤い服着たプリキュアも居たよね?」

 

 きららは、近付いて来るパッションを見てそう語ると、パッションも覚えていて小さく頷き、

 

「エエ、あなたとはあの時以来ね」

 

「あたしをあの時助けてくれた、あの変なヘアースタイルしたプリキュアは、今日は一緒じゃないんだ?」

 

「「「変なヘアースタイル!?」」」

 

 きららに聞かれた三人は、同じような表情で首を傾げた。きららは、手でジェスチャーを交えながら説明を始め、

 

「そう、何か薄紫っぽい色で、マスカットのようなヘアースタイルした・・・」

 

(べリーの事ね・・・)

 

 パッションはきららの説明を聞き、それが誰の事か分かると思わず目を点にし、この場にべリーが居なくて良かったと、心から思うのだった。きららはレモネードを見ると、

 

「そう言えば、あなたの髪形もちょっと変わってるよね?」

 

「ガァァァァン!」

 

 レモネードは、思わず変顔を浮かべながらよろめき、パッションとダークアクアはそれを見て苦笑した・・・

 

 

2、青の後継者

 

 私立ノーブル学園・・・

 

 元児童絵本作家の望月ゆめが、約五十年前に創立した伝統ある名門学校・・・

 

 この学校は、将来の夢を抱く生徒達が通う全寮制の共学校だった。島を繋ぐ橋の向こうにある市街地は夢ヶ浜で、学園から路線バスで容易に移動出来、生徒達も外出許可を出せば自由に夢ヶ浜に遊びに行けた。この学園の場所は、海沿いの陸地に近い島にあり、敷地内には男女別の学生寮、学生食堂、教室棟といった設備から、バレエの練習場やパーティーホールなどの環境が整っていた。これらも、学園を卒業後の生徒達の為に少しでもなれば、理事長である望月ゆめが考案していた。この学園の制服は、男女ともセーラー襟になっていて、基本色は、薄紫色と白で、女子はセーラー服にピンク色のリボン、白いジャンパースカートと紺色のハイソックスという出で立ちで、男子は水色のワイシャツに赤いネクタイ、セーラー襟のジャケット、グレーのスラックスという恰好をしていた。

 

 講堂に集まった全校生徒と教職員の前で、壇上に上がって一人の少女が、何かを喋って居た。

 

 少女の名前は、海藤みなみ・・・

 

 髪の一部を三つ編みにして、左肩に垂らしたエメラルド色のロングヘアーをして居て、彼女の実家は、日本五大財閥の一つ、海藤グループの娘で、四葉財閥の四葉ありすとも顔馴染みだった。

 

「皆さん、決して外には出ない様にして下さい。俄かには信じられない話ですが、もしもという事もあります。あとは先生方の指示に従い、寮で待機して下さい」

 

 この前の生徒会長選挙で当選し、新しく生徒会長になったみなみは、学園の生徒達の前で演説し、決して外には出ない様に訴えた。まだ中学一年生ながら、威厳を持ったその態度は、上級生達からも一目置かれていた。同じ生徒会長である相田マナとは、また別のタイプの生徒会長であった。みなみは、カインの宣戦布告を聞いてパニックになった生徒達を、冷静に宥め、落ち着きを取り戻させた。生徒達が落ち着きを取り戻した事で、教師達は生徒達に寮で待機して居る様に指示を出した。

 

「海藤さん、お疲れザマス」

 

「座間先生」

 

 みなみに話し掛けたのは、ノーブル学園の教師で座間すみれ、昔の教育ママが掛けて居た様な、フォックス眼鏡を掛けていた。口喧しい所はあるものの、それは生徒を思っての事だと、みなみは気づいて居て、みなみは座間先生を信頼していた。座間先生は右手で眼鏡の位置を直すと、

 

「海藤さん、あなたも寮に戻ると良いザマス」

 

「ハイ・・・では、ごきげんよう」

 

 みなみは座間先生に頭を下げ、講堂を後にした・・・

 

 寮に戻るみなみだったが、責任感の強い彼女は、念の為外に残った生徒が居ないか、学校周辺を見回って帰ろうと思い付いた。

 

(どうやら、外に残って居る生徒は居ないようね)

 

 みなみはホッと安堵し、自分も寮に戻ろうとした時、空から流星のように何か青く発光する光が、浜辺の方に落ちて行ったのが見えた。

 

(今の光は何かしら!?)

 

 みなみは首を傾げるも、何か流星のような物から輝く光に導かれるように、浜辺へ近づいてみると、そこにはドレスアップキーが落ちていた。

 

「落とし物かしら!?でも、この輝きは?」

 

 みなみは身を屈めてドレスアップキーを拾うと、光は収まった。みなみは思わず驚き、ドレスアップキーを確認していると、背後の方で木々が騒めいた。みなみは反射的に木々を見つめると、思わずみなみは息を呑んだ。

 

「アッ!?」

 

 みなみはそう声を出すのがやっとで、恐怖でその場に固まってしまった。それもその筈で、今みなみの目の前には、人間女性の頭部をした人面鳥とでも呼ぶ鳥ラーが、枝に止まりながら、不気味な笑みを浮かべて居たのだから・・・

 

(そ、そんなぁ!?あの声は本当だったとでも言うの?)

 

 みなみは、カインの宣戦布告を思い出し恐怖した。逃げ出したかったが、足がいう事を聞かなかった。みなみの両足は恐怖でガタガタ震え、逃げ出す事が出来なかった。

 

「ケケケケケ、震えて居るのかい!?」

 

(嘘!?しゃ、喋って居るの?)

 

 みなみは、悪夢なら覚めて欲しいと思った。だが、これが現実だという事は、みなみ自身気付いていた。枝に止まって居た人面鳥は、翼を広げ羽ばたくと、みなみの上空を旋回し始めて奇声を上げた。その奇声に応えるかのように、二つの影が飛んで来た。みなみが恐る恐る飛んで来た物体を見ると、翼が生えたカエルのようなフライングフロッグと、翼の生えた巨大な丸い一つ目の魔物アクマイトが居た。

 

「お前達だけかい!?まあいい・・・この娘から光の力を微かに感じるが、見なよ、震えていやがるよ・・・ヒィヒヒヒヒ」

 

 不気味な笑い声を上げるラーに、みなみはますます恐怖した。みなみは、幼い頃の出来事で、オバケや妖怪の類の話を聞くだけでも、泣き出すぐらいだった。

 

(お、お兄様、お父様、お母様・・・助けて)

 

 みなみは、思わず心の中で家族に助けを求めるも、それは無駄な事なのは、みなみ自身が分かって居た。アクマイトは、そんなみなみを嘲笑う様に近づき、

 

「こいつ、本当に光の力を持ってるのかぁ?」

 

 アクマイトは、みなみを脅かそうとするかのように、大きな一つ目をみなみの顔に近づけたその時、みなみが持って居たドレスアップキーが眩い光を放ち、アクマイトはその光をもろに一つ目に浴びて目が眩み、思わず地上に落下した。

 

「ギャァァァ!め、目がぁぁぁ!!」

 

