1、パインと子竜
魔界にやって来た一同は、魔界の予言者を名乗るモグロスと出会い、その最中、ベリー、ブロッサム、マリン、レモネード、メロディ、ピース、マーチの七人は、魔界の魔物で、イソギンチャクに似たインチャックに丸飲みされた影響で、魔界シンドロームに掛かった。モグロスから癒しの泉に七人を浸からせれば、魔界シンドロームが治ると言われたプリキュア達は、七人を元に戻す為、癒しの泉目指して歩いて居た・・・
「ハァ・・・何か中々距離が縮まらないよねぇ?」
ブラックは、背中にブロッサムを背負いながら、中々癒しの泉に近付かないのを愚痴った。視界に移るのは、何処かおぞましい魔界の植物達だらけで、先程現れたインチャックのように、突然攻撃してくるかも知れない緊張感で、何時もより疲労して居た。
「見える景色は何か不気味な植物ばかり・・・嫌になってくるよねぇ?」
「フフフ、ブラック、めげない、めげない、最初に出発した場所より、大分近づいて来たよ」
愚痴るブラックを励ますように、マリンを背中に背負ったホワイトがブラックを励ました。ホワイトが言って居るように、出発した時に見えた癒しの大樹の姿が、徐々に間近の木々に遮られ、見えにくくなって来ているのは、癒しの泉に近付いて居る事を意味して居た。そんな中パインは、何処からか鳴き声が聞こえた気がして、思わずその場に立ち止まった。
「みんな、ちょっと待って!」
「パイン、どうかしたの?」
「何か気になる事でもあるの?」
イーグレットとミューズに聞かれたパインは、小さく頷くと周囲を見渡した。パインは声が聞こえて来た草むらを掻き分けると、額から角を生やし、緑色した肌を持つ小さな三匹の小鬼が、何かを囲んで虐めている姿が目に入った。パインは思わず顔を顰め、
「虐めちゃダメでしょう?・・・・・メッ!」
パインが小鬼を叱ると、パインに気付いた小鬼達は、慌てて何処かに逃げ去った。パインは、小鬼達に石を乗せられてもがいている黒いトカゲのような生き物から石を取り除いて上げた。トカゲはもがきながら体勢を立て直すも、パインを警戒しているようだった。パインはキルンを呼び出すと、トカゲのような生き物に話し掛けた。
「大丈夫!?私はキュアパイン!あなたを虐めていた虐めっ子達は逃げちゃったから、もう大丈夫だよ」
パインはそう言うと、トカゲのような生き物にニッコリ微笑んだ。右手の人差し指を近づけると、トカゲのような生き物は最初こそ警戒して居たものの、甘えるようにパインの人差し指に身体を摺り寄せた。
「助けてくれてありがとう、僕はダークドラゴン!この前生まれたばかりなんだぁ」
「エェェ!?ダークドラゴンちゃん?」
「ウン、そうだよ!それがどうかした?それと・・・僕ドラゴンだから、人の言葉が分かるし、人間語も話せるよ」
「そ、そうなの!?」
パインは思わず驚いた・・・
何故ならダークドラゴンは、魔界に迷い込んだバッドエンドピースをアベルから庇い、その命を失ったと聞かされていたのだから・・・
「ね、ねぇ、ひょっとしてあなたのお父さんって、同じ名前のドラゴンさん?」
「ウ~ン・・・僕は良く分からないや、バハムートなら何か知ってるかも知れないけど・・・そうだ!ねぇ、バハムートを見なかった?」
ダークドラゴンの赤ちゃんは、竜王バハムートの名前までも出したのだから、パインは再び驚いた。だが、ダークドラゴンはバハムートと逸れたようで、パインは動揺させまいと平静さを装った。
「私達は見なかったよ。そう・・・逸れちゃったのね?」
「ウン、バハムートを探して森の中を彷徨ってたら、三匹の小鬼が僕に悪戯してきたんだぁ」
「そうだったの・・・じゃあ、私達と一緒に行かない?私達、癒しの泉に行く所何だけど、もしかしたら途中でバハムートさんに会えるかも知れないよ?」
