プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第九十九話:名乗れぬ者達

1、真琴の修行(その一)

 

 みゆき達が、みゆきの祖母タエの家に遊びに行っていた頃、剣崎真琴は、打倒バッドエンドピースの目標を掲げ、夏休みの間、身を鍛えようと決意していた。最初に門を叩いたのは、明堂院いつきの道場であった。閉ざされた門を、真琴はドンドン叩き、大きく息を吸い込むと、

 

「頼もう!」

 

 大声でそう叫んだ真琴に、ダビィは不安げな様子で話し掛け、

 

「ソード・・・本当にそんな挨拶で良いビィ?」

 

「だって、この前読んだ時代小説に書いてあったもの!道場を訪ねる時の挨拶何だって」

 

「ダビィは・・・違うと思うビィ」

 

 門の中の様子が慌ただしくなって、真琴とダビィは思わず困惑した・・・

 

 いつきは、真琴から明堂院流の稽古を習いたいと連絡を受け、この日つぼみとえりかも家に招き、真琴が来るのを待って居たが、門下生達が慌ただしく室内を駆け回る姿を見て訝しみ、何があったのか訪ねてみると、門前に道場破りがやって来ていると聞き顔色を変えた。

 

(折角真琴ちゃんが、家の道場に修行しに来るのに、寄りにもよって道場破り何て・・・)

 

 いつきは困惑し、つぼみとえりかに部屋で待っていてと伝えると、道場の様子を見に向かった。道場主であるいつきの祖父厳太郎は、あいにく留守をしていて、いつきの兄で、師範代であるさつきは、皆に落ち着くよう指示を出した。

 

「みんな、落ち着いて!先ずは相手の出方を伺うのが先決でしょう・・・道場にお通しして下さい!!」

 

 さつきは、道場破りを道場に案内するよう指示を出している所にいつきが現われ、

 

「お兄様、門前に道場破りが来ているとか?」

 

「ああ、そのようだね!」

 

「僕が見て参ります!」

 

「そうだね・・・殺気立っている者も居るようだし、いつき、道場まで案内を頼めるかい?」

 

「分かりました!」

 

 いつきはさつきにお辞儀すると、道場を出て門へと向かった。困惑気味に門を開けようとしている執事に、自分が応対する旨を伝えると、いつきは門を開けた。重い扉が開き、いつきが門前を見て見ると、そこにはキラキラ目を輝かせて居る、胴着姿の真琴が立って居て、いつきは思わず呆気に取られた。

 

「道場破りって・・・真琴の事だったの?」

 

「道場破り!?私は、本で読んだように声を掛けたんですけど・・・」

 

「アハハハ、何か色々間違っているような・・・」

 

「だから違うって言ったビィ!」

 

 ダビィにダメ出しされた真琴は、思わずプゥゥと頬を膨らませた。いつきはさつきに、やって来たのは稽古に来た真琴だった事を伝え、取り敢えず真琴を、自分の部屋へと連れて行った。いつきから、大体の事情を聞いたつぼみとえりか、えりかはお腹を抱えて笑い、そんなえりかを見て、再び真琴の頬が膨れた。

 

「じゃあ、早速道場に行こう!」

 

「何だか・・・嫌な予感がしますねぇ?」

 

「でも、いつきのお爺ちゃんは留守にしてるんでしょう?以前かれんさん達が来た時みたいには、ならないんじゃない?」

 

 嘗て、互いの親睦を深めようと、それぞれの町に遊びに行った時、満と薫、かれんとこまちとくるみ、ラブは、いつきの祖父厳太郎に、体験見学をさせられた事があった。その話をいつきから聞いていたつぼみだったが、えりかは、厳太郎が留守にしているから大丈夫だろうと楽観していた。

 

 道場にやって来た四人は、先ず師範代のさつきに挨拶した。さつきはニコニコしながら挨拶を返し、

 

「あなたが真琴さんですね?話はいつきから聞いています!明堂院流の稽古を付けて欲しいと言う事ですが・・・何故そのような気になったのか、差し支えなければお聞かせ下さい!!」

 

 さつきは、真琴の本心を探ろうとするかのように、ジィと視線を真琴に向けた。真琴は真っ直ぐな目でさつきをジィと見つめながら、

 

「はい!私は、バッドエンドピースに・・・」

 

