プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百二十八話:魔王・・・死す!?

1、迫る脅威

 

 魔界・・・

 

 キュアビートは、リリスからカインがブラッドに語っていた内容を聞き愕然とした。

 

「そんなぁ、パッション達が住む四つ葉町が?」

 

「エエ、でもそれだけじゃないわ。カインは配下の者達を捨て石として囮にし、その町に誘き出されたプリキュア達と共に、エーテルダークネスを発射して一気に消し去る気よ」

 

「そ、そんなぁぁ・・・な、何とかみんなに知らせないと」

 

 ビートは大いに動揺して居た。このままでは、プリキュアの仲間達が、エーテルダークネスを受けて消滅してしまう恐怖が、ビートの心を不安にさせた。何とかプリキュアの仲間達に知らせたいビートだったが、パニクっている影響もあり、ビートに妙案は浮かばなかった。直ぐに四つ葉町に駆け付けて知らせたい思いもあったが、自分は今魔界に居てなす術は無かった。

 

「どうしたらいいの!?」

 

 困惑するビートを、ハミィは悲しそうに見つめて居たが、ビートの首に掛かっているペンダントを見るとハッと何かに気付いた。

 

「セイレーン、神様に貰ったそのペンダントは、使えないのかニャ?」

 

「エッ!?そ、そうか!神様は魔界から繋がるか分からないって言っていたけど・・・」

 

 ビートは、ハミィの言葉でブルーに貰った連絡アイテムの事を思い出し、縋る様にペンダントを右手で握りしめて、地球の神ブルーを呼び始めた。

 

「お願い、神様に繋がってぇ・・・神様、聞こえますか?神様、私です。キュアビートです!神様、お願い出て下さい!!」

 

 ビートは祈るような気持ちで、必死にブルーを呼び続けたものの、ブルーに繋がる事は無かった。悲しげな表情のビートを見ていたニクスは、シーレインにある進言を始めた。

 

「シーレイン様、私達の力で人間界と魔界を繋ぎ、ビートを仲間達の所に送り届けてあげませんか?」

 

 ニクスの提案ではあったが、シーレインはゆっくり首を左右に振り、

 

「ニクス、私も出来るならそうして上げたいのですが、他の場所ならば兎も角、この十二の魔宮は、ルーシェス様を守る為に作られたの、十二の魔宮の内側には、何人をも近づけさせない様に結界が張られているのは知って居るわね?ルーシェス様の居城であるこの塔より下は、結界によって他空間に繋げる事は出来ないわ」

 

「そうですか・・・」

 

 一同の視線が、尚も必死にブルーを呼び続けるビートへと注がれた。ベレルは腕組みしながら聞いて居たが、腕組みを解くと、

 

「シーレイン殿、ここには十二の魔神の内、四人が居ります。シーレイン殿、ニクスとリリス、それに拙者の四人がそのプリキュアの周囲を取り囲めば、人間界と交信する程度ならば出来るのではないかと思われますが如何でしょう?」

 

「なるほど・・・それは試してみる価値はありそうですね。ニクス、リリス、あなた方二人も協力してくれますか?」

 

「「もちろんです」」

 

 ベレルの提案に、シーレインも、ニクスとリリスも同意した。四人はビートを囲むように立つと、気合を込め始めた。

 

「「「ハァァァァァ!」」」

 

「ヌゥゥゥゥン!」

 

 四人の気が合わさり、ビートの上空の空間に歪みが生じた。シーレインはビートを見つめ、

 

「何とか成功したようね。セイレーン、あなたが立つその範囲だけならば、人間界と交信が出来る筈よ」

 

「本当!?シーレイン、ニクス、リリス、ベレル、ありがとう!神様、聞こえますか?私です。キュアビートです!」

 

 ビートの必死の呼び掛けは、シーレイン達の協力もあり、ブルーの下へと届いた。プリキュア達の身を心配して居たブルーは、聞こえて来たビートの声を聞いてハッと我に返り、

 

「ビート!良かった、無事だったんだね?」

 

「良かったぁ・・・神様に繋がった。神様、大変なの!四つ葉町に向かったプリキュアのみんなの身が危険なの!!」

 

「何だって!?ビート、もっと詳しく話を聞かせてくれるかい?」

 

 ブルーは、ビートからの連絡を受け、見る見る険しい表情を浮かべて行った・・・

 

 

 星空家・・・

 

 加音町で、ピーチとメロディに蹴り飛ばされ、ご機嫌斜めで星空家に帰って来た魔王は、そろそろ夕飯の支度を始めようかとしていた、みゆきの母育代に頭を撫でられ、すっかり機嫌を直して居たのだが、魔王は、妙な胸騒ぎを感じて居た。

 

(何かみゆき達の事が気になるカゲ・・・加音町に居たと思ったら、色々な町に現れたり、ラブ達の町に現れたり・・・)

 

「魔王ちゃん、どうしたの?」

 

 育代は、虚空を見つめて物思いにふける魔王を見て声を掛けた。魔王はハッと我に返ると、何時ものように育代を見て笑みを浮かべた。そのまま魔王はフワフワ宙を飛びながら育代の前に移動すると、育代に甘えるように身体を擦りつけた。育代はニコニコしながら魔王の頭を撫でていると、魔王は育代の顔まで浮かび上がり、

 

「みゆきママ、ちょっと出掛けて来るカゲ」

 

「あら、魔王ちゃんまたお出かけ?魔王ちゃんのハンバーグ先に焼こうかと思ってたんだけど・・・」

 

「帰ったら食べるカゲェェ」

 

 魔王はそう言い残し、星空家を後にした。魔王は、何か心に引っ掛かるプリキュア達の事を思うと、自然と身体が動いた。

 

