一般里人霊夢 作:リーファーシュロン
年一のノルマ達成です。気楽にお読みください。
博麗の巫女と友達になって早数週間。あれから巫女の引き継ぎは上手くいったらしく、何度か里に降りては見回りのついでに私と理沙と遊んでいる。本当はこちらから神社に出向いてあげたいのだが、子供云々以前に神社までの道中は妖怪に襲われる可能性もあるため仕方ない。あ、なるほど。うちの神社に参拝客が訪れなかったのはこれが原因か。そりゃ身の安全を保証できないなら行くはずもないわよね。さすがに前世含めがらんどうの神社は見るに堪えないので、今代巫女にはその辺上手くやってもらいたいものだ。
それはひとまずさておいて、寺子屋設立にあたって我が上白沢家はある問題に直面していた。土地はある。資金もある。では次に足りないのは?そう、職員だ。事務員然り教員然り労働力というものが決定的に不足していた。慧音の方でも既に心当たりのある人物に声をかけたり募集をかけたりしているみたいだが、如何せん定職をもっていたり自分の生活で手一杯のようで状況は芳しくない。私もなんとかしようとは思っているのだが子供の力でできるのはビラ作りにビラ配りぐらいでどうしようもなかった。
そんな苦境に立たされている最中、私はお使いで買い出しに出ていた。近頃は度を理解したのか理沙のストーカー癖も鳴りを潜め、全日から頻繁程度には遊ぶ機会が減っていた。寂しくもあるが転生前はこのぐらいの調子だったので元に戻ったと言えるかもしれない。
すっかり顔馴染みになった店を出て帰路につく。日はまだ高く寄り道しても良さそうだなーと考えはするものの、特にすることもなかったので真っ直ぐ帰ろうとした矢先、ふと懐かしい雰囲気……香りがした気がした。好奇心というか、警戒心?に駆られるように私は辺りを見回した。そして失くしたパズルのピースを探すようにあちこちに目をやる私の意識をぬうかのように、そいつは眼前を横切った。
シニョンをつけた桃色の髪。導師服に胸元の牡丹。右腕に巻いた包帯。彼女のことを見間違えることなど絶対に無い。数々の教えを受け、苦労を共にし、死闘を演じた鬼……いや、仙人。茨華仙の姿がそこにはあった。
茨華仙は人々の間では仙人として扱われているが、その実鬼である。性格的な意味もあるが主に種族的な意味で、しかもあの茨木童子らしい。詳しい来歴は知らないが、右腕を切り落とされた後になんやかんやあってそうなったようだ。今右腕に巻いている包帯の下には何もなく、妖力で腕の形をとっているだけらしい。かつて私は失われた右腕を得て完全体となった華扇と死闘という名の鬼退治を演じたことがある。右腕を得たことで発揮される彼女の妖力は鬼の名に恥じぬ凄まじさで、博麗の巫女である私でさえ歯が立たなかった。その時は華仙自身のサポートや、不本意だが後から乱入してきた天人の助言もあってなんとか退治することができたが、あんな状況はもう二度と御免被る。
時期的におそらく彼女は己の半身である右腕を探している最中だろう。しかしこれまで里で彼女の姿は見かけたことがなかった。以前の私と交流があった人物の中でも真っ先に上がる人物の一人だったので時々いないかと目を光らせていたのだが、今日の今日まで一度も会うことはなかった。この辺りに住んでいるわけではないので特に不思議には感じなかったものの、華仙は割と人里に来ていたイメージがあったので意外だった。彼女の後ろ姿を懐かしさを込めてなんとなしに眺め続けている、そんな私にある考えが湧いてきた。
「あなた、ずっと私を見てるみたいだけど何か用かしら?」
私のしつこい視線を察知したのか不意に向こうから話しかけてきた。不審に思われたかもしれないがこれはこれで話す口実ができたので好都合だ。
「いや、あまり見ない人だなと思って」
まずは適当にはぐらかす。何せこっちは彼女の素性をある程度知っているが、彼女は私のことを何一つ知らないので下手に食い下がると余計怪しまれてしまう。
「確かに最近は里に下りて来てはなかったけど……」
「最近ってどれぐらいかしら」
「ざっと十年ぐらい……」
そりゃ見ないはずだわ。妖怪と人間の時間間隔はほど遠い。何千年と生きる妖怪に加え、妹紅のような不老不死まで存在する幻想郷においてその格差は圧倒的だ。
「ま、まぁ、そんなことはさておいて、私の名は茨華仙。人々を導く仙人です」
