1、仮装する少女達
加音町復興記念のハロウィンパーティーが盛大に幕を開けた・・・
賑やかな音楽が鳴り響き、人々の仮装の群れが加音町を楽しげに行き来していた・・・
調べの館の前に集合した24人の少女達と妖精達、一同は和やかに久々の再会を喜ぶも、皆それぞれの仮装姿に驚いたり、称えたりして盛り上がっていたが、アコはまだ来ては居なかった。
格闘チャンピオンのメップル、幼稚園児のミップル、二重人格のお嬢様のポルン、ロボットシリーズのマスコトのルルン、海賊のようなフラッピ、王女様のようなチョッピ、自称火の玉のムープとフープ、巨大な剣を背中に背負った戦士のようなココ、Tシャツに短パン姿のラフな格好をしたナッツ、右手と左足に鎧を嵌めたシロップ、大きなポケットを付けたメルポ、カボチャのマスクを被りご機嫌なシフォン、関西弁で狼の遠吠えをするタルト、三人合わさってスナッキーの格好をするシプレ、コフレ、ポプリ、セーラー服美少女戦士の真似をするハミィの妖精達、フェアリートーン達は、やっぱり自分達も仮装すれば良かったと悔やむのだった・・・
妖精達は、楽しそうに仮装姿を楽しみあっていた・・・
一方の少女達と言えば・・・
「全く・・・何でラブ、美希、ブッキーまで、私と同じイースの姿になってるのよ?折角驚かせようと思ったのに、私の方が驚いたじゃない!!」
「アハハハ!いやぁ、この前はせつなに驚かされたから、仕返しにって思ってたら・・・まあ私達、考える事も一緒って事で」
「本当、まさかラブやブッキー、おまけに本人のせつなまで・・・」
「せつなちゃんまで仮装するとは思わなかったよね?」
ラブ達は、髪型は元のままだが、四人のイースという異様な姿が語り合う姿に、他のプリキュアメンバーも苦笑を浮かべる。
「まだラブ達はマシよ!何で私達は・・・こまちさん、忍者ってハロウィンとは全く関係ないと思うんですけど!!」
「本当よ・・・私の仮装は陰陽師・・・まあ、妖怪退治が本業らしいから、ハロウィンから外れては居ないとは思うけど・・・こまち、あなたのその姿は一体何なの?」
ラブから借りた金髪のかつらを被ったりんが、引き攣りながらこまちに突っ込む、陰陽師のような白い和装をした凛々しい姿のかれんが、ラブから借りた赤い髪のかつらを被り、赤と黒を基本とした、胸元の開いたセクシーな衣装を着たこまちを見て、思わず声を掛けると、こまちは苦笑を浮かべながら、
「私のは、子供の頃にアニメで見た七変化する愛の戦士よ!でも、こんな姿にはこういう機会じゃないとなれないと思って、チャレンジしてみたの・・・ナッツさん、どうかしら?」
突然こまちに話を振られ、ラフな格好をしたナッツは思わず咳き込み赤面した。チラリとこまちを見ると、こまちは恥ずかしそうに俯く。
「あ、ああ、似合っていると思う!今後のこまちの小説にも、今日の出来事は役立つんじゃないか?」
「ありがとう、ナッツさん!」
「ナッツ、何照れてるんだ?」
「うるさいぞ、ココ!」
こまちは満面の笑顔でナッツに礼を言うと、ナッツは照れてその様子をココにからかわれる。
そんな一同とは逆に、のぞみ、うらら、くるみは頬を膨らませながら、
「こまちさん、私やうらら、くるみは何であの時と同じ何ですかぁぁ?」
「そうです・・・私もそういう格好してみたかったです!」
「私は遠慮するけど、化け猫の仮装って・・・私はエレンかぁ!そっちの方が遙かにマシよ!!」
「ちょっとくるみ!私は化け猫じゃないわよ!それに、猫を馬鹿にすると・・・祟るわよ!!」
河童姿ののぞみ、化け猫のくるみ、うららは悲惨な事にぬりかべ、三人は、こまちやりんのような格好が良かったと少し拗ねるのだった。
黒猫時代を彷彿させる黒い猫耳に、黒猫衣装を着たエレンは、猫姿を嫌そうにするくるみに思わず文句を言うのだった・・・
「みんな、ハロウィンにちなんだ格好と言うよりは・・・コスプレに近いかな?」
「そ、そうね・・・何か私達の格好が普通に見えてくるわね」