「「「ワァァァァァ!!!」」」

 

 真琴がバッドエンドピースの事を話そうとしているのに気付き、慌てて、いつき、つぼみ、えりかが真琴の口を塞いだ。ウゥゥ唸る真琴に、三人は小声でプリキュアに関する話題を話すのはダメだと忠告すると、真琴はコクコク頷いた。

 

「いつき、どうしました?」

 

「い、いえ、真琴が今真琴の学校で流行ってる話題を話そうとしたので、お兄様には分からないからって話を・・・ねぇ、つぼみ、えりか?」

 

「「そうそう!」」

 

 つぼみとえりかは苦笑気味にコクコク頷き、さつきは少し首を傾げるも、

 

「まあ、良いでしょう!では、真琴さんの事はいつきに任せましょう・・・」

 

「はい!お兄様!!」

 

 いつきはさつきに一礼し、真琴に話し掛けると、

 

「我が明堂院流は、古武道と古伝空手を合わせ、独自に発展させたんだ!明堂院流の基本は・・・ただ強さを求めるだけでなく、己の心を磨き、そして技を磨く事にあるんだ!!」

 

「ハァ・・・奥が深そうですねぇ?」

 

「アハハ、まあ、難しい事はこの辺にして・・・じゃあ、型に付いて簡単に説明するね!つぼみ、えりか、君達もついでにやってみない?」

 

「「エェェ!?」」

 

 困惑するつぼみとえりかも誘い、いつきは三人に型の説明を始めた・・・

 

 型とは、色々な敵との戦いを想定して、決められた技(受け、突き、蹴りなど)を、決められた通りの順番で繰り出す事を言い、先ずいつきが三人に見本を見せた。次に三人も参加させ、自分と同じような動きを覚えて貰い、それが自然に行えるようになるまで繰り返した。つぼみとえりかは早々に根を上げたものの、真琴は懸命に覚えようとし、いつきも、離れて見て居たさつきも目を細めた。

 

「真琴、筋が良いよ!その心構えを忘れないで!!」

 

 真琴は力強く頷くも、小声でいつきに話し掛け、

 

「はい!!・・・あのぅ、これをプリキュアの姿になって試して見たいんですが・・・何処か試せそうな場所を知りませんか?」

 

「プリキュアで!?それは構わないけど・・・」

 

「じゃあ真琴さんにも、取って置きの場所を教えますね!」

 

 聞いていたつぼみが話に加わり、嘗てデューンとの戦い後、プリキュアのみんなを案内した、希望ヶ花にある丘に、四人と妖精達でやって来た。此処からは街の眺めが一望出来、素晴らしい景色が、真琴とダビィの目に飛び込んで来た。

 

「此処なら滅多に人は来ませんし、プリキュアになっても大丈夫ですよ!」

 

「ありがとうございます!ダビィ!!」

 

 真琴はつぼみに礼を述べると、真琴はダビィに合図を送り、直ぐにダビィがラブリーコミューン姿に変化した。真琴はキュアラビーズを取りだして、ラブリーコミューンにセットすると、

 

「プリキュア!ラブリンク!!」

 

「L・O・V・E」

 

 ラブリーコミューンの画面に、真琴が指で「L・O・V・E」と描くと、ダビィがその都度その文字を読み上げ、真琴の身体が光に包まれ、プリキュアへと変化していった。

 

「勇気の刃! キュアソード!!」

 

 真琴がキュアソードに変身した姿を、ジィィと伺う者が居た。土の中から不気味に目だけが飛び出して、ユラユラ花のように揺らぎながら、ソードを見つめて居た。

 

「ケケケケ、プリキュア発見!あいつを倒すか捕らえれば・・・俺はシーレインの変わりに、天秤宮の戦士になれるぞぉぉ!!」

 

 地中から目だけを出し、魔物は静かにソード目掛け近付いて行った・・・

 

「何だか嫌な気配がするビィ!」

 

 ダビィが不安そうにソードに訴えるも、精神を統一しようとしているソードは、シィとダビィを窘めた。ソードは脳内で、ゲスい表情で見下すバッドエンドピースの姿を思い浮かべると、段々イライラし始めた。そんなソードを見た魔物は、距離を一気に縮め、地中から飛び出した!!突然現われた両目がウネウネ蠢く身体がミミズのような魔物に、つぼみ、いつき、えりかが驚愕した。だがその瞬間、カッと目を見開いたソードは、