「エッ!?パインは癒しの泉に行くの?僕とバハムートも癒しの泉に行く所だったんだぁ・・・バハムートが、場所を覚えて置くと良いって連れて来てくれたんだけどさぁ、エへへ、鳥に夢中になっちゃって、真似して羽ばたいたら、僕まだ飛べない事すっかり忘れちゃって落っこちちゃった。僕もパインと一緒に行くよ!もしかしたら癒しの泉に、バハムートが居るかもしれないし・・・」
パインに誘われたダークドラゴンは、パインと一緒に行く事に同意をし、パインの右手の人差し指を駆け上がり、腕、肩を通ってパインの胸元を這うと、パインの胸の谷間に身体を入れて、もがく様に態勢を変えて顔を出した。パインは顔を赤らめて恥ずかしそうにしながら、
「そこに居ても良いけど・・・あんまり動いちゃ駄目だよ?くすぐったいから」
「フ~ン・・・分かったよ」
ダークドラゴンは頷き、パインは仲間達の下へと戻った。パインからダークドラゴンの事を聞き、ブラックは、パインの胸の谷間から顔を出した、ダークドラゴンに顔を近づけた。
「この子・・・バッドエンドピースを庇って亡くなった、ダークドラゴンの赤ちゃんなのかなぁ?」
「さあ!?この子にもよく分からないみたいだよ」
パインは首を傾げ、ブラックもそれ以上聞く事を止めた。ブラックはダークドランゴンに笑顔で話し掛け、
「そっかぁ・・・何はともあれよろしくね」
「ウン、よろしくね」
「エッ!?りゅ、竜が人間の言葉を喋った?」
「そりゃあドラゴンだもん、喋るよ」
ダークドラゴンが当たり前のように人語を話し、ブラックは変顔浮かべながらホワイトに話し掛けた。
「ホワイト・・・竜って喋るの?」
「私に聞かれても・・・困るけど」
ホワイトも困惑顔を浮かべ、パインは苦笑した。こうして一行は、魔界で出会ったダークドラゴンの赤ちゃんを連れ、再び癒しの泉目掛け歩き出した。途中で何度か魔物達に遭遇したものの、何故か魔物達は逃げるように去って行った。ホワイトは眉をしかめ、
「何か妙ね?」
「ウチらにビビってるんとちゃうの?」
「なら良いけど・・・油断はしない方が良いわよ」
サニーが右腕で力こぶを作りながらニンマリ笑うも、ブライトはそんなサニーを窘めた。
双児宮・・・
アベルの下に、続々と配下の魔物達から連絡が入って居た・・・
「何だと!?プリキュアが大人数で魔界に乗り込んで来ただと?」
「ハ、ハイ・・・奴らは癒しの泉の方向に向かっているとか・・・如何致しましょう?」
「知れた事、オメオメ魔界に乗り込んで来た事を、この俺自ら後悔させるまでよ」
アベルは、自ら出向いてプリキュアを迎え撃つべく、出撃しようとしていると、カインからのテレパシーがアベルに届いた。
(待て、アベル)
(カインか・・・まさか、プリキュアを魔界に誘き寄せたのはお前か?)
(フッ、その通りだ!エーテルダークネスで消滅させてやろうと思ったのだが、奴ら意外としぶとくてなぁ・・・魔界に五人程招待してやった。奴らをこの十二の魔宮に誘き寄せ・・・)
(五人!?待て、カイン!一体何を言っている?プリキュア共は、数十人の群れでこの魔界に乗り込んで来たと、我らの配下の者達から、次々と連絡が入って居るのだぞ)
(何!?)
このアベルの報告には、さしものカインも驚きの声を発した。数人のプリキュアを魔界に誘き寄せ、この十二の魔宮に連れて来て、ルーシェスが施した封印を解く事に利用しようとして居たカインであったが、その目論見を、プリキュア達に逆に逆手に取られた事を知った。
(成程・・・奴らの中にも中々の知恵者が居るようだなぁ)
(感心している場合じゃないぞ、カイン!数十人ものプリキュア達を、この魔宮に近づけさせるのは不味い)
(そうだな・・・で、プリキュア共は今何処に居るのだ?)