「「アクマイト!?」」

 

 地面を這いまわるアクマイトを見て、ラーとフライングフロッグの表情が醜く歪んだ。みなみは、思わず呆然としながら眩い光を見ると、きららが見た少女の幻影とは違う姿を見た。青と水色のツートンカラーのポニーテールをし、薄いエメラルドグリーンの衣装を身に纏い、腕には半透明の衣を付けた少女の姿を・・・

 

「あなたは!?」

 

 みなみが問いかけると、少女は一瞬振り返り、笑みを浮かべたように見えたが、みなみは、少女の姿を見ると、今まで恐怖に震えて居た事が嘘のように、恐怖心が消え去って居た。だがそれも束の間、その少女はまるで幻だったかのように消え去った。

 

「エッ!?」

 

 みなみは思わず何度も瞬きし、今の出来事は何だったのか分からず呆然とした。だが、そんなみなみを現実に引き戻す魔物達の声が、みなみの耳に聞こえて来た。

 

「小娘、よくもやってくれたなぁ」

 

「怖がった振りをして、オレ様達を油断させるとは・・・」

 

 ラーとフライングフロッグは、もう油断はしないといった表情を浮かべると、ラーは羽を羽ばたかせて強風を起こし、みなみは堪らず飛ばされ地面を転がった。

 

「キャァァァァ」

 

「人間風情が、いい気になるなよぉぉぉ!」

 

 目の眩みが収まったアクマイトは、さっきの仕返しとばかり上空に飛び、みなみ目掛け口から何かを吐き出して攻撃した。だが、その攻撃は雷によって無効化された。

 

「プリキュア!サファイア・アロー!!」

 

 みなみの耳に、突然声が聞こえたかと思うと、三本の矢と化した水の矢が、アクマイトの両翼と巨大な目を貫き闇に帰した。

 

「エッ!?」

 

「「な、何だ!?」」

 

 みなみが、ラーとフライングフロッグが驚愕する中、森を抜けてゆっくり浜辺に姿を現したのは、キュアアクアとダークミントだった。アクアとダークミントもまた、青い光に導かれたかのように、この場所に赴いて居た。アクアは、みなみの顔を見ると少し驚いた表情を見せるも、直ぐに優しい面持ちでみなみに話し掛け、

 

「海藤さん、大丈夫?」

 

「ハイ・・・エッ!?どうして私の名前を?」

 

「以前、ちょっとね・・・さあ、今の内にこっちに」

 

 アクアは、以前とあるパーティ会場でみなみと出会って居た。まだ当時小学生でありながら、礼儀正しいみなみの姿に、アクアは好印象を得て居た。

 

「ハ、ハイ」

 

 みなみは、アクアの言葉に頷き、慌ててアクアとダークミントの背後に逃れた。アクアとダークミントは、ラーとフライングフロッグをキッと睨み付け、

 

「あなた達の好きにはさせないわ!」

 

「覚悟なさい!」

 

「な、何だ、貴様らは!?」

 

「オレ様達の邪魔をするのか?」

 

「当たり前でしょう?その為に私達は、夢ヶ浜に来たのだから」

 

 アクアは毅然とした態度でそう断言し、思わずみなみはその凛々しさに好感を持った。だが、自分を庇いながら戦えば、アクアやダークミントが不利なのは明らかだった。みなみは戸惑いながら、アクアとダークミントに申し訳なさそうに話し掛け、

 

「申し訳ありません。私があなた方の足手纏いになってしまって・・・」

 

「それは違うわ!私達プリキュアはね、今までも誰かを守る為に闘い続けて来たの。あなたを守って戦える事は・・・むしろ私の力となる!」

 

「アクアの言う通りよ、あなたの事は私達が守るわ」

 

 アクアはそう断言し、ダークミントもみなみを守ると断言した。アクアは再びサファイアアローの体勢に入るも、ラーとフライングフロッグは、空中高く舞い、サファイアアローの有効射程外へと逃れた。

 

(地上からでは、あの二体にサファイアアローを命中させるのは、至難の業ね。かといって、宙に飛べば、あの魔物達の格好の的になってしまう・・・)

 

 アクアは頭の中で、二体の魔物の攻略を素早く考えると、先ず隣に居るダークミントに話し掛けた。

 

「ダークミント、私はカエルを狙うから、あなたはあの人面鳥をお願い」

 

「エエ、でも相手が空中を自在に飛び回るのは少し厄介ね」

 

「エエ・・・」

 

 アクアは、背後に居るみなみにも話し掛けた。

 

「海藤さん、少しこの場を離れるけど、急に走り出したりはしないで!あの魔物達を刺激する事になってしまうわ」

 

「ハ、ハイ」

 

「直ぐに私の仲間が来てくれる筈だから、ゆっくり私達から距離を取る様にして」

 

 アクアの忠告を受け、みなみは言われた通り、ゆっくり後退ると、アクアの周囲に水の激流が沸き起こり、まるでアクアの身体を持ち上げるかのように、上空高く吹き上がった。

 

「「な、何だ!?」」

 

 ラーとフライングフロッグは突然吹き出した水流を見て驚愕するも、アクアはまるでウォータースライダーを滑るが如く、水を自在に操りその身を滑らせた。

 

「プリキュア!アクアキック!!」

 

 水の勢いを利用したアクアのキックがフライングフロッグに命中し、フライングフロッグは錐揉みしながら墜落した。一方のダークミントも、ラーに対し、

 

「ダークネスプラズマ!」

 

 ダークミントから放たれた黒き閃光が、ラー目掛け炸裂するも、墜落したフライングフロッグは、地面に落下したと同時に飛び上がり、ダークネスプラズマをその身に浴びるも、さしたるダメージは受けなかった。

 

「私の攻撃を弾いた!?」

 

 ダークミントの動揺の隙を付き、ラーは狙いをみなみに変えようとしていた。それに気づいたアクアは、

 

「させないわ!プリキュア!サファイア・アロー!!」

 

 アクアは再びサファイアアローを放つも、ラーは攻撃を回避しながら、アクアとみなみの間を飛び続けた。

 

「クッ!?これでは、もし外したら海藤さんに・・・」

 

 アクアが動揺したその時、勢いよく駆けて来る足音が聞こえてくると、

 

「すいませ~ん!向こうの方は異常無しでしたぁ」

 

「「ピース」」

 

「ハイ!?」

 

 そう言って現れたのはキュアピース、ピースを見たアクアとダークミントは、安堵した表情を浮かべると、アクアは直ぐにピースに指示を出し、

 

「ピース、彼女を守って上げて!」

 

「アクア!?ダークミント?二人共、もう戦闘に入って居たんですかぁ?」

 

 ピースは、向かって来るラーの姿の不気味さに思わず涙目になるも、

 

「こっちに来ないでぇぇ!プリキュア!ピース・・・サンダー!!」

 

「ゲコォォォォ!」

 

 ピースがピースサンダーを放った瞬間、起き上がったフライングフロッグは、ラーを庇う様に大ジャンプで前に出ると、ピースサンダーの直撃を受けた。だがピースサンダーは、何かに弾かれたかのようにフライングフロッグに効果が無かった。