 

「バッドエンドピース!修行の成果受けてみなさい!!閃け!ホーリーソ~ド!!」

 

「プリキュアァァァ!この・・・・エッ!?」

 

 ソードの右手から、無数の剣形のエネルギー弾が、地中から飛び出した魔物目掛け炸裂した。自らの名を名乗り、ソードを倒そうとしていた魔物は、大慌ててで逃げようとするも、時既に遅く、ホーリーソードの直撃を受け浄化された。

 

「よし!今の感じね!!」

 

「「「エッ!?」」」

 

 ソードは、魔物を浄化した事に気付いて居ないようで、つぼみ、えりか、いつきは顔を近づけてヒソヒソ話を始めると、

 

「ソード、今の敵に気付いて無いようですねぇ?」

 

「まあ、ソードもあたし達も何ともなかったし、良いんじゃない?」

 

「修行の成果が出た・・・のかなぁ?」

 

 三人は、再びイメージトレーニングを始めるソードを、困惑しながら見つめて居た・・・

 

 

2、キュアローズガーデンを守れ!

 

 この日アン王女は、のぞみ、りん、うらら、くるみに招待され、ナッツハウスにやってくると、のぞみ達の他に、ココやナッツ、シロップやメルポも居て、アン王女を出迎えてくれた。キュアローズガーデンへの扉を開いたのぞみ、一同は巨大化したシロップの背に乗り込むと、キュアローズガーデンを訪れていた。別名を命の庭とも呼ばれ、全ての世界の生命を司るバラを守護しており、そのバラに害を与えると、すべての生命が止まるとも言われる大切な場所・・・

 

 先代管理者フローラより、新たにこのキュアローズガーデンの管理者に任命されたのぞみは、この素敵な場所を、多くの人に見て貰おうと開放していた。この日訪れたアン王女は、この広大な場所にある、沢山の薔薇の数々を見て目を細めていた。

 

「トランプ王国にも、沢山の薔薇はありますが、これ程壮観な薔薇の楽園を、わたくしは生まれて初めて見ましたわ!」

 

「エヘヘ、アン王女に喜んで貰えて良かった!ねぇ?りんちゃん、うらら、くるみ!」

 

「そうだね、トランプ王国にも薔薇があるって聞いたから、興味あるのかと思って誘って見て良かったね、のぞみ!」

 

「本当は、かれんさんやこまちさんも、一緒に来たがってたんですけど・・・」

 

「模試と重なっちゃったのよね!二人共アン王女によろしくって言ってたわ!!」

 

 うららとくるみも、目を細めながら気さくにアン王女に話し掛けた。アン王女は、大きく息を吸い込み、薔薇の楽園から漂う美味しい空気を味わった。見回せば、妖精達も見学に訪れていて、ココがそんな一同のガイドを引き受けて居た。トランプ王国の宮殿に植えた薔薇の数々も綺麗だとは思っていたが、キュアローズガーデンの景色は、より一層アン王女の胸に安らぎを与えた。りんは、薔薇に興味があるアン王女に説明するように、

 

「最近は、品種改良も進んで、薔薇にも色々な色が増えたんだよねぇ!」

 

「そうなの!?じゃあ、私の青い薔薇も珍しく無くなった訳ね!」

 

「まあ、くるみの場合は、フローラさんから授かった青い薔薇だから、同じとは言えないけどね」

 

「色々な種類の薔薇ですか?」

 

 興味が湧いたのか、アン王女が身を乗り出してりんに訪ねると、りんは微笑みながらコクリと頷き、

 

「赤の他に、ピンク、オレンジ、黄、青、白、そして黒・・・」

 

「アハハハ、私達プリキュアみたいだねぇ、りんちゃん!」

 

 のぞみが、自分達プリキュアみたいだと率直な感想を述べると、確かにその通りだと一同が笑った。和やかな雰囲気の一同の下に、不穏な影が迫っている事に、この時まだ一同は知らなかった・・・

 

 

 ナッツハウス周辺に異変が起きていた・・・

 

 人間ほどの大きさの巨大な二組の昆虫が現われた時、周囲の草木が枯れ果てて行った・・・

 