(今入った情報によれば、奴らは癒しの泉に向かっているようだ)
(ほう、それは意外だったなぁ。直ぐにこの魔宮に乗り込んで来ると思ったが・・・そうか、癒しの泉か・・・クククク)
カインは、プリキュア達が癒しの泉に向かって居ると知り、含み笑いを浮かべた。カインは、頭の中で癒しの泉周辺の情報を整理すると、
(アベル、配下の者達に奴らをオークの森に誘導するように指示を出せ!見事オークの森にプリキュア共を誘い出した者には、褒賞を与えると伝えれば、妖精共も協力するだろう)
(オークの森だと!?そう易々あいつらが上手く引っ掛かるか?)
アベルには、カインを出し抜いた程の知恵者が居るプリキュア達が、カインが言って居るように、オークの森にむざむざ迷い込むとは思えなかった。カインは含み笑いをしながら、
(クククク、奴らは魔界の地理に詳しくない。きっと奴らの方から痺れを切らして、魔界の者に接触を試みる筈だ。それを利用すれば、奴らは自らオークの森に赴く事になる。いかに奴らでも、オークの大群を前に何れは力尽き、奴らの慰め者になる。そこに数人のプリキュア共に助け舟を出してやれば、心が折れた奴らを屈服させるのも容易い)
(ほう・・・まあ良いだろう、直ぐにそう手配する)
カインの提案にアベルも同意し、アベルは、配下の魔物達にプリキュア達をオークの森に誘導するように手配した。
2、癒しの泉
そんなカインとアベルの暗躍が、自分達の身に迫って居る事を知らない一行は、更に癒しの泉目指して歩を進めると、ようやく開けた場所に出た。大きな池のような場所からは、こんこんと湯気が沸き起こり、その池のような中心に、巨大な大樹が聳え立っていた。一行は大樹を凝視すると、大樹からは止め処なく水が流れて居て、此処が目的地である癒しの泉であると理解した。ドリームは癒しの泉に近付くと、右手を癒しの泉の中に入れてみた。まるで温泉の中に手を入れた様な心地良さで、ドリームは目を見開いて驚き、
「ウワァァ!?みんな、この泉、温泉みたいだよ?湯加減もちょうど良いし」
『温泉!?』
ドリームからの報告を聞き、一同は思わず驚きの声を発した。癒しの泉が温泉だったとは、モグロスは一言も言って居なかった。ルージュとリズムが泉に手を入れてみると、
「確かにドリームの言う通りだね・・・泉に入れた手が、何かスベスベするわ」
「エエ・・・温泉のようだし、確かにあのモグロスっていう人の言う通り、メロディ達を元に戻す効果がありそうな感じね」
「じゃあ、此処が癒しの泉で間違いなさそうだね」
ドリーム、ルージュ、リズムの報告を聞いたブラックは、目的地の癒しの泉に着いた事で、ホッと安堵した表情を浮かべた。周囲を見渡して見るも、自分達以外に人影も見えないようだった。ブラックは安堵して、
「フゥ・・・取り敢えずブロッサム達を下ろそう」
さすがに七人を運びながら歩いて来て疲れたのか、ブラック達はベリー達七人を下ろした。ホワイトとムーンライトは、癒しの泉の深さを確認するように、そのまま癒しの泉の中へと入って行った。一歩一歩用心しながら周囲の深さを探る二人だったが、全員が入っても大丈夫な範囲は、膝ぐらいまでの深さで、正に露天風呂に入って居る感じだった。ホワイトは一同に微笑みながら、
「どうやら深さも問題ないみたいよ」
「後数人泉の中に入って来て、私達がベリー達を受け止めるから」
ムーンライトに呼ばれ、ブラック、ブルーム、ルージュ、アクア、ピーチが癒しの泉の中に入り、その他のメンバーがベリー達を抱えて癒しの泉まで運び、ゆっくりとブラック達と共に泉の中へと入って行った。ベリー達の背中を支えて座らせると、ゆっくり七人の頭の上から癒しの泉を掛けた。すると、魔界怖いと呪文のように呟いていた七人が、次第にほのぼのした表情になり、呟くのを止めて行った。ルミナスは効果を実感し、