 

「嘘ぉぉ!?ピースサンダーが効かないの?」

 

 動揺するピースに、背後から見ていたみなみが話し掛けた。

 

「もしかすると、あのカエルのお化けの表面のゼリー状の物が、雷を弾いているのかも知れませんね」

 

(海藤さん・・・怖がって居るだけでなく、ちゃんと戦況も見ていたのね)

 

 アクアは、みなみの注意深さに感心し、おそらくはみなみの推察通りだろうと心の中で同意した。アクアはピースに話し掛け、

 

「ピース、あのカエルは私が何とかするわ。あなたはダークミントと共に人面鳥をお願い」

 

「分かりました!」

 

 ピースはアクアの言葉に頷き、空中を飛び回るラーに視線を向けた。ダークミントも合流すると、二人は上空を旋回するラーに視線を向けた。みなみもラーの動きを見ていると、ラーの動きにパターンがある事に気付いた。みなみはピースとダークミントに話し掛け、

 

「少し気づいた事があります。お二人共、私が指さした方向に、先程の技を放って見て頂けますか?」

 

「何か考えがあるのかしら?分かったわ」

 

「エッ!?ウン、私も分かった」

 

 ダークミントとピースが同意してくれた事で、みなみはラーの動きをジッと目で追った。ラーが自分達の上空で宙返りをしたその時、みなみは頭上を指さした。

 

「今です!真上に先程の技を」

 

「ウン!プリキュア!ピース・・・サンダー!!」

 

「ダークネスプラズマ!」

 

 ピースとダークミントは、みなみの指示通り、頭上にピースサンダーとダークネスプラズマを放つと、慌ててフライングフロッグが再び大ジャンプを試みようとするも、アクアはその動きを前もって予期し、サファイアアローの体勢に入って居た。

 

「やはりあの人面鳥は、雷に弱いようね。必死にあなたが庇って居たから、おかしいと思って居たわ・・・でも、やらせない!プリキュア!サファイア・アロー!!」

 

 アクアのサファイアアローが、無防備なフライングフロッグを打ち抜き、ピースとダークミントが放ったピースサンダーとダークネスプラズマが、ラーに命中した。

 

「「ギャァァァァ!」」

 

 二体の魔物は、断末魔の悲鳴を上げながら浄化され、みなみはホッと安堵した。ピースは、隣に居るみなみの両手を掴んでキャッキャとハシャギ、みなみは思わず呆然とするも、自分がプリキュアの役に立てた事で、自然に笑みが浮かんで居た。ダークミントもみなみを称え、口元に笑みを浮かべた。アクアも近付いて来るとみなみを称え、

 

「海藤さん、凄い洞察力だったわ」

 

「エエ、冷静な判断だったわ」

 

「ウンウン、私、感心しちゃった」

 

 アクアの言葉に、ダークミントとピースは何度も頷きながら同意した。思わずみなみは照れた表情で、

 

「い、いえ・・・それより、助けて頂いてありがとうございました」

 

 みなみはそう言うと、アクアとピースに頭を下げた。その礼儀正しい佇まいに、アクアとダークミントは感心し、ピースは慌ててお辞儀を返した。

 

 みなみは数か月後、キュアマーメイドとしてプリキュアになり、かれんから青の後継者として、新生ブルーチームを託される事になるのだが、それはまた別の話・・・

 

 

3、花のプリンセス

 

 小江戸と称される古き街並みを残すこの町は、観光地としても有名だった。古風有る赴きの店、伝統ある和菓子屋はるのも、雑誌に取り上げられる程の人気店だった。和菓子屋はるのの看板娘で、小学六年生の春野はるかは、幼い頃からプリンセスになる事に憧れて居た。はるかの容姿は、髪は茶髪で、頭のてっぺんがお団子頭をして居て、前髪には花弁のピン止めをして居た。彼女はピンクの服が好きなようで、花柄のピンクのパーカーとデニムっぽいミニスカート姿で、和室の居間に座って参考書を広げ、額には、自分で書いた絶対合格の鉢巻きを締め、私立ノーブル学園に入学しようと猛勉強をして居た。

 

「はるか、ももかを知らない!?」

 

 そうはるかに声を掛けたのは、はるかの母親もえ、薄紫の作業着を着て頭には三角巾で髪の毛を隠し、眼鏡を掛けて居て、はるかの姉でも通りそうな容姿をして居た。もえが声を掛けるも、はるかは気づかないかのように勉強を続け、もえは思わず溜息を付き、もう一度大声ではるかに声を掛けた。

 

「はるか!ももかを知らない!?」

 

「ワァァァ!?」

 

 はるかはようやく気付いたのか、変顔浮かべながら持って居たペンを指から滑らせて落とし、背後を振り向いて恨めしそうにもえを見つめ、

 

「お、お母さん・・・ペンが滑って落ちたぁぁぁ!」

 

「ゴメェン・・・それより、ももかを見なかった?」

 

「ももか!?ウウン、見て無いよ。ももかがどうかしたの?」

 

 二人の会話に出てくるももかとは、はるかの妹で、現在幼稚園の年長で、来年小学校入学を控えていた。お姉ちゃん子で、普段はるかの側を離れず、はるかもももかを良く面倒見て居たが、ノーブル学園受験を決めてからは、ももかと遊んであげる時間も減って居た。

 

「ほら、さっきの不気味な声もあるし・・・」

 

 もえは、先程聞いたカインの宣戦布告を思い出し、表情を曇らせた。はるかはそんなもえの言葉に首を傾げ、

 

「不気味な声!?何の事?」

 

「エッ!?はるかには聞こえなかったの?プリキュアがどうとか言ってたでしょう?」

 

 母もえの口からプリキュアの話題が出た事で、はるかの目が輝いた。どこかプリンセスのような衣装を着て戦う彼女達に、内心はるかは憧れを抱いて居た。

 

「エェェ!?プリキュア?ウウン、私は聞こえなかったけど・・・勉強に集中してて、気づかなかったかなぁ?アハハハ」

 

 はるかは、思わず苦笑を浮かべ頭を掻いた。だがもえの表情は変わらず、

 

「こうも言ってたわ、無差別に日本を攻撃するとか言って、プリキュアに、止められるものなら止めて見ろとか・・・」

 

「エッ!?」

 

 はるかは、もえの言葉を聞いて直ぐに真顔になった。今もえが言って居た通りだとすると、確かにももかの姿が見当たらないのは気掛かりだった。はるかは徐に立ち上がると、

 

「私、探してくる」

 

「アッ!?はるか、待ちなさい!」

 

 もえは、居間を飛び出して行ったはるかを見て、内心しまったと動揺していた。責任感が強いはるかは、自分が遊んで上げない事で、ももかはつまらなくて何処かに行ったと思ったのであろう事が想像出来た。

 

「ももか!ももかぁ!」

 

 はるかが家の外でももかの名前を呼ぶも、ももかから返事は返らなかった。はるかは周辺を走り回り、周囲を見渡した時、何時もとは違う異変を感じて居た。

 

(アレェ!?何か静かだと思ったら、今日は観光客の人が居ない?)

