プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第百三十四話:十二の魔宮(後編)

1、双児宮・・・キャンディの異変

 

 双児宮の内部を、ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコー、そしてキャンディとグレル、エンエンが駆け続けた。一同には、此処がどこの宮かは分からなかったが、奥から伝わるプレッシャーが、ハッピーに緊張感を持たせた。先頭を走るハッピーの視線の先に、開け放たれた奥の部屋の中から明りが漏れてきた。

 

「みんな、奥の部屋に明かりが点いてるよ」

 

「扉が開いてるっちゅう事は、何時でも来いちゅう訳やな」

 

「何か自信満々だね」

 

「上等!」

 

「油断しないで下さい」

 

「ウン・・・何か嫌な感じがするよね」

 

 ハッピーの声を聞いたサニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーもまた、奥の部屋から漂うプレッシャーを感じて居た。ハッピーは、心に湧き上がって来る不安を払拭するかのように、仲間達に声を掛けた。

 

「みんな、行くよぉぉ!」

 

「「「「「ウン!」」」」」

 

 ハッピーの合図と共に、一同が一気に奥の部屋へと突入した。部屋の中で腕組みしながら待ち構えていたのは、白い軍服を着て、背中まで伸びた銀髪を靡かせた目付きの鋭い男、カインと共に双児宮を守護する者・・・アベル!

 

「あ、あの人は・・・」

 

 ハッピーに更なる緊張が起こっていた。今目の前に居るアベルは、嘗てバッドエンドピースやバッドエンドマーチを翻弄した事があり、その実力の片鱗は、ハッピー達も目の当たりにしていた。アベルは口元をニヤリとさせると、

 

「ここまで来た事は褒めてやろう・・・だが、貴様らは些か調子に乗り過ぎたようだ」

 

 サニーは、そんなアベルをキッと睨み付け、

 

「アンタらが、ウチらにチョッカイ掛けて来たからやろう」

 

「そうだよ、バッドエンドピースに酷い事したし」

 

「バッドエンドプリキュア達の分まで、あたし達が戦う」

 

 サニー、ピース、マーチが、険しい表情でアベルを見つめながら身構えた。エコーは妖精達を見ると、

 

「グレル、エンエン、キャンディ、私達から離れてて」

 

「危険を感じたら、この場を離れて下さい」

 

 ビューティも妖精達を心配して優しい声で囁いた。思わず顔を見合わせたグレルとエンエンは、

 

「オ、オウ・・・エンエン、キャンディ、少し離れてようぜ」

 

「ウ、ウン、みんな、気を付けてね」

 

 グレルとエンエンは、ハッピー達に声を掛け、一同から距離を取るも、キャンディはロイヤルクロックを抱えたまま首を振った。

 

「イヤクル・・・キャンディもみんなと一緒に居るクル」

 

 ハッピーは、キャンディが自分は除け者にされるんじゃないかと思っているのかも知れないと考えた。

 

「キャンディ・・・大丈夫だよ。私達、キャンディを除け者にしようだ何て思って無いから」

 

 ハッピーは、そう言うとキャンディにニッコリ微笑みかけ、直ぐにアベルに険しい表情で向き直った。慌てて戻ってきたグレルとエンエンに両腕を掴まれ、キャンディも少し離れた場所に避難した。それでもキャンディは、不安そうな表情でハッピー達六人を見つめ続けて居た。アベルは、少し口元をニヤリとさせると、

 

「ほう、貴様ら俺に勝つつもりか?」

 

「当たり前やろ!マーチ、行くでぇ!」

 

「了解!」

 

「プリキュア!サニーファイヤー!!」

 

「プリキュア!マーチシュートォォ!!」

 

 サニーは、マーチに話し掛け、同意したマーチと共に、アベルに対して先制攻撃を放った。炎の光球と緑の光球がアベル目掛け飛んで行くも、アベルは左手の人差し指を前に突き出すと、サニーファイヤーとマーチシュートを雷が襲い、雷に触れられた瞬間、二人の技は消滅した。

 

「何やとぉ!?」

 

「掻き消したの!?」

 

「どうした、こんなものかプリキュア?」

 

 思わず動揺するサニーとマーチ目掛け、アベルから二人目掛けて雷が降り注いだ。だが、そんな二人を庇う様にピースが前に出ると、両手でピースサインをするかのように前に突き出し、そのまま頭上に両手を掲げた。まるでピースの人差し指と中指が避雷針になったかのように、サニーとマーチ目掛けて降り注ぐ雷をその身に受けた。

 

「キャァァァ!」

 

「「「「「ピース!」」」」」

 

 心配して声を掛ける仲間達の声を励みに受け、苦悶の表情を浮かべながらも、ピースはその身に浴びた雷を、両手の指先に集中させた。

 

「ま、負けないもん・・・プリキュア!ピース・・・サンダー!!」

 

 アベルの雷をも取り込んだピースサンダーは、何時も以上の力を得て、アベル目掛け炸裂した。

 

「ほう、俺の雷を・・・ならば、こちらも同じ事をしてやろう・・・」

 

 アベルはそう言うと、右手の人差し指を避雷針代わりにして上に掲げ、ピースサンダーを吸収し、アベルの身体から放電が起こり始めた。ピースは驚愕し、

 

「嘘ぉ!?ピースサンダーが吸収されちゃった・・・」

 

 アベルは、口元をニヤリとさせると、

 

「中々の威力だ・・・さあ、自らの攻撃をその身に受けろ!」

 

「アッ!?アァァァ・・・」

 

 アベルの放った特大の雷がピース目掛け飛び、ピースが動揺したその時、ビューティは険しい表情を浮かべるも、直ぐに行動に動いた。

 

「プリキュア!ビューティブリザード・・・フリージング!!」

 

 ビューティは、咄嗟にピースの周辺にビューティブリザードで氷の壁を作った。だが、雷の威力の前に氷の壁を粉々にされるも、何とかピースの窮地を救った。ピースは、ホッと安堵した表情でビューティに話し掛け、

 

「ビューティ・・・あ、ありがとう」

 

「どういたしまして・・・ですが、さすがに手強いですね」

 

「そうだね・・・ねぇ、エコー」

 

「何、ハッピー?」

 

 ハッピーは劣勢の状況を打破するかのように、エコーと何か小声で話し、エコーは軽く頷くと、ハッピーは右に、エコーは左に分かれて走り、同時にアベルに対し横から肉弾攻撃を仕掛けた。

 

「「ヤァァァァ!」」

 

「フン」

 

 アベルは、同時に左右からパンチで攻撃を仕掛けたハッピーとエコーの腕を掴み、そのまま振り回すかのように左右の壁に二人を投げ飛ばすも、ハッピーとエコーは空中で態勢を整えると、

 

「プリキュア!ハッピ~~・・・シャワ~~!!」

 

「プリキュア!ハートフル・エコ~~!!」

 

 空中からアベルに対しハッピーがハッピーシャワーを、エコーがハートフルエコーを放った。アベルは口元をニヤリとさせると、

 

(ククク、良いぞ!これで光の封印も・・・何!?解除されないだとぉ?)

 

 アベルはチラリと奥の扉を見るも、光の輝きが消える事は無かった。アベルは軽く舌打ちすると、

 

「チッ・・・ルーシェスめ、双児宮の光の封印を多重にでもしていたのか?」

 

 スマイルプリキュア達が数々の技を放つも、双児宮に施された光の封印が解除されず、アベルを苛つかせた。

 

「プリキュア共、俺を失望させるなぁぁぁぁ!!」

 

 アベルの身体が光り輝き、ハッピーとエコー目掛け巨大な雷を放った。雷は、ハッピーシャワーとハートフルエコーを掻き消し、ハッピーとエコーは雷をその身に浴びて吹き飛んだ。

 

「「キャァァァァ!」」

 

「「「「ハッピー!エコー!」」」」

 

 仲間達の声を受け、辛うじて壁との激突を逃れたハッピーの下に、サニーとピースが、エコーの下にマーチとビューティが駆け寄った。

 

「お前達の技はそんなものか?」

 

 アベルがスマイルプリキュアの六人を見下し、ビューティは、二人が無事なのを確かめると、直ぐに頭の中で次なる手段を考えた。このまま同じように戦い続けても、嘗て横浜で戦った三人の魔人、ディクレ、ベガ、サディスと戦った時のように、不利な状況を崩せないと感じたビューティは、仲間達に話し掛けた。

 

「現状を打破する為にも・・・ロイヤルレインボーバーストを放ってみませんか?」

 

「そうだね・・・やってみようよ」

 

「「「「ウン!」」」」

 

 ビューティの提案に、ハッピーも同意して仲間達に提案すると、サニー、ピース、マーチ、エコーも同意した。今の自分達にとっての最強の技とは、ロイヤルレインボーバーストしか残されてはいなかった。六人のスマイルプリキュアが、険しい表情で横一列に並び、アベルは警戒しながらも、口元には少し笑みを浮かべた。