「何だか、癒しの泉に入った効果が、早速出ているみたいですね?」
「ウン、何だか段々幸せそうな表情になってるよね」
ルミナスの言葉にミューズも同意した。ローズはやれやれと言った表情で、
「此処まで七人を運んで来たんだもの、効果が無かったらくたびれ損だったわ」
「そうね・・・見て、ベリー達の表情が・・・」
パッションが七人を指さすと、一同も七人を見つめた。七人の表情が、見る見る気持ちよさそうな顔付きになっていった。マリンは生きかえったかのように顔を何度もバシャバシャ洗い、
「プハァ!最高!!」
「本当ですねぇ、何だか温泉に入っているみたいです」
マリンとブロッサムが、幸せそうな表情でくつろぎ、ベリーも両腕を上げて伸びをし、
「ウ~~ン!身体に残っていた生臭さもほとんど消えて、気分爽快って感じよねぇ?」
「本当、本当、いやぁ温泉何て久しぶりぃ」
「フ~、生きかえりますよねぇ」
ベリーの言葉に、メロディとレモネードも同意して癒しの泉を満喫した。ピースはマーチとお湯の掛けっこをしてハシャギ、
「それぇ!エへへ、温泉最高!」
「やったねぇ・・・それぇぇ!」
「「「「「「「気持ち良いぃぃぃぃ!」」」」」」」
七人が癒しの泉を満喫している姿を見た一同、ブライトとウィンディは少し呆気にとられ、
「あなた達・・・呑気なものね?さっきまでと大違い」
「本当、さっきまでとは別人のようね」
「ほな、ウチも癒し泉を満喫しよかぁ・・・それぇ!」
サニーはそう言うと、仲間達に癒しの泉を掛けてはしゃいだ。ブラックやブルーム、ドリームやピーチ、ハッピー達も仲間に加わり、一同で癒しの泉の掛けっこが始まり、一同の衣装が水浸しになっていった。パインの胸の谷間から、そんなプリキュア達を見ていたダークドラゴンは、泉の岸辺に真っ赤な花が咲いているのを見つけた。
「ねぇパイン、その花から暖かい風が出て無いかなぁ?」
「エッ!?・・・本当だ、近付くと暖かいかも」
パインは赤い花に近付くと、ダークドラゴンが言う様に、赤い花から暖かい風が発せられて居た。
「みんな、濡れた服は、あの花の前で乾かすと良いよ。バハムートに聞いたんだけど、あの花は温花って言って、よく分からないけど、地面の熱を体内に取り込んで、暖かい風を吐き出すんだってさぁ」
「そうなの?でも、本当の温泉に入って居る訳じゃ無いし、服を脱いで入るのはちょっと・・・此処は魔界だから、用心しないと・・・」
パインがそう言い掛けて、一同に同意するように視線を向けると、ベリーは何時の間にか衣装を脱いでいて、岸に脱いだ衣装を置いてリラックスして居た。そんなベリーを見て、パインの目が思わず点になった。パインは困惑気味に、
「ベリー・・・」
「大丈夫、大丈夫、それにあの怪物の中に居た時、粘液で身体中ベタベタになって生臭くて気持ち悪かったし、衣装の下もキレイにしなきゃねぇ」
「そ、そう・・・」
ベリーはそう言うとパインにウインクし、パインはただ苦笑するのみだった。マリンもベリーの言葉に同意し、泉の中で衣装を脱ぐと、
「そうそう!コフレ、あんたあたしの衣装乾かしといてよ」
「エェェェ!?な、何でボクがそんな事をしないとならないですかぁ?全く、マリンはパートナーを何だと思ってるですっ?」
マリンはコフレを呼ぶと、コフレ目掛け脱いだ衣装を投げた。コフレは反射的にマリンの衣装を手に取り、ハッとしたように文句を言うも、マリンが言う通り渋々ながら、温花の前にマリンの衣装を並べた。それを見ていたシプレは、ブロッサムの前に進んで移動すると、