「私は上白沢霊夢。よろしく、華仙」
「年上には敬語を……って、子供だから仕方ないか。上白沢というとたしか……」
「そう。歴史家の上白沢のとこのよ」
「まさかたった十年の間にあの上白沢殿にお相手ができて、しかもこんなに大きなお子さんまでできてるなんて……」
苦い顔をしながらぶつぶつと何かを呟いているけど、私にはよく聞こえなかった。
「それでだけど」
「それにしては似てないような……。お父さん似なのかしら?」
「ちょっと、聞いてる?」
話しかけても上の空の様子で考え込んでいるらしい。目の前で手をヒラヒラ振っても反応はなし。やむを得ず強硬手段として頬を引っ張ることにする。ぎゅむー、と抓んだ頬をゆっくり横に引けばようやく彼女は我に返った。
「いひゃひゃ!いったい何を!?」
「いや、そっちが全然反応してくれないからじゃない……」
触れられて初めて自身の失態に気付いた華仙はきまりの悪い顔で「おほん」と咳払いをすることで誤魔化そうとしたが、もう既に遅いと言わざるをえない。
「華仙と慧音ってどういう関係だったの?」
「過去何度か会って話したことはあるけど、知り合いといえるほどの関係ではないかもしれないわね。こっちが一方的に知っているような感じかしら」
「あ、じゃあ慧音が青空教室をやっていたのは知ってる?」
「えぇもちろん。妖怪の身でありながら人々を導こうとする姿勢……なかなかできることではない。尊敬に価するわ」
「それなら話が早いわ!うち、今こういうことをやっているんだけど――どう?」
ここぞとばかりに私は職員募集のビラを華仙に押し付けた。戸惑いながらも押し付けられたビラを彼女は口元に手を添えながらまじまじと見つめている。
「ちょっと前から募集してるんだけど、どうにも芳しくなくて……非常勤でもいいから手伝ってくれると助かるわ」
「う、うぅむ。まぁ考えてはみましょう」
「ほんと!?ありがとう!あ、これ迷惑料代わりのお饅頭。良かったら食べてね」
「あら、どうもありがとう」
先程のビラよろしく饅頭を押し付ければ彼女はなんの疑いもなく受け取ってくれた。甘いわね、あんたが食い物に弱いってことは前世で既に学んでるのよ。
「それじゃ、また会いましょう。楽しみに待ってるわ」
「あ、ちょっと……行ってしまった。忙しない子ね」
とりあえず声を掛けることには成功したのでここは足早に去ることにする。名残惜しい気もするが彼女が勧誘を受けようと断ろうと、また会う機会は何度でもある。何事も焦らないのが大切だ。
「それにしても不思議な子供だったわね。感情ははっきりしてるのに空気のように掴みどころがない。それに初対面の私に対してまるで気心の知れた間柄のような振る舞い……杞憂だとは思うけど少し調べてみようか」
志願者が来た……らしい。なぜこんな曖昧な言い回しなのかというと、単に私がその姿を見ていないから。慧音が言うには私のビラを持って家までやってきたらしい。おお、なんたる僥倖、私の奮起の甲斐もあったものだ。で、軽く話をしてまた後日面談をすることになったらしい。容姿を聞いてみたら真っ赤な髪の少女とのことでどうやら華仙ではないみたいだ。期待とは違ったが人手が増えるのは良いことだ。
そんなこんなで面談当日。慧音の家でドキドキしながら待っていると戸を叩く音が。返事をした慧音が腰を上げ玄関口に向かっていった。
ビラを見て志願してきたと言っていたが手当たり次第に配っていたのが災いしたかあいにく私に心当たりはない。完全に初対面かもしれないし、百に一の確率で知り合いかもしれない。鬼でも蛇でもどんとこいと待ち構えていれば、やがて二人の足音と共に応接間の襖が開いた。
「どうぞおかけください」
「どうも……あっ」
慧音に案内され現れたのは口元までもごっそり覆うマントを羽織った情報通りに赤い髪色の少女。なんか、見覚えが、あるようなないような。とても曖昧な感じだ。前世で会った気もするし、つい最近見た気もする。
軽い礼をして足を踏み入れた彼女が顔を上げ私の姿を目に入れた瞬間、ギョッとした様子で僅かながらに目を見開いた。
「お知り合いでしたか?」
ただその硬直があまりにも露骨すぎたため、慧音もその視線が私に向いていることを察していた。
「は、はい。まあ……」