「やっぱり、みゆきママだけじゃなく、みゆきも一緒にハンバーグ食べた方が楽しいカゲ。でも、みゆきパパは要らないカゲ」

 

 魔王はそう思いながら、プリキュア達の様子を見に四つ葉町へと飛び去った。だが、魔王が育代の作ったハンバーグを食べる事は無かった事を、この時の魔王が知る由もなかった。

 

 

2、破滅の光

 

 クローバータウンストリート・・・

 

 ブラッドは、カインに騙された事を知り自棄になっていた。カインが仕組んだ結界により、四つ葉町に入る事は出来ても、もう逃げ出す事も出来ないと悟ったブラッドは、せめてプリキュアの一人でも自らの手で倒さなければ、死んでも死にきれないと思って居た。

 

「プリキュアァァァァ!」

 

 ブラッドは、生き残った配下の魔物達と共に、プリキュアに対して総力戦を仕掛けて来た。ピーチは困惑しながら、

 

「今はあなた達の相手をしている暇は無いの」

 

「あなた達だってこのままじゃ・・・」

 

 ベリーもカインに裏切られたブラッドに、憐みの視線を向けた。それはブラッドに、嘗てラビリンスでメビウスに見捨てられ、プリキュアと一緒に消滅さられそうになった、ウエスターとサウラーの事が頭を過ぎったからだった。だが自棄になったブラッドには、ピーチやベリーの声も届かなかった。

 

「黙れぇぇぇ!もう全てお終い何だ・・・せめて、せめて貴様らの一人でも倒さなきゃ、俺の気がすまねぇんだよぉぉぉ!」

 

 ブラッドは問答無用とばかり、ピーチ達フレッシュプリキュアを上空から攻撃し始めた。他の魔物達も、プリキュア達に対して攻撃し、プリキュア達も迎え撃った。

 

 ブルーム達は、黒い頭巾を被って、矢を射て攻撃してくる闇の精霊ボックルと・・・

 

 ドリーム達プリキュア5は、ヤギの頭部とゴリラの肉体を持ったようなボルックスと・・・

 

 ローズとソードは、カナブンのような昆虫の魔物と・・・

 

 ダークプリキュア5は、カラスのような魔物と・・・

 

 ムーンライト達は、半分身体が腐ったようなおぞましいグールの群れと・・・

 

 メロディ達は、イカの様な身体と犬の頭部をした魔物と・・・

 

 そしてハッピー達は、カブトムシとクワガタが合わさったような昆虫の魔物とそれぞれ戦って居た。ルミナスは、大輔とミユキを安全な場所まで避難させて居た。

 

「ケェケケケケ、空を飛べねぇ貴様らなど、俺の敵じゃねぇよ」

 

 ブラッドは、上空を自在に飛び回り、空からピーチ達を攻撃し、ピーチ達は苦戦して居た。ピーチは上空を見上げながら、

 

「何とかあいつの動きを止めないと・・・」

 

 そんなピーチの声が、タルトに背負われていたシフォンに届いた。シフォンは空を見上げてブラッドを見ると、

 

「キュアキュア、プリプー」

 

 シフォンは耳を動かすと超能力が起こり、空を飛んでいたブラッドの身体が急速に重くなって行った。

 

「な、何だ!?身体が急に重くなって・・・」

 

 ブラッドは、重さに耐えきれず地上へと落下した。クローバーボックスを手に持ったタルトは、

 

「ピーチはん、ベリーはん、パインはん、パッションはん、今やでぇぇぇ!」

 

 タルトの声に、四人は反応して頷くと、ピーチは仲間達に目で合図を送り、

 

「行くよ、ベリー、パイン、パッション!クローバーボックスよ、私達に力を貸して!!」

 

 タルトが持って居たクローバーボックスから放出された光が、リンクルンに力をもたらした。

 

「プリキュアフォーメーション!」

 

 ピーチの合図を受け、四人が一斉にしゃがみ込み構えると、シフォンに動きを封じられていたブラッドは困惑した。一体何を始めようとするのか、ブラッドには分からなかった。

 

「レディー・・・ゴー!!」

 

 再びピーチの合図で、四人はブラッド目掛け走り出した。

 

「ハピネスリーフ!セット!パイン!!」

 

 パッションから始まったハピネスリーフ、パッションはパインに投げると、

 

「プラスワン!プレアリーフ!ベリー!!」

 

 受け取ったパインが、プレアリーフをセットしベリーに投げる。

 

「プラスワン!エスポワールリーフ!ピーチ!!」

 

 受けたベリーが、エスポワールリーフをセットし、ピーチに思いを託し投げる。

 

「プラスワン!ラブリーリーフ!!」

 

 受け取ったピーチは、ラブリーリーフをセットし、四つ葉のクローバーマークを完成させる。ピーチが四つ葉のクローバーマークを投げると、それは巨大化し、四人はそれぞれのマークの上に乗って、クローバーの中心部に居るブラッドの上で下降し、ブラッドを巨大な水晶の中に閉じ込めた。ブラッドはもがいて逃げようと試みるも、動きを封じられていたブラッドは、逃げ出す事が出来なかった。

 

「ち、畜生、だが、貴様らも終わりだぁぁぁ!」

 

「「「「ラッキークローバー!グランドフィナーレ!!」」」」

 

 ラッキークローバー・グランドフィナーレの力は、凄まじい輝きを放ち、ブラッドを光の輝きの中で包み込んで浄化した。他のプリキュア達も魔物達を浄化したものの、彼女達の心が晴れる事は無かった。一同の視線が空へと向けられる。四つ葉町の上空に発生したゆがみは、やがて巨大な穴の様な窪みになった。負の力が起こすプレッシャーが、プリキュアと妖精達を動揺させていった。エーテルダークネスという未知の脅威を前に、何をすべきか分からなかった。その時、プリキュア達の側に姿見鏡が現れ、中からブルーが現れた。だが、姿見鏡はブルーが通り抜けると、何かに耐えられないように消滅した。ブルーは困惑しながら、