「ブロッサム、ブロッサムの衣装も乾かすですぅ」
「シプレ、良いんですかぁ?・・・・・ありがとうシプレ、じゃあすいません、お願いします」
「ハイですぅ」
シプレはニコニコしながらブロッサムが脱いだ衣装を手に取り岸に移動し、ついでに置いてあったベリーの衣装も手に取って温花の前に並べた。
「シプレ、あたしの衣装まで乾かしてもらってありがとう」
「どう致しましてですぅ」
渋々マリンの衣装を並べるコフレと、進んでブロッサムとベリーの衣装を並べるシプレを見ていたポプリとキャンディも、二人の真似をしようとサンシャインとハッピー達の服を乾かそうとした。
「マーチ達の衣装はキャンディが乾かすクルゥ」
「エェェ、それじゃキャンディに悪いよ」
「ウゥゥ・・・キャンディもお手伝いしたいクルゥゥゥ!」
マーチは遠慮するも、褒められたいキャンディは頬を膨らませて手伝いと騒ぎ、マーチはピースと共に、申し訳なさそうにキャンディに衣装を手渡した。
「ゴメンねぇ・・・じゃあお願い、キャンディ」
「ありがとう、キャンディ」
「クゥゥルゥ」
キャンディは役に立てた嬉しさで満面の笑みを浮かべ、温花の前に移動した。ポプリもサンシャインに衣装を乾かしたいと進言するも、サンシャインは戸惑いながら岸まで上がり、ポプリの頭を撫でると、
「ポプリ・・・気持ちだけ受け取っておくよ」
「イヤでしゅ!イヤでしゅ!ポプリは、サンシャインの役に立ちたいでしゅぅぅ!!」
「ポプリ・・・分かった!」
サンシャインは、ポプリのいじらしさに目をウルウルさせると、その場で衣装を脱ぎ始めた。ドリーム、ミント、ピーチは、慌てて岸に上がると、ドリームはココの目を、ミントはナッツの目を、ピーチはタルトの目を両手で隠し、ミューズはコフレの目を塞いだ。シフォンは、そんな一同を見て楽しそうに見えたのかハシャギ出し、
「キュアキュア~プリプ~!!」
『エッ!?エェェェ?キャァァァァァァァァァ!』
シフォンの両耳がピクピク動くと、衣装を着ていたプリキュア達は宙に浮かび上がると、一同の衣装はまるで意識を持って居るかのように、一同の身体を離れ、温花の前に並べられた。衣装を剥ぎ取られると、一同はそのまま恥ずかしそうに癒しの泉の中に飛び込み、顔を赤らめた。ココとナッツは、慌てて人間姿に変化すると、ココはメップルとフラッピとコフレを、ナッツはタルトとエンエン、グレルを両脇に抱え、逃げるように慌ててその場を離れた。ピーチは恥ずかしそうにシフォンを見つめ、
「もう、シフォン!こんな悪戯しちゃ、メッでしょう?」
「キュア~!」
ピーチに注意されるも、シフォンは嬉しそうにハシャギ、パッションは溜息を付くと、
「ハァ・・・此処に魔王が居なかったのだけは、不幸中の幸いね」
『確かに』
パッションの言葉に、その場に居たプリキュア達が全員同意して頷いた。ブラックは、泉で顔を洗うと、気持ち良さそうにホワイトに話し掛け、
「でも、何だかんだで、本当に良い湯加減だよねぇ?」
「そうね・・・本当にみんなで温泉に来たような感じだね」
「ハイ!みんなと温泉に来た気分になれる何て思ってもみませんでした」
ホワイトの言葉にルミナスも同意した。ブロッサムとマリンは、ピーチ、ベリー、パイン、パッションを凝視し、四人も二人の視線に気づいた。ピーチは困惑気味に二人に声を掛け、
「ブロッサム、マリン、どうしたの!?」
「「羨ましい・・・」」
ブロッサムとマリンは、同じような表情でジィとピーチ達四人の胸を見てポツリと呟いた。ピーチ達は困惑の表情を浮かべ、
「「「「ハァ!?」」」」
「その浮いてるお胸が、羨ましいですぅぅぅ」
「あたし達も、そんなの体験してみたぁい!」
((((また胸の話!?))))