カボチャのお面を頭から被った咲、魔女のように長い付け鼻と黒い衣装を身に着けた舞が苦笑する。共に嘗て文化祭のオバケ屋敷で演じたような格好をしていた。
「ハロウィンって・・・不思議な事をするものなのね!?」
「そうね・・・態々こんな格好するなんて・・・」
「満ちゃん、薫ちゃん、その姿からすると・・・ドラキュラかな?歯にも牙とか付けてるの?」
一同の仮装姿を不思議そうに眺める黒いタキシードに黒いマントを着た満と薫、ラブが二人に話し掛けると、二人は頷き、口をカァッと開くと二人の上の歯から立派な牙が見えた。迫力ある二人の姿に、思わずりんとエレンは一歩後ろに下がり怯むのだった。
「なぎさ・・・人魚の姿じゃやっぱり歩きにくいよぉ」
「そうだね・・・台車でも借りて押して上げようか?」
「それじゃ益々晒し者じゃない!」
人魚姿のほのかは、上手く歩けずピョンピョン跳ねるように移動するのに疲れたようで、思わず愚痴が出る。紫色のジャケットの下に、白いライダースーツのような格好をしたなぎさもそこまで考えて居なかったようで、台車を借りようとするも、捕まった人魚のようなイメージがほのかの頭に過ぎり、慌てて拒否をする。それを聞いていた、背中から四枚の羽根を生やした、水の妖精をイメージした姿のえりかが、二人の会話に加わり、
「じゃあさ、此処に少し切り込みを入れて・・・こうすれば・・・」
えりかは、手際よく尾鰭の辺りに少し切り込みを入れ、目立たないようにしながらもほのかが歩きやすいように工夫を施すと、
「これなら歩けるわ!ありがとう、えりかさん!!」
「ヨッ!流石ファッション部部長!!」
「ヘヘン!これくらい、訳ないっしゅ!!」
なぎさとほのかに褒められ、えりかが得意気にする。ラブから借りたピンク髪のかつらを被ったひかりが、微笑みながら見ていると、ダークプリキュア姿のゆりは、ひかりの衣装が分からず首を捻りながら、
「ひかり・・・あなたは一体何の仮装なの?」
「さあ!?私は分からないんですけど、なぎささんが、有名なロボットシリーズ物の作品に出てくる歌姫って言ってました!なぎささんは、違うシリーズの衣装だそうですけど・・・」
ひかりの側で楽しそうに転がり回るルルンを見て、エルフの格好をしたいつきがニコニコしながら、
「分かった!お兄様が見ていて、僕もそのロボット作品シリーズ好きだよ!!僕はひかりさんが着ているキャラが出てる作品が好きかな」
「私は、良く分かりません・・・」
何処かギザギザした白い猫の着ぐるみ姿のつぼみは、話しについて行けず困惑する。つぼみがイジイジしていると、ゆりはつぼみの肩に手を置き、
「つぼみ・・・それで良いのよ!何かハロウィンの仮装と言うか、何処かの街のコスプレ大会に出ている気分だわ・・・ところでつぼみ、着ぐるみのお腹の綿が少し出てるわよ・・・ハロウィンらしいけど、ちょっとグロテスクね」
「昨日戻って慌てて完成させたから・・・でも、ハロウィンなら良いですよね!」
自分に言い聞かせるように大きく頷くつぼみだった・・・
近づいて来たなぎさに、ゆりが思わず苦言を呈す、
「なぎさ、ほのかの衣装とひかりの衣装、あなたが決めたんでしょう?全く・・・ひかりの衣装はハロウィンと何の関係もないじゃない・・・二人共途方に暮れてるわよ!」
「何よ、ゆりだって何だかんだ言いながら、ダークプリキュアの衣装着てるじゃない?ゆりだって、ハロウィンの仮装と言うよりコスプレでしょうが!」
「これは・・・聞かないで頂戴!!」
眼鏡を曇らせたゆりが、恥ずかしそうになぎさから視線を外した姿に、一同から笑みが溢れた・・・
「やや、少し遅れてしまったようだぞ・・・急ごう、アコ!」
「もう、パパ!来なくていいって言ったのに・・・此処からは私一人で行くから良いよ!!」
お姫様姿のアコは少し頬を膨らますと、スーツ姿のメフィストに付いてこないでと言い残し、みんなの下へと向かった。メフィストは心配そうにハラハラして、一同の反応を覗き見るのだった。