 

 普段は観光客でごった返して居たが、今は人影もなく静まり返って居た。はるかが戸惑って居ると、はるかのデニムのミニスカートの右ポケットが、突然ピンク色の輝きを放った。はるかは驚きながらも、右ポケットの中に手を突っ込み、中身を取り出すと、はるかの右手には、ピンクの輝きを放つドレスアップキーが握られて居た。

 

「エェェ!?五年前にあの人に貰ったお守りが光ってる?」

 

 はるかが言うあの人とは、ホープキングダムのカナタ王子の事だった。はるかは、一面に咲き誇る花畑でカナタ王子と出会い、はるかの話を聞いたカナタ王子は、夢に向かって頑張ろうとするはるかを見て好意を得た。カナタ王子は、そんなはるかにドレスアップキーを授け、はるかはそれをお守りとして普段から大事にし、肌身離さず持ち歩いて居た。そのドレスアップキーを手に持ったはるかは、思わず我が目を疑った。光が照らす先には、グッタリした人々が横たわって居た。

 

「嘘!?今まで人が居なかったのに、どうして?」

 

 はるかは、突然現れた人々に動揺していると、花粉のようなものがはるか目掛け飛んで来た。はるかが持つドレスアップキーは更に光り輝き、思わずはるかは目が眩んだ。目が慣れてくると、はるかは一人の少女の姿を薄っすらと見た。

 

「エェェ!?また人が突然現れた?」

 

 はるかが見た人物は、ピンク色のロングヘアーをし、頭頂部に花をモチーフにしたかのような黄金のティアラを付けて居て、衣装は全体的にピンクを基本色としており、胸元と両太腿辺りに花の飾りが付いて居た。ドレスは足元全体を隠し、はるかが憧れて居るプリンセスそのもののような容姿をしていて、思わずはるかは、その美しさに目を奪われた。だがそれも束の間、少女の姿は幻だったかのように消え去った。

 

「エッ!?エッ?消えちゃった?」

 

 はるかは、辺りをキョロキョロ見るも、やはり少女の姿は見られなかった。はるかは頬を思いっきり抓ると、その痛さに思わず涙目になり、夢じゃないと思った。だが、その余韻を打ち破る不気味な声が、はるかの耳に聞こえて来た。

 

「バ、バカな!?この空間を無理やり抉じ開けるとは、小娘、貴様の仕業か?」

 

 そう話しながら地を這って現れたのは、巨大な一凛の黒い花の怪物だった。黒い花の怪物の中央には、不気味な顔が付いて居た。この者の名はラシアといった。

 

「お花の怪物!?嘘ぉぉぉ?」

 

 はるかは、小さい頃から大好きな、花のプリンセスという絵本に刺激され、花が大好きで花の種類にも詳しかったが、このような巨大な花は見た事が無かった。はるかは思わず恐怖して後退るも、ひょっとしたらこの怪物が、横たわる人々のように、ももかをどこかに攫ったのではないかと思うと、はるかに勇気が湧いて来た。

 

「ももかは何処!?ももかを返して!」

 

「何の事だ!?まあいい・・・見られたからには、貴様のエキスも吸収してやる!」

 

 ラシアの蔦が伸び、はるか目掛け飛んで来たその時、ピンク髪のポ二ーテイルに、ピンクの衣装を着た少女が駆け付けると、

 

「やらせません!ブロッサムゥゥ!シャワ~~!!」

 

 駆け付けたのはキュアブロッサム、ブロッサムが放ったブロッサムシャワーによって、はるかの周囲に花弁が舞った。

 

「綺麗・・・」

 

 はるかは、まるではるかを守るかのように降り注ぐ、花弁の舞に目を奪われた。ブロッサムははるかを庇う様に前に出ると、

 

「大丈夫ですか!?か弱い女の子を虐める何て、私、堪忍袋の緒が・・・切れましたぁぁぁ!」

 

「誰だ!?」

 

 ラシアの中央の顔が醜く歪み、ブロッサムを睨み付けるも、はるかを守るブロッサムの側に、更に三つの影が合流した。

 

「あんた達がお探しのプリキュアさ」

 

「ルージュ、ブロッサム、そいつをお願い。あたしとイーグレットは、この子を守る」

 

「二人共、油断しないで」

 

 ブロッサムに合流したのは、ルージュ、ブルーム、イーグレットだった。ブルームははるかを庇いながら

 

「あなたはあたし達の傍を離れないで」

 

 そう言いながら振り返ってはるかを見たブルームは、思わずマジマジとはるかを見た。一方のはるかも、ブルームを見ると、目を点にしながらマジマジブルームを見た。

 

「「何だろう!?何か他人の気がしない?」」

 

 ブルームとはるかは、思わず同時に同じ事を呟くと、すかさずコミューン姿のフラッピが顔を出して後を引き取り、

 

「同じ狸顔をした女の子と、運命の出会いラピ」

 

「フラッピ!誰が狸顔だってぇぇ?」

 

 ブルームは、腰に付けてるコミューン姿のフラッピの顔をジロリと睨むも、フラッピはすまし顔で更にブルームをからかい、

 

「もちろん、ブルームとその子ラピ」

 

「エェェェ!?た、狸に狸って言われたぁぁぁ」

 

 はるかは、フラッピを狸のマスコットと勘違いし、思わず変顔浮かべながら言い返した。今度はフラッピが、顔だけ実物大の大きさにしてはるかに反論し、

 

「フラッピは狸じゃないラピ!フラッピは花の妖精ラピ」

 

 フラッピから花の妖精と聞かされたはるかは、思わず目をキラキラ輝かせた。はるかがイメージしていた妖精とは、大分かけ離れては居たが・・・

 

「狸さんじゃなくて、お花の妖精さんなの?わ、私、お花大好き何です」

 

「それは良い心掛けラピ」

 

「フラッピったら、調子良いんだからぁ」

 

 はるかに花が大好きだと言われたフラッピは、上機嫌で何度も頷き、ブルームは呆れた様な視線でフラッピを見つめた。イーグレットは、困惑気味に三人に話し掛け、

 

「三人共・・・一応、ルージュとブロッサムが戦って居るんだけど」

 

 イーグレットはそう言いながら、ラシアと戦って居るルージュとブロッサムを指さすと、二人にも三人のやり取りが聞こえたようで、ルージュは少し怒りながら、

 

「ちょっとぉ!あたし達が戦ってる時に、何ホンワカ気分に浸ってるのよぉ!!」

 

「今の内に、その方を安全な場所まで避難させて上げて下さい」

 

 ブロッサムも、ラシアの蔦を躱しながら、ブルームとイーグレットに進言した。ブルームは、頭を掻きながら二人に謝り、

 

「ゴメンゴメン・・・じゃあ、あたし達が安全な所まであなたを送るよ」

 

「お家はこの近くなの?」

 

 ブルームとイーグレットに聞かれたはるかは、ハッと我に返ったように表情を険しくすると、

 