ブロッサムとマリンは、自分の胸を触ってトホホ顔を浮かべ、ピーチ達は胸の話題が出た事で、さりげなく浮いていた胸を泉の中に沈め、ダークドラゴンはパインの頭の上に移動して、癒しの泉を満喫した。ドリームも気持ち良さそうに両手を組んで伸びをすると、
「ウ~ン!こうしてると、加音町のスーパー銭湯にみんなで入った時や、この間のプリキュア合宿でもみんなと入ったけど、露天風呂は初めてだから新鮮で気持ち良いよねぇ?」
ドリームの言葉にムーンライトも小さく頷き、
「確かに、戦い続きで疲れた身体を癒されたみたいね。でも・・・私達が魔界に来た理由を、みんな忘れて無いわよねぇ?ベリー達も元に戻ったし、そうゆっくりも出来ないわよ?」
『ウン』
ムーンライトの言葉に一同が頷いたその時、突然大きな波でも起きたように、一同の身体が大きく揺らいだ。泉の反対側の方で、巨大な何かが泉の中からゆっくり姿を現そうとして居た。衣装を脱いでいたプリキュア達は、皆困惑顔で様子を窺って居ると、泉の中から巨大な白い竜が姿を現した。
3、プリキュアとバハムート
反対側は深いのか、予想だにしない突如現れた巨大な白い竜を前に、衣服を着て居ないプリキュア達は思わず悲鳴を上げた。
『キャァァァァァァ!』
プリキュア達の悲鳴を聞いた人間姿のココとナッツは、表情を険しくして思わず顔を見合わせた。
「今の声は!?」
「みんなに何かあったんじゃ?行ってみよう!」
ココとナッツは、プリキュア達の身に何か起こったと思うと、顔色変えて戻って来た。
「みんな、どうしたんだ?」
「悲鳴を上げて、何かあったのか?」
人間姿のココとナッツに続き、タルト、メップル、フラッピ、コフレ、グレルとエンエンが駆け付けた。それを見た瞬間、プリキュア達は再び叫び、
『キャァァァ!エッチィィィ!!』
プリキュア達は、やって来たココ達の姿を見て恥ずかしそうに身体を隠し、ココ達は顔を赤くして狼狽えて居ると、巨大な白い竜はギロリとそんな一行を睨み付けた。
「うるさいぞぉぉ!貴様らぁぁぁ!!」
巨大な白い竜の一喝を受け、思わずプリキュア達は静まり返り、ココとナッツは驚いた拍子に妖精姿に戻り、右往左往しながらパニクった。白い竜は、更にそんなココ達を見て一喝し、
「うるさいと言って居るだろう!小童共ぉぉぉぉ!!」
白い竜の迫力ある一喝を受け、ココ達妖精は、思わず金縛りにあったように硬直して、シンと静まり返った。白い竜は不快そうに、
「此処は、聖なる恵みの地・・・騒ぎ立てるとは何事だぁ!この愚か者共ぉぉぉ!!」
『ゴ、ゴメンなさい・・・』
白い竜に怒られ、確かに白い竜に何をされた訳でもないのに、自分達が騒いで居た事に非があると思った一行は、素直に白い竜に頭を下げて謝った。ダークドラゴンは、白い竜を見ると目を輝かせ、
「ワァァ!やっぱりバハムートだぁ!」
『エッ!?バハムート?』
プリキュア達は、パインの頭の上で喜ぶダークドラゴンが発した、バハムートと言う名と、ゆっくり近づいて来るバハムートの姿に、プリキュア達は驚愕した。ブルーの話やシーレインから魔界に付いて話を聞いた時、竜王バハムートの名は何度か聞いて居た。こうして目の前で目の当たりにすると、その迫力はかなりのものだった。古からの戦いを現すかのように、その身体は傷だらけで、口の上の角は途中で折れていた。近づいて来たバハムートは、ダークドラゴンを見ると目を細め、
「オォォ、何処に行ったかと思ったら、此処に居ったのか?」
「ウン!バハムートと逸れた後、三匹の小鬼に虐められて居たのを、パイン達に助けられたんだぁ」
「何!?」
バハムートは、ダークドラゴンの話を聞いて居ると、パイン達に助けられたと聞き、プリキュア達をジロリと見つめ、一人一人見ていった。衣装を着て居ないプリキュア達は、そんなバハムートの視線を受け、恥ずかしそうに泉の中に身体を隠しながらバハムートを見つめ返した。バハムートは、プリキュア達を見ていく内に、次第に穏やかな表情を浮かべた。