 

「この力もエーテルダークネスの・・・」

 

『神様!』

 

 エーテルダークネスの脅威の前に動揺して居たプリキュア達に取って、地球の神であるブルーがやって来た事は心強かった。ブルーは一同の無事な姿を見てホッと安堵するも、その表情は固かった。

 

「みんな、無事で良かった。さっき魔界に行ったビートから連絡があった」

 

「「「エッ!?ビートから?」」」

 

 ブルーから、魔界に居るビートから連絡が入ったと聞き、メロディ、リズム、ミューズは思わず身を乗り出した。ビートがどうやら無事で居るようで、三人は思わず自分達の置かれている状況を忘れたかのようにホッと安堵した。ブルーは話を続けると、

 

「ビートが魔界の協力者達から聞いた話によれば、エーテルダークネスという負の力を蓄えたエネルギー波が、この町に降り注ぐ」

 

「ハイ、私達もさっき、この町を襲って居た魔物から聞かされました」

 

 ピーチの言葉に、ブルーはゆっくり頷いた。プリキュア達がエーテルダークネスの事を知って居るのなら話は早かった。

 

「そうか、それなら話が早いよ、元々この町を襲わせたのは、邪魔な君達を町事一気に消滅させようと考えた罠のようだ。その為に配下の者達を利用したそうだ」

 

 全てはプリキュア達を四つ葉町に集結させる為の罠、プリキュア達が改めてカインに対して敵意を向けたその時、ブルーが持って居たアイテムが輝きだした。

 

「みんな、聞こえる?」

 

『ビート!』

 

 ビートの声が、ブルーが手に持つアイテムから聞こえて来た。ビートと別れてからまだ数時間ではあったが、プリキュア達は皆魔界に行ったビートの無事を知って安堵した。だが、ビートは険しい声で叫び、

 

「みんなぁ、注意して!エーテルダークネスが起動するわぁぁ!!」

 

 ビートは絶叫しながらプリキュア達に知らせ、一同は上空を見上げた。上空から、何か唸り声のような音が四つ葉町に迫って来て居た。ブルームは、イーグレット、ブライト、ウィンディに話し掛け、

 

「先ずあたし達が最初に防いでみよう」

 

 ブルームはそう提案するも、直ぐにブルーは顔を横に振り、

 

「いや、それは得策では無いよ。みんなの力を結集させて守りに備えた方が良い」

 

 ブルーは、ビートから話を聞く内に、ビートに知らせたシーレイン達が、かなりエーテルダークネスを警戒している様子なのを知り、個々の力で防ごうとするより、力を結集させるべきだと提案した。ちょうどそこに、ミユキと大輔を避難させたルミナスも戻って来た事で、ブルーはルミナスにもエーテルダークネスの事を伝えた。ムーンライトはルミナスの右肩に手を置き、

 

「ここはやはりルミナス、あなたの力に頼るしかないわね」

 

「分かりました・・・ポルン、ルルン、あなた達も力を貸して」

 

「ポポ、ポルンも頑張るポポ」

 

「ルルンも頑張るルル」

 

 ポルンとルルンもルミナスに力を貸す事を誓い、ルミナスは二人に微笑みながら頷いた。ルミナスは上空を見上げると、険しい表情を浮かべた。上空から発せられる威圧感が強まっているのを、プリキュア達も、妖精達も、そしてブルーも感じていた。ルミナスが両手を空に向けて上げると、

 

「クイーン!私に力をお貸しください・・・ハァァァァ!!」

 

 ルミナスが気合を込めると、四つ葉町上空に、巨大な虹色のバリアを作り上げた。それを見たブルーも両腕を高く掲げると、

 

「ルミナス、僕も力を貸そう」

 

「神様・・・ハイ!」

 

 ルミナスはブルーに小さく頷くと、ルミナスが放ったバリアにブルーの力が加わり、ルミナスの身体が光り始め、バリアはより強固になって四つ葉町の空に浮かび上がった。それと時を同じくし、四つ葉上空に破滅の光エーテルダークネスが降り注いだ。その凄まじい衝撃がルミナスを襲った。

 

「キャァァァァァ!」

 

『ルミナス!』

 

 エーテルダークネスの凄まじい威力により、ルミナスの身体が吹き飛ばされそうになるのを、ムーンライトが後ろからルミナスを支えた。それでも二人の身体事吹き飛ばす程の威力で、ピーチが慌ててムーンライトを支え、他のプリキュア達が次々に前のプリキュアを支えると、バリアはプリキュア達の力を受けて更に強固になり、エーテルダークネスの衝撃を、プリキュア達は一分間耐えきった。破滅の光が徐々に収まり、やがて消えていった・・・

 

「ハァハァハァハァ・・・」

 

 全ての力を使い果たし、ルミナスがよろめくのをムーンライトが支えた。

 

「ルミナス、お疲れ様」

 

「ハァハァハァ・・・ハイ」

 

 ルミナスは疲れ果てて倒れ込むのを、ムーンライトは優しく自分の膝に頭を乗せて寝かせてルミナスに感謝の言葉を伝え、他のプリキュア達も次々とルミナスを称え、プリキュア達もエーテルダークネスの脅威が去った事を喜び合った。ブルーも力を使い果たし、壁に背中を付けて息を整えるも、

 

(おかしい!?まだ禍々しい負の力が消え去って居ない?)

 

 ブルーが訝しんだその時・・・

 

(甘いな、プリキュア!)