 ナメクジのような魔物が、地面に粘液を撒き散らしながら現われ、その背にはトンボのような者が乗っていた。周囲を見渡すと、キュアローズガーデンへの入り口が開かれて居る事に気づいた。

 

「感じるぞ!光りの力を!!」

 

 ナメクジのような魔物の目が輝くと、背中に居たトンボのような物体と融合し、トンボの羽を生やした魔物は、キュアローズガーデン目掛け扉を潜り抜けて行った。のぞみが植えた、フローラの生まれ変わりのような花は、のぞみ達に危機を知らせるかのように、ユラユラ揺れていた・・・

 

 

 アン王女は、微笑みながら顔を近づけ薔薇の匂いを嗅ぎ、そんなアン王女を見て居たりんは、

 

「今直ぐって訳には行かないけど・・・アン王女は、種から花を育てるのと、苗から育てるのと、どっちが好きなの?」

 

「エッ!?エェェと・・・お恥ずかしい話しですが、私は育てるのは・・・主に観賞するのが好きでして・・・」

 

 アン王女は、少し恥ずかしそうにりんに答えると、りんは苦笑しながら、

 

「そっかぁ、じゃあ、苗の方が良いね!アン王女、今日直ぐって訳には行かないけど、薔薇の苗を取り寄せようか?アン王女は薔薇を好きみたいだし、色々な色の薔薇を、トランプ王国に植えてくれるなら、あたしも見に行きたいしさ」

 

「よ、よろしいのですか?それはぜひお願いしたいですわ!」

 

 アン王女はりんの手を握り、感謝の気持ちを伝えた。

 

 その時、妖精達を案内していたココと、のぞみ達の側に居たナッツの顔色が変わり、

 

「みんな、気を付けるココ!」

 

「キュアローズガーデンに・・・何か嫌な気配の者が近付いてるナツ!」

 

「「「「「エッ!?」」」」」

 

 ココとナッツの言葉を聞き、瞬時に表情を険しくしたのぞみ達、

 

「私達、様子を見てくる!アン王女は、ココと一緒に妖精達をお願い!!」

 

「分かりました!ご武運を!!」

 

「ナッツは一緒に行くナツ!」

 

 シロップは再び巨大化すると、のぞみ、りん、うらら、くるみ、そしてナッツを背に乗せ、キュアローズガーデンに向かってくる何者かの正体を確かめる為飛び立った。

 

 キュアローズガーデンに続く長い階段を急降下していくシロップは、中間地点で翼の生えたナメクジのような物体と擦れ違った。シロップは、急上昇を掛けてナメクジ魔物を追い抜いた。一同に取って幸いだったのは、ナメクジの魔物のスピードは速いとは言えず、シロップのスピードならば、迎え撃つ時間を稼げた。

 

「あれね!りんちゃん、うらら、くるみ、行くよ!!」

 

「「「YES!」」」

 

 のぞみの合図に頷き、のぞみ、りん、うららはキュアモを手に持ち構え、くるみはミルキィパレットを手に持った。

 

「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」

 

「スカイローズ!トランスレイト!!」

 

 のぞみ、りん、うらら、くるみの姿を、プリキュアへと変えていく・・・

 

「大いなる、希望の力!キュアドリーム!!」

 

「情熱の、赤い炎!キュアルージュ!!」

 

「弾けるレモンの香り!キュアレモネード!!」

 

「青いバラは秘密のしるし!ミルキィローズ!!」

 

 変身を終えたドリーム、ルージュ、レモネード、ローズ、先ずはルージュが先制攻撃を仕掛け、

 

「キュアローズガーデンに、あんたのような者を入れさせない!プリキュア!ファイヤーストライク!!」

 

 ルージュは炎のボール、ファイヤーストライクで攻撃すると、ナメクジ魔物はバランスを崩しながらも、粘液を巧みに利用して攻撃を防いだ。だが、直ぐにドリームがシロップから飛び降り、

 

「キュアローズガーデンには、アン王女や、妖精のみんなが居るんだからぁぁ!プリキュア!シューティングスター!!」

 

 ドリームが、ナメクジの魔物目掛け全身をピンクのオーラで包んだシューティングスターで突っ込むと、ナメクジの魔物に体当たりをして墜落させた。粘液に付着し、共に地上に落下していくドリームを見たレモネードは、

 

「ドリーム!?プリキュア!プリズムチェーン」

 