「あのぅ、幼稚園くらいの女の子を見かけませんでしたか?私の妹何です。私、居なくなった妹を探して居て・・・」

 

「エッ!?そうだったの?あたし達がここに来るまでには見掛けなかったけど、もしかしたら、一緒に来た他の仲間達が保護してくれてるかも知れない」

 

 ブルームは、自分にも妹が居る事で、はるかの不安な気持ちが痛い程理解出来た。イーグレットにしても、ブルームの妹みのりの事を、妹同然に思って居る事から、はるかの心を理解し、優しい声で語り掛け、

 

「私達と一緒に探しましょう」

 

「ハイ!」

 

 はるかは、ブルームとイーグレットも一緒に探してくれると言ってくれた事で、心強さを感じて力強く返事を返した。ブルームは頷き、ルージュとブロッサムを見ると、

 

「ルージュ、ブロッサム、あたしとイーグレットは、この子の妹を探してくる」

 

「こっちは任せたわ」

 

「任せて!」

 

「お任せください!」

 

 ルージュとブロッサムは力強く頷き、ブルームとイーグレットは右手を上げて二人に合図すると、はるかを連れてこの場を去って行った。

 

「居なくなった妹か・・・ブロッサム、あたし達もさっさとこいつ片付けて、あの子の妹探しを手伝いますか」

 

「ハイ!そうと決まれば・・・」

 

 ルージュとブロッサムの二人にも妹が居た事で、はるかの不安を感じ取った。二人はラシアをキッと見つめると、ブロッサムは、ブロッサムタクトを取り出した。

 

「今度はこっちの番です。花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェ~イブ!!」

 

 ブロッサムのピンクフォルテウェイブが、ラシア目掛け飛んだ。ラシアは蔦で払い除けようとするも直撃を受けた。

 

「な、何だ!?身体が宙に浮かんで?」

 

 ピンクフォルテウェイブに包まれたラシアの身体が宙に浮かび、ブロッサムはルージュに合図を送ると、

 

「ルージュ、今です!」

 

「OK!プリキュア!ファイヤーストライク!!」

 

 ルージュは、動きが止まったラシアに対し、炎のボールとも呼べるファイヤーストライクを放って命中させ、ルージュとブロッサムは、ラシアを浄化させた。

 

 

 その頃、はるかの妹ももかは、花一面の花畑の中で、はるかがお気に入りにしている花のプリンセスという絵本を手に取り、悲しげな表情でしゃがみ込んで居た。

 

(お姉ちゃん、本当にお家から居なくなっちゃうのかなぁ?)

 

 ももかは、大好きな姉はるかが、ノーブル学園に合格すると、学園の寮に入る為家に出る事を、両親とはるかの話を聞いてしまい、ショックを受けて家を飛び出してしまった。不安な心がももかの心を覆っていった。

 

「お、お姉ちゃ~ん・・・・グス」

 

 ももかの不安が頂点に達し、ももかが思わず涙ぐむと、何処からか優しい声が聞こえて来た。

 

「どうしたの!?もしかして、迷子になっちゃったのかな?」

 

 そう言いながらももかの隣に、眼鏡を掛けた紺色の髪の三つ編みの少女が腰掛けた。少女は、ももかが手に持って居る花のプリンセスの絵本を見ると、目を大きく広げて驚き、

 

「その絵本は、花のプリンセス」

 

「エッ!?お姉ちゃん、この絵本知ってるの?」

 

「ウン、お姉ちゃんも大好きで・・・ほら」

 

 少女はそう言うとリュックを漁り、ももかが手に持って居る物と同じ、花のプリンセスの絵本を取り出してももかに見せた。ももかは目を見張って驚き、

 

「ワァァァ!?お姉ちゃんの絵本も、はるかお姉ちゃんの絵本と一緒だぁ」

 

「エッ!?じゃあ、その絵本はあなたのじゃないの?」

 

「ウン、私のお姉ちゃんが大切にしてる絵本だよ。何時もお姉ちゃんが、ももかにお話してくれるの」

 

「あなたはももかちゃんって言うの?私は、七瀬ゆいよ。そう・・・優しいお姉さん何だね」

 

 少女の名前は、七瀬ゆい・・・

 

 彼女もまた、ノーブル学園を進学先に希望して居て、両親にたまには受験勉強の息抜きにと日帰り旅行に誘われ、この町にやって来て居た。だが、両親と逸れて探す内、この素敵な花畑に目を奪われ、ももかと出会って居た。

 

「お家は此処から近いの?私が一緒にお家まで送って上げようか?」

 

 ゆいがももかに優しく話し掛けたその時だった。ゆいとももかの耳に、不気味な皺枯れ声が聞こえて来た。

 

「ヒィヒヒヒ、お前達はお家には帰れないよ」

 

「「エッ!?」」

 

「ここであたし達に・・・食われちまうんだからねぇ」

 

 そう言って姿を現したのは、頭部から二本の角を生やした般若のような顔をした鬼女だった。その背後からは、鳥の頭と蛇の身体をしたバニップが、花を踏み倒しながら地上を這い、蛾のような容姿をした人型の魔物、モスマンの三体が、ゆいとももかを餌だとばかりゆっくり近づいて来た。ゆいは、恐怖で震えながらも、自分より年下で、しがみ付いて震えるももかを庇いながら後退った。ももかは、ゆいにしがみ付いた拍子に、はるかが大事にしてた花のプリンセスの絵本を落としてしまい、慌てて拾いに戻ろうと駆け出した。

 

「ももかちゃん、ダメぇェェ!」

 

 ゆいが叫びながら、ももかに手を出して引き留めようと試みるも、ももかの身体はゆいの手を逃れ、落ちていた花の絵本を拾った。だが、這って来たバニップの嘴で上空高く飛ばされ、ももかが悲鳴を上げた。

 

「キャァァァァ」

 

「ももかちゃ~~ん!」

 

 ももかの悲鳴が、ゆいの絶叫が花畑に響いたその時、ももかの身体を、ピンクの衣装で身に包んだ少女が、空中高く飛び上がって受け止め、ゆいを庇う様に、白い衣装を着た少女が駆け寄った。ピンクの衣装を着た少女は、そのまま白い衣装の少女の側に着地すると、ももかを背後に居るゆいに託し、

 

「本当は、鬼さん見るのは怖いけど、絵本が大好きな子供を虐める何て・・・許せないよ!」

 

「私も、許せない!」

 

 ゆいとももかを助けに現れたのは、キュアハッピーとキュアエコーだった。バニップは、そんな二人を目障りと感じたかのように、嘴を大きく開けて、吹き矢のような物を放つも、仁王立ちしたしたハッピーとエコーの前に、まるで見えないバリアが張られているかのように、攻撃を跳ね返した。

 

「な、何だ!?攻撃が跳ね返された?」

 

 ハッピーは、少し緊張した面持ちながら、

 

「効かないよ!私達の前には、バリアがあるんだからぁ・・・ミント、彼女達をお願いします」

 