 

『エッ!?』

 

 嘗ての様に、突然一方的にプリキュア達の脳にカインの声が響き渡った。動揺するプリキュア達に対し、再びビートの声が聞こえて来た。

 

「みんなぁぁ!エーテルダークネスの第二波が発射されたわぁぁ!!」

 

『そんな!?』

 

 ビートの叫びが再びブルーが持つアイテムから響き渡った。だが、エーテルダークネスの第一波を防いで、体力の無くなったルミナスとブルーには、再びバリアを張る力はもう無かった。ムーンライトは、その場でルミナスを横にならせて休むように伝えると立ち上がり、

 

「みんな、私達の力を一つにして迎え撃つわよ」

 

『ハイ!』

 

 一同が返事を返したその時、無情にもエーテルダークネスの絶望の光が、四つ葉町上空に輝いた。

 

 

3、プリキュアと魔王

 

 ピーチは、四つ葉町上空に輝く絶望の光を呆然と見つめた・・・

 

「そ、そんなぁ・・・私達の町が・・・みんな、ゴメン!」

 

 ピーチの瞳から大粒の涙が零れた。もうどうする事も出来ない現状に、ピーチの心は深い悲しみと悔しさで一杯だった。迫り来る絶望の光に、シフォンが険しい表情を浮かべたその時、四つ葉町の空を闇が覆った。ピーチは空を見上げて動揺し、

 

「エッ!?これは何?」

 

 動揺するピーチに知らせようとするかのように、シフォンは空の一画を指さしてハシャイだ。

 

「カァァァゲェェェ」

 

『魔王!?』

 

 プリキュア達が、空に浮かぶ闇を凝視すると、そこには嘗て絵本の世界で戦った時より巨大な魔王が、四つ葉町の空に浮かび上がり、エーテルダークネス目掛け、口から強烈なエネルギー波を放って迎え撃った。魔王の咆哮と、エーテルダークネスがぶつかり合い、四つ葉町上空に激しい閃光がほとばしった。ハッピーは大きく息を吸い込むと、

 

「魔王!頑張ってぇぇぇ!!」

 

 ハッピーが魔王に対して声援を送り、それに続くように妖精達が、プリキュア達が魔王に声援を送った。ムーンライトはムーンタクトを手に取ると、

 

「みんな、私達も魔王を援護するわよ」

 

『ハイ!』

 

 ムーンライトの指示の下、一同は魔王を援護すべく攻撃を開始した。ブルーム達は、スパイラルハートとスパイラルスターを放ち、ピーチ達はトリプルフレッシュとハピネスハリケーンを、ムーンライト達はフォルテウェーブとフォルテバーストを、メロディ達がパッショナートハーモ二ーを、ソードはホーリーソードを、ハッピー達は再びロイヤルレインボーバーストを放った。ドリームは悔しそうに、

 

「ココが居てくれたら、私達もレインボーローズエクスプロージョンを放てるんだけど・・・」

 

「仕方が無いわ、あなた達の分も私達がカバーするわ」

 

 ダークドリームは、ドリームを励ますように肩をポンポン叩き、仲間達と共にダークローズエクスプロージョンを放った。アクアはルージュとローズに話し掛け、

 

「私達だけでも援護しましょう!プリキュア!サファイアアロー!!」

 

「OK!プリキュア!ファイヤ~ストライク!!」

 

「邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザード!!」

 

 アクア、ルージュ、ローズの技も加わり、プリキュア達の技が合わさった。

 

『ハァァァァ!』

 

 さらに力を込めるプリキュア達の技が合わさり、魔王のエネルギー波がエーテルダークネスを押し返して、完全に消し去った。

 

「ヨッシャァァ!」

 

「魔王、ありがとう!」

 

 マリンが両腕を上げてガッツポーズを取り、ハッピーは両手を振って魔王に感謝した。だが、四つ葉町上空に漂う邪悪な気配は消える事は無かった。三度ビートの絶叫が響き渡り、

 

「みんなぁぁ、堪えて!第三波が発射されたわ!!」

 

『そ、そんなぁ・・・』

 

 ビートからの希望を打ち砕く絶望の声が、プリキュア達の心に響き渡った。ビートは一同を励ますように、

 

「今シーレイン達が、エーテルダークネスを発生させる装置を破壊に向かって居るわ。これを乗り切れば、カインはもうエーテルダークネスを撃てない。お願い、みんなぁ!何とか堪えてぇぇぇ!!」

 

 ビートは、祈るような気持ちでプリキュア達を励ました。だが、二度のエーテルダークネスを防いだプリキュア達に、もうエーテルダークネスを食い止める力は残っては居なかった・・・

 

 

 魔法界からシロップの背に乗って戻って来たブラックとホワイトだったが、二人のパートナー妖精であるメップルとミップルが突然騒ぎ始めた。

 

「ブラック、あっちの方から、もの凄く邪悪な力を感じるメポ」

 

「その直ぐ側に、ポルンとルルンも感じるミポ」

 

 メップルとミップルの話を聞き、ブラックとホワイトは思わず顔を見合わせると険しい表情を浮かべた。

 

「ポルンとルルンが側に居るって事は、ルミナスも側に居るって事だよねぇ、ホワイト?」

 

「エエ、他のプリキュアのみんなも一緒かも知れないわ・・・行きましょう!」

 

「「シロップ、お願い!」」

 

 ブラックとホワイトに頼まれたシロップは、分かったとばかり一鳴きすると、猛スピードで邪悪な気配漂う四つ葉町目掛け飛び去った。

 

 

 四つ葉町を守る魔王は、上空に浮かんだまま虚空を見つめて居ると、プリキュア達との日常の日々が走馬灯のように流れた。

 