 落下していくドリームを救うべく、レモネードがプリズムチェーンで、ドリームの身体を辛くも捕らえ、安堵の表情を浮かべながら、ドリームを上空に引っ張り上げた。

 

「ローズ、今です!」

 

 レモネードの合図に頷き、ローズはミルキィパレットをフル稼働させた。

 

「分かった!邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザード!!」

 

 青い薔薇吹雪が、ナメクジのような魔物を直撃した。

 

「プリキュア!?な、何故こんなに早く?俺は、俺は、魔界の・・・」

 

 ミルキィローズ・ブリザードの青い薔薇に包まれ、ナメクジのような魔物は、為す術もなく消滅した。安堵したナッツだったが、ドリームを見ると見る見る顔を赤くし、

 

「ド、ドリーム・・・ふ、服が!?」

 

「エッ!?服って?・・・・・アァァァ!?」

 

 ドリームは慌てて胸元を隠し、気付いたローズは、慌ててナッツの目を隠した。何故なら、ドリームが魔物の粘液に触れた箇所が溶け、ドリームの胸の谷間が見えていたのだから・・・

 

「アァァン!ナッツ、見ちゃダメェェェェ!!」

 

「ドリーム、泣かないの!」

 

「こまちさんに言いつけますよ!」

 

「ナッツ様!?」

 

「人聞きの悪い事、言うなナツゥゥゥゥゥ!」

 

 ドリーム、ルージュ、レモネード、ローズの四人から、まるで覗いているような扱いに、ナッツの不満げな声が木霊した・・・

 

 

3、あかねVSあおい

 

 夏休みも三日目を迎えていた・・・

 

 この日あかねは、父大悟が夏の間出している海の家で、助っ人のアルバイトをしていた。大悟は腰を痛め、母正子は店の仕込で忙しく、海の家にはあかねと弟元気が手伝う筈だったが、元気は早々に逃げ、あかね一人で切り盛りしていた。だが、さすがに一人では捌ききれず、あかねは、みゆき、やよい、なお、れいか、あゆみに助っ人を頼み、六人は海の家でアルバイトをしていた。あかねとなおはお好み焼き担当、かき氷担当はれいかとやよい、食器洗いはみゆきとあゆみが担当し、あゆみはエンエンとグレルに、キャンディの遊び相手を頼んで居た。

 

「へぇ、こっちではかき氷も出してるんだねぇ?」

 

「まあな!去年はお好み焼きだけで勝負したんやけど、やっぱ夏はかき氷を置かなアカン!!ほんで、今年は奮発してかき氷の機械も買うて挑んだんやけど、大正解やったちゅう訳や!!」

 

 夏場にお好み焼きだけ出しても、それだけでは客は寄りつかないと、去年悟った大悟の影響もあってか、かき氷を担当しているれいかとやよいの前には列が出来て居た。

 

「かき氷の後は、お好み焼きでもどうや!美味しいでぇぇ!!」

 

 商売根性逞しいあかねだったが、そんなあかねの店に、水着姿の五人の少女達が来店した。みさきは、黒とピンクのボーダープリントで、レイヤードスタイルのビキニ、下にはスカートも付けていてどこか可愛らしさがあった、あおいは、黒に赤のラインが入った三角ビキニで、華奢なストラップが付き、ヒップラインをみせない黒と赤のショートパンツ姿、やおいは、チューブタイプのドレスがセットになったビキニで、ワンピースはアウターとしても使え、なみは、大胆に背中を魅せた黒のフォルターネック水着を、れいなは、黒と青の柄の三角ビキニで、下は両脇を紐で縛るタイプで、中学生が着るような水着では無く、その姿を見たれいかは思わず頬を染めた程だった。

 

 みさきは気さくに一同に話し掛け、

 

「ヤッホー!良く会うよねぇ?」

 

「アッ!?みさきちゃん、いらっしゃい!」

 

 みゆきとみさきは、この前みゆきのお婆ちゃんの家での出来事以来、少し打ち解けた間柄になったようだが、他のメンバー達は、まだぎこちなかった。なみとれいなは、店内をキョロキョロ見回し、

 

「なぁ、あの変態妖精は居ない?」

 

「居るなら素直に仰有い!直ぐに出て行くから!!」

 

 少しオドオドしているなみとれいなを見て、思わずみゆきは小首を傾げ、

 