 

(何か仕掛けてくるつもりのようだな・・・ククク、ようやく本気になったか、これでこの双児宮の光の封印も・・・)

 

「「「「「ペガサスよ・・・」」」」」

 

 ハッピー達五人がキャンドルを合わせてペガサスに願いを託し、

 

「鳳凰よ・・・」

 

 エコーがプリンセスキャンドルを宙に向けて掲げると、六人は声を合わせ叫んだ。

 

「「「「「「私達に力を!!」」」」」」

 

 ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーの姿が変化を遂げていく・・・

 

「プリンセスハッピー!」

 

「プリンセスサニー!」

 

「プリンセスピース!」

 

「プリンセスマーチ!」

 

「プリンセスビューティ!」

 

「プリンセスエコー!」

 

 ハッピー達六人は、まるでドレスのような衣装を纏い、頭には天使の輪のような光のリングが装着された。

 

「こ、これは!?ここまでの光の力とは・・・」

 

 アベルは少し度肝を抜かれた表情で、プリンセスフォームになったスマイルプリキュア達の容姿に驚愕した。アベルが凡そ想像した光の力を、ハッピー達は凌駕していた。

 

「今クル!みんなの力を合わせるクルゥゥ!!」

 

 キャンディは、ロイヤルクロックの上に付いているボタンをカチリと押した。針は動き、数字の10に合わさると、ロイヤルクロックからフェニックスが舞い上がり、エコーの身体を包み込み上昇させた。エコーはプリンセスキャンドルをスマイルプリキュアに向けて構えると、エコーの背後に、巨大なフェニックスのシルエットが浮かんだ。

 

「集え!五つの希望の光!!」

 

「「「「「羽ばたけ、光輝く未来へ!」」」」」

 

 ハッピー達五人は、五色のペガサスに跨るや、エコーに導かれるように上空高く舞い上がった。五色のペガサスは、上空でフェニックスと合わさると、フェニックスは命を宿したかのように咆哮を上げた。

 

「「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボー・バ~~スト!!!!!!」」」」」」

 

 咆哮したフェニックスの口から、強烈な虹のエネルギー波がアベル目掛け放たれた。

 

「クッ・・・」

 

 アベルは、慌てて両手を前に突き出し、強大な虹のエネルギー波を受け止めた。だが、その威力に身体が徐々に後退し、アベルからは完全に先程までの余裕の表情が消えて居た。

 

「こ、これ程とは!?グゥゥゥゥゥゥ・・・ウゥゥオォォォォォォ!!」

 

 アベルの両方の瞳が金色に輝き、アベルの両手により一層の力が加わった。アベルの着ていた軍服のような衣装はボロボロになっていき、今度は逆にスマイルプリキュアの六人の表情が驚愕に変わった。

 

「ロイヤルレインボーバーストが!?」

 

「クッ、負けるかいなぁ!」

 

 ハッピーが驚愕し、サニーが更なる気合を込めるも、ロイヤルレインボーバーストは、徐々に威力を落として完全に沈黙した。ハッピー達は、目の前の光景が信じられず、思わず呆然と立ち尽くしていた。アベルは何とかロイヤルレインボーバーストを耐え抜いたものの、ボロボロになった衣装からは、ソドムとおなじような鱗のような身体が見えて居た。それに気づいた瞬間、アベルの表情が憤怒の表情に変わった。

 

「貴様らぁぁぁ!この俺に、この俺に、このおぞましい偽りの肉体を見せやがったなぁぁぁ!!許さん・・・絶対に許さんぞぉぉぉぉ!!!」

 

 アベルから発せられる怒りのエネルギーに、思わずハッピー達が怯んだ。アベルにとって、いや、カインとソドムにとっても、ルーシェスに敗北し、肉体を三つに分けられ、偽りの身体を与えられたこの鱗のような模様は、彼らにとっては屈辱の象徴だった。怒りに我を忘れたアベルは、双児宮の光の封印が解けた事にも気づく事は無かった。

 

「あ、あの姿は・・・妖精学校で見たソドムって言う人と同じ・・・」

 

 エコーの脳裏に、妖精学校で見たソドムの姿が過ぎったものの、激高したアベルは、両腕を高々と掲げて組むと、

 

「ダ~~クネス・・・フレイム!!」

 

 アベルが両腕をふりおろすと、強大な黒き炎がハッピー達目掛け放たれた。

 

「「「「「「キャァ!」」」」」」

 

 ハッピー達は辛うじて黒炎を躱すも、黒炎に触れた双児宮の壁が、飴細工のように溶けていった。

 

「許さん!許さん!許さん!許さん!虫けらがぁぁぁぁ!!」

 

 アベルは狂ったように叫び、ダークネスフレイムをハッピー達目掛け放ち続けた。その爆風は、ハッピー達六人を容赦なく襲い、六人が激しく壁に吹き飛ばされた。

 

「ハッピー!みんなぁぁ!!」

 

 キャンディが慌ててハッピー達に駆け寄ろうとするも、グレルとエンエンは、必死にキャンディの両腕を捕まえて引き留めた。自分達がハッピー達の下に行っても、返って彼女達の足手纏いになるのは目に見えて居た。

 

「キャンディ・・・大丈夫だよ」

 

 ハッピーは、そんなキャンディを心配させまいと、足を震わせながらも立ち上がると、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーも、そんなハッピーに続けとばかり立ち上がった。

 

「私達は・・・負けない!みんな、キャンディ、もう一度やるよ!!」

 

「「「「「ウン!」」」」」

 

「分かったクル」

 

 ハッピーの合図に他の五人も頷き、ハッピー達の瞳に再び光が宿った。キャンディが再びロイヤルクロックの上に付いているボタンをカチリと押すと、針は動き数字の11に合わさった。ロイヤルクロックから再びフェニックスが舞い上がり、

 

「「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボー・バ~~スト!!!!!!」」」」」」

 

 咆哮したフェニックスの口から、強烈な虹のエネルギー波が再びアベル目掛け放たれた。アベルも両腕を高々と掲げて組み、

 

「ダ~~クネス・・・フレイム!!」

 

 アベルが両腕をふりおろすと、強大な黒き炎がハッピー達目掛け放たれた。

 

「「「「「「ハァァァァァ!!」」」」」」

 

「死ねぇぇぇ!」

 

 互いの雄叫びが響く中、ロイヤルレインボーバーストとダークネスフレイムが、空間でぶつかりあい激しい閃光を放ちあった。その威力は互角・・・空間でくすぶり合い拮抗する両者の技が耐えきれず、その衝撃にハッピー達もアベルも後方に吹き飛んだ。だが、両者共踏みとどまる。ハッピーは、険しい表情を浮かべながらも、

 

「今の私達には・・・ロイヤルレインボーバーストに掛けるしかないのぉ!」

 

「せや、何度でもぶっ放してやろうや」

 

「ウン、今度こそ決めよう!」

 

「あたしたちの力・・・アベルに見せつけてやろう」

 

「そうです。ここで挫ける訳には行きません」

 

「キャンディ、もう一度力を貸して」

 

「クルゥ」

 

 サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーもハッピーに同意し、キャンディもコクリと頷いた。キャンディが再びロイヤルクロックの上に付いているボタンをカチリと押すと、針は動き数字の12に合わさった。その瞬間、キャンディの身に異変が生じた。

 

(ドクンドクンドクン・・・)

 

キャンディの心臓の鼓動が急激に早まり、次第にキャンディの意識が遠のいて行った。キャンディは、初めて体験するこの現状に激しい恐怖を覚えて居た。

 

(みゆき、あかね、やよい、なお、れいか、あゆみ、エンエン、グレル・・・お、兄ちゃん・・・)

 

 キャンディは一同に、そしてメルヘンランドに居るポップに、何とか助けを求めようと必死に右腕を伸ばすも、そのまま倒れ込み意識を失った。だが、そんなキャンディの姿に、ハッピー達も、エンエンとグレルも、アベルとの戦いに気を取られ気づく事は無かった。

 

ロイヤルクロックから三度フェニックスが舞い上がり、エコーの身体を包み込み上昇させ、エコーの背後に巨大なフェニックスのシルエットが浮かんだ。

 

「集え!五つの希望の光!!」

 

「「「「「羽ばたけ、光輝く未来へ!」」」」」

 

「「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボー・バ~~スト!!!!!!」」」」」」

 

ハッピー達は、三度ロイヤルレインボーバーストをアベル目掛け放ち、アベルも再びダークネスフレイムで迎え撃った。再び激突する両者の技と技、互いの力は再び拮抗するも、

 