(あいつらは、俺の友達カゲ、この町には、俺に優しくしてくれたラブママ、美希ママ、祈里ママも居るカゲェ・・・俺がみんなを、みんなを・・・)

 

「守るカゲェェェェ!」

 

 魔王は大きく息を吸い込むと、魔王の身体が更に一回り大きくなった。ハッピーは不安そうに、

 

「魔王、何をする気なの?」

 

「みゆき達は、俺の友達カゲ・・・俺がお前達を・・・守るカゲ!!」

 

『魔王・・・』

 

 魔王の思いは、プリキュア達の心を打った。ムーンライトは、力を使い果たした自分の無力さを悔やむように唇を噛んだ。エーテルダークネスの第一波、第二波を食い止めた事で、体力の限界を超えていた。

 

(情けない・・・魔王に縋るしか無いだ何て・・・)

 

 ムーンライトが拳を握ったその時、四つ葉町上空に、三度破滅の光が降り注いだ。魔王は大きく息を吸い込み、口を大きく開いて再び強大なエネルギー波でエーテルダークネスを迎え撃った。激突する魔王のエネルギー波とエーテルダークネスによって、四つ葉町上空にまばゆい光が何度も行き来した。だが、次第に魔王がエーテルダークネスに押され始めた。魔王もまたエーテルダークネスの第二波を防いだ影響で、体力をかなり失って居た。ハッピーは大きく息を吸い込むと、

 

「魔王!頑張ってぇぇぇ!!」

 

「魔王、気張りや!」

 

「魔王・・・お願い!」

 

 右拳を上げたサニーが、両手を組んで祈るような仕草のピーチが、そしてプリキュア達が魔王に希望を託した。

 

 だが・・・

 

(もう、もう限界カゲ・・・あいつらは、あいつらは・・・)

 

「俺が守るカゲェェェェ!」

 

 魔王は咆哮し、自らの身体を使ってエーテルダークネスを受け止めた。魔王の身体を、容赦なくエーテルダークネスの破滅の光が蝕んでいった。

 

『魔王!』

 

(か、身体が・・・バラバラになりそうカゲ・・・)

 

 魔王が苦しそうに呻き続け、プリキュア達は心配そうに魔王を見守った。

 

「カァァァ・・・ゲェェェェ!」

 

 魔王の断末魔の様な叫びが響き渡るも、ついに四つ葉町上空に蔓延っていた邪悪なる力は完全に消え去り、四つ葉町の空に日が傾き始めた青空が再び現れた。魔王は眩しそうに空を見上げると、

 

(守れた・・・カゲ)

 

 魔王は薄れゆく意識の中、再び走馬灯のように絵本の世界でニコと過ごした日々、プリキュア達との日常が流れ、魔王は自然と笑みが浮かんだ。

 

(ニコ、元気でやってるカゲ!?また・・・ニコにも会いたい・・・カゲ)

 

 魔王は、その力の全てを使い果たしたかのように落下を始めた。まるで魔王の身体の細胞がバラバラになっていくように、四つ葉町の空から、1cm程の黒い球体がポツポツ雨の様に降って来た。

 

『魔王~~~!!』

 

 プリキュア達が魔王の身を案じて絶叫するも、魔王はその命を燃やし尽くしたかのように、ただ四つ葉町に降り注いだ・・・

 

 

4、いざ、魔界へ!

 

 プリキュア達と魔王の活躍で、四つ葉町に迫った危機は回避された。だが、プリキュア達も、妖精達も、誰一人それを喜ぶ事は出来なかった。

 

「魔王・・・・・嘘でしょう!?」

 

 ピーチは呆然としながら、目の前に降って来た中で一際大きいゴルフボールぐらいの黒いゼリー状の球体を両手で受け止めると、愛しそうに豊満な胸に抱きしめた。ピーチの瞳から大粒の涙がポロポロ零れ落ち、ピーチは膝から崩れ落ち、涙を拭おうともせず泣き続けた。泣きじゃくる者、放心したように呆然と立ちすくむ者、プリキュア達は目の前の光景が信じられなかった。ハッピーは、号泣しながらそのまま膝から崩れ落ち、

 

「魔王!返事してよぉぉ!!魔王~!!・・・ウッ、ウワァァァン」

 

 ハッピーは両手で顔を覆って泣きじゃくり、自らも涙を浮かべたビューティとブロッサムが優しく慰め、ハッピーはビューティにしがみ付いて泣きじゃくった。ブルーも沈痛な表情でプリキュア達を見守って居ると、ビートから通信が入った。

 

「神様、みんなは無事なの?シーレイン達が、エーテルダークネスの発生装置を破壊したって連絡が入ったわ」

 

「そう・・・君に協力してくれた魔界の者達に、僕からも感謝して居たと伝えて欲しい」

 

「ハイ!それで、みんなは?」

 

 ビートは、プリキュア達の安否が知りたくてウズウズしていた。みんなならきっと無事で居てくれるとは思っても、不安でしょうがなかった。ブルーはそんなビートに気づいたのか、

 

「無事だよ・・・魔王が自らを犠牲にして、エーテルダークネスの脅威から、プリキュア達と四つ葉町を守ってくれたんだ」

 

「エッ!?魔王が自らを犠牲にしたって・・・エェェ!?」

 

 ビートは、ブルーの報告を聞き、放心したように呆然と立ち尽くした。ハミィとピーちゃんは、そんなビートを気に掛け、

 

「セイレーン、一体どうしたニャ?」

 

「ピィィィ!?」

 

「ハミィ、ピーちゃん、魔王が、魔王が、みんなを助ける為にその身を犠牲にして、エーテルダークネスからみんなを守ったって・・・」

 

「ニャンですとぉぉぉ!?」

 