「成程・・・精霊にしては光の力が強いとは思って居た。お前達を見ていると、この角を与えたキュアマジシャンの事を思い出す。それに、何処と無くキュアマジシャンと同じ力を感じる」
「ハイ!私達は、キュアマジシャンと同じプリキュアと言う者です」
バハムートの話を聞いて居たホワイトは、正直に自分達がプリキュアである事を伝えた。
「ほう、あのキュアマジシャンと同じか・・・」
バハムートは、目の前に居る少女達がプリキュアだと知り、懐かしそうに目を細めた。一万年前、大いなる闇によって世界が闇に沈んだ事を愁い、魔法界から魔界に居る竜王バハムートに協力を求めに来たキュアマジシャンを、バハムートはメランのようにその力を試し、マジシャンの諦めない不屈の思いを認め、自らの角を折り、マジシャンに与えたのが、光の槍とも言われるミラクルドラゴングレイブだった。マジシャンは、バハムートに感謝を述べ、魔法界に戻り、大いなる闇の配下を蹴散らして魔法界に光を取り戻した。
「確か、大いなる闇と言う者と決着を付けると、人間界に赴く前にあったのが最後だったか・・・」
「ハイ・・・キュアマジシャンは、仲間達と共に、見事に大いなる闇を封じたのですが、大いなる闇の呪いを受け、数年後に亡くなったそうです」
「そうか・・・」
ホワイトの話を聞いたバハムートは、マジシャンを偲ぶように目を閉じた。その行為は、亡き戦友を偲んで黙祷しているようにプリキュア達には見え、バハムートの優しい人柄が伝わって来た。バハムートは再び目を開くと、
「だが、そのキュアマジシャンと同じプリキュアが、一体魔界に何をしに来たのだ?」
「実は・・・」
一同を代表し、ムーンライトがバハムートに魔界に来た理由の説明を始めた・・・
自分達の住む世界を、何度も危険な目に合わせ、四つ葉町に再び破滅の光エーテルダークネスで攻撃しようと企むカインの陰謀を阻む為にやって来た事を伝えた。バハムートは思わず唸り、
「ウ~~ム・・・カイン、ゼガンの亡霊がなぁ・・・あやつの事だ、何か企んで居るのは間違いないだろう」
「ハイ!ですが、先に魔界に来てる私達の仲間に、協力してくれている魔界の人も居るんです。シーレイン、ニクス、リリス、ベレル」
「それに、モグロス・・・って人は、何か私達をからかっているようだったけど」
メロディの話に続き、ブラックは変顔浮かべながらモグロスの事を伝えた。バハムートはモグロスの名を聞いて驚き、
「シーレインやベレルならば、然もあらんとは思ったが、あのモグロスまでもがなぁ・・・あやつが興味を持つのは・・・人の心!お前達の心に、何か興味を覚えたのかも知れんなぁ」
「だから、私達に協力してくれたと?」
モグロスの顔を思い描くと、ブラックはどうも変顔を浮かべてしまった。人を小馬鹿にしたような仕草や喋り方、だが、自分達に癒しの泉の情報を与えてくれたのは確かだった。ブラックの言葉にバハムートは首を捻り、
「あいつの事だ、協力と言っても・・・まあいい、お前達が魔界に来た理由は分かった。ダークドラゴンの件、我からも礼を言わせてもらおう」
「い、いえ」
パインは、緊張の面持ちで謙遜した。ブラックはバハムートに話し掛け、
「アッ!?一つ聞いても良いですか?」
「何だ!?」
「その子、アベルと戦って亡くなった、ダークドラゴンの赤ちゃん何ですか?」
「何!?アベルとの戦いで奴は・・・そうか、それは知らなかった」
「ダークドラゴンは・・・」
ブラックは、簡潔ながら自分がバッドエンドプリキュア達から聞いた話を、バハムートに伝えた。アベルとの戦いの最中、魔界に迷い込んだバッドエンドピースを庇ってその命を落とし、肉体を失った後も、その魂は彼女達と共にあると知らせた。
「そうか、あのワイバーンがなぁ・・・」