「私達は、こんな所で負けない・・・か・が・や・けぇぇ!」

 

「「「「「「スマイルプリキュアァァァ!!」」」」」」

 

 ハッピーは険しい表情を浮かべながら叫び、仲間達がハッピーの気持ちに応える様に声を合わせた。その瞬間、ロイヤルレインボーバーストの勢いが一気に増した。

 

「な、何だとぉ!?ウォォォ?」

 

 ロイヤルレインボーバーストは、その勢いのまま一気にアベルのダークネスフレイムを押し切り、アベル目掛け突き進んだ。

 

「お、おのれぇぇぇ!こ、こんな奴らにぃぃぃ!!」

 

 アベルは両腕を付きだし、ロイヤルレインボーバーストを堪えようと試みるも、最初に受けた時よりも、その威力は格段に増していて、アベルの身体が後方に押され出した。

 

「グウゥゥ・・・あ、侮った。プリキュア、これ程までとは・・・だ、だがなぁ、双児宮の光の封印は解けたぁぁ!俺は、俺達は、まだ・・・」

 

 アベルはそう強がるも、ロイヤルレインボーバーストは一気にアベルを飲み込み、アベルは最後の力を振り絞って、嘗てのソドム同様、自らの首を撥ねてその姿を何処かに消した。ハッピー達六人は、キャンドルの炎を吹き消し、キャンドルをクルクル回してアベルに背を向けポーズを決めると、

 

「「「「「「輝け!ハッピースマイル!!」」」」」」

 

 ハッピー達の背後で爆発が起こり、ロイヤルレインボーバーストがアベルの身体を浄化し、双児宮に沈黙が起きた。

 

「シャァァァ!」

 

 サニーは沈黙を破るように、右手を高々と上げて自分達の勝利を祝い、ハッピー達からも笑顔が零れた。グレルとエンエンも満面の笑みを浮かべながら喜び合い、

 

「やったなぁ!」

 

「ウン!キャンディ、良かっ・・・・キャンディ!?」

 

 エンエンは、笑みを浮かべながらキャンディに話し掛けたものの、キャンディが倒れ込んでいる姿を見ると、見る見る泣きそうな表情で悲鳴を上げた。

 

「キャンディ!ど、どうしたのぉぉ?」

 

「おい、キャンディ、しっかりしろよ!」

 

 エンエンとグレルが心配そうにキャンディに駆け寄り、ハッピー達もようやくキャンディの異変に気付き、見る見るハッピー達六人の顔は青ざめた。

 

「キャンディ!?どうしたの?キャンディィィ!!」

 

 ハッピー達も慌ててキャンディに駆け寄り、ハッピーは自らの太股にキャンディを乗せて声を掛けるも、キャンディはグッタリしながら、ただ荒い呼吸を繰り返すだけだった。

 

 アベルに勝利した事も束の間、一同は悲しげにキャンディの身を案じ続けて居た・・・

 

 

2、巨蟹宮・・・ルミナスの危機

 

 ハッピー達がアベルに勝利したものの、カインの思惑通りに事は進み、十二の魔宮の封印も残すは巨蟹宮ただ一つになった。その巨蟹宮では、カインはアベルをも倒したプリキュア達に脅威を感じて居た。カインの背後では、生首となったソドムとアベルが目を瞑り、沈黙して居た。

 

(プリキュア・・・まさか、ソドムに続きアベルまでも退けるとは・・・だが、残る封印はこの巨蟹宮のみだ。そしてそれも・・・)

 

 カインは、巨蟹宮の内部を歩く一人の足音を聞き、口元をニヤリとさせた・・・

 

 

 一方、魔宮を無事に抜けたプリキュア達は・・・

 

 真っ先に魔宮を抜けたのはプリキュア5とローズ達、魔宮を抜けた彼女達が目にするわ、魔王ルーシェスの居城である巨大な黒き塔だった。

 

「あの塔が魔王城って事かなぁ!?」

 

「以前にシーレインに聞いた話や、キャミーの話を聞く限りはそのようね」

 

 ドリームに話し掛けられたアクアがそう答えるも、一同には不安な気持ちが沸いていた。レモネードは、そんな不安を少しでも和らげようとするかのように、

 

「魔宮を抜けたのは良いんですけど・・・他のみんなの姿が見えませんね?」

 

「エエ・・・でもみんなの事だからきっと大丈夫」

 

 ミントも心の中では一抹の不安を感じては居たが、レモネードをこれ以上不安にさせない為にも、そう言うとレモネードに微笑み、レモネードも少し不安が晴れた気持ちになった。ルージュは魔王城をジッと見つめると、

 

「あそこにビートが居るなら、あたし達だけでも先に魔王城に向かう?」

 

「魔王城に向かうにしろ、みんなを待ってから向かった方が良いんじゃない?」

 

 ルージュは、ビートがメロディ達と合流した事を知らず、仲間達に提案してみるも、ローズは自分達だけで向かうよりも、他のプリキュア達と合流してから向かう事を提案した。アクアもローズの提案に同意するかのように、

 

「エエ、さっきの爆発音もちょっと気になるし・・・」

 

 アクアが気にした爆発音とは、ちょうどカインの攻撃が金牛宮に炸裂した事だった。ちょうどその時、見知った声がドリーム達に話し掛けて来た。

 

「ドリーム、みんな、無事で良かった」

 

「ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディ、あなた達も無事で良かった」

 

 ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディは、ドリーム達の姿を見つけるや、手を振りながら駆け寄って来た。ドリームは嬉しそうに両腕を上げ、ブルームもニンマリしながら両腕を上げて、二人は両手でハイタッチして互いの無事を喜び合い、仲間達もそんな二人を、目を細めて見守った。

 

「ブラック達やピーチ達、ムーンライト達やメロディ達、ハッピー達の姿が見えないけど?」

 

「ウン、私達以外はまだみたい・・・」

 

 ブルームに聞かれたドリームが、少し愁いを浮かばながら語ると、再び見知った声が聞こえて来た。

 

「オォォイ!ドリーム達も、ブルーム達も無事で良かったぁ」

 

 そう言いながら両手を振って駆けて来たのは、ピーチ、ベリー、シフォンを抱いたパイン、パッション、少し遅れてタルトが、笑顔を浮かべながら駆け寄って来た。

 

「ピーチ、ベリー、パイン、パッション」

 

 ピーチ達も合流し、ドリーム達から先程までの不安な気持ちが消えようとして居た。

 

 

 巨蟹宮・・・

 

 静寂なる室内を、一人の少女が奥を目指し歩いていた。奥へと続く通路には、これから死地に赴くかのように、頭蓋骨が壁に埋め込められていて、ルミナスは思わずその表情を険しくするも、その瞳には静かなる闘志を宿しているかのようだった。

 

(この先にカインが・・・ブラックとホワイトなら、きっと無事で居る筈)

 

 ルミナスは、カインの策略で次元の狭間に送られたブラックとホワイトを心配しながらも、二人の無事を信じ続けた。奥の室内に近付くにつれ、ポルンとルルンは今にも泣き出しそうな表情で怯え始め、

 

「怖いポポ・・・」

 

「怖いルル・・・」

 

「ポルン、ルルン、大丈夫よ」

 

 ルミナスは、パートナー妖精であるポルンとルルンを励ますように優しく声を掛けるも、それは奥から感じるカインのプレッシャーに、自ら押し潰されそうになる自分への鼓舞でもあった。ルミナスは再び一歩一歩奥へと歩を進め、遂に扉の前に辿り着いた。気味の悪い三つ顔の悪魔らしきオブジェが扉に描かれていて、ルミナスは意を決して扉を開いた。不気味な音を立てて扉は開くと、室内は薄暗く、ルミナスは用心するように室内を観察した。

 

(カイン・・・だけじゃない!?まだ誰かの気配がする)

 

 ルミナスはカイン以外の気配も感じ、注意深く中の様子を窺っていると、

 

「ククク、そんな所でコソコソしてないで、堂々と中に入って来たらどうだ?折角この俺が、この巨蟹宮に貴様を招待してやったんだぞ?」

 

 カインは、ルミナスを少し小馬鹿にするかのように、室内に入って来るように話し掛けた。ルミナスの表情は強張るも、意を決して室内に入ってよく室内を見てみると、両側の壁には恐怖に怯えたような動物や魚介類の魔物、更には動植物と昆虫が合わさったような異形な姿をした魔物のデスマスクが浮かんで居た。

 

「この者達が気になるか?この者達は・・・嘗てこの巨蟹宮を守護して居た者達の哀れな末路だ」

 

「何ですって!?」

 

 ルミナスは思わず動揺し、今一度魔のデスマスクを見た。デスマスクからは、無念さがにじみ出ているようで、ルミナスは思わず視線を外してカインをキッと睨んだ。

 

「どうしてそんな酷い事を・・・」

 