「あっ、来た来た!やっほ~アコ!!」
「まあ、お姫様の姿だなんて・・・アコったら!」
「姫様、お似合いです!!って、当たり前か、本物の姫様だもんね」
響、奏、エレンが遅れてやって来たアコに気付き、手招きしながら一同に紹介を始める。アコは少し恥ずかしそうにしながら、顔を横に向け照れる姿に一同から可愛いと声が掛かり、益々顔を赤らめるアコであった。
「みんな、この方は私とハミィの国、メイジャーランドのお姫様でアコ姫事、キュアミューズです!」
「アコちゃんは何と・・・まだ9歳の小学生プリキュア何ですよ!」
「仲良くして上げて下さいね!!」
エレン、響、奏の順番でみんなに紹介すると、一同から拍手が鳴り響くも、なぎさ、ほのか、ゆりは微妙な表情で顔を見合わせ合うと、
「響、奏、エレン・・・あなた達、まだ年端もいかない彼女を、プリキュアとして戦わせる事に抵抗は無いの?」
「エッ!?それは・・・でも、アコちゃんは」
そこは響にとっても痛い所を付かれる言葉だった・・・
確かにゆりの言うように、まだ9歳のアコがプリキュアとして戦う姿はどうかという疑問も沸くとは思う・・・
でも、アコは自らの意思で、プリキュアとして、父メフィストを救う為、そして、みんなの笑顔を守る為に戦う事を決めた!その意思は尊重させたいと響は思う。それに気付いたのか、なぎさとほのかも会話に加わり、
「ううん、別に私達、アコちゃんをプリキュアとして認めないって言ってる訳じゃ無いよ!」
「ただ、幼い彼女を・・・戦いに巻き込むのは・・・ゆりやなぎさが言うようにどうかと思う・・・」
ゆりが、なぎさが、ほのかが、まだ幼さの残るアコをプリキュアとして戦わせて良いものか疑問を呈すも、
「別に良いじゃない!私が決めた事だもの!!それに・・・小学生ならそこにも居るじゃない!!」
アコがえりかを指さすと、一同は目を点にして表情が凍り付く、指されたえりかはキョトンとして呆然とするも、直ぐにアコが自分を小学生と勘違いしている事に気付き、
「ちょっとぉぉ!昨日一緒に戦ったでしょうが・・・あたしは、響達より年上の・・・中学生だ!!!」
口を尖らせアコに文句を言うえりかを、アコは意外そうな表情で見つめ、口元に笑みを浮かべた。慌ててえりかを、つぼみといつき、美希が止めるも、えりかの目には炎が点った。
「そういえば・・・前に響にも言われたよね?」
嘗て此処加音町で響に初めて会った時に、響に小学生と言われた事を思い出し、燃える目を響にも向けるえりか、響はしまったという表情になり狼狽えた。話を逸らすように、響は奏とエレンと共にアコを宥めに掛かる。
アコはその様子を見ていて、えりかを見下したように、
「そういう所が、お子様に見られるのよ!」
「ムッキィ~~!!上等じゃん!ならさ、どっちが大人っぽいか、みんなに決めて貰おうじゃない!アコ、勝負よ!!」
「良いわよ!」
バチバチ目と目から火花を散らすえりかとアコに、他のメンバーは必死に二人を宥めに掛かる。ハァと溜息を付きながらも、美希がえりかの右肩に手を置き、
「えりか、止しなさいよ!」
「止めないで、美希姉ぇ!!」
えりかは美希を姉のように慕い、美希姉ぇと呼ぶようになっていた。前に美希がえりかの家に遊びに行った時、美希の母レミと、えりかの母さくらが、若い頃モデルの仕事で交友があった事が分かり、今では蒼乃家と来海家は、家族ぐるみの付き合いをしていた。美希は、えりかを妹のように可愛がり、ももかの事は、モデルの目標にする頼りになる姉と慕い、ももかも美希を妹のように可愛がり、モデルとしてのアドバイスを与えていた。この事も幸いしてか、美希のモデルとしての評価は上がり、仕事も順調に増えたのだった。
「えりか、馬鹿な事はしないの!アコちゃんより年上のえりかが勝ったって、何の得にもならないでしょう?アコちゃんは9歳なのよ!えりかがそこは大人の余裕を見せなきゃ・・・ね?」