「変態妖精!?ひょっとして・・・魔王の事?」

 

「それ以外居ないだろう!」

 

 憮然とした表情でなみが答えると、あゆみとみゆきは苦笑しながら、

 

「アハハハ、確かに・・・」

 

「ウン!今日私達はあかねちゃんに急に手伝ってくれって頼まれたから、魔王は家に居るよ!!それがどうかした?」

 

 みゆきから、魔王はこの場に居ないと聞いたなみとれいなは、心の底から良かったとホッと安堵し、

 

「い、居ない!?居ないんだな?」

 

「それを聞いて安心したわ!」

 

 二人は安心したように倚子に腰掛け、やおいはこっそりれいなの肩紐を緩めようとして、やよいに止められる。

 

 そんな中、あかねとあおいは、険悪そうな雰囲気を醸し出していた・・・

 

「何や、何しにきたん?」

 

「ご挨拶だねぇ!わざわざ寄ってやったんだ!あんたの所のお好み焼き・・・美味いんやろうなぁ?」

 

「当たり前や!」

 

 バチバチ火花を散らすあかねとあおい、他のメンバーは、この暑い中よくやるなといったような表情で、呆れたように二人を見つめた。

 

「せや!なぁ、ウチと勝負せぇへん?」

 

「勝負!?何の勝負や?」

 

「折角海に来とるし・・・ビーチバレー何てどうや?」

 

「面白いやんけぇ!みゆき、やよい、なお、れいか、あゆみ、ちょっとお店の方頼むわ!ウチはちょっと用事が出来たもんで・・・」

 

 あかねはエプロンを脱ぐと、オレンジ色の半袖シャツに、クリーム色の短パン姿になり、あかねとあおい、両者は睨み合いながら海の家から出て行った。

 

「あ、あかねちゃん!?」

 

「放っておきなさい!その内戻って来るでしょう・・・それより、私はかき氷を貰おうかしら・・・ブルーハワイね!!」

 

「アッ、ビューティ狡い!私は・・・苺にしよう!!」

 

「じゃああたしは、メロンで良いや!」

 

「私は・・・大人の味、レモン!!」

 

 四人はれいかに注文すると、テーブルに座りながら、砂浜に出たあかねとあおいを暇つぶしそうに見つめた。

 

 勝負しようと砂浜に出たものの、海水浴客が一杯で、ビーチバレーが出来そうなスペースは見当たらなかった。痺れを切らしたあおいは、バッドエンドサニーの姿に変化し、闇の絵本とでも呼ぶべき本を開くと、

 

「全く邪魔や!世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!白紙の未来を、黒く塗りつぶしたれぇ!!」

 

「アッ!?何してんのや!」

 

 バッドエンドサニーは、白紙のページに、黒い闇の絵の具を叩き付け塗りつぶすと、バッドエンド空間を発生させた。バッドエンド空間に取込まれた人々から、バッドエナジーが溢れ出し、闇の書の中に吸い込まれて行った。あかねは顔色変えると、スマイルパクトを取りだし、

 

「あんたの好きにはさせへんでぇ!プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!!」

 

 あかねもまたキュアサニーに変身し、両雄が睨み合った!!

 

 みさき、れいな、なみ、やおいは、かき氷を食べながらそんな二人のサニーを見つめ、

 

「あらら、夏の間はお休みするって決めたのにね?」

 

「放っておきなさい!」

 

「本当、単純な奴だなぁ・・・」

 

「プププ、サニーもマーチには言われたく無いと思ってるよ!」

 

「何ぃぃ!?」

 

 やおいにからかわれ、なみがやおいを追い回していると、店内に居たみゆき達も、サニーの援護に行こうとするも、みさきは頬を膨らませ、

 

「エェェ!?お客さんを置き去りにする気?」

 

「だってぇぇ、サニーを援護しなきゃ・・・」

 

 みさきに不服をいわれ、みゆきは困惑気味に答えると、再び倚子に座ったやおいがかき氷を食べながら、

 

「大丈夫だよ、私達夏の間は仕事しない事に決めたし!」

 

「でも、現にバッドエンドサニーは・・・」

 

 れいかがバッドエンドサニーを指さすと、なみとれいなもみさきとやおいに同意し、

 

「人が邪魔だから、バッドエンド空間を発生させただけだろう?放って置きなよ!」

 