「ピィィィ?」

 

 沈痛な表情をしたビートからの報告を聞き、ハミィとピーちゃんも目を丸くして驚いた。慌てるハミィに対し、ピーちゃんはゆっくり頭を左右に振った。ビートとハミィに、ピーちゃんの言葉は分からない。それでも二人には、ピーちゃんが言わんとしている事が伝わっていた。あの魔王が、こんな事で死ぬ筈が無い、ピーちゃんはそう言っていると感じ取れた。ビートはピーちゃんを見て頷き、

 

「そうだよね、あの魔王が死ぬ訳無いよね?」

 

「そうニャ!次に会う時は、何時も通り元気な魔王と再会出来るニャ」

 

「ピィィィィ!」

 

 ピーちゃんは、ビートとハミィに自分の考えが伝わった事で、満足そうに何度も頷いた。

 

 

 四つ葉町の空を、猛スピードでやって来たシロップは、四つ葉町へと降り立った。シロップの背から降りて来たブラックとホワイトの姿を見ると、ルミナスは今まで堪えた感情が爆発したかのように、ブラックとホワイト目掛け駆け出した。

 

「ブラックゥゥ!ホワイトォォ!魔王が、魔王が、私達を庇って・・・」

 

 ルミナスは、そこまで話すとブラックとホワイトに抱き付き泣き続けた。ブラックとホワイトは困惑し、

 

「何!?魔王がどうかしたの?」

 

「みんな、一体私達が居ない間に何があったの?」

 

 状況が飲み込めないブラックとホワイトは、事の詳細を聞こうと話し掛けたものの、ほとんどのプリキュア達が、ルミナス同様泣きじゃくって居て、ブラックとホワイトは益々困惑した。二人の視線がムーンライトに向けられると、ムーンライトは、パートナーだったコロンの最期を思い出したかのように、悲しみを堪える様な表情を浮かべていた。ムーンライトは、ブラックとホワイトの視線に気づくと二人に近付いた。

 

「ブラック、ホワイト、実は・・・・・」

 

 ムーンライトは、沈痛な表情のままブラックとホワイト、そして呆然としているシロップに四つ葉町で起こった出来事を話した。話を聞いて居たシロップは驚愕し、

 

「ま、魔王がそんな事になってた何て・・・ココとナッツに知らせて来るロプ」

 

 シロップはそう言うと、魔王の身に起こった出来事を知らせる為に、パルミエ王国目指し猛スピードで飛び去って行った。見る見るブラックとホワイトの目にも涙が浮かんだ。

 

「そ、そんなぁ、魔王が・・・・・」

 

 ブラックは言葉に詰まり、思わず足元を見た。そこには何も喋らない黒い魔王の残骸があるだけだった。ブラックの目からポロポロ涙が零れ落ち、魔王との思い出が思い返されていった。最初はみゆきに対する誤解から対立して戦ったが、誤解が解けて和解し、魔王が人間界で暮らすようになり、時には魔王によってエッチな被害を被ったものの、魔王もまた大切な仲間の一人になって居た。その魔王が、足元の地面に無数に転がる黒い肉片になったなど信じたくは無かった。ブラックは、右手の衣装で零れ落ちる大粒の涙を拭いながら、

 

「魔王!返事してよぉぉ!!お風呂でも何でも、魔王がして欲しい事してあげるから・・・お願いだから返事してよぉぉぉ!!!」

 

 ブラックは、四つ葉町の空を見上げながらそう叫ぶも、魔王からの返事が返って来る事は無かった。沈痛な表情のホワイトは、そんなブラックを見て、

 

「ブラック・・・」

 

 ホワイトはブラックの名を呼ぶも、悲しみに暮れるブラックを見てられず、言葉に詰まった。

 

 その時・・・

 

(クククク、まさかエーテルダークネスを三発も喰らって生き延びるとはなぁ・・・正直驚いたぞ)

 

『カイン!』

 

 プリキュア達とブルーの脳に、カインからのテレパシーが響き渡った。一同は瞬時に険しい表情を浮かべた。ピーチは、ゴルフボール程の魔王の破片を胸の谷間に入れると、ゆっくり立ち上がった。

 

「カイン!あなただけは・・・許さない!!」

 

「あたし達を、あたし達の町を、そして、あたし達の大切な仲間を苦しめたあなたを・・・あたし達は決して許しはしない!!」

 

 ピーチに続き、ベリーもカインに対し険しい表情で啖呵をきった。カインは愉快そうに笑いだし、

 

(クククク、随分威勢がいいなぁ?だが、それも後数時間だ!後五時間もあれば、再びエーテルダークネスを発射できる。貴様らが住む町を、今度こそ消滅させてやる)

 

 カインの話は、プリキュア達を戦慄させた・・・

 

 ブラックとホワイトを除いた一同は、エーテルダークネスの脅威を直に見ていたのだから・・・

 

 だが・・・

 

「黙れぇぇぇ!あんただけは、あんただけは、この手で直に殴らなきゃ気が済まない。あんたが魔界に隠れてるっていうなら・・・魔界に乗り込んででも、魔王の分まであんたを殴る!!」

 

 一同が沈黙する中で、ブラックの魔界に乗り込んででもカインを殴るという、宣戦布告に等しい力強い言葉を受け、他のプリキュア達も次々とカインと戦う事を誓った。カインは再び笑い、

 

(クククク、勇ましい事だ・・・良いだろう!貴様らにチャンスをやろう)

 

 カインがそう告げると、クローバータウンストリートの一画に歪みが発生した。カインは言葉を続け、

 

(貴様らを魔界に招待してやる。ただし・・・五人だ!それ以上の数が無理にその中に入れば消滅する。では、魔界で貴様らが来るのを待って居るぞ・・・フハハハハハハ)