「ウ~~!でもさぁ・・・」
「美希さんの言う通りです!えりか、これぞ大人という態度を・・・ビシッと見せて上げて下さい!!」
つぼみの煽てに、大人という言葉に敏感な反応をしたえりかも、満更でもなさそうな表情になると、美希とつぼみは顔を見合わせ微笑み、ホッと安堵するのだった。
なにやらアコが一同と上手くいってない様子に、メフィストはオロオロしていた。このまま自分が出て行くべきか、だが、そうすれば益々アコに駄目なパパと思われてしまうのでは、メフィストの心は葛藤する。不意に視線の先にエレンの姿を見付けたメフィストは、何やらエレンに対し、ジェスチャーを始めだした。
「な、何、あの人!?」
咲がメフィストに気付き、不審者を見つめるように見ていると、エレンも気付き、
「あれは、メフィスト様!一緒に来てたのね・・・あれ?」
何やら自分に合図を送っていると気付いたエレンが解読に掛かる・・・
「エッ!?あの人がメフィストって人なの?あの人が昨日まで、響ちゃんや奏ちゃん、エレンちゃんと戦ってたんだ?」
「とてもそうは思えないわね・・・」
のぞみの言葉にかれんも頷きながら同意する。何処か愛嬌のあるメフィストに、思わずのぞみとかれんは微笑んだ。ジッとメフィストのジェスチャーを見つめるエレンは、メフィストの真意をようやく理解する。
(セイレーン・・・お前がこの場を・・・何とかしろですってぇぇ!?)
エレンはメフィストの指示に、一応周りを見て見るも、アコとえりかはまだ少し言い合いをし、ゆりはまだ承服しかねるような表情をしていた。エレンはどうしたものかと、チラリと響、奏を見るも、二人はアコを宥めるのに必死、ならばとハミィを捜してみると、ハミィは妖精達との寸劇を楽しんでいて、この状況に全く気付いて居なかった。エレンは涙目になりながら、直ぐにメフィストにジェスチャーを返すと、
(メフィスト様・・・無理!私には無理です!!)
だが、メフィストからの返事は先程と同じで、更に親指を突き出しエレンにウインクする。思わずドン引きしたエレンは、他に頼りになりそうな人物を見渡すも、皆騒動に夢中で、自分に気付く人は居なかった。思わずガックリ首を垂らすエレンであった・・・
そんなエレンに気付いた者が居た。せつなである・・・
「エレン、どうしたの?」
「ウゥゥ・・・良かった!気付いてくれた人が居て・・・せ、せつな、私と一緒に、えりかとアコ姫を止めて欲しいの!」
「止めれば良いの?でも、大丈夫よ!此処には、頼りになる私達の大切な仲間達が居るもの!!」
せつなはエレンを安堵させるように微笑むと、エレンはもう一度辺りを見回した。
アコを響と奏、ラブ、のぞみ、うらら、咲が、えりかを美希とつぼみ、かれん、こまち、りん、祈里が宥め、二人は笑顔を見せる程になっていた。一度打ち解ければ、えりかはさっぱりした性格である。えりかは、アコを手招きし、つぼみ、いつき、響、奏を伴い、ゆり、なぎさ、ほのかに、アコのプリキュアとしての思いを語っていた。アコの本心を知り、ゆり、なぎさ、ほのかも心の底からアコを受け入れた。
「よ、良かった・・・これでホッとしたわ!」
「でしょう・・・私達の事だって受け入れてくれたみんなだもの、例え蟠(わだかま)りが起ころうとも、直ぐに笑いあえるわ!」
「そうね・・・ありがとう、せつな!!」
思わず顔を見合わせ笑い合うエレンとせつなだったが・・・
2、三銃士
「ちっとも楽しくない!!」
「ウッウゥゥゥゥ!」
「バリトン・・・もう、泣かないで下さいよ!!」
25人の少女達の前に姿を現わしたバスドラ、バリトン、ファルセット、一同は怪物なような三人に驚き、
「あんた達まで仮装してる何て・・・」
「何も、あなた達まで仮装する必要無いでしょう?」
響と奏は首を捻りながら三人に言うも、三人はハモリながら、
「「「仮装じゃ無い!!」」」
「ウッウウウウ」
その場に蹲(うずくま)り、顔を隠すように泣き出すバリトンを労るバスドラとファルセットは、少女達を指差し、