 カインを問い詰めたルミナスだったが、ルミナスの質問に答えたのは、ルミナスが予想しなかった者達だった。

 

「ククク、この巨蟹宮は地獄に通じていると言われていてなぁ。嘗ての我らが配下共と連絡を取り合うのに、この巨蟹宮は都合が良かったのさ」

 

「そう・・・だからこの巨蟹宮を我らが管轄出来るように、闇に溶け込む事が出来るソドムを使い、不要な輩を排除したまでの事」

 

 ルミナスの問いに答えたのは、カインの背後で生首のまま置物のようにしていたソドムとアベルだった。

 

「あ、あなた達は・・・ソドムとアベル!?その姿は・・・」

 

 ルミナスは、生首と成り果てたソドムとアベルを見て、一瞬憐みの表情を見せるも、ソドムとアベルは口元をニヤリとさせると、不気味にルミナスに話し掛けた。

 

「俺達をこのような姿にしたのは、お前の仲間達だぞ?」

 

「お前もなってみるか?・・・生首になぁ!」

 

「「ハハハハハ」」

 

 ソドムとアベルがそう言って笑い合った瞬間、カインの右手の人差し指が煌いた。それを見た瞬間、ルミナスは自分の頭部が落下し、自らの首の無い身体が無残に横たわる姿を見た。

 

「イヤァァァァァァァァァァ!!」

 

 ルミナスは思わず絶叫し、ハッと我に返ると、ルミナスは思わず全身を触って身体の異常を確認するも、特に身体に異常は見られなかった。ホッと安堵したルミナスだったが、顔から大量の脂汗が流れ、精神的ダメージを受け思わず膝から崩れ落ちた。ルミナスは、息を整えるように荒い呼吸を続けた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・い、今のは、一体何!?」

 

 ルミナスは、少し落ち着きを取り戻し、ゆっくり立ち上がると、今一度思わず自分の身体を確かめた。カインはそんなルミナスを見て笑みを浮かべ、

 

「ククク、安心しろ・・・幻覚だ!ちょっと貴様をからかっただけだが・・・お前の返答次第によっては・・・今の姿が現実になるぞ?」

 

「返答次第ですって?」

 

「そうだ。俺達に協力するならば、貴様の命は保証する。もっとも、他のプリキュア共はもう用済みなので消えて貰うがなぁ」

 

「ふざけないで!私は、あなた達に協力何かしません」

 

 ルミナスは、気丈にカインの申し出を拒否した。自分達の住む世界を、魔界を、弄ぶカインに協力する事など、ルミナスは心の底から嫌だった。カインは右の口角を上げ、

 

「そうか・・・だが、無理やりお前を我らが軍門に下らせる事も出来るぞ?さあ、我が操り人形になるが良い!マリオネット・コンパルション!!」

 

 カインは、嘗て双児宮でビート、ニクス、リリスの三人にしたように、ピアノを弾くように指を動かすと、ルミナスは自分の意思と関係無く頭が動き、カインの顔をマジマジと見せられた。

 

「か、身体が勝手に!?じ、自分の意思で・・・う、動けない?」

 

 カインは、親指と中指をルミナスの顔に狙いを定めると、ルミナスの表情が困惑する。カインは自分に何をしようとするのか、ルミナスには分からず激しく動揺した。

 

「さあ、直ぐ自分の考えなど不要にしてやる・・・魔幻!」

 

(ブラック!ホワイト!)

 

 ルミナスは、心の中でブラックとホワイトの顔が浮かんだ瞬間、二人に助けを求めるかのように、心の中で二人の名を呼んだその時・・・

 

「「・・・・・・マックス~~!!」」

 

 突如巨蟹宮の室内に雄叫びが響いたかと思うと、ルミナスとカインの間の空間が歪み、白と黒の雷撃が空間の亀裂から床に叩きつけられ、そのすぐ後を黒と白の衣装を身に纏った二人の戦士が舞い降りた。

 

「ブラックゥ!ホワイトォ!」

 

 ルミナスは、自分の窮地に駆け付けてくれたブラックとホワイトを見て、思わずその目にジワリと涙が浮かんだ。

 

 

3、二年後の世界に繋がると信じて

 

 ルミナスの窮地に、時の狭間に飛ばされたブラックとホワイトが戻って来た。二人は、同じように着地と同時に片膝付き、凛々しく顔を上げると立ち上がった。ブラックとホワイトは、ルミナスの無事な姿を見るとホッと安堵し、

 

「ルミナス、無事で良かった」

 

「何とか間に合ったようね?」

 

「ハイ!お二人も無事で良かった・・・本当に、良かった・・・」

 

 ルミナスはそう言うと、堪えて居た感情が爆発したかのように、目から涙が零れ落ち、右手で涙を拭った。ブラックとホワイトは、思わず顔を見合わせて微妙な表情を浮かべると、ブラックは、頭を掻きながら変顔を浮かべ、ルミナスに話し始めた。

 

「まあ、無事といえば無事だったんだけどねぇ・・・」

 

「私達、この前は過去に飛ばされたんだけど、今回はどうやら・・・」

 

 ホワイトが困惑気味にそう話し掛けた時、二人の会話を遮るかのように、カインが苛立ちながらブラックとホワイトに話し掛けた。

 

「貴様ら、俺のデッドエンド・ホールを受けて時の狭間に送られた筈・・・しかも、この巨蟹宮には結界が張られているのに、一体どうやってここまで来た!?」

 

「そんな事私達が知るかぁ!あんたのせいで、私達未来に行っちゃって大変だったんだからねぇ」

 

「それに私達は、以前にも時の狭間に迷い込んだ事がある。それが幸いしたのかも知れない」

 

 ブラックとホワイトの話を聞き、カインはハッとすると、

 

「何だと!?そうか・・・俺がこの巨蟹宮から、宝瓶宮に向けてデッドエンド・ホールを使った事で、時の狭間でこの巨蟹宮の一部と繋がっていたという事か?それを故意か偶然か、お前達は利用した・・・そういう事か・・・俺とした事が」

 

 カインは、自分のしくじりに気付き、思わず険しい表情でブラックとホワイトを睨み付けた。

 

「邪魔な奴らめ・・・いいだろう、この俺自ら貴様達を葬ってやろう」

 

「そうはさせない!行くよ、ホワイト」

 

「エエ」

 

「「ダァァァァァァ」」

 

 戦闘態勢に入ったブラックとホワイトが、カイン目掛け突進し攻撃を始めた。

 

「ダダダダダダダダダ」

 

「ヤァァァァァァァァ」

 

 ブラックとホワイトが、雄叫び上げながらパンチの連打をカインに対し浴びせるも、カインは、二人の攻撃を見切って居るかのように躱し続け、二人の攻撃が緩んだ隙を見逃さず、両腕に力を溜めると反撃に転じた。カインが右腕、左腕を順に振ると、ブラックとホワイト目掛け拳圧が飛び、二人が後方に吹き飛ばされる。

 

「ブラック、ホワイト」

 

 ルミナスが心配そうに声を掛けるも、ブラックとホワイトは、宙でクルクル回転して勢いを弱めて着地すると、ルミナスの側に合流した。ブラックはホワイトに話し掛け、

 

「ホワイト、私達未来であの変なおじさんとの戦いで消耗してるし、ここはルミナスの力も借りて一気に行こう」

 

「カインに何か魂胆がありそうなのは気になるんだけど・・・そうね、ここはブラックの言う通りにやってみましょう」

 

「OK!ホワイト、ルミナス、行くよ!!」

 

「ウン!」

 

「ハイ!」

 

 ホワイトとルミナスがブラックに返事を返し、バトンを手にしたルミナスから発せられた虹の光が、ブラックとホワイトを包み込んだ。カインは目を見開いて驚き、

 

(凄い光の力だ!ククク、これならば、最後の封印であるこの巨蟹宮の光の封印も・・・)

 

「漲る勇気!」

 

 カインがほくそ笑む中、ブラックは手を回転させながら構え、

 

「溢れる希望!」

 

 ブラックと同じように手を回転させホワイトが構えた。

 

「光輝く、絆とともに!」

 

 ハーティエルバトンを構えたルミナスが、そして足を広げ踏ん張るブラックとホワイトが気合いを込め、ブラックとホワイトの前方に巨大なハートが浮かび上がると、

 

「「エキストリ~~ム!!」」

 

「ルミナリオォォ!!」

 

 ブラックとホワイトの叫び声がハモリ、気合いを込めたルミナスの叫びが響き渡り、前方に浮かんだ巨大なハートから、虹色の光が一気にカイン目掛け照射された。

 

「オォォォ!?良いぞ、この力ならば・・・ハァァァァァァ!!」

 