 

 カインはそう一方的に告げると、カインからのテレパシーが止んだ。一同の視線が、カインが発生させた魔界へと続くゆがみへと向けられた。魔界に行けるのは五人、カインはそう言って居たが、この場に居るプリキュア一人一人、自分が魔界に乗り込むカインと戦おうとする気迫に満ちていた。ブルーは愁いの表情を浮かべ、

 

「みんな、冷静になるんだ!これは罠だ!!」

 

 ブルーは、これはプリキュアを魔界に誘き出そうとするカインの罠だと見抜き、プリキュア達に自制するよう促した。だが、ブラックはゆっくり頭を左右に振り、

 

「神様の言う通りかも知れない・・・けど、あいつだけは、あいつだけは・・・」

 

 ブラックの意思は固かった・・・

 

 プリキュアの仲間達を、ピーチ達が住む四つ葉町を、そして大切な仲間の魔王を、こんな目に遭わせたカインの事が決して許せなかった。魔界に行けるのは五人、人選をどうするのか一同が相談を始めると、パッションは何かを考えるように、カインが発生させた魔界へと繋がる歪みを凝視した。その時、ピーチが突然悲鳴を上げた。

 

「キャァァ!」

 

「ピーチ、どうしたの?」

 

 ブラックが不思議そうにピーチに聞くと、ピーチは頬を赤らめながら、胸の谷間をチラリと見つめ、

 

「そ、それが・・・勘違いかも知れないけど、ここに入れてた魔王の一部が動いたような気がして・・・」

 

『エッ!?』

 

 一同が驚愕する中、ピーチの話を肯定するかのように、四つ葉町に散らばる魔王の一部が、一斉にピクピク動き出した。ピーチの胸がモゾモゾ動き出し、

 

「イヤァァン」

 

 ピーチは思わず恥ずかしそうに胸を抑えると、胸の谷間からモゾモゾ黒い物体がもがきながら顔を出した。

 

「フゥゥゥ・・・死ぬかと思ったカゲェ・・・でも、何か良い感触だったカゲ」

 

 ピーチの胸の谷間から顔を出したのは、ゴルフボール程の大きさだったが、確かに魔王の姿だった。プリキュア達は見る見る目を見開き、

 

『魔王!』

 

「カゲ?」

 

『ワァァァァァァァ!!』

 

 ピーチの胸の谷間から浮かび上がった魔王を見て、プリキュア達から大歓声が沸き起こり、ブルーや妖精達も、皆嬉しそうに何度も頷いた。魔王はそんな一同を見て不思議そうな表情を浮かべるも、自らの大きさに気付くと、

 

「全員、俺に集まるカゲェェぇ!」

 

『カゲカゲカゲカゲカゲ・・・・・』

 

 魔王の号令が下ると、1cm程のミニ魔王の集団が宙に浮かび上がり、次々とゴルフボールサイズの魔王と融合を始めた。やがて、魔王の身体が以前の様にボーリングの玉程の大きさになると、

 

「復活カゲェ!」

 

「何てデタラメな身体をしているのかしら?」

 

 魔王は元の大きさに戻ってハシャギまわり、ブライトは困惑の表情をしながら思わず呟いた。ブロッサムは、右手の指で涙を拭いながら、

 

「でも、でも、魔王が無事で本当に良かったです」

 

 ブロッサムの言葉にブライトも頷き、二人は穏やかな表情で魔王を見守った。ハッピーは魔王に駆け寄って魔王に抱き付くと、

 

「魔王!無事で、無事で良かったよ~!!」

 

 ハッピーは、心から嬉しそうに魔王を抱きしめて頬擦りし、魔王の無事を喜んだ。魔王は、心配してくれた一同に元気な姿をアピールするかのように、一人一人の前にフワフワ浮かびながら顔を見せ、プリキュア達も嬉しそうにして居た。魔王は、突然何かを思い出したように一同を見渡し、

 

「そういえば、お風呂でも何でも、俺がして欲しい事してくれるって聞いた気がするカゲェ」

 

(ギクゥゥゥゥ!?)

 

 魔王の言葉を聞き、一同の視線が言い出しっぺのブラックに向けられ、ブラックの顔が引き攣った。あの時は、魔王が無事であって欲しい事から、ついその場の勢いでそう口走ってしまったが、冷静になって考えれば、自分は不味い事を口走っていたと気づき、顔から汗が滴り落ちて来た。ブラックはしどろもどろになりながら、

 

「エッ!?エェェとぉ・・・アハハハ、な、何かの聞き間違いじゃないかなぁ?アハハハハ」

 

「なぎさ・・・何か変カゲ?」

 

「エッ!?変じゃない、変じゃないよ。いやぁ、魔王が無事で本当に良かった・・・アハハハ、良かった、良かった」

 

「どうも怪しいカゲ?」

 

 魔王はジト目でブラックを見つめると、ブラックは口笛拭きながら魔王から視線を逸らした。そんな魔王を、突然ピーチが抱き上げた。魔王は何事かとピーチの顔を見ようとすると、ピーチは魔王を豊満な胸に押し当てた。ピーチの豊満な胸の感触と心臓の鼓動が、魔王に伝わってくると、魔王は思わずニヤニヤスケベ顔を浮かべた。そんな魔王の身体に、ポトポト雫が当たった。魔王は雨でも降って来たのかと体勢を変えて上を向くと、そこには大粒の涙を流したピーチの顔があった。魔王はそんなピーチを見て呆然としていると、

 

「魔王・・・私達を、私達の町を・・・守ってくれてありがとう」

 

「カゲェェェ」

 