「任せて!プリキュア!エメラルドソーサー!!」

 

 更に加勢に現れたミントのエメラルドソーサーが、四か所の上空に張られ、ミントは、何時でもハッピーとエコーを援護出来る様に身構えた。ハッピーとエコーは、後ろを振り返り、一緒に来たキャンディとグレル、エンエンに声を掛けた。

 

「キャンディ、あなたもミントの側に居て」

 

「エンエン、グレル、あなた達も」

 

「分かったクル」

 

「「分かった」」

 

 妖精達もミントに託し、ハッピーとエコーは、三匹の魔物に対し身構えた。

 

 

 ももかを探すはるか、ブルーム、イーグレットの下にも、新たに魔物が襲い掛かっていた。

 

「人間を傷めつければ、ブラッドの奴から褒美をたんまり貰えるからなぁ・・・さあ、覚悟しな」

 

 新たに現れた魔物は、蝉人間、超音波の攻撃を繰り出し、思わずはるか、ブルーム、イーグレットは耳を塞いだ。そんな中でも、はるかが手に持つドレスアップキーは、まるではるかにももかが居る場所を知らせようとするかのように、ピンク色の輝きを放っていた。

 

「何だろう!?ももかの身に何か起きてるんじゃ?すいません!私、ももかが心配で・・・」

 

「分かった。この近くに、あたしの仲間のミント、ハッピー、エコーが要る筈だから、何かあったらブルームとイーグレットに言われたと言えば、彼女達が力になってくれる筈」

 

「私達も直ぐに後を追うわ」

 

 ブルームとイーグレットは、はるかの思いを受け止め、この場を自分達が受け持ち、はるかを先に行かせようとした。はるかは力強く頷き、

 

「ハイ!」

 

 はるかは、ピンクの輝きに導かれるように、この場を走り去って行った。蝉人間は逃すまいと背中の羽を震わせて宙に飛ぶも、足元に精霊の力を込めたブルームとイーグレットが大ジャンプで飛び上がり、蝉人間と空中戦を繰り広げた。

 

「ダァァァァ!」

 

「エイッ!」

 

 ブルームのパンチが、イ-グレットの蹴りが、蝉人間にヒットし、蝉人間は二人から距離を取り、今一度超音波攻撃を仕掛けて来た。二人は落下しながらもブルームはベルトに、イーグレットはブレスレットにスパイラルリングを装着すると手を握り合い、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

 イーグレットとブルームが、順番に口上を述べると、二人の身体に精霊の力が凝縮されていった。

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・スプラ~~ッシュ!!」」

 

 ブルームとイーグレットから放たれた金と銀の混ざり合った螺旋状のエネルギーが、ハートの型で蝉人間を包み込んだ。

 

「な、何だ!?この力はぁ?も、もしや、貴様らがプリキュアだったのかぁぁぁ!?」

 

 蝉人間は、闇に帰る直前になって、ようやく二人がプリキュアだったと気づいた。着地して大きく息を吐いた二人に、ルージュとブロッサムが合流した。ルージュは周囲にはるかの姿が見えない事に気付き、

 

「ブルーム、イーグレット、さっきの子は?」

 

「ウン、この場に魔界の者が現れたから、あたし達、あの子を先に行かせたんだぁ」

 

 ブルームの言葉にブロッサムが頷くと、

 

「分かりました。じゃあ、私達も急ぎませんと」

 

「そうね・・・行きましょう!」

 

 イーグレットの言葉に三人も頷き、四人ははるかの後を追った。

 

 

 ゆいとももかの前に、ハッピー、エコー、そしてミントの三人のプリキュアが現れた事で、ゆいは目を輝かせていた。

 

(ま、前にテレビで見たプリキュア・・・本当に居たんだぁ)

 

 ゆいがプリキュアに目を奪われていると、土手の方からももかを呼ぶ声が聞こえて来た。ももかは表情を和らげ、

 

「はるかお姉ちゃ~ん!」

 

「ももかぁ!?良かった、無事だったの」

 

「ウン!ゆいお姉ちゃんと、プリキュアのお姉ちゃんが助けてくれたの」

 

「エッ!?ももかもプリキュアに助けられたの?」

 

 はるかの視線が、鬼女、バニップ、モスマンと今対峙しそうなハッピーとエコー、そしてももかとゆいを守りながらも、戦況を見つめるミントを見た。はるかは大きく息を吸い込むと、

 

「プリキュアさ~ん!妹を助けてくれてありがとう!!ブルームって人と、イーグレットって人もこの近くに居ま~す!!」

 

「「どう致しましてぇ!」」

 

 ハッピーとエコーがはるかに手を振り、はるかも嬉しそうに手を振り返した。はるかは、ゆいにも気づいて話し掛け、

 

「あなたがももかが言ってた、ゆいちゃん?」

 

「ウン。そう言うあなたが、ももかちゃんが話してたはるかさんね」

 

「ももかがお世話になっちゃってありがとう」

 

「ウウン、私も色々お話出来て楽しかったよ。はるかさんも、花のプリンセスが好き何ですってね?」

 

「エッ!?ももかったらそんな事まで・・・アレェ!?はるかさんもって事は?」

 

「ウン!私も花のプリンセスの絵本が大好きで・・・ほら、何処かに行く時は何時も持ち歩いて居るの」

 

 ゆいが花のプリンセスの絵本を取り出して見せた事で、はるかは益々表情を和らげた。ハッピーは、はるかとゆい、ももかの三人が、表情を和らげた事でホッと安堵し、

 

「ねえ、エコー、ミントも一緒だし、ブルーム達も来てくれるみたいで、私、実はホッとしちゃった」

 

「そうだね、でもハッピー、油断しないで」

 

 エコーは、ハッピーの反応に少し笑みを浮かべたものの、鬼女から発せられる負の力を感じて顔色を変えた。

 

「お前達がプリキュアかぁ!?邪魔をしおってぇぇぇ!!」

 

 怒りの咆哮を上げた鬼女の肉体に変化が起きた。上半身の筋肉が膨れ上がり、筋骨隆々とした女子レスラーのような体格になり、足元の花を踏みつけながらハッピーとエコーに向かって来た。ミントは、嫌な予感が漂い、即座に四つのエメラルドソーサーをハッピーとエコーの前に移動させ、より強固なバリアを作り上げた。だが・・・鬼女の怒涛のパンチを受けて脆くもひびが入って砕かれ、ハッピーとエコーは左右に分かれて鬼女と距離を取った。ハッピーにはバニップが、エコーにはモスマンが追い打ちをかけ、鬼女はミントの背後に居るはるか達を襲うとした。

 

「させないわ!プリキュア!エメラルドソーサー!!」

 

 ミントが再びエメラルドソーサーを繰り出して、鬼女の攻撃から懸命に堪えた。だが、鬼女の力は強く、このままでは再びエメラルドソーサーを破られるのは時間の問題だった。

 

「このままじゃ・・・ハッピー、エコー、手を貸して!」

 

「ミント!?待ってて、今加勢に行くから・・・プリキュア!ハッピ~~・・・シャワ~~!!」

 