 カインは、両腕を前に突き出しバリアを作り出し、ルミナリオを耐え続けた。だが、ルミナリオの威力を目の当たりにし、カインからは余裕の表情が消え去った。

 

「こ、これ程までとは・・・ウォォォォォ!」

 

 カインが作り出したバリアは砕け散ったものの、カインの両方の瞳が金色に輝き、両腕を前に突き出したまま一層気合を込めた。ルミナリオの勢いが徐々に弱まり、カインはアベル同様、着ていた軍服のような衣装はボロボロにされながらも、ルミナリオを耐えきった。

 

「「ルミナリオが!?」」

 

「そんなぁ!?」

 

 ブラックとホワイト、そしてルミナスが困惑する中、カインは鱗に覆われた両腕を頭上に高々と上げてクロスさせると、

 

「遂に十二の魔宮全ての封印が解けた・・・もう、貴様らプリキュアは用済みだ!俺のこの姿を見たのを後悔しながら、粉々に砕け散るが良い・・・」

 

 カインの両腕がどす黒く変色していき、そのどす黒い色が、カインの両手に集中されていく、

 

「な、何あれ!?」

 

「カインからもの凄い負の力を感じます」

 

「ま、不味いわ・・・あれをまともに受ければ、私達といえただではすまないわ」

 

 ブラック、ルミナス、そしてホワイトの表情が険しくなる中、カインは両腕を一気に振り下ろすと、

 

「死ね、プリキュア!エクス・プロ~ジョン!!」

 

「「「キャァァァァァァ!」」」

 

 三人の悲鳴と共に、カインの前方で大爆発が巻き起こった・・・

 

 

 魔王城・・・

 

 シーレイン、ベレル、ニクス、リリスは、表情を険しくしながら、眼下に見える十二の魔宮を見続けて居たが、金牛宮の爆発に続き、突如姿を現し大爆発を起こした巨蟹宮に驚愕した。シーレインは、ベレルに確認するかのように、

 

「ベレル、今の大爆発は、カインの!?」

 

「さよう、カインのエクスプロージョン。カインがあれを放ったとあれば、カインと戦って居たプリキュア達は、残念ながらおそらくもう・・・」

 

 ベレルはそう言うと押し黙り、リリスとニクスは顔を青ざめた。

 

「そんな!?」

 

「プリキュア達には、大きな借りがあります。シーレイン様、私達も加勢に参りましょう」

 

「そうですね・・・ベレル、何か?」

 

 ニクスの提案に同意したシーレインだったが、ベレルが魔王城真下を見て押し黙り、その姿を見て気になり話し掛けた。

 

「・・・感じるのです。この魔王城地下深くに封じられし地獄門より、この魔界に災いが再び舞い戻る気配を・・・」

 

「「「災い!?」」」

 

「この魔王城も無事では済みますまい・・・他の魔神達の力も借りねばならんかも知れませぬ。行きましょう」

 

 ベレルの提案に、シーレイン、ニクス、リリスも頷くと、四人は魔王城のバルコ二―から一気に飛び降りた。

 

 

 巨蟹宮の異変は、他の魔神達も感じて居た・・・

 

「ムゥ!?今のはカインの・・・先程も感じたが、カイン、何を企む?そうはさせんぞ!」

 

 アモンは、巨体を揺らしながらブルーム達の後を追った・・・

 

 

「プリキュアは、私に戦士の誇りを取り戻してくれた。彼女達に危害を加えるのならば・・・」

 

 アロンは愛用の弓と矢を手に持ち、プリキュア5とローズの後を追った・・・

 

 

「ブゥゥゥオォォォォ!?」

 

 オロンは、パインに優しくされた事を思い出し、パインの力になろうと身体を丸めて転がるように後を追った・・・

 

 

「これは、先程金牛宮を攻撃したカインの!?おのれ、カイン!先に行かせたプリキュア達が心配だが、弟の亡骸をこのままには・・・」

 

 ミノタウロスは、弟の亡骸をこの崩壊した金牛宮に放置する事を躊躇っていると、突如金牛宮に笑い声が響き渡った。

 

「オ~ホッホッホ!ミノタウロスさんご安心ください。わたくし、こんな事もあろうかとお邪魔させて頂きました」

 

「モグロス!?貴様、どうしてここに?」

 

「まあまあ、そんな事はどうでもいいじゃありませんか。ミノタウロスさん、弟さんを戦士として目覚めさせてくれたプリキュア達が心配何でしょう?」

 

「貴様、どうしてその事を!?」

 

 ミノタウロスは、弟ミノタウロスが兄ミノタウロスと入れ替わっていた事実を、何故か知って居たモグロスを険しい表情で睨み付けた。モグロスは、コミカルな表情で両手を前に突き出し手を振ると、

 

「そう怖い顔で睨まないで下さいまし、これでもわたくし、予言者みたいな事をやってますから・・・オ~ホッホッホ!」

 

 モグロスは笑い声を発しながらも、金牛宮内部に空間を発生させ、何処かと繋げた。

 

「こ、ここは、俺達の生まれた・・・」

 

 ミノタウロスは思わず驚きの声を発し、モグロスが自分達の生まれ故郷すら知って居る事に警戒した。モグロスは、そんなミノタウロスの心情を知ってか知らずか、更に気さくに話を続け、

 

「ハイ、わたくしが責任をもって弟さんを葬りましょう。ミノタウロスさんは、プリキュアさんの力になってあげて下さい」

 

「ムゥゥゥ、お前は些か信用出来ぬが・・・プリキュア達の身も・・・仕方あるまい!モグロス、弟を頼むぞ!俺はプリキュア達の後を追う」

 

「ハイ、お任せください」

 

 モグロスは、巨体を揺らしながら駆け出したミノタウロスに手を振ると、弟ミノタウロスの巨体を軽々と両手で抱えニヤリと笑んだ。

 

「もっとも、あなた方魔神だけでは、ブラックさん達の足を引っ張るだけかも知れませんけどねぇ・・・オ~ホッホッホ!」

 

 モグロスは、笑い声を響かせながら、弟ミノタウロスを葬る為に、ミノタウロス兄弟の生まれ故郷へと消えて行った・・・

 

 

「な~に、今の爆発音は!?あたし一人ここに残るのも怖いわよねぇ・・・そうだ!プリキュアちゃん達に守ってもらいましょう」

 

 バルバスは身体をクネクネさせ、内股走りしながらムーンライト達の後を追った・・・

 

 

 そして、爆発音はプリキュア達にも聞こえて居た・・・

 

 ブルームは、一同に確認するように話し掛け、

 

「何!?今の爆発音?」

 

「さっきもしたよね?」

 

 ピーチも同意し、隣に居るアクアに確認すると、アクアは険しい表情で先程の爆発音と今の爆発音を比べると、

 

「今のは、前のとは比べ物にならないわ」

 

「ウン、まだ来てないみんなも気になるし、行ってみよう!」

 

 ドリームは、険しい表情で一同に進言し、仲間達も頷くと、巨蟹宮目掛け駆け出した。

 

 

「メロディ、今の・・・」

 

「ウン、さっき金牛宮に落ちて来たのと同じ攻撃みたい」

 

「じゃあ、他のプリキュアの誰かがカインと戦ってるって事ね」

 

「急いで加勢に向かわなきゃ」

 

 金牛宮を抜けたリズム、メロディ、ビート、ミューズの四人は、爆発音が聞こえた巨蟹宮目掛け駆け出した。

 

 

「ムーンライト、今のは!?」

 

 顔を青ざめたブロッサムが、ムーンライトに問うと、

 

「エエ・・・ブロッサム、マリン、サンシャイン、急ぐわよ」

 

「合点!コフレ、遅れんじゃないよ」

 

「ポプリ、行くよ!」

 

「シプレ、行きますよ!」

 

 マリン、サンシャイン、ブロッサムは、駆け出しながら妖精達に声を掛け、妖精達もその後を、宙を浮かびながら追った。

 

 

 ハッピー達は、まだ双児宮内で倒れ込み、苦しそうにし続けるキャンディの姿に動揺して居た・・・

 

「キャンディ・・・私のせいだ。私が、ロイヤルレインボーバーストを何回も使わせたから・・・ゴメンね・・・キャンディ」

 

 ハッピーは、俯きながら今にも泣きそうな声でキャンディに謝った。ビューティは、ハッピーの右肩にそっと手を置き、

 

「それを言ったら、ロイヤルレインボーバーストを提案したのは私です」

 

「誰のせいや無い!ロイヤルレインボーバーストを撃たなぁ、ウチらはアベルには勝てんかった。それはキャンディも分かってくれとるでぇ」

 

 サニーは、ハッピーを、自分を含めた仲間達を励ますように声を掛けると、ピースとマーチもサニーの言葉に頷いた。

 

「そうだよ・・・それに、私がなったみたいに、キャンディも魔界シンドロームに掛かったのかも知れないよ?」

 