「あなた達が参加するなら・・・私達も参加しない訳には行かないわよ?あなた達が此処に居るなら、私達も手出ししないわ!」

 

 見たところ、バッドエンドサニーは、アカンベエを召喚する気配も無さそうで、みゆき達はサニーを信じ、成り行きを海の家から見守った。

 

 バッドエンドサニーは、サニーも変身した事で口元に笑みを浮かべると、

 

「お互いプリキュアになったんやし、どうや!?ただのビーチバレー何か止めへんか?」

 

「どう言う意味や?」

 

 バッドエンドサニーは、砂浜に直線を書くと、

 

「あんたが、サニーファイヤーをこの線の上に放る、それをウチとアンタでスパイクし、どちらのライン上にサニーファイヤーが落ちるかで勝負を決める・・・ちゅうのはどうや?」

 

「一発勝負ちゅう訳やな・・・エエで!」

 

 二人のサニーに緊張感が走る中、背鰭(せびれ)を海面に出しながら、海から近付いて来る物体に、二人はまだ気付いては居なかった・・・

 

(ククク、何だか知らねぇが、力が漲ってくるぜぇぇ・・・ン!?あそこに居るのは、プリキュア!?ククク、こいつは付いてるぜぇぇ!!)

 

 二人のサニーに狙いを付けた物体が、海面から獲物に狙いを付けて一気に近づいて来た!!

 

「ほな、行くでぇぇ・・・プリキュア!サニーファイヤー!!」

 

 サニーは、炎の力をバレーボール状に凝縮して、ライン上の空中に出現させた。それと同時に、二人のサニーがジャンプした瞬間、海面からも巨大な鮫のような魔物が、大きな口を開きながらジャンプし、

 

「プリキュア!貴様らを噛み砕き、この魔界の殺し屋、ザン・・・」

 

「「邪魔やぁぁぁぁ!!」」

 

「エッ!?」

 

 横からゴチャゴチャ言う魔界の者に切れ、二人のサニーが同時に、サニーファイヤーを鮫の魔物に向けて放った。二人のサニーが、偶然力を合わせて放ったツインサニーファイヤーの威力は凄まじく、魔界の殺し屋を名乗った鮫に似た魔物を、瞬殺で浄化した・・・

 

「ねぇ、何か今鮫みたいなの、サニー達の側に居なかった?」

 

「何か居たような、居ないような?」

 

 みゆきの言葉に、あゆみも小首を傾げながら居たような気もすると呟いた。なおは二人のサニーを指差し、

 

「アッ!?戻って来た・・・」

 

 全速力で海の家に戻って来た二人のサニーは、

 

「今度はかき氷の早食いで勝負やぁぁ!」

 

「望むところやぁぁ!!」

 

「あのぅ・・・その前に、バッドエンド空間を解除して頂けませんか?」

 

「「勝負が先ぃぃ」」

 

「やれやれ・・・この二人、仲が良いのか悪いのか?」

 

 なおは首を竦め、かき氷の早食いをして、頭を抑えて同じような仕草で悶絶する二人のサニーを見て呆れたように呟くと、一同から笑い声が漏れた・・・

 

 

 

 鏡に覆われた部屋・・・

 

 その中で、憂いの表情を浮かべた青髪の青年が、ジィと正面の鏡を凝視していた。

 

「また一つ、悪しき気が消えた・・・やはりこの世界に、悪しき者達が侵入しているようだ!でも、今の僕では・・・知らせねば、彼女達に!」

 

 青髪の青年が見つめる鏡の中には、TAKO CAFEで楽しげに会話をする、なぎさとほのかの姿が映っていた・・・

 

            第九十九話:名乗れぬ者達

                  完




遅くなりましたが、第九十九話投稿致します!
タイトルの名乗れぬ者達とは・・・ソード、ドリーム達、Wサニーに呆気なく負けた魔界の者達の事です!

プリキュアオールスターズ公開されましたねぇ・・・
ミュージカルが大嫌いな私ですが、今回でオールスターと呼べそうな作品は最後かも知れないと聞きましたし、見に行こうかなぁとも考えております。
魔法つかいプリキュアで人魚が出ましたが、私が双魚宮のニクスで構想したのと同じように、人魚が空を泳ぐ描写があるとは思いませんでしたw
これは、魔法組を出せと言う天のお告げですねw
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