 ハッピーが、両手で組んだ腕を前に突き出すと、ハッピーの手からピンク色の光の輝きが放たれ、バニップの身体を包み込んで浄化した。

 

「私達も直ぐ行きます。世界に響け!みんなの想い!!プリキュア!ハートフル・エコ~~!!」

 

 エコーの叫びと共に、光輝く胸のブローチから発射された光が、モスマンの身体を包み込んで浄化した。ハッピーとエコーは、バニップとモスマンを浄化してミントの加勢に向かうも、パワーアップした鬼女のパワーの前に劣勢を強いられた。そこに、ブルーム、イーグレット、ルージュ、ブロッサムが現れた。

 

「ミント、ハッピー、エコー、大丈夫!?」

 

「あたし達も加勢するよ」

 

「はるかさん、妹さん達と一緒にこっちに!」

 

 ブルームとルージュが、イーグレットと共にハッピーとエコーに合流すれば、ブロッサムははるか、ももか、ゆいを手招きして呼び寄せ、ミントと共にはるか達を守る態勢を取った。

 

「おのれぇぇ、またしてもぉぉぉ」

 

「「ヒィィィ!?」」

 

 激高して口が耳まで裂けた鬼女を見て、思わずルージュとハッピーが一歩後退るも、ブルームとイーグレットが飛び出して肉弾戦を仕掛け、鬼女と激しい攻防を繰り広げた。それを見て勇気を振り絞ったルージュとハッピーは、

 

「怖くない、怖くない、怖くない・・・プリキュア!ファイヤーストライク!!」

 

「気合いだ、気合いだ、気合いだぁぁ!プリキュア!ハッピ~~・・・シャワ~~!!」

 

 勇気を振り絞ったルージュのファイヤーストライクと、ハッピーのハッピーシャワーが、放たれ、呼吸を計ったかのようにブルームとイーグレットは、鬼女から距離を取り、ルージュとハッピーの合体攻撃が、鬼女を飲み込み浄化した。

 

「「ヤッタァァ!」」

 

 はるかとゆいは、思わず手を取り合ってプリキュア達の勝利を喜び合い、プリキュア達も魔界の者達を浄化した事でホッと安堵し、笑顔を浮かべた。初めて会ったはるかとゆいではあったが、何処かお互いに惹かれ合って居た。

 

 はるかとゆい、二人が生涯の親友になるとは、この時の二人に知る由は無かった・・・

 

 

4、パインとみらい

 

 朝日奈みらいはご機嫌斜めだった・・・

 

 先程の不気味なカインの宣戦布告を聞いて、母今日子はみらいに対し、家から一歩も出ないように釘を刺して居た。みらいは自室で、熊のぬいぐるみのモフルンを抱っこしながら、不満そうに愚痴って居た。

 

「また魔法つかいさんに会えるかも知れないのに、つまらないよねぇ、モフルン?」

 

 みらいはモフルンを抱っこしたまま、そのままベッドに寝転がるも、直ぐに起き上がり、抜き足、差し足、忍び足で一階に降り、母今日子の様子を見た。今日子は夕飯の準備をしているようで、みらいはしめしめとばかり、また抜き足、差し足、忍び足で、今日子に気付かれず家から外に出た。

 

「ヤッター、大成功!」

 

 みらいは辺りを見渡すも、普段と同じ景色がそこにはあった。

 

「お母さんったら、心配性・・・モフルン、また魔法つかいさんに会えないかなぁ?」

 

 みらいはモフルンを抱っこしたまま、近所の公園へと向かった。ベンチに腰掛けたみらいが空を見上げると、日は暮れ始めて薄暗くなってきていた。そんなみらいの耳に、尋常じゃない動物の唸り声が聞こえて来た。

 

「何だろう!?」

 

 みらいは、意を決して声の方に走っていくと、全身の毛を逆立てた子猫が居た。更にみらいの視線に映ったのは、五メートルはありそうな毛むくじゃらな生物が、右手に棍棒を持って不気味な笑みを浮かべて居た。巨人の名はオーガ、みらいは思わずオーガを見上げ、

 

「大きいなぁ・・・アッ!?猫ちゃん、ダメだよ!」

 

 子猫は、恐怖に耐えきれないかのように、オーガに向かって行くも、オーガは大きく息を吸い込み、子猫目掛け息を吹きかけた。子猫は堪らず吹き飛ばされ、みらいは身体を張って子猫を受け止めた。

 

「大丈夫!?猫ちゃん、逃げよう」

 

 みらいは、右手にモフルンを、左手に子猫を抱いて逃げ出すも、オーガはその場で右足を持ち上げて地上に振り下ろすと、まるで地震が起きたかのように地上が揺れ、みらいは思わず転んでしまい、モフルンが宙に飛んだ。

 

「モフルン!猫ちゃんは先に逃げて!!」

 

 みらいは、子猫を先に逃がすと、宙に飛んだモフルンを必死に追った。子猫は、心配そうに後ろを振り返るも、そのまま何処かに消え去った。宙に飛んだモフルンを、オーガは巨大な腕を伸ばして掴み、口の中に放り込もうとしていた。みらいは、オーガの前で両腕を広げて立ち塞がり、オーガの視線がみらいを捕らえた。

 

「モフルンを返して!」

 

 頬を膨らませてオーガに抗議するみらいだったが、オーガはみらいを摘まみ上げ、大きな口を開けて、モフルン事みらいを飲み込もうとした。みらいは両足を動かして抵抗した。だが、無情にもみらいとモフルンを捕らえて居た手を離すと、みらいとモフルンは、オーガの口目掛け落下していた。オーガがみらいとモフルンを食べようとしたその時、一人の人影がみらいとモフルンをキャッチし、そのまま地上に降り立った。それはキュアパインだった。更に入れ替わる様に、ミューズとサ二ー、そしてダークルージュがオーガの前に現れた。

 

「パイン、私達でこの大きい巨人を惹きつけるから」

 

「あんたは今の内にその子を安全な所に避難させな」

 

「ウチらに任せといてぇ」

 

「ウン、直ぐ私も合流するから」

 

 パインは、みらいを少し離れた場所で下ろすと、

 

「大丈夫!?怪我は無いかしら?」

 

 パインは、優しくみらいに話し掛けて、モフルンをみらいに手渡すと、背後をチラリと見た。そこには先程みらいが逃がした子猫が居た。パインは子猫の頭を撫でながら、

 

「ありがとう、あなたが教えてくれたから間に合ったわ」

 

「ミャァー」

 

 パインに頭を撫でられながら声を掛けられた子猫は、気持ち良さそうな表情を浮かべた。みらいは呆然としていたものの、直ぐに慌ててパインにお礼を始め、

 

「お姉ちゃん、ありがとう。モフルン、良かったね?」

 

「どう致しまして、この猫ちゃんと一緒にここに居てね」

 

 パインがみらいに離れているように伝えると、オーガと戦って居るミューズ、サ二ー、ダークルージュの下に駆け去った。みらいは、傍に居る子猫の頭を撫でながら、

 