バハムートは、先代ダークドラゴンといがみ合って居たと言われるも、当のバハムートと先代ダークドラゴンであるワイバーンは、互いに実力を認め合って居た。ワイバーンが群れを離れたのは、竜王の称号は、バハムートこそ相応しいと考えて居たからだった。事実魔界を支配しようと目論む先代魔王ゼガンが、巨人族を従えて竜族に攻撃を仕掛けて来た時には、ワイバーンはバハムートに協力して、ゼガン達と戦って居た。
(魂になっても、認めた者の為に戦うとは・・・貴様らしいなぁ)
バハムートは目を瞑り、魔界大戦で先代ダークドラゴンのワイバーンと共に、ゼガン達と戦った事を思い出し、哀悼の意を心の中で捧げた。目を開けたバハムートは、ブラックを見つめながら、
「先程の質問の答えならば、我ら竜族は、光、闇、炎、氷、風、岩、水の属性のどれかを持ってこの世に生まれて来る。魔法界に住むアイスドラゴンのような例外も居るが、我らは基本一属性に付き、一体のドラゴンがその能力を持って生れ出る。その竜が亡くなった時に、新たなる竜がこの世に生を受ける。このダークドラゴンは、先代のダークドラゴンであるワイバーンが亡くなった為に、この世に生まれ出た」
「そうだったんですか・・・」
バハムートから、竜族の事を聞いたブラックは、少し愁いを帯びた表情で俯いた。だが、長い時間泉の中で身体を浸からせていた影響で次第にのぼせて来た。バハムートとダークドラゴンは不思議そうにプリキュア達を見て首を傾げ、
「どうした!?顔が真っ赤だぞ?」
「ちょ、ちょっと泉に浸かり過ぎてのぼせて来て・・・」
「ならば泉から出れば良いだろう?」
「エェェ!?無理です!だって私達裸何です!!」
パインは恥ずかしそうにしながら、バハムートとダークドラゴンに今の自分達の現状を伝えると、ダークドラゴンは再び首を傾げ、
「エェェ!?僕達も裸だよ?別に服何か着なくても平気だよ」
『平気じゃないの!』
プリキュア達は、困惑気味にダークドラゴンに説明を始めたものの、ダークドラゴンは理解したのかしないのか、何度も首を傾げ、バハムートはそんな一同のやり取りを見て笑い出した。
「ハハハハ、ダークドラゴンよ、人間には我らに理解出来ぬ事もあるのだ。我らはそろそろ退散しよう」
バハムートの言葉にダークドラゴンは頷き、パインを見つめると、
「じゃあ、僕は行くよ。パイン、プリキュアのみんな、此処まで連れて来てくれてありがとう」
「ウン!ダークドラゴンちゃんも元気でね?」
パインとの別れを済ましたダークドラゴンは、バハムートの口を駆け上がり、折れた角に小さな手でしがみ付くと、
「バイバイ、プリキュア!」
「ダークドラゴンを世話してくれた借り・・・必ず返す!さらばだ、プリキュア達よ!!」
バハムートは、そうプリキュア達に告げると、背中に生えた大きな翼を羽ばたかせて大空へと舞った。プリキュア達は、飛び立ったバハムートの姿を、目に焼き付けるかのように手を振り続けた。
「ねぇバハムート、パイン達大丈夫かなぁ!?」
「ン!?確かカインの野望を阻止すると言って居たな・・・案ずるな、あの小娘共なら大丈夫だ!それに、いざとなれば・・・」
バハムートは、プリキュア達を心配するダークドラゴンを安心させるように微笑んだ。
ダークドラゴンとバハムートと別れたプリキュア達は、再びココ達を遠ざけ、乾いた衣装を身に纏い、カインが居る十二の魔宮目指して歩き出した。
第百三十話:竜王バハムート
完
第百三十話投稿致しました。
今回はプリキュアと竜王バハムートとの出会いを、パインとダークドラゴンの触れ合いを交えて書いてみました。
HUG・・・はなが、自分だけ新たな未来クリスタル無い事に動揺する姿見てると、フレッシュのベリーを思い出しました。来週新アイテムのメロディソード(もう販促CM二回流れてましたけど)登場するわ、ルールーも出撃しそうで楽しみです。