知り合いだったかなぁ。少なくとも私には覚えがないが、その疑問もそのうち晴れるだろう。
苦い顔をしながら対面に少女は腰を下ろす。続いて慧音が私の隣に腰を下ろせばついに面談の始まりだ。
「それでは始めさせていただきます……私の隣の者はお気になさらずに」
「はぁ」
「では、改めてお名前をお聞かせ願えますか」
「はい。関場 芹です」
「今回の志望に至った動機は?」
「以前の職がなくなり途方に暮れていたところをそちらの少女に声をかけられまして……」
「うん?」
首を傾げる私。
「いや、先月茶屋でボーッとしていた私にビラを押し付けてきたでしょうに」
そうだったかな……。やっぱり手当たり次第に配ってたからよく覚えていない。
ごめん、覚えてない。と正直に話せば芹さんは頭を落とし密かにため息をついた。
「……どうしてこんな奴の誘いに乗ってしまったのかしら」
「えっと、続けてよろしいですか?」
「あぁすみません。そのときに職員を募集していると聞きまして、条件も悪くなさそうだったので応募させていただきました」
「ふむ、それでは次に――」
私が口をはさむ隙間もないほどに、言い淀むことなくすらすらと二人の問答は進んでいく。読み書き、計算の習熟、教育の経験、勤務時間のすり合わせなどなど、粛々と行われていく面談の中で私ができたことといえばお茶汲み係ぐらいであった。やがてそれも飽きた私は特に断ることもなく黙って部屋を後にした。芹さんの方は視線だけ向けてきたが慧音に至ってはいつものことだと無視を決め込んでいた。
席に居合わせた手前、外に出る気にもならず玄関先で掃き掃除をすることにした。鼻歌交じりに掃除を続けていると前世で一人神社を掃除していた時を思い出すが、ここではよく顔見知りに声を掛けられるので寂しさが紛れる。あの頃の来客なんて賽銭を入れない友人や妖怪か、いたずらに来た妖精ぐらいだったなぁ。
ふと考える。私が定めた前世で知り合った人妖と関係を取り戻すという目標。それに含まれるこれまで会ってきた者は今どれぐらいなのだろう。慧音、妹紅、(魔)理沙、茨華仙、あの姉妹に……あいつとか、あれとか。忘れちゃいけない博麗の巫女も。
「先はまだまだ長いわねぇ……」
想像以上の進展の無さ、見えない道のりに思わずため息が出る。
「――では、本日はご足労いただきありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
不意を打つように家の中から話し声が聞こえてきて、慌てて姿勢を正し掃除をしていたふりをする。ガラガラと戸を開け出てきたのは芹さん。一度中を振り返り一礼をして、また戸をガラガラと閉じる彼女とぴたりと目が合い硬直する。お互いそんな気は全くなかったため気まずい沈黙に晒される。
「えっと、ありがとうございました」
先に目を逸らしたのも沈黙を破ったのもあっちだった。しかしいわれのない感謝の言葉に私の頭は疑問でいっぱいだった。
「いや、こっちが感謝することはあっても貴方に感謝される覚えはないんだけど」
「……仕事をなくした私を強引に連れ出してくれたのは、貴方だったので」
そう言った彼女はただでさえ長いマントの襟の中に自分の頭をさらに引っ込めた。素直な気持ちを吐露したせいか心なしかその顔は赤い。
「そ、そんなことで?」
「貴方が励ましてくれなければきっと、私はずっとあそこで黄昏れるままでしたから」
ほ、ほんとに私はそんなことをしたのかしら……?正直まったく身に覚えがないので申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「本当は今日、これが一番の目的でした。仕事なんて最悪見つからなくてもよかったので。……まぁこんなことになるなら来なくてもよかったとは思いましたが」
「そ、それはごめんなさい」
ため息交じりの彼女の言葉の数々が胸に突き刺さる。これでは貶したいのか感謝したいのかさっぱりだ。
「とりあえず言いたいことはこれだけです。ありがとうございました」
言い返す言葉も見つからずたじたじの私を捨て置き彼女は去ろうとする。
……このまま何も言えず帰していいのだろうか?否、それはダメだと私の直感は告げる。だが何を言えばいいのか見当もつかない。それでも衝動のままに私は芹さんの背中に叫んだ。
「今日は