「今の爆発音も気になるし・・・ここに居ても埒が明かないよ」

 

 マーチは顔を上げると、今聞こえた爆発音の方向を見て険しい表情で話した。ビューティも頷き、

 

「そうですね、それにパインさんや他のプリキュアの皆さんなら、キャンディの症状を何かご存知かも知れませんし」

 

「ハッピー、行こう!みんなの所に」

 

 エコーはしゃがみ込んでハッピーの両肩に手を乗せ、優しくハッピーに声を掛けた。ハッピーは頷き、

 

「・・・・ウン、そうだね」

 

(キャンディ、もう少し我慢してね)

 

 ハッピーは立ち上がると表情を引き締め、ハッピー達はようやく双児宮を抜けた。

 

 

 カインの目の前では、崩壊した巨蟹宮から土埃が舞い起こり、辺りの視界を塞ぎ、カインは勝利を確信し笑い声を上げた。

 

「フハハハハハ!これで後は邪魔な魔王城を消し去り、地獄門を開くだけ・・・・・何!?」

 

 巨蟹宮から立ち上る土煙が収まり始めた時、カインは思わず驚愕の声を発した。何故なら、崩壊した巨蟹宮で倒れ込んだブラックとホワイトを、ルミナスは二人を庇う様に前に出て両手を付き出し、両足を震わせながらも、カインのエクスプロージョンを防いだのだから・・・

 

「バ、バカな!?俺のエクスプロージョンを防いだのか?」

 

 カインは、信じられないといった表情で呆然とルミナスを見た。

 

「お、お二人に手出しはさせない」

 

 ルミナスはそう強がるも、カインによって先程受けた精神攻撃や、今のエクスプロージョンの威力は、ルミナスに堪えて居た。ルミナスのブラックとホワイトを思う気持ちが、辛うじてエクスプロージョンを防ぐ事は出来ても、もうルミナスの肉体は限界を迎えようとして居た。ルミナスは、力を使い果たしたかのようにその場に座り込み、荒い呼吸を続けた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 

 ゆっくり瓦礫を押しのけたブラックとホワイトは、半身を起こすと、自分達を庇ったルミナスを見て心配そうに声を掛けた。

 

「「ルミナス!大丈夫?」」

 

「ハ、ハイ・・・でも、もう力が・・・」

 

「ルミナス、ありがとう。後は私達が・・・」

 

 ブラックは、そう言いながら立ち上がろうとするも、爆風で地面に叩きつけられたダメージがあった。カインは、そんなブラックとホワイトを見て嘲笑いながら、

 

「ククク、そんな姿でまだ俺と戦う気か?死ぬのが少し遅くなっただけだぞ?」

 

「うるさい!」

 

 ブラックは、自分達を見下すカインの声を遮った。そんなブラックの脳裏に、時空の狭間で飛ばされた先で出会った、一人の少女の姿が思い描かれた。時が止まった世界の中、赤ちゃんを抱えながら二体の猛オシマイダーと呼ばれる怪物と戦う、たった一人の少女の事を・・・

 

 ブラックはホワイトに話し掛け、

 

「ねぇ、ホワイト・・・こんな時あの娘なら、二年後の世界で出会ったはななら、エールなら何て言うかな?」

 

「そうね、はなさんならきっとこう言うわよね」

 

 ホワイトはそう言うと、ブラックと顔を見合わせながら小さく頷き合った。二人の脳裏に浮かぶ一人の少女が、仲間達を、そして自分を励ます姿が思い出されてくる。

 

「「フレー!フレー!わ・た・しぃぃぃぃぃ!!」」

 

 ブラックとホワイトの心からの感情が爆発した時、二人の身体が黄金に輝いた。その姿は、嘗て妖精学校でソドムと対峙した時を彷彿させた。

 

「も、物凄い力を感じるメポ!?」

 

「これは、妖精学校の時と同じミポ!」

 

「ブラック!?ホワイト!?これは、あの時妖精学校で見た・・・」

 

 困惑するメップルとミップル、ルミナスも二人が妖精学校で変化した姿だと気付き動揺した。ブラックとホワイトは、大きく息を吸い込み深呼吸すると、光の輝きは増し、二人の背中から大きな光の翼のオーラが現われた。カインは目を見開いて驚き、

 

「な、何だこの光の力は!?この力、ルーシェスに優るとも劣らんだと?」

 

 ホワイトはキッとカインを睨み付け、

 

「こんな所で、倒れて何て居られない」

 

「この戦いは、きっとはな達と出会った二年後に繋がってる」

 

 ブラックも、鋭い視線をカインに浴びせながら言葉を発し、二人はカインを指差すと、

 

「「だから私達は・・・絶対に負けない!」」

 

「黙れ、プリキュアァァァ!」

 

 カインは激高し、両目を金色に輝かせると、ブラックとホワイト目掛け突進を始め、二人はそれを受けて立つかのように突進した。さっきとは段違いの動きを見せるブラックは、雄叫びながらパンチの連打をカインに浴びせた。

 

「ダダダダダダダダ・・・ダァァァ!」

 

「グゥゥゥ」

 

 カインはブラックの連打を見切れず、ブラックの渾身の右ストレートを受けたカインが吹き飛ばされるも、辛うじて態勢を整えた。だが、高速回転したホワイトが回し蹴りの追い打ちでカインを再び吹き飛ばした。カインは無様に地面に叩きつけられ、顔を醜く歪ませた。

 

「おのれぇぇ!この俺を、この俺を・・・許さんぞぉぉ!!」

 

 カインは鱗に覆われた両腕を、再び頭上で高々とクロスさせると、カインの両腕が再びどす黒く変色していき、そのどす黒い色がカインの両手に集中され、カインは両腕を一気に振り下ろした。

 

「今度こそ粉々に砕け散れぇぇ!エクス・プロ~ジョン!!」

 

 ブラックとホワイトは、カインを睨み付けると、大きな光の翼が片側三枚ずつ、計六枚の翼に変わった。

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて一旦引いた手に光の力を蓄えると、ブラックとホワイトの手が更なる発光を遂げた。そんなブラックとホワイトの心の中に、何者かが話し掛けた。

 

「「マーブルスクリューシャイニングは・・・撃ってはダメェ!」」

 

 その声は、ブラックとホワイトに似て居た。だが、今のブラックとホワイトに、心に話し掛けて来た声は届かなかった。

 

「「シャイニィィィィング!!」」

 

 二人の掛け声と共に、二人が光の力を蓄えた手を前に突き出すと、マーブルスクリューは強大な光のエネルギーとなり、一気にエクスプロージョンの威力を消し去り、カインの全身を飲み込んだ。

 

「バ、バカなぁぁぁぁ!?ソ、ソドムゥゥゥ!時を、時を止めろぉぉぉ!!」

 

 カインは必死の表情でソドムの名を呼ぶと、ソドムの両目が金色に輝いた。ルミナスの動きが止まるも、

 

「「ヤァァァァァァァァ!」」

 

 ブラックとホワイトは、時が止まった中でも雄叫びを上げ、マーブルスクリューシャイニングを放ち続けた。

 

「バ、バカな!?奴らは時が止まった中を動けるのか!?こ、この俺が・・・この俺が負けるだと!?だが、だが、この頭だけは・・・」

 

 カインは必死に右手を動かすと、自らの首を撥ねた。その瞬間、止まった時間は再び動き出し、カイン、アベル、ソドムの生首が宙に浮き、マーブルスクリューシャイニングは、カインの肉体を跡形もなく消滅させた。更には後方に聳える巨大な魔王城に直撃し、魔王城は轟音と共に崩れ始めた。

 

 三体の生首は、ブラックとホワイトを見下ろすと、ブラックとホワイトも生首を睨み返した。

 

「この勝負は・・・貴様らの勝ちだ。だが、貴様らはミスを犯した!」

 

「我らは負けた訳では無いぞ!貴様達が魔王城を崩してくれたお陰で、我らの手間が省けた」 

 

「もう直ぐだ!もう直ぐ我らは真の肉体を取り戻す」

 

「「「それまで、束の間の勝利を味わうが良い!フハハハハハハハ!!」」」

 

 カイン、アベル、ソドムの生首はそう言い残し、何処かへと姿を消した・・・

 

 

4、地獄門・・・開く

 

 ブラックとホワイトが放った圧倒的な光の技、マーブルスクリューシャイニング、その光の力に魔神達は驚きを隠せなかった。シーレインは思わず立ち止まると、強大な光の気配を感じて思わずルーシェスが現われたのではと思った。

 

「今の力は!?ルーシェス様?」

 

「いや、ルーシェス様とはまた違う力でござった・・・おそらくは、プリキュア達の誰かかと」

 

 ベレルは、そんなシーレインの声に軽く首を振った。ベレルが見る心眼では、ルーシェスとは感じられなかった。ニクスとリリスは、魔王城を見て指さすと、

 

「み、見て下さい!ま、魔王城が、魔王城が・・・」

 

「崩壊していくわ!」

 

 シーレインは、谷底に崩れ落ちて行く魔王城を見ると、全身をワナワナ震わせた。拳を強く握りしめると、

 

「カイン・・・よくもルーシェス様の居城を!」

 

 シーレインの目が金色に輝くも、ベレルは首を捻り、

 

(いや・・・カインのエクスプロージョンでは、十二の魔宮の加護を受けた魔王城を破壊するのは不可能・・・プリキュアの誰かが放った技が影響しているとは思うが、何故魔王城を攻撃したのだろうか?)

 

 ブラックとホワイトに悪意は無かったのだが、魔王ルーシェスに心から忠誠を誓うシーレインは、烈火の如く怒りを露わにした。魔王城を崩壊させたのが、ブラックとホワイトとも気付かず・・・

 

 他の魔神達も異変を感じ、皆巨蟹宮へと歩を速めた。

 

 

 ブラックとホワイトは、カインを倒した事で我に返り、二人の光の翼は消え去った。だが、カイン、アベル、ソドムが残した言葉が少し気になったが、今は自分達を庇い疲労しきっていたルミナスの事を気に掛けた。

 

「ルミナス、大丈夫?」

 

「どこも怪我は無い?」

 

「ハイ、大丈夫です」

 

 ルミナスは二人に笑みを浮かべ、ブラックとホワイトはホッと安堵し、ブラックは右手を、ホワイトは左手をルミナスに差し出すと、ルミナスは嬉しそうに、二人の手を握って起き上がった。

 

「オォォイ!ブラック、ホワイト、ルミナス、大丈夫!?」

 

「加勢に来たよ!」

 

「アハハ、どうやらその必要は無かったみたい」

 

 ピーチ、ブルーム、ドリームの三人が、手を振りながら駆け寄って来て、その直ぐ後をイーグレット、ブライト、ウィンディ、ルージュ、レモネード、ミント、アクア、ローズ、ベリー、パイン、パッションが、更にその後をココとナッツ、シフォンを背負ったタルトが駆け寄って来た。更に数分後、ムーンライト、ブロッサム、マリン、サンシャインに、途中で合流したメロディ、リズム、ビート、ミューズも駆け寄り、一同は再会を喜び合った。ブラックは、一同の中にビートを見付けて近付くと、ホッと安堵したようにビートの頭を軽く撫で、

 

「ビート、無事で良かった・・・もう、みんな心配してたんだからね」

 

 ビートは、軽く一同に頭を下げると、

 

「心配させてゴメンなさい・・・みんなも無事で良かった。シーレインも無事だったから安心して」

 

「そう、良かったわ」

 

 ホワイトは、シーレインも無事だった事を知りホッと安堵するも、背後から物凄いプレッシャーを感じ、思わず緊張が走った。一同は一斉に振り返ると、大声で叫びながら、カインの名を叫ぶシーレインと、それを宥めるベレル、オロオロしながら後に続くニクスとリリスの姿があった。

 

「カイン!ルーシェス様の居城をよくも破壊してくれたわね・・・今度はこのシーレインが相手よ!姿を見せなさい!!」

 

((ギクッ!?))

 

 ブラックとホワイトは、シーレインが激高している理由が、自分達が破壊した魔王城の事と知り、思わず激しく動揺した。ベレルは、そんなブラックとホワイトに気付いたのか、二人に近付き小声で話し掛けた。

 

「貴公ら、かなり動揺して居るが、ルーシェス様の居城を破壊したのは・・・貴公達か?」

 

 ブラックとホワイトは、トホホ顔を浮かべると、ベレル、ニクス、リリス、そしてシーレインに拝む様なジェスチャーをしながら、

 

「ゴ、ゴメン!カインとの戦いに夢中で・・・」

 

「悪気はなかったの・・・」

 

「何ですってぇぇ!?あなた達の仕業だったのぉぉぉ?」

 

「「ゴメンなさぁぁぁい!」」

 

 シーレインは、謝り続けるブラックとホワイトに、目を金色に光らせるとハープを取り出した。慌ててビートがシーレインを背後から羽交い絞めにし、ニクスとリリスも必死にシーレインを宥めた。

 

「シ、シーレイン、落ち着いて!」

 

「「シーレイン様!」」

 

「離して!」

 

 シーレインの怒りは収まりそうにもなく、他のプリキュア達も困惑していると、そんなシーレインを正気に返らせる一喝が轟いた。

 

「落ち着け、シーレイン!」

 

「オォォ、アモン殿!」

 

 ベレルは、ブルーム達とアイコンタクトして近付いて来た巨体を心眼で感じ、それがアモンだと分かると嬉しそうに声を掛けた。アモンは正気に戻っているようで、ベレルはホッと安堵した。

 

「エッ!?アモン?」

 

 シーレインは、アモンの名を聞き思わずアモンを見つめると、アモンはシーレインにゆっくり近づくと、シーレインの目の前で両膝突いて土下座を始めた。

 

「すまん、シーレイン!俺は、俺は、カインに操られていたとはいえ、俺はお前を裏切り・・・」

 

「アモン・・・頭を上げて!あなたのせいじゃないわ・・・ベレル達やビートに聞いたわ。悪いのはカインよ。あなたに魔幻とかいう精神を操る技を掛けたからだし」

 

「許してくれるのか?」

 

「当たり前でしょう!」

 

 シーレインはそう言うとアモンに笑みを見せた。ベレルは、シーレインが冷静さを取り戻した事に気付き、

 

「ですなぁ・・・シーレイン殿、この者達がルーシェス様の居城を破壊してしまったのも、元はといえばカインとの戦いの成り行きでござろう」

 

「そうですね・・・私も些か取り乱してしまいました」

 

 シーレインの怒りも収まり、ブラックとホワイトはホッと胸を撫で下ろし、成り行きを見守って居た他のプリキュア達も安堵した。ちょうどそんな最中に、ミノタウロス、アロン、オロンも駆け付け、ミノタウロスはメロディ達に、アロンはアクアに話し掛け、オロンは嬉しそうにパインの顔を舐めた。そんなブラックとホワイトの背後から、突然声が掛かった。

 

「アラァ、黒と白のプリキュアちゃん、許して貰えて良かったじゃなぁい」

 

「ウン・・・」

 

「本当に・・・」

 

 ブラックとホワイトは、そう言いながら声を掛けて来た人物を振り返ると、思わず変顔を浮かべた。そこにはクネクネ身体を動かしながら佇むバルバスの姿があった。ブラックとホワイトは、バルバスに似て居るとは思いながらも、明らかに別人だと思うと、

 

「「あのぅ・・・どちら様ですか!?」」

 

「イヤァねぇ。あたしよ、あたし、バ・ル・バ・ス・よぉん!」

 

「「エェェ!?バルバス?」」

 

 バルバスは、そう言うとブラックとホワイトにウインクし、二人は呆然としながら口をポカンと開けた。ブラックとホワイトが知るバルバスとは、魔法界で戦った荒ぶる獅子のように気性が激しい魔神だったのだから・・・

 

「「嘘ぉぉ!?」」

 

 今尚信じられないブラックとホワイト、更には仲間である筈の他の魔神達も驚きの声を思わず発した。

 

「「「エッ!?」」」

 

 シーレイン、ニクス、リリスが・・・

 

「「「「何!?」」」」

 

 アモン、ベレル、ミノタウロス、アロンが・・・

 

「ブォ!?」

 

 オロンが・・・

 

 皆信じられないといった表情でバルバスを見た。ブロッサムは、困惑気味に一同に説明を始め、

 

「あのぅ・・・信じられないかも知れませんが、本当何です」

 

「バルバスと戦ったあたし達が、こうして言うんだから間違いないよ」

 

「私達のハートキャッチオーケストラを受けたバルバスは・・・」

 

 マリンとサンシャインも苦笑しながらバルバスを見て話すと、バルバスは嬉しそうに話し始め、

 

「あたし、あの子達との戦いで愛に目覚めたの・・・ねぇ?」

 

「私に話を振らないでくれるかしら?」

 

 バルバスにウインクされて、話を振られたムーンライトは、困惑しながら視線を外した。バルバスは、他の魔神達にもウインクし、

 

「っていう訳で、生まれ変わったあたしを、これからもヨロシクねぇん!」

 

『・・・・・・・・・・・』

 

 魔神達は、どう反応すれば良いのか分からず、皆困惑の表情を浮かべた・・・

 

「牙を抜かれた獅子って事!?」

 

 メロディが首を捻りながら呟くと、ブラックは微妙な表情でバルバスを見ながら、

 

「去勢された獅子かも?」

 

 ミューズは、去勢という言葉に反応し、ブラックをジッと見ながら話し掛け、

 

「ねぇ、去勢って何?」

 

「後でブロッサムに聞いて」

 

 ブラックは、言葉の意味が分からず純粋な目で聞いて来るミューズに困惑し、視線に映ったブロッサムの名を出した。ムーンライトとホワイトはちょっと呆れたように、

 

「どうしてブロッサムなのかしら!?」

 

「動物の事は、パインの方が詳しいと思うんだけど・・・」

 

 ブラックは二人に突っ込まれ、苦笑しながら頭を掻いた。

 

「いやぁ、ブロッサムはイケメン好きでしょう?下ネタ系も得意かなぁ・・・何て思ったりして」

 

「ブロッサムが怒るわよ?」

 

「知らないわよ?」

 

 ムーンライトとホワイトは、再び呆れたようにブラックを見ながら話し、思わず溜息を付いた。ブラックは、堪忍袋の緒が切れて、ブラックに文句を言うブロッサムの姿が目に浮かび、少し動揺すると、

 

「ブロッサムに言わないでね?」

 

「「別に言わないけど・・・」」

 

 そのブロッサムは、得意気にマリンとミューズに去勢の説明を始め、ブラック、ホワイト、ムーンライトは、思わず苦笑を浮かべた。カインを撃破し、集結して居た一同は和やかな雰囲気をしていたが、そこにようやくハッピー達がゆっくり現れた事で、その場の状況は一変した。ハッピーに気付いたドリームは、

 

「良かった。ハッピー達も無事だった・・・オォォォイ!ハッピー!!」

 

 ドリームは、笑顔で両手を振ってハッピーに声を掛けるも、ハッピーは特に反応を見せずドリームは困惑した。何時ものハッピーなら、笑顔でドリームに手を振り返し、嬉しそうに駆け寄って来たのだから・・・

 

「ハッピー、何かあったの?」

 

 今にも泣きそうな表情で近付いて来た、スマイルプリキュアの面々と、グレルとエンエンを見て、ドリームが心配そうに声を掛けると、

 

「ウン・・・キャンディが、キャンディが・・・」

 

 ハッピーはそう言うと、この場に居る一同に双児宮での出来事を語った・・・

 

「そんな事が・・・」

 

 メロディも見る見る沈痛な表情を浮かべ、苦しむキャンディを見た。ハッピーは、縋るような視線でパインを見ると、

 

「パイン、キャンディどうしたんだろう?」

 

「見てみないと何とも・・・」

 

 ハッピーからキャンディを受け取り、太股の上に愛しそうに寝かせたパインは、キャンディの様子を見てみるも、特に異常は見当たらなかった。

 

「キャンディちゃんは熱も無いし、見た所は異常が見当たらないんだけど・・・」

 

 パインは、愛しそうにキャンディの身体を優しく撫でながら、困惑の表情で一同に語った。

 

「あのぅ、私達みたいに魔界シンドロームに掛かったとか?」

 

 そうピースが告げた時、シーレインが首を振りながら即座にその説を否定した。

 

「それは無いわね。魔界シンドロームに掛かって、このような症状になった事は聞いた事も無いわ」

 

「じゃあ、キャンディを癒しの泉に連れて行くっていうのはどうかな?」

 

「そうね、あたし達も癒されたし・・・」

 

 サンシャインの提案にベリーも癒しの泉で癒された事を思い出して同意した。ベレルは腕組みしながら考え込むと、

 

「ウ~ム・・・魔界の瘴気が少なからず影響しておるやも知れぬなぁ。癒しの泉に効果があるか分からぬ以上、この者は出来るだけ早く魔界から、元の世界に連れ帰った方が良いかも知れんぞ?」

 

 ベレルの提案に一同が沈黙した。シーレインは苦しむキャンディを見て、慈愛の表情を浮かべると、

 

「私には、この子を治す事は出来ないけど、苦しみを和らげるぐらいなら・・・」

 

 ハッピーは思わずシーレインの顔を見て、

 

「本当!?お願い」

 

「分かったわ・・・サイレント・スリープ」

 

 シーレインは、ハープを取り出して演奏を始めた。その癒されていくメロディに、プリキュア達も魔神達も思わず聞き耳を立て、苦しんで居たキャンディの表情が見る見る柔いでいき、一同はホッと安堵した。だが、その静寂を打ち破る激しい揺れが一同を襲った。

 

「何!?地震?」

 

 ブルームは足を踏ん張りながら、地震かと思い驚いた表情を見せるも、アモンとベレルは即座に否定し、

 

「「違う!」」

 

「ベレル、これはまさか!?」

 

「ウム、何者かが・・・地獄門を抉じ開けようとしておるようです」

 

『地獄門!?』

 

 ベレルから告げられた地獄門という言葉に反応し、思わずプリキュア達が聞き返した。アモンは頷き、

 

「そうだ、その名の通りこの魔界と地獄を繋ぐ門・・・」

 

「じ、じ、地獄!?地獄って本当にあったの?」

 

 ルージュは思わず顔を真っ青にしながら驚愕の声を上げた。その間にも激しい揺れは続いた。巨蟹宮に続き、残った十一の魔宮が地響きで音を立てて崩れ落ちた。魔王城が崩壊した谷から、凄まじい音を立てて何かが抉じ開けようとしていた。

 

「来るぞぉぉぉぉ!」

 

 思わずアモンが絶叫し、一同は思わず身構えた。何かが勢いよく開いた瞬間、その場に居た一度は、谷底から上がって来る何かが発する強大なプレッシャーを感じて居た。それが徐々に谷底から近付いて来るだけで、プリキュア達の全身から鳥肌が立った。イーグレットが、遂に姿を見せた巨大な何かを見ると、

 

「な、何!?あれは・・・口?巨大な口だわ!」

 

 イーグレットの言うように、それは肉体に牙を上下に生やした巨大な口だけが付いた不気味な魔物、更に谷底からは無数の呻き声が聞こえて来て、その不気味な声は一同を戦慄させる。

 

「「「フハハハハハハ!遂に、遂にこの時が来た!!」」」

 

 そう言いながら巨大な口の魔物の前に現れたのは、カイン、アベル、ソドムの生首だった。魔物は大きく口を開けると、あろう事かカイン、アベル、ソドムの生首を舌で絡め取り、ムシャムシャ食べ始めた。そのグロテクスな光景に、思わず数名のプリキュアが視線を外した。魔物がゴクリと飲み込むと、直ぐに魔物に異変が起こった。肉体が蠢き盛り上がり、それは次第に人のような容姿へと変貌していった。

 

「「「あ、あれは!?」」」

 

 アモンが、ベレルが、ミノタウロスが、ガタガタ震えだした。シーレインはそんな三人を訝り、

 

「アモン、ベレル、ミノタウロス、あなた達あの怪物を知って居るのですか?あれは一体!?」

 

 シーレインが三人にそう問う間にも、魔物の姿は次第に完成形へと近づきつつあった。腹部の巨大な口はそのままに、正面に一本角を生やした巨大なカインの顔が、左側に二本の角を生やした巨大なアベルの顔が、右側に三本角を生やした巨大なソドムの顔があった。魔物は大きく両腕を広げると、蝙蝠のような巨大な羽を広げ、三つの顔が同時に喋り出した。

 

「「「我が名はゼガン!この魔界の王・・・悪魔王ゼガン!!」」」

 

『キャァァァァァ!』

 

 悪魔王ゼガンを名乗る者からの圧倒的威圧感に、思わず十数人のプリキュア達から悲鳴が起こった・・・

 

 

 モグロスは、弟ミノタウロスの墓を作り葬り終えると、ゼガンの気配を感じ、魔王城があった方角に顔を向けた。

 

「おやおや、どうやらゼガンさんが復活なさったようですねぇ・・・ゼガンさんはさぞ幸せの絶頂といった所でしょうなぁ」

 

 モグロスはそう言うとニヤリと笑み、

 

「ですが・・・大蛇、並びに五人のプリキュア消滅し時、プリキュア達の中で覚醒した九人の天使が、あなたの前に立ち塞がる事でしょう・・・オ~ホッホッホッホ!」

 

 モグロスはそう言うと、笑い声を響かせながら何処かへと姿を消した・・・

 

           第百三十四話:十二の魔宮(後編)

                  完

 




 何時もながら更新遅くて申し訳ないですが、第百三十四話投稿致しました。
 今回は十二の魔宮編後編で、双児宮、巨蟹宮、ゼガン復活までを書きました。
 キャンディの異変は、次章バッドエンド王国の逆襲編への伏線になってます。
 ちなみに、ブラックが言ってた二年後の未来で戦った変なおじさんは、HUGで登場したドクター・トラウムの事です。
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