「お前ら~、バリトン益々泣いちゃったじゃないかよぉ!!」
「鬼、悪魔、何て酷い事を言うんだ君達は・・・バリトンに謝ってくださいよぉぉ!!」
バスドラ、ファルセットに指を指された響、奏、エレンは思わず動揺するも、響はムッとしながら、
「な、何で私達が悪いように言うのよ?あんた達が勝手にその姿で現われたんでしょうが!」
「誰が好きこのんでこんな姿になるかぁぁ!こうなれば、鬱憤をお前らで晴らしてやる・・・バリトン、ファルセット、プリキュアを痛めつけてやろうぜ!!」
トリオ・ザ・マイナーと睨み合いになる25人の少女達、異変を察したメフィストが近付くと、
「バスドラ、バリトン、ファルセット、お前達のその姿は・・・まさかノイズの仕業か?」
「ゲッ!?メフィスト・・・様?いや、あんたはもう俺様達の上司じゃない!!」
「私達は、ノイズ様に仕える事にしたんだ!」
「邪魔はさせませんよ!!」
変わり果てた三人の姿を見たメフィスト、メフィストの姿を見たバスドラ、バリトン、ファルセットが動揺するも、ノイズに忠誠を誓った三人は、メフィストにさへ凄みを見せる。だが、メフィストは諦めず、
「お前達、もう止めんか!お前達もノイズに利用されているだけなのだぞ?目を覚ましてくれ!!バスドラ、バリトン、ファルセットよ!!」
「メフィスト様の言う通りよ!三銃士と呼ばれていたあの頃の自分達を思い出して!!」
思わず顔を見合わせる三人、何故メフィストが、エレンが、必死になってまで自分達を説得しようとするのか首を捻る。メフィストは三人の心中を察したのか、
「バスドラ、バリトン、ファルセット、それにプリキュア達も聞いて欲しい・・・嘗て私は、魔境の森と呼ばれる魔の森に封印された、ヒーリングチェストを復活させる為、単身魔境の森へと挑んだ。だが、そこに現われたノイズの配下、ゴーレムの前に敗れ去り、私は悪の心を植え付けられた。宮殿に戻った私は、お前達、メイジャーランドが誇る三銃士を仲間に引き込むべく、悪のノイズで洗脳し、配下に加えた・・・セイレーンも覚えて居るだろう?」
メフィストの言葉に無言で頷くエレン、メフィストも頷き返し、
「そして、マイナーランドを建国した私は、お前達を従え、アフロディテに反旗を翻した。アコ、セイレーン、そして三銃士よ!お前達には辛い思いをさせてしまった・・・だが私は、アコ、アフロディテ、そしてプリキュア達のお陰で、元の私を取り戻せる事が出来た。だが、三人は・・・私は、メイジャーランドの王へと戻る前に、三銃士達に償いをせねばならん!!お前達をその醜い怪物へと変えたノイズの力を・・・私の中へと取り込み、中和する!!!」
メフィストは三人に近づき、呆気に取られるトリオ・ザ・マイナーに触れ、気合いを込めると、
「さあ、三人に取り憑く悪しき力よ!この私の身体を取り込むが良い!!」
メフィストの叫びに呼応するように、三人からメフィストへと悪の力が注ぎ込めれていく。
「グゥゥゥオォォォォォ!!」
その絶対的な力に絶叫するメフィスト、だがメフィストは、トリオ・ザ・マイナーから手を離すことはしなかった・・・
「メ・・・メフィスト・・・様」
「私達の為に・・・」
「もう、もう、止めて下さい!!」
バスドラ、バリトン、ファルセットの目から涙がこぼれ落ちる・・・
まるで悪の心を洗い流すように・・・
元の姿へと徐々に戻っていく三人、逆にメフィストの目は吊り上がり、凶悪さを時折滲ませた表情になる。
「グゥゥ・・・わ、私の予想以上の力だ!?このままでは・・・アコ、すまない!もう、これしか方法が・・・無い!私の身体事、悪の力を吹き飛ばす!!」
「イヤァァ!パパァァ!!」
アコの絶叫が響き渡ったその時、瞬時に三人の少女達が行動を開始した・・・
ゆりはココロポットを構え、なぎさとほのかは、メップルとミップルの名を絶叫し呼ぶと、
「プリキュア!オープンマイハート!!」
「「デュアルオーロラウェーブ!!」」
「月光に冴える一輪の花、キュアム~~ンライト!!」
「光の使者、キュアブラック!」
「光の使者、キュアホワイト!」
「「ふたりはプリキュア!!」」
涙目のアコも、他のメンバー達も、瞬時に変身した三人に驚愕した。三人は何をしようというのか理解出来なかった・・・
「アコ、あなたを私と同じ思いになど、私の目の前で絶対にさせない!あなたのお父さんは・・・必ず救って見せる!!」
自分と同じ思いには絶対にさせない、ムーンライトはアコに微笑み掛けると、ムーンタクトを取りだし、
「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェイブ!!」
ムーンライトの思いを乗せ、メフィスト目掛け、銀色の花の形をしたフォルテウェイブが飛ぶ、フォルテウェイブに包まれたメフィストが、一瞬の安らぎを得る。
「ブラック、ホワイト、今よ!!」
ムーンライトの合図に頷き、ブラックとホワイトが手を握り合うと、
「ブラック、パルサー!」
「ホワイトパルサー!」
「闇の呪縛に囚われし者たちよ!」
ホワイトが叫び・・・
「今、その鎖を断ち切らん!」
ブラックが応える・・・
「「プリキュア!レインボー・セラピー!!」」
ブラックとホワイト、二人から発せられた半球形の虹のオーラが、メフィストとトリオ・ザ・マイナーを包み込んでいく。
「ハァァァァァ!!」
それに合わせるかのように、タクトをクルクル回すムーンライト、メフィストは幸せそうな表情に包まれ宙に浮かび、バスドラ、バリトン、ファルセットも、元の容姿へと戻っていった・・・
「「「「ポワワワワ~ン」」」」
四人は幸せそうな表情で、闇の力から解放された・・・
「パパァァ!!無茶、無茶しないでぇぇ!!」
「済まないアコ・・・またプリキュア達には助けられてしまったな」
少し疲れた表情をしながらも、メフィストは優しく泣きじゃくるアコの頭を撫で、三人のプリキュアに頭を下げた。
「三人共、凄いですぅぅ!!」
「本当、流石は年の功だね」
つぼみとえりかは、瞬時に行動を起こしたブラックとホワイト、ムーンライトを称えるも、
「えりか・・・年の功は余計!!」
ブラックが口を尖らし、えりかに文句を言うと、一同から笑い声が響き渡った。
「三人共、パパを助けてくれてありがとう・・・さっきは、生意気な事言ってゴメンなさい!」
アコがペコリと三人に頭を下げる姿は気品に満ち、とてもさっきと同一人物に見えず、三人は苦笑する。
「メフィスト様・・・」
「アコ姫・・・」
「プリキュアの皆さん・・・」
「「「今まで・・・」」」
元の姿に戻り、ノイズの呪縛から解放された三人だったが、言葉の途中で加音町一帯に凄まじい不協和音が鳴り響く・・・
その耳障りな音に、思わず一同は耳を塞ぎ、何事が起こったのか呆然とする・・・
音が収まった後、音楽に賑わっていた加音町が不気味に静まりかえる・・・
辺りを見回した一同は、バスドラ、バリトン、ファルセットが石化していて、一同は驚愕する。
「そんな・・・バスドラ、バリトン、ファルセット、どうして!?」
エレンは、嘗ての部下であった石に変えられた三人を触り涙する。
「みんな、気をつけて!何か居る!!」
ムーンライトの言葉に、サッと顔色を変える少女達、メフィストは石にされた三人に触れると、
「何者だ!姿を見せろ!!」
握り拳をしながら絶叫する。折角救えた三人を、目の前で石に変えられ、メフィストの怒りが何者かへと向けられる。そんなメフィストを嘲笑うように、辺りに笑い声が響き渡った・・・
「役立たず共を排除したまでだ・・・そう怒鳴るな、メフィスト!そして、伝説の戦士プリキュアとやら・・・」
時計台の上に赤き魔物が仁王立ちし、一同を睨み付ける。即座に迎撃に向かうムーンライト、ブラック、ホワイトだったが、敵を擦り抜けてしまった・・・
(これは・・・フォログラムとでも言うの?)
唇を噛み、出し抜かれた事に口惜しさを浮かべるムーンライト、辺りを伺う三人だったが、敵の姿は見当たらなかった・・・
「これは、メイジャーランドに何か異変が起きたのかも知れんのぅ・・・」
髭を触りながら、難しそうな表情を浮かべた音吉が姿を現わす。メイジャーランドに異変・・・響、奏、エレン、アコ、ハミィ、フェアリートーン、そしてメフィストが動揺する。メフィストが慌ててメイジャーランドにコンタクトを取ろうとするも、邪悪な紋章に阻まれ、連絡を取れなかった。
「うむ、恐らくノイズに違いあるまい・・・此処にプリキュアが居てくれたのは、不幸中の幸いか・・・皆、聞いてくれ!ノイズとは・・・」
音吉が一同に説明を開始する・・・
今回の黒幕はノイズ!
嘗てメイジャーランドを襲い、全ての音楽を消し去ろうとした悪しき存在・・・
音吉は、クレッシェンドトーンと協力し、何とかノイズを封じるも、ノイズもクレッシェンドトーンを魔境の森に封じ込め、戦いは痛み分けに終わった事を教える。
「近年の動きから見るに・・・ノイズ復活は近い!!」
「では、お義父様、私はこれより石にされた三人も連れ、メイジャーランドに戻ります!!」
「待ってパパ、私も行く!ママが心配だもの!!」
「しかし・・・」
困り顔のメフィストに、尚も食い下がりアコは自分も行きたい事を告げる。
「私達も、姫様にお供します!ですから、ご安心を!!」
険しい表情を浮かべたエレンがメフィストに進言すると、背後の少女達が頷き返した。メフィストは渋々ながらも同意すると、
「ウム・・・分かった!だが無茶はしないでくれよ!!」
「待て!何人か残ってはくれまいか?敵の陽動の恐れもある・・・ノイズの狙いは、全ての音を消す事じゃ!この加音町も標的かも知れん・・・オルガンがまだ完成せん今、プリキュアの力が唯一の対抗手段なのだからのぉ!!」
音吉は、陽動の可能性も否定できぬ事から、何人か残って欲しいと頼むと、ムーンライトは、ブラックとホワイトと頷き合い、
「分かりました、私達が残りましょう!敵の規模が解らない以上、向こうの戦力は多い方が良い・・・つぼみ、えりか、いつき、ひかり、咲、舞、満、薫、りん、うらら、こまち、かれん、くるみ、ラブ、美希、祈里、せつな、響、奏、エレン、アコ、向こうを頼むわよ!のぞみ、みんなをお願いね!!」
「うん、これだけのプリキュアが揃ってるもん・・・必ずアコちゃんのママを、メイジャーランドを救って来ます!!」
のぞみは力強く頷き、背後の一同に微笑み掛けると微笑み返す一同、
「ムーンライト、ブラック、ホワイト、加音町を・・・私達の大切な街をお願いします!!」
「うん、響、加音町は任せて!!」
「みんな、無事に帰って来てね!!」
響の言葉に頷いたブラックが、加音町は任せてと言い、ホワイトは一同に語り掛け無事に帰って来るように伝えた。ムーンライトはシロップを見ると、
「それと、悪いけどシロップも一緒に残って貰えるかしら?もしもの時に備え、メイジャーランドに向かえる手段は残しておきたい・・・」
「分かったロプ!シロップは加音町に残るロプ」
シロップはムーンライトの言葉に同意し、加音町に残る事にする。
「じゃあみんな、出発するよ!決定!!」
のぞみの合図と共に、メフィストが虹色の鍵盤の橋を架け、仮装姿の一同が手を振りながらメイジャーランドへと旅立つと、ムーンライト、ブラックとホワイト、メップルとミップル、シロップとメルポ、音吉が一同に手を振り見送った・・・
第三十二話:コスプレ大会!?
完