 魔王は、涙交じりに自分に礼を言うピーチを見て、純粋な心で美しいと思い、心の底から自分が役に立てて良かったと思った。ブラックはそんな二人の交流を、目を細めて見守って居たが、突然何かを思い出したように、

 

「アッ!?色々あって言いそびれてたけど、アン王女は魔法界に残って魔法の修行をするって言ってたよ。リコちゃんもみんなによろしくだってさ」

 

『魔法!?』

 

 ブラックの話を聞き、一同は頭を傾げた。魔法つかいであるリコは兎も角、何故魔法つかいでも無いアン王女が魔法の修行をしようとしているのか分からなかった。ホワイトは、一同のそんな空気を察し、

 

「魔法界に行ったアン王女は、杖の木から魔法の杖を授けられたの、魔法界出身のキュアマジシャンの血を受け継いだアン王女だから、杖の木に認められたんだと思う。おそらくアン王女は、自由にエースになれない現状を考え、魔法で私達をサポート出来ればと考えたんじゃないかしら?」

 

「ソード、そういう事だから寂しいかも知れないけど・・・」

 

「アン王女が・・・分かりました」

 

 ブラックは、ソードの左肩に手を置き優しく励ますと、ソードは小さく頷いた。パルミエ王国から戻って来たシロップは、ココとナッツを連れて戻って来た。シロップから降りた二人の目には、元気に飛び回る魔王が映った。ココとナッツは、唖然としながらシロップを見ると、

 

「シロップ・・・魔王は元気そうココ?」

 

「どういう事ナツ!?」

 

「アレェ!?いや、確かにあの時は魔王が・・・!?」

 

 ココ、ナッツ、シロップは、何時もと変わらない魔王を見て目を点にするのだった。

 

「みんな、集まって!」

 

 パッションは、カインが作り出した魔界へと続く歪みの前で一同を呼んだ。一同は何事かとパッションに視線を集中させると、

 

「さあ、今度はこちらの番よ・・・魔界に行きましょう!」

 

「エッ!?まだ魔界に行く五人を決めてないよ?」

 

 パッションの提案に、パインが驚きながら声を掛けた。パッションは口元に笑みを浮かべ、

 

「その必要は無いわ。カインがわざわざ魔界へと繋げてくれたなら・・・それを利用させてもらう。アカルンを使えば、人数制限何て関係無いわ」

 

「そっかぁ!」

 

 パッションの閃きに、ピーチも納得顔で頷いた。プリキュア達も、妖精達も、ブルーもパッションの側に集まった。魔王は少し目を吊り上げ、

 

「当然俺も行くカゲ!」

 

 妖精達の中で、魔王が真っ先に魔界に行く事を宣言した。エーテルダークネスを放ったのが、魔界に居るカインだと知った魔王は、プリキュア達や四つ葉町を、窮地に追い込んだ張本人のカインに怒っていた。ココとナッツ、シロップ、シフォンとタルト、シプレ、コフレ、ポプリ、フェアリートーン達、キャンディ、エンエンとグレルも、プリキュアと共に魔界に行くと伝えた。ホワイトは、先程のブルーの言葉を思い出し、

 

「でも、神様が言う様に、何かの罠かも知れない、何人かは此処に残った方が良いわ」

 

 ホワイトの言葉も最もだった。自分達が全員魔界に出掛けた隙を付き、カインが四つ葉町を再び襲う事も考えられるのだから、一同は話し合いの結果、ソードとダークプリキュア5の六人と、もしもに備えシロップがクローバータウンストリートに残る事となった。ブルーは、ビートにも渡したペンダント形の通信アイテムをブラックに手渡すと、

 

「ビートにも渡して置いたけど、何かあったらこれで連絡して欲しい」

 

「分かりました。何かあったら連絡を入れます」

 

 ブラックは、ブルーから渡されたアイテムを首に掛けた。ソードは心配そうに、

 

「みんな・・・気を付けて下さい」

 

 ソードの心は不安だったが、ピーチは力強く頷き、

 

「ウン!ソード、ダ-クプリキュア5、私達が留守中、四つ葉町をお願い」

 

「ハイ!」

 

 ピーチはそう言いながら右手を差し出すと、最初にソードと握手した。

 

「エエ、あなた達の留守中は、私達がこの町を守るわ」

 

「あんた達こそ気を付けて」

 

「魔界がどんな所か分からないしね」

 

「みんな、油断しないでね」

 

「何かあったら知らせて・・・ドリーム、みんな、必ずまた会いましょう」

 

 ピーチは、ダークミント、ダークルージュ、ダークレモネード、ダークアクア、そしてダークドリームと順番に握手をしてクローバータウンストリートを託した。パッションは、先にカインが作り出した魔界へと続く歪みの中に入ると、

 

「じゃあ、行くわよ!・・・魔界へ!!」

 

 パッションがそう言うと、一同の身体が赤く発光し、魔界目掛けこの場所から消え去った。

 

「みんな、必ず帰って来てね」

 

 ソードは、一同が立っていた場所を、名残惜しそうに見つめて居た・・・

 

           第十一章:プリキュアと魔界の戦士達

                   完

 




 第百二十八話投稿しました。
 入院中に下書きは終わってたので、思ってたより早く清書が出来ました。

 HUG・・・
 さあや良いっすねぇ!
 子供さあやは可愛いし、天使描写も美少女感溢れてました。何気にママンも超美人だし、パパンも優しくて良い人そうでしたね。
 そして、ルールー初出撃と盛りだくさんな内容でした。ルールーは計算キャラだと再認識させてくれました。此処から計算以上の力を出すプリキュア達に興味持つんでしょうねぇ・・・
 そして・・・秋映画にHUGと初代のコラボ映画、正式に発表来ましたねぇ!薄々予想はしていましたが、どんな映画になるか今から楽しみです
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