「あのお姉ちゃん、この子に教わったって言ってたけど・・・ひょっとして、子猫の言葉が分かる魔法つかいさん!?」

 

 みらいは、パインが子猫と会話する魔法を使えると思い、目をキラキラ輝かせた。

 

 巨大なオーガと戦うミューズ、サ二ー、ダークルージュ、そして合流したパインの四人、ミューズは、オーガの動きを止めるべく行動に移った。

 

「あんなに大きいのに暴れられたら大変、先ずは動きを制限しなきゃ・・・、シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!シャイニングサークル!!」

 

 ミューズは、四人の幻影を出すと、五芒星のようなサークルを描き、巨大なオーガの動きを封じた。

 

「三人共、今の内に!こんなに大きくちゃ、長くは動きを止められない」

 

「「OK!」」

 

「OKや!」

 

 ミューズの言葉に頷いたパイン、ダークルージュ、サ二ーの三人、パインはパインフルートを取り出し、サ二ーは、サ二ーファイヤー、ダークルージュはダークネスシュートの体勢に入った。

 

「ウチの炎、受けてみぃや!プリキュア!サニーファイヤー!!」

 

「デカ物、これでも喰らいな!プリキュア!ダークネス・シュート!!」

 

 サ二ーの炎のスパイクサ二ーファイヤーが、ルージュのファイヤーストライクに似た、まるで黒き炎のボールが、オーガ目掛け飛び、パインはパインフルートを優しく奏で、

 

「プリキュア!ヒーリングプレアー・・・フレ~~ッシュ!!」

 

 パインから黄色いダイヤ型の光弾が同時に発射された。

 

「グゥゥオォォォォォ!」

 

 オーガはもがいて、シャイニングサークルを振り解いたものの、サ二ーファイヤー、ダークネスシュートの直撃と、そのすぐ後にヒーリングプレアーを受けた事で、為すすべなく浄化された。

 

「「「「フゥゥゥ」」」」

 

 パイン、ミューズ、サ二ー、ダークルージュが、安心したように大きく息を吐くと、みらいが嬉しそうに三人に近付き、子猫もみらいを追いかけて来た。パインは近づいて来た子猫をしゃがみ込んであやしていると、みらいは目をキラキラ輝かせながら、パインに話し掛け、

 

「あのぉ・・・魔法つかいさんですよねぇ?」

 

「エッ!?エェェと、私達魔法使いって言うか、プリキュアだけど」

 

「でも、この猫ちゃんとお話出来るんですよねぇ?」

 

「ウ、ウン、キルンの力を使えば・・・」

 

 パインは少し動揺しながらも、みらいの質問に正直に答えた。キルンも楽しそうに姿を現し、子猫はキルンを追ってグルグルその場で回り続けた。ミューズ、サ二ー、ダークルージュも、穏やかな目で子猫を見ていると、親猫が迎えに来たのか、子猫は一同にミャァと声を発して、この場を去って行った。パインは、子猫の言葉を通訳するように一同に話し掛け、

 

「あの子、助けてくれてありがとうって言ってたよ」

 

「そう、間に合って良かったよね」

 

「終わりよければ何とかやらやな」

 

「じゃあ、そろそろ戻りましょう」

 

 ミューズ、サ二ー、ダークルージュはパインに頷き返し、ブルーの所に戻ろうと提案した。パインも頷き、

 

「そうだね・・・じゃあ、私達これで」

 

「私、朝日奈みらいって言います!」

 

「エッ!?そ、そう・・・私は、キュアパイン、こちらがミューズ、あちらがサ二ー、そちらがダークルージュよ。じゃあみらいちゃん、私達これで・・・」

 

 パインは、ミューズ、サ二ー、ダークルージュと共にこの場を去ろうとすると、みらいが慌ててパインを引き留め、

 

「あのぅ、パインお姉ちゃんは、動物とお話出来るんですよねぇ?」

 

「ウ、ウン、そうだけど・・・」

 

「じゃあ、モフルンともお話しできるんだぁ・・・モフルンが何て言ってるか、私に教えてくれますか?」

 

「モフルンちゃん!?ウン、良いけど・・・そのモフルンちゃんって何処に?」

 

「モフルン!」

 

 みらいは嬉しそうにモフルンを頭上に掲げると、パインとサ二ー、ダークルージュの目は点になり、ミューズの表情が曇った。困惑顔のパインは、みらいに確認するように、

 

「エェェと、縫いぐるみだよね?」

 

「縫いぐるみじゃないよ。モフルンだよ!」

 

 パインはどうしたものかと益々困惑していると、ミューズとダークルージュは、みらいを呆れたような視線で見つめ、サ二ーは変顔を浮かべながら、

 

「エェェと・・・あの子不思議ちゃんかいな?何か取り込んでるようやし、ウチらは先に帰ろかぁ?」

 

「そうね・・・じゃあ、話が長くなりそうだから、あたし達は先に戻るよ」

 

「みんなには、私達から話しておくから」

 

 サ二ー、ミューズ、ダークルージュが、パインを置いて先に帰ろうとすると、困惑したパインは、必死に三人のスカートを掴んで引き留めた。

 

「アカンアカン、スカートがぁぁ!?」

 

「「スカート脱げちゃうぅぅ!」」

 

「待ってぇぇぇ!置いて行かないでぇぇ!!私達、同じプリキュアの仲間でしょう?友達でしょう?お願いぃぃぃ!!!」

 

 パインは、置いて行かれまいとして、必死にサ二ー、ミューズ、ダークルージュを引き留め、三人はスカートを抑え、パインを引き吊りながら、四人の姿が姿見鏡へと消えて行った。みらいは呆然と見て居たが、

 

「アッ!?魔法つかいのパインお姉ちゃんに逃げられちゃった」

 

 みらいは残念そうにしながら、モフルンに話し掛け、

 

「ねえモフルン、パインお姉ちゃんって・・・私の髪形に似てたよねぇ?エへへへ」

 

 みらいは、パインの事を思い出し、嬉しそうに口元が緩むと、みらいの頭を、左右から拳が押さえつけた。

 

「エッ!?」

 

「み~ら~いぃぃぃ!」

 

「そ、その声・・・お、お母さん!?」

 

 みらいの母今日子は、みらいが家から抜け出した事に気付き、みらいを探しに来て居た。みらいは恐る恐る振り返ると、心配顔した今日子の両拳が、容赦なくみらいの頭を締め付けた。

 

「痛い、痛いぃぃ!ゴ、ゴメンなさぁぁい!」

 

「もう抜け出したりしない?」

 

「しません!アァァン、パインお姉ちゃん、助けてぇぇぇ!!」

 

 みらいは、今日子に謝り続けながら、家へと連れ戻された・・・

 

 

         第百二十五話:次世代を担う少女達(後編)

                  完




まだ本調子ではありませんが、何とか書き終えたので第百二十五話投稿致しました。
今回は、はるか達とみらいの話になってます。ヒメルダとリコの話は次回になります。
遅くなった事をお詫びします。

それでは、皆さん良いお年をお迎えくださいませ!


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