1、闇の囁き
学校行事を終えたあゆみが、教室で慌てて帰り支度をしていると、三人のクラスメート達があゆみに近づき、
「ねえねえ、あゆみちゃん!最近美味しいクレープ屋さんが出来たんだけど、この後行ってみない?」
そうあゆみに話し掛けたのは、ちょっとぽっちゃりした眼鏡を掛けたボブヘアーの少女、その側にはショートカットの少女とツインテールの少女が居た。この少女達は、プリキュアの事が大好きで、みゆき達と友達になった事で、勇気を出したあゆみが、三人に声を掛けた事が切っ掛けで、あゆみはこの三人と仲良くなった。
「ゴメェェン!この後私、用があって・・・本当にゴメンね!!」
あゆみが拝むようなポーズで三人に謝ると、三人は苦笑を浮かべながら、
「ううん、用事があるならしょうがないし、また今度行きましょう!」
「うん!じゃあ私、急いでるからこれで・・・バイバイ!!」
「「「バイバイ!!!」」」
あゆみは三人に挨拶し、足早に学校を後にした・・・
あゆみは、帰り道にある公園のベンチに座ると、今一度妖精学校からの手紙を読んだ。
(このシールを擦ると、乗り物が現われるんだぁ!?でも、何所で乗り物を出せば良いんだろう?)
どこで試そうかと思案していたあゆみだったが、辺りを見回すと幸い人影は見えず、一人だけ遅れている事で、少し慌てていたあゆみは意を決し、
(ここでやっちゃおう!)
あゆみは、もう一度周りに人が居ない事を確認し、人差し指でシールを擦ると、モクモク煙が立ち上り、慌てるあゆみを余所に、煙はどんどん何かの形を作っていった。完成した気球を見たあゆみは、思わず息を飲んだ。何故ならそこには、あゆみが会いたいと思っても、もう二度と会う事は出来ない、あの妖精の姿があったのだから・・・
「こ、これは・・・アンデ!?」
狐に似たようなアンデの気球を見たあゆみの瞳から、涙がポロポロ零れた。だが、嬉し涙を流している間にも、何時人が来るかも分からず、あゆみは慌てて気球に乗り込んだ。あゆみが気球に乗り込むと、子供連れの二十代らしき奥さんがやって来て、あゆみは思わずドキリとするも、何故か奥さんは気球に気付かず、そのまま通り過ぎて行った。
(そうか!この気球は、普通の人には見えないんだわ!!)
あゆみがホッと安堵したのと同時に、気球は大空目掛け舞い上がった!
和気藹々と、なぎさ達と親睦を深める妖精学校の生徒達とは裏腹に、妖精学校を飛び出したグレルは、あてもなく駈け続けた。大きな森を抜けると、グレルの眼前に大きな池が現われ、立ち止まったグレルは、池の畔に腰掛けた。
「チェッ!みんなプリキュアプリキュアって、変身しなきゃ只の女の子じゃねぇか!俺の方が強いに決まってらぁ!!」
グレルは、落ちていた小石を拾い池に投げ入れた。グレルも、プリキュアを心から嫌っている訳では無かった。憧れていたからこそ、エンエンと共に妖精学校に入学したのだから・・・
やんちゃに見えても、グレルにも自分より弱い者を守りたいという、正義感を持って居た。だが、いざ入学してみると、生徒達は皆プリキュアプリキュアと騒ぎ、プリキュアの事を知っている生徒が、学校ではヒーロー扱いされる事も、グレルには気に入らなかった。そんなグレルの心の中で、プリキュアより自分の方が強かったら、自分は妖精学校でヒーローになれるのではないか?グレルがそう思い込むのに、そう時間は掛からなかった。
そんなグレルの心の隙間を狙ったかのように、突然グレルは話し掛けられ、
「そう思うか?だったら、試して見れば良い!」
「エッ!?」
周りには誰も居ないと思って居たグレルは驚き、思わず周りを見渡すと、
「グレル~!」
「エンエン!?そうか、お前が俺に話し掛けたんだな?」
グレルに手を振りながら近付いて来るエンエンを見て、さっきの声はエンエンだったのかと思い、グレルはホッと安堵した。だがエンエンは、グレルの隣に座り、グレルの言葉を聞くと小首を傾げ、
「エッ!?何の事?僕、今此処に来たんだけど?」
「・・・・お、脅かすなよなぁ、お前以外に誰も居ないだろう?」
「で、でも、僕本当に今来たばかりで・・・」
「じゃあ、誰が俺に話し掛けたんだよ?」
エンエンに否定され、少しムッとしたグレルがエンエンに問い詰めるも、二人の背後から不気味な笑い声が聞こえ始め、
「クククク・・・それは、俺だ!」
「「エッ!?」」
グレルとエンエンは、思わず声が聞こえた背後を同時に振り返った。振り返った先には、生い茂った森がある筈だった・・・
だが、二人が振り向いた背後には、見た者をゾッとさせるような闇が蠢いていた。エンエンは恐怖で涙目になり、グレルも怖かったが、友人であるエンエンの前で弱い姿を見せられず、慌てて立ち上がると、腰の竹光を抜いて闇に身構えた。
「お、お前は誰だ!?」
闇の中の人物は、そんなグレルとエンエンを見て、再び闇の中で不気味に笑い、
「クククク、俺か!?俺の名などどうでも良いだろう?それより、お前プリキュアに勝ちたいんだろう?お前の事を劣等生だと見下している、クラスの奴らを見返したいんだろう?俺が力を貸してやる!!プリキュアに勝てる力を・・・お前に!!」
そう言うと、一瞬闇の中にシルエットが浮かび上がり、黒いフードに身を包んだ人物が浮かび上がった。その姿は、魔界でカインからプリキュア達の監視を頼まれていたソドムだった。だが、グレルもエンエンも、そんな事に気付く筈もなく、自分がプリキュアに勝てると断言する闇の中のソドムに驚き、
「エッ!?俺がプリキュアに?む、無理だぜ!あんなに大勢居るのに・・・」
「お前も言っていただろう?だから・・・奴らの変身アイテムを奪うんだ!」
「プリキュアの変身アイテムを奪う!?それだって無理だぜ?」
「いいや、出来る!俺は、ほんの十数秒の間だが、時を止める事が出来る!!」
「と、時を止める!?」
「そうだ!頻繁に使える訳では無いがな・・・お前はその間に、変身アイテムを奴らから奪うのだ!!」
「グ、グレル!?」
ソドムの囁きを聞き、グレルは何かに取り憑かれたかのように、ソドムの話に聞き入っていた。エンエンはグレルを止めたかったが、その勇気が出ず、成り行きを見守っていた。グレルは闇の囁きを真に受けると、
「俺、何だか出来そうな気がしてきた!」
「その意気だ!さあ、妖精学校に戻り、プリキュア達の変身アイテムを奪ってくるのだ!!」
「オオ!」
「エッ!?ま、待ってよ、グレル!グレルゥゥゥ!!」
グレルは勢いよく来た道を駆け戻り、涙目を浮かべながら、エンエンはグレルの後を追った。
(クククク、光の化身とも呼べるプリキュアの変身アイテムを奪えば、光の封印を解けるやも知れんからなぁ・・・それに、奴らのあの人数は脅威だ!徒党を組まれれば、我らの悲願の妨げになるやも知れん!カインには悪いが、連れ帰るのは一人か二人で良いだろう!残りの奴らには・・・消えて貰おう!!)
ソドムは再び闇に溶け込み、グレルとエンエンの後を追い消え去った・・・
2、奪われた変身アイテム
妖精学校・・・
一同は、教室から出て行ったグレルとエンエンを気に掛けて居たものの、ポップが代表して二人を捜しに出掛けた。ほのかや祈里、つぼみやみゆきも、一同を代表してポップと共に捜しに向かおうとしたものの、他の生徒達から引き留められ、二人の捜索をポップに託した。
「グレルとエンエン・・・大丈夫かなぁ?」
「なぁに、グレルはちょっと頭を冷やした方がエエ・・・ポップも捜しに行ってるよって、直に帰って来るやろう!」
二人を心配したみゆきが、窓から外を見つめながらポツリと呟くと、タルトは、ポップが捜しに向かったから大丈夫だとみゆきに告げた。
アン王女も落ち着きを取り戻し、ホッと安堵したココとナッツが妖精姿に戻ると、近くに居たダビィは心底驚愕し、
「エェェ!?ふ、二人は人間の姿になれるビィ?」
「ココ!ココとナッツ、シロップとミルク、それにポップはなれるココ」
「それがどうかしたナツ?」
ココとナッツがダビィに訪ねると、ダビィは二人の目の前で土下座し、思わずココとナッツは驚愕した。慌ててダビィに止めるように言うも、ダビィは土下座を止めず、
「是非ダビィを、お二人の弟子にして欲しいビィ!ダビィは・・・人間の姿になって、真琴の役に立ちたいビィ!!」
ダビィの真剣さに心を動かされたココとナッツは、
「そこまでの思いがあったココ・・・分かったココ!」
「ナッツとココで、ダビィに教えるナツ!」
「ココ先生!ナッツ先生!ありがとうダビィ!!」
ダビィは嬉しそうにココとナッツに感謝し、ココとナッツによる、ダビィへの変身講座が急遽決った。ダビィは他の妖精達と会話する真琴をチラリと見ると、
「出来れば、真琴にはまだ知られたく無いビィ!」
「分かったココ!」
「じゃあ、場所を変えるナツ!」
ココ、ナッツが先に教室を出て、講師達が休憩する部屋へとダビィを案内した。中は本当に一休みするような場所で、こぢんまりしていた。ココとナッツは再び人間姿になると、
「僕達が変身する時のコツを教えるよ!先ず、自分がどういう人物になりたいか、頭の中でイメージするんだ!!」
「ただイメージするだけじゃ駄目だぞ!ダビィは女性だから、少女なのか、成人女性なのか、そのイメージだけでも大分変わってくるぞ」
「さあ、試しになりたい人物像をイメージしてみて!」
ココとナッツにアドバイスされ、ダビィは目を閉じて精神を統一させた・・・
(ダビィは・・・パートナーである真琴の役に立ちたいビィ!真琴の支えになってあげたいビィ!)
ダビィの心技体が合わさった時、ダビィの身体に変化が起こった!
「「オォォ!!」」
思わず身を乗り出したココとナッツだったが、目の前にダビィが変身した人物を見て思わず顔を赤らめた。何故なら、目の前にはダビィが変身した20代後半ぐらいの女性が、一糸纏わぬ姿で立って居たのだから・・・
「出来たビィ!」
全裸の女性の容姿をしたダビィを見たココとナッツは、目のやり場に困りながら、
「ダビィ、まあ出来たと言えばそうだけど・・・その姿はまずいよ?」
「エッ!?」
「ダ、ダビィ、その姿は色々と支障が・・・」
動揺するココとナッツ、その時部屋のドアを誰かがノックし、ドキリとしたココとナッツを余所に、扉が開かれると、
「ココ、ナッツ、居るんでしょう?」
「二人が出て行ったから、気になってのぞみさんと・・・」
ドアを開けて入ってきたのは、のぞみとこまち、二人は急に出て行ったココとナッツを心配して、二人の後を追って来たのだが、中に居た予想外の女性の姿を目の辺りにして、思わず呆然と立ち尽くした。目を点にしたのぞみは、室内に居る全裸の女性を指差しながら、
「ココ・・・・・どういう事?」
「アッ、いや、これには深い事情が・・・」
「深い事情!?ナッツさん・・・・・ちゃんと説明してくれるんでしょうねぇ?」
「こまち、落ち着け!これには・・・」
こまちにも問い詰められ、ナッツも激しく動揺するも、変身出来た事で有頂天のダビィは、
「ココ先生とナッツ先生にアドバイスしてもらって、この姿に・・・」
ココとナッツが、ダビィが変身した女性を、こんな姿にしたと勘違いしたのぞみとこまちは、
「ココォォォ!」
「ナッツさん!」
怒気を含んだのぞみとこまちに大声で呼ばれ、取り乱したココとナッツは妖精姿に戻り、
「違うココ!違うココ!」
「誤解ナツ!誤解ナツ!」
のぞみとこまちは、軽蔑の眼差しで二人を見ると、無言でドアをピシャンと勢いよく閉めると、踵を返し足早に立ち去った。ココとナッツは大慌てで二人の後を追い、人間姿になる事に一応成功したダビィは、一人満足そうだった。それとは逆に、何とかのぞみとこまちの誤解を解いたココとナッツだったが、教室に戻ってきた二人の疲労した表情を見て、他の一同は首を傾げていた・・・
「ファァァァァア」
メップルは大あくびをすると、なぎさに近づき、
「なぎさ、メップルは少し疲れたから、ちょっと休みたいメポ」
「エッ!?もう疲れたの?て言うか、あんた何にもしてなかったよねぇ?」
「うるさいメポ!」
ふて腐れたメップルは、コミューン姿に変化し、直ぐに高鼾を始めた。
「ほのか、ミップルも少し休みたいミポ」
「分かったわ!」
なぎさとメップルと違い、ほのかとミップルは言い合いをする事も無く、ミップルもコミューン姿に変化すると眠りに付いた。顔を見合わせたなぎさとほのかは思わずクスリと微笑んだ。
飛び出したグレルとエンエンを捜しに向かったポップだったが、外に出て長い階段を降りようとしていると、下からグレルとエンエンが駆け上ってくるのを見てホッと安堵した。ポップは階段の上で二人を出迎えると、
「グレル、エンエン、心配したでござるぞ!無事に戻って良かったでござる・・・さあ、教室に戻るでござる!!」
「いやぁ、俺もちょっと頭にきちゃってさ・・・反省してるぜ!」
グレルは、苦笑を浮かべながらポップに素直に謝ったが、エンエンは不安そうにグレルの顔を見つめ、
「グレル・・・」
グレルは、不安そうな表情を浮かべるエンエンに、シッとジェスチャーすると小声で語り掛け、
「エンエン、俺達友達だよな?エンエンは、俺の味方だよなぁ?」
「エッ!?う、うん・・・でも・・・」
グレルを止めたいと思っても、エンエンにはその勇気が出ず、思わず口ごもってしまい、結局はグレルのペースに嵌ってしまう。自分の勇気の無さに、エンエンは涙目になるも、グレルにはそんなエンエンの気持ちを分かる事も無く、
「そうだよな!俺達は友達だ!!さあ、一緒に戻ろうぜ!!!」
グレルは、愉快そうにエンエンの背中をポンポン叩き、二人はポップと共に学校の中へと戻って行った。
(クククク)
背後の闇は、そんな二人の姿を見届けその姿を消した・・・
グレルとエンエンも戻って来た事で、ココとナッツ、なぎさ達一同もホッと安堵したものの、タルトはお気楽そうに、
「どや!?わいの言う通り戻って来たやろう?」
聞いていたくるみは少し呆れたように、
「タルト・・・仮にもあなたは、ココ様やナッツ様と同じ教える立場何だから、もうちょっと心配しなさいよね?」
「アハハハ、まあタルトだし!」
ラブは思わずタルトを見ながら苦笑し、一同も釣られたように笑う中、変身授業を終え教室に戻って居たダビィは、表情を険しくしながら真琴に話し掛け、
「真琴・・・何か嫌な気配がするビィ!」
「エッ!?嫌な気配って?」
「それは・・・良く分からないビィ」
「良く分からないって・・・それじゃ対処の仕様が無いわ!」
だが、そんなダビィの不安を表すように、パフ、ぐらさん、シャルルも顔を顰め、
「何だか・・・嫌な感じがするパフ?」
「同感だぜ・・・」
「パフとぐらさんも感じたシャル?」
「嫌な感じ!?でも、アロマは何にも感じないロマ」
アロマは、不安がる妹パフを心配しながらも、自分には嫌な気配は感じないと告げた。そんな中、グレルが近付いて来ると、
「やあやあ、諸君!さっきは悪かったなぁ!!」
「グレル・・・何だかご機嫌シャル?」
「何か良い事でもあったパフ?」
「さぁてねぇ・・・なあ、エンエン!」
「エッ!?ウン・・・・・」
ご機嫌なグレルとは正反対に、エンエンの表情は曇り、シャルル達一同は小首を傾げた。グレルは一先ず自分の机に戻って、プリキュア達の事が書かれた、プリキュア教科書を開いた。その本を改めて見ると、プリキュアが変身する為に必要なアイテムに付いて調べ、グレルは教室内を彷徨(うろつ)きながら、なぎさ達の変身アイテムを教科書で確認した・・・
なぎさとほのかのハートフルコミューン・・・
ひかりのタッチコミューン・・・
咲、舞、満、薫のクリスタルコミューン・・・
のぞみ、りん、うらら、こまち、かれんのキュアモ・・・
くるみのミルキィパレット・・・
ラブ、美希、祈里、せつなのリンクルン・・・
つぼみ、えりか、いつきのココロパフュ-ム・・・
ゆりのココロポット・・・
響、奏、エレン、アコのキュアモジューレ・・・
みゆき、あかね、やよい、なお、れいかのスマイルパクト・・・
そして、教科書にはまだ書かれていない、真琴が変身する為に必要なダビィを凝視した。
(う~ん、何人か妖精姿になってるのは不味いよなぁ・・・)
グレルが腕を組んで考え込むと、ポルン、ルルン、フラッピ、チョッピ、フープ、ムープ、そしてダビィがコミューン姿に変化し、慌ててそれぞれのパートナーがコミューンを掴んだ。咲は不思議そうにフラッピに話し掛け、
「フラッピ、どうしたの?」
「何だか、酷く疲れて・・・少し寝るラピ!」
「疲れたんだ・・・良いよ!ゆっくり休んでて!!」
咲は、クリスタルコミューンと化したフラッピを、ポケットに仕舞い込み、ひかり、舞、満、薫、真琴も、それぞれポケットに変身アイテムを仕舞い込んだ。それがソドムの仕掛けた罠だとも知らず・・・
(何だか知らないがチャンスだぜ!)
グレルが目を輝かせると、グレルの心の中にソドムが語り掛け、
(さあ、今こそ行動の時だ!もう一人と協力し、プリキュアの変身アイテムを奪え!!)
グレルはコクリと頷くと、エンエンに小声で話し掛け、
「エンエン、お前も協力してくれるよなぁ?話を聞いたお前も同罪だぜ!」
「エェェ!?そ、そんなぁ・・・・・う、うん」
グレルに同罪だと言われ、エンエンは涙目になると、渋々協力する事を約束した。
(クククク、それで良い!さぁ、時を止めるぞ!!)
ソドムの叫びと共に、教室内が静まり返った・・・
一同は、時が止まった世界で沈黙し、全く身動きしなかった・・・
その中をグレルとエンエンが走り回り、ひかり、咲達、のぞみ達、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達から変身アイテムを奪い、教科書を入れる為のカバンに詰め込み、なぎさとほのかの下に向かおうとしたものの、
「何をモタモタしている!もう時間が・・・チッ、仕方無い!そいつらは構わん、奪った変身アイテムを俺に寄こせ!!」
ソドムは、鱗に覆われた不気味な両手を差し出すと、グレルとエンエンは、言われるままソドムにカバンを手渡した。それと同時に時が再び動き出し、なぎさ達も、妖精達も、何事も無かったかのようにしていた・・・
だが只一人、ピーちゃんはそんな二人の行動を目で追っていた・・・
グレルとエンエンはピーちゃんに見られているようでドキリとし、グレルはエンエンに目で合図を送り、
「エェ!?エンエン、忘れ物しただって?それは大変だ!捜しに戻ろう!!」
「あっ、うん・・・」
グレルとエンエンは、教室内に居る事に居たたまれず、教室から再び飛び出して行った。
(ピィギャァ!?)
あの二人は何をしようとしているのか、この時のピーちゃんには目的が分からず困惑の表情を浮かべた。一同は、再び出て行ったグレルとエンエン、二人の去った方を見て呆然としていた・・・
プリキュア達の変身アイテムを奪い、闇の中のソドムは、勝ち誇ったかのように不気味に笑み、
(クククク、遂に手に入れたぞ!光の力!!後は何人か浚い・・・ン!?)
逃げ出したグレルとエンエンが校舎から飛び出すと、目の前の校庭に新たな気球が降りてきた。このままじゃ盗んだのがバレるかも知れないと、激しく動揺するグレルとエンエンに反し、闇の中のソドムは、気球から降りたあゆみを見ると、
(そう言えば、後からもう一人来ると言って居たな・・・・・クククク、これは利用出来そうだ!)
どうしようかと動揺するグレルとエンエンだったが、闇の中からソドムが二人に声を掛け、
「お前達、あの娘をプリキュア達の居る教室に案内しろ!」
「エッ!?そ、そりゃあ、不味いぜ!俺達、プリキュアの変身アイテムを奪ってるのに・・・」
「そ、そうだよ!バレたら、みんなに僕達怒られちゃうよ・・・」
「クククク、大丈夫だ!さあ、この箱をお前達に授けよう!!」
闇の中から、鱗に覆われた不気味な腕が現われ、グレルに小箱を手渡した。小箱の中身は確認出来ず、グレルとエンエンは顔を見合わせながら驚き、
「これは!?」
「お前達の内、一人は先に教室に向かい、教室に着いたらこの箱を開ければ良い!後は俺がやる!!」
「そうすると・・・どうなるの?」
エンエンが不思議そうにソドムに訪ねると、ソドムは不気味な声で、
「見れば分かる・・・見ればなぁ・・・クククク」
闇の中で不気味にソドムが笑い、グレルとエンエンの背筋がゾッとした。だが、もう引き返すことは出来ない二人は、ソドムに言われるままあゆみに近付いた。あゆみは、近づいてくるグレルとエンエンを見て微笑み、グレルとエンエンもあゆみに笑み返した。
「プ、プリキュアさんだよ・・・ですよね?」
「ええ、私は坂上あゆみ!キュアエコーよ!!あなた達は、妖精学校の生徒さん?」
「そうだ・・・いえ、そうです!俺、いや、私はグレル!」
「ぼ、僕はエンエン・・・」
「そう、グレルとエンエン・・・出迎えに来てくれてありがとう!みんなはもう来てるんでしょう?」
「きょ、教室でみんなと一緒に居ます!」
「そう・・・じゃあ、私を教室まで連れて行って貰えるかなぁ?」
「は、はい!エンエン、俺は先に行ってみんなに知らせてくるから、エコーさんと一緒に来てくれ!!」
「エッ!?ウ、ウン」
「じゃ、じゃあ、エコーさん!また後で!!」
グレルはそう言い残すと、慌てて校舎内へと戻って行った。あゆみはクスリと笑いながらエンエンに話し掛け、
「そんなに慌てなくても良いのにね?」
「エッ!?ウ、ウン・・・あ、あのぉ!?」
「ン!?何?」
あゆみは、笑みを浮かべながらエンエンを見つめると、エンエンはあゆみを凝視する事が出来ず俯き、
「な、何でも無い・・・」
「そう・・・じゃあ、行こうか?」
あゆみはニッコリエンエンに微笑むと、二人はゆっくり校舎内へと入って居った・・・
3、みんな・・・大嫌い!!
グレルは慌てながら教室目指して駈け続けた・・・
(本当に何とかなるのかなぁ?)
貰った小箱を見ながら小首を傾げるも、グレルは教室に着くと、少しだけドアを開き、教室内に箱を置いて開けてみた。すると、めだかぐらいの魚のような数十匹の物体が、まるで水の中を泳ぐかのように、教室内を泳ぎ始め、やがて消え去った・・・
(な、何だ!?今の?)
(ククク、直に分かる!)
動揺するグレルだったが、闇の中のソドムは不気味に笑んでいた。エンエンと一緒にやって来たあゆみを見て、グレルは顔から大量の汗をかきながら、
「こ、この中が教室になってます!」
「そう、二人共、案内してくれてありがとう!」
あゆみは中腰になって、エンエンとグレルの頭を撫でると、教室のドアを開けて中に入った。エンエンとグレルの言っていたように、既になぎさ達一同は教室に居て、生徒達と楽しそうにしていた。あゆみは目を細めると、
「みんな、遅くなってゴメンねぇ!」
笑顔を浮かべながら、今到着した事をなぎさ達や妖精学校の関係者に伝えようとしたあゆみだったが、あゆみを見る一同の視線は困惑していた。あゆみは小首を傾げると、近くに居たみゆきに話し掛け、
「みゆきちゃん、遅くなってゴメンね!」
「エッ!?」
あゆみに話し掛けられたみゆきは大いに驚き、あゆみをジィィと見ながら小首を傾げ、髪を掻きながらあゆみに愛想笑いを浮かべたみゆきは、
「あのぅ・・・何処かでお会いしましたっけ?」
「エッ!?」
「何や、何や、みゆき、この子と知り合いなん?」
「妖精学校に来てるって事は、この人もプリキュアなのかなぁ?」
「かも知れないね!」
あかね、やよい、なおも、みゆき同様、あゆみの事を知らない素振りを見せた。あゆみは混乱し、縋るような視線をれいかに向けると、
「もう、意地悪何だからぁ・・・れいかちゃん、みゆきちゃん達に言ってあげて!!」
「エッ!?あのぅ、私の事もご存じなのでしょうか?申し訳ございません・・・どこかでお会いした事があったのでしょうか?」
話を振られたれいかも困惑し、丁寧にあゆみに謝罪すると、何所であったのかあゆみに逆に聞いてきた。あゆみは益々混乱し、
(何!?一体どういう事?・・・)
「もう、いい加減にして!笑えないよ・・・なぎささん!ほのかさん!ゆりさん!ひかりさんも、咲さん達!のぞみさん達!せつなさん達!つぼみさん達も、響さん達も、真琴ちゃんも、みゆきちゃん達に何とか言って下さい!!」
半分ベソをかきながら、なぎさ達に縋ったあゆみだったが、名前を呼ばれた一同も困惑し、顔を見合わせながら小声で話し始めるも、皆小首を傾げた。あゆみは思わず拳を握りしめ、
「みんな、どうしてそんな意地悪するの?確かに遅れて来たけど・・・ちゃんと最初に遅れるって言ったのにぃぃ!!」
癇癪を起こしたように、あゆみが一同に抗議すると、ゆりはあゆみを宥めるような仕草で、
「落ち着いて頂戴!ゴメンなさい!!私達、本当にあなたの事を・・・」
「私は、あゆみです!坂上あゆみ!キュアエコーです!!」
何故こんなに必死になって、自分の事をみんなに説明しなければならないのか、あゆみの目に涙が浮かんだ。
「あゆみちゃん!?」
「ウ~ン!あゆみって言うと、家のお母さんぐらいしか思い付かないなぁ・・・」
「キュアエコー・・・聞いた事無いよねぇ?」
「誰か知ってる?」
咲、ラブ、のぞみ、響も小首を傾げ、他の一同に問い掛けるも、皆小首を傾げた。ココとナッツ、ポップも困惑し、タルトはポンと手を叩くと、
「そや、プリキュア教科書で確認すれば済むこっちゃ!エェェと、エコー、エコー・・・・・・やっぱり載ってないでぇ?」
タルトは、手に持っていたプリキュア教科書をパラパラ捲るも、キュアエコーのページは無かった・・・
「そんなぁぁ・・・」
自分の事が載っていないと言われ、あゆみは慌ててタルトからプリキュア教科書を借りるも、確かに自分の事は載っていなかった・・・
窓際の前の方に居た魔王とピーちゃんも、ようやく異変に気付き、
「何の騒ぎカゲ!?ン、あれはあゆみ!あゆみは今着いたカゲか?」
「ギャァァ!?」
「でも、何だか様子がおかしいカゲ?」
魔王とピーちゃんは、あゆみの存在をちゃんと覚えて居たのだが、騒動の顛末を知らない二人は、顔を見合わせながら成り行きを見守った。
「全く、うるさくてオチオチ寝てられないメポ」
寝ぼけ眼のメップルが妖精姿になった時、あゆみはこの場に居る事が居たたまれなくなり、
「みんな、酷い・・・酷いよ・・・」
あゆみの目から大粒の涙がポロポロ零れる・・・
何故自分は、みんなからこんな扱いをされるのか分からなかった・・・
「私、私、何も悪い事してないのに・・・みんな、みんな・・・大嫌い!!!」
「アッ!?」
あゆみはそう言い残し、顔を覆って泣きながら教室を飛び出して行った。みゆきは、声を掛けて止めようとしたものの、あゆみは振り返りもせず駈け去った・・・
廊下から成り行きを見て居たグレルとエンエンも困惑した表情を浮かべ、
「グレル・・・あの子可哀想だよ!」
「あ、ああ・・・」
「グレル!」
「わ、分かったよ!」
普段弱気なエンエンに発破を掛けられ、悪い事をしてしまったと感じていたグレルも同意し、二人はあゆみの後を追った。その背後で、闇の中のソドムは不気味に笑い、
(ククククククク、これで奴らの絆など崩壊したも同然!後はあの娘を・・・)
ソドムはあゆみに狙いを付け、その後を追った・・・
なぎさ達は、泣き去ったあゆみの居た場所を、呆然としながら見つめていた・・・
第八十七話:あゆみちゃんって・・・誰!?
完
取り敢えず、今月中にもう一話間に合いました!