第十九話:姉と妹!
1、孤軍奮闘
闇の牢獄から、どうやってせつな達三人と、妖精達を助けるか思案し続けて居たブンビーだったが、闇に蝕まれたプリキュア達を知り、焦りが生じて居た・・・
(不味いぞ!?このままじゃプリキュア達は・・・しかし、何時の間にプリキュアはあんなに増えたんだろうなぁ?)
ブツブツ言いながら辺りを見回すブンビー、まだせつな達の牢の近くには、ノーザ、クライン、キントレスキー、ミズ・シタターレの姿があった。これ以上の時間のロスは不味いと考えたブンビーは、最悪、実力行使に出るしか無いだろうと判断するも、
(でも、あいつら強そうだよなぁ・・・だが、プリキュア達をこのままにも出来んだろう)
意を決したブンビーが、せつな達の牢に近づこうとした時、ブンビーの肩に背後から手を置く者が居た。思わずドキッとし、恐る恐る引き攣った笑みを浮かべながら振り返ったブンビーは、オカッパ髪の黒い衣装を着た少女の姿を目にした。
少女から発せられる威圧感に、思わずゴクリと唾を飲み込んだブンビーは、殺されるかもと、内心冷や冷やしたが、少女は意外な事を話し出した。
「早まるな、それでは無駄死にするだけだ!ムーンライトの登場は、事態を好転させるだろう・・・それまで待つのだな!!」
「エッ?あんた、一体!?」
それだけ言い残すと、黒き衣装を身に纏った少女は闇の中に消えて行った・・・
ブンビーは、呆然と少女が消え去った闇を見つめ、
(あの女、一体何者何だ!?)
このまま無駄死にするよりは、誰かは知らぬが、あの女の言葉に掛けてみようと判断するブンビーであった・・・
シャイニールミナスの光の導きにより、自我を取り戻したプリキュア達だったが、闇に蝕まれた身体を、思うように動かせる事は出来なかった。
助けに来たキュアムーンライトであったが、強大な敵を前に、圧倒的不利な状況は変わらなかった・・・
「たった一人で、この軍勢を倒すだと!?随分勇ましいな・・・では、貴様の愚かな思い上がり、見せて貰おうか?」
闇の中、闇の救世主を自称するバロムが指を鳴らすと、アラクネア、スコルプ、ネバタコス、ハデーニャがムーンライトの四方を取り囲み包囲する。
「ムーンライト、気をつけて下さい!!」
キュアブロッサムが、動けない身体ながらもムーンライトに声援を送る。ムーンライトは無言で頷き、四方を囲む闇の戦士を見た。
先ず正面と右側面から、アラクネアとスコルプが、ムーンライト目掛けパンチの連打を浴びせるも、ムーンライトは体勢を入れ替え、二人の攻撃を両手で防ぎ続ける。
「おいおい、俺も居るのを忘れて貰っちゃあ困るぜ!」
背後からネバタコスが、触手でムーンライトの身体を捕らえるも、ムーンライトが華麗に身体を捻り、触手から逃れ距離を取る。
「パリでの借り・・・今こそ晴らしてやるわ!!」
パリで屈辱を味わっていたアラクネアが、凄まじい咆哮を上げると、ムーンライトの周辺に蜘蛛の糸を巻き散らすのを、ムーンライトは辛うじて躱し、蜘蛛の糸は、反対側に居たネバタコスに絡みついた。
「貴様ぁ、何しやがる!」
「す、済まない・・・おのれぇ!!」
アラクネアが、俊敏な動きでムーンライトに執拗に攻撃を仕掛けるも、ムーンライトは攻撃を完全に防ぎ、アラクネアは鬼気迫る表情を浮かべると、
「貴様さえ居なければ・・・私は、このような屈辱を味わう事など無かったのだ!私に恥をかかせた報い・・・思い知れぇぇぇ!!」
アラクネアの闇の力が暴走し、巨大な蜘蛛へと変貌する。八本の足が不気味に蠢き、連続して放たれる蜘蛛の糸が、ムーンライトの足場を封じていく。
スコルプがアラクネアを援護し、連続光弾をムーンライトに浴びせ続け、背後から突進してきたハデーニャの攻撃を、躱しきれないと判断したムーンライトは、ハデーニャとガップリ両手を組み合い、力比べの状態になる。
「あたしと力比べをしようって言うのかい?」
ハデーニャは、思わず口元に笑みを浮かべ力を込めると、ハデーニャの怪力に片膝を付くムーンライトだったが、右足払いでハデーニャを転ばし蹴り上げる。俊敏に蜘蛛の糸を移動しまくるアラクネアに対し、ムーンライトは、アラクネアの懐に飛び込むと、
「プリキュア!シルバー、インパクト!!」
光のエネルギーを掌底に集め、アラクネアに叩きつけ吹き飛ばす。よろめくアラクネアを見て、ムーンタクトを取り出したムーンライトが勝負に出る。
「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェイブ!!」
アラクネアの側に居たスコルプが、慌ててその場を離れる。ムーンライトから放たれた銀色の巨大な花が、アラクネアを包み込むと、
「ハァァァァァ!!」
タクトをクルクル回し始めたムーンライトが、アラクネアを浄化させる。
(先ず、一人!)
ムーンライトは次に備え、スコルプ、ハデーニャ、ネバタコスを厳しい視線で見つめていたが、
「ほう、中々やるではないか?それに比べて、貴様らの不甲斐ない事よ・・・もうよい、貴様らは他の者共と協力して、動けないプリキュア共を始末しろ!このまま放置していては、何れわれらの災いに成り兼ねん・・・キントレスキー、ミズ・シタターレ、お前達は、嘗ての仲間共と合流して指示を待て、お前達の出番は無いとは思うが、念の為だ!ノーザ、クライン、お前達が代わりにムーンライトと戦え!そして、あの者を呼べ!!」
不機嫌そうに闇の中から指示を出すバロムに、スコルプ、ハデーニャ、ネバタコスの三人は、不本意ながらも指示通りドームの側に移動する。
「お待ちなさい!!」
後を追ったムーンライトの前方にノーザが現われ、ムーンライトに強力なエネルギー弾を放つ、咄嗟にバリアーを張ってダメージを軽減させるものの、ムーンライトは壁に激突する。そのムーンライト目掛け、クラインも上空からエネルギー弾を放つ、何とか躱したムーンライトは、ムーンライトを挟むように地上に降り立ったノーザとクライン、二人と睨み合いになる。
(この二人・・・強い!!私の読みが甘かったようね・・・どちらかと1対1なら兎も角、2対1では・・・私は、負ける!!)
ムーンライトに焦りの色が浮かぶ、そして、その表情はある人物を見て驚愕へと変わった。不敵な笑みを浮かべたダークプリキュアが、ムーンライトの視線の先に居た・・・
ダークプリキュアの出現は、ムーンライトに激しい動揺を与えるのだった・・・
「あ、あなたは・・・ダークプリキュア!?あなたまで甦って居たなんて・・・」
ダークプリキュア・・・
ムーンライトの父、サバーク博士が、対ムーンライト用に作りだした存在で、ゆりの細胞の一部と、こころの大樹の研究の成果を上手く融合させて作り上げた人工生命体であり、父、月影博士曰く、ゆりの妹であった。彼女が消滅する寸前、ムーンライトとダークプリキュアは、和解した筈だったのだが・・・
「ムーンライト!!」
動けないプリキュア達から声が掛かる。
ムーンライトの危機を助けに行きたい・・・
だが、身体は言う事を効かなかった・・・
「ルミナス、私達は良いわ!私達の事は・・・もういいから、ムーンライトの援護に向かって!!」
「そ、そんなぁ・・・みなさんを置いて何て行けません!!」
アクアは、役に立てない自分達の事より、ムーンライトの援護に向かってくれとルミナスに伝える。他のプリキュア達も同じ気持ちであったが、ルミナスは拒否した。
(こんな時に、ブラックとホワイトが居てくれたら・・・でも、ムーンライトなら・・・きっと、きっと、何とかしてくれる!!)
心の中で、こんな時に、ブラックとホワイトが居てくれればと思いながらも、ルミナスはムーンライトを信じ、必ずこの窮地を乗り切ってくれると信じるのだった。
ノーザ、クラインが、同時にムーンライト目掛け突進を開始する。それを見たダークプリキュアも、ムーンライト目掛け突進を開始した。
ダークプリキュアの出現で、反応が遅れたムーンライトに危機が迫ろうとしていた・・・
2、共闘
ブンビーに最大のチャンスが訪れた!
牢を見張っていたノーザ、クライン、キントレスキー、ミズ・シタターレは、バロムの指示を受けこの場を離れた。ノーザよりこの場をしっかり見張っているように申しつけられたブンビーは、威勢良く「はい」と答えるものの、内心はガッツポーズを取っていた。
(あの女の言った通りになったな・・・一体何者何だ!?)
ブンビーに忠告した者こそダークプリキュアだったのだが、ブンビーがそんな事を知る由もなく、ブンビーは、遂に捕らわれたココ達を助け出す。
「助かったココ!」
「この恩は忘れないナツ!」
「いやぁ、忘れて貰っちゃ困るよ!さて、後はプリキュア達を助けてと・・・」
「ホンマおおきに・・・さあ、パッションはん達を助けな!!」
妖精達の牢が騒がしいのに違和感を抱く、せつな、満、薫だったが、ココ達がブンビーと共に姿を現わしたのを見て、三人は驚愕する。
「タルト、シフォン、ココ達も無事で・・・でも、一体どうやって牢から出られたの?」
「ブンビーのお陰ココ!」
「パッションはん達からも礼を言ってあげてぇな」
ブンビーが牢の鍵を見せ、せつな達に輝く歯を見せてニッコリする。その不気味さに思わずたじろいだせつなだったが、
「わ、私達も出してくれるの?ありがとう・・・」
せつなが深々お辞儀するのを見て、満、薫も同じように頭を下げる。
「いやいや、そんな事より早く行こう!プリキュア達が危ないようだ!!」
ブンビーの忠告を聞き、直ぐに真顔に変わるせつな、満、薫、
(待ってて、ラブ・・・みんな、今助けに行くから!!)
ブンビーが皆を案内しながら牢から脱出を試みるが、ノーザの策略により出口は消え失せていた。
「あれぇ、出口が・・・無い?エェェ!?」
動揺するブンビーを見て、これじゃまだ捕らわれたままだと落胆するココ達に、タルトはシフォンを呼び、皆をプリキュア達の居る所に案内してくれと頼むのだった。
「闇の牢におった時は、結界によってシフォンやアカルンでも無理やったが、牢さえ出れればこっちのもんや!頼むでぇ、シフォン!」
シフォンは「プリィ」と頷くと、シフォンの力で一同が消え失せた・・・
ノーザ、クライン、そして、ダークプリキュアがムーンライトに迫る。
ノーザが真っ先に、研ぎ澄まされた爪でムーンライトを切り裂こうとしたその時、突進してきたダークプリキュアの蹴りを受け、ノーザが吹き飛ばされる。
ダークプリキュアの思わぬ行動を見て、思わず呆然とするムーンライトに、ダークプリキュアはムーンライトを叱咤し、
「何を惚けている!?キュアムーンライト!」
ムーンライトの右腕を引っ張り、クラインからの攻撃を避けさせると、カウンターの回し蹴りでクラインを吹き飛ばすダークプリキュア、
「ダークプリキュア・・・あなた!?」
驚愕の表情を浮かべながらも、何処か嬉しそうな表情をするムーンライトの反面、吹き飛ばされたノーザの表情が醜く歪む、
「これは一体何の真似?何故あなたがムーンライトを庇う!?」
「貴様らこそ何を勘違いしている?キュアムーンライトは・・・私の姉だ!!妹が姉の危機を助けるのは・・・当然だろう?」
「姉・・・ですって?バ、バロム様、これは一体!?」
ダークプリキュアの思わぬ反乱により、闇の中のバロムに少なからず動揺が起こる。バロムの怒りに呼応するように闇がざわめく・・・
「おのれ、ダークプリキュア!闇が光の味方をするなど・・・ありはしない!!!ノーザ、クラインよ・・・構わん、ムーンライト事その裏切り者を消し去れ!!!」
バロムの怒りに、ダークプリキュアは薄ら笑いを浮かべると、
「勝手に私を生き返らせたのはお前だろう?ムーンライトへの切り札のつもりだったらしいが、誤算だったな!」
「ダークプリキュア・・・礼は言わないわよ?」
「必要無い!!」
口元に笑む姉と、笑み返す妹、その姿を見たブロッサム、サンシャイン、マリンから感嘆の声が沸き上がる。
「す、凄いです!」
「まさか、ムーンライトとダークプリキュアの共闘を見られる何てね・・・」
「ありゃりゃ、こりゃあ凄いや・・・あの二人が組んだら、無敵じゃない?」
だが、即座にピーチ達が反論する。
「ノーザ達を甘く見ない方が良いわ!まだ彼女達には・・・奥の手がある!!」
「「「奥の手ぇぇ?」」」
闇に身体の自由を奪われ、動きが取れないプリキュア達は、再びその視線をムーンライトに向けるのだった。
「所詮は出来損ないという事でしょう・・・」
「そうね・・・私達を本気にさせた事を後悔させてあげましょう!!」
クラインの言葉に頷き、ノーザは隠し持っていたソレワターセの実を食べると、嘗てピーチ達を苦しめた超獣ノーザへと変化する。大樹に大きな頭が付いたような、どこか違和感を感じるその姿、変化前のノーザは、美人と称する事の出来る顔立ちだったが、超獣化したノーザは、まさに化け物であった。
一方のクラインも、戦闘形態である龍人とも呼べそうな龍形態に変化する。二人の闇の力が増大したことを認め、ムーンライトとダークプリキュアに緊張感が漂う・・・
「ダークプリキュア、そっちは任せて良いかしら?」
「フッ、誰に言っている!?」
ムーンライトが龍人クラインに、ダークプリキュアが超獣ノーザにそれぞれ突進を開始するが、ムーンライトは怒濤の攻撃を仕掛けるも、意外にも俊敏な動きを見せるクラインに攻撃を当てる事が出来なかった。逆に何度もクラインの攻撃を受け、反撃の右回し蹴りもクラインに止められると、そのまま、思いっきり地面に叩き付けられそうになる。何とか体勢を立て直し、距離を取るムーンライトだった。
一方のダークプリキュアも、ノーザから放たれる無数の触手に苦戦していた。切っても、切っても再生される枝のような触手、何度か攻撃を受けるも、何とか距離を取ったダークプリキュアは、ムーンライトと背中合わせになる。
「苦戦しているようね?」
「お前こそ!」
押されている二人だったが、何処かまだ余裕が感じられた。まるで攻撃を示し合わせたように、二人が同時に叫ぶ、
「集まれ!花のパワー!!」
「闇の力よ!集え!!」
「プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」
「プリキュア!ダークパワー・フォルテッシモ!!」
ムーンライト、ダークプリキュアが、フォルテッシモ状態となって上昇する。二つの輝きが龍人クライン、超獣ノーザと激しくぶつかり合うと、二人の心が重なった時、銀の光は龍人クラインを貫き、赤黒い光は超獣ノーザを貫いた。再び姿を現わした光と闇、二人のプリキュアが同時に叫ぶ、
「「ハ~~トキャッチ!!」」
二人の掛け声と共に、龍人クラインが、超獣ノーザが爆発して地上へと落下する。
闇の中で苛つくバロムが、配下の者達を叱咤する。その凄まじい怒りは、闇の中で激しい轟音を発し、配下の者達は恐怖した。
「貴様らは一体何をやっているのだ?ノーザ、クライン、今一度だけチャンスをやろう!」
「あ、ありがとうございます・・・クライン、こうなれば嘗てのように、私達を一つにしてプリキュア共を・・・」
瀕死ながらもバロムから与えられた闇の力を使い、龍人クラインと超獣ノーザが一つになる。化け物のような姿は成りを潜め、羽と尻尾が生えた姿になり、腹部にはソレワターセの目のような物が加わった。
力を増した事で、パワーを制御出来ないのか、超獣ノーザクラインは無差別に攻撃を開始する。スピードも段違いに上がり、再び劣勢になるムーンライトとダークプリキュア、動けないプリキュア達に当たりそうな光弾を、ムーンライトリフレクションで辛うじて跳ね返す。凄まじい攻撃力の超獣ノーザクラインの前に、ムーンライトとダークプリキュアは何度も攻撃を食らい、二人はよろめきながらも立ち上がる。
「ダークプリキュア、私達に残された体力もそう多くない・・・一気に決めるわよ!!」
「ああ、まだ奴の相手が残っているのだからな!!」
ムーンライト、ダークプリキュアが、闇の中で蠢くバロムを睨み付ける。再び花の力と、闇の力を集めたムーンライトとダークプリキュアが叫ぶ、
「プリキュア!フローラルパワー」
「プリキュア!ダークパワー」
「「フォルテッシモ!!」」
光と闇、二つの光が一つになり上昇していく、
「ま、まさか、ムーンライトとダークプリキュア、二人でフォルテッシモするなんて・・・」
「す、凄いやぁ!!」
「ずるぅぅい!あたしはまだ、ムーンライトとフォルテッシモした事無いのにぃ~~」
感嘆の声を上げるブロッサム、サンシャインに反し、まだ自分は一緒にフォルテッシモをやった事の無いマリンが悔しがる。
二人のフォルテッシモが、超獣ノーザクラインと互角のぶつかり合いを何度も続ける。
「私達は・・・負けない!!」
「「ハァァァァァァ!!!」」
ムーンライト、ダークプリキュアの雄叫びと共に、パワーを増していくフォルテッシモが、遂に超獣ノーザクラインを貫く!
再度姿を現わし、タクトを構えて並び立つムーンライトとダークプリキュア、
「「ハ~~トキャッチ!!」」
先程と同じように超獣ノーザクラインに爆発が起きる。ムーンとダーク、共にタクトを回し、超獣ノーザクラインの二人を、元の姿に変え、二人は光と共に消え失せた。
姉と妹、二人のプリキュアが、美しい輝きを見せた!!
第十九話:姉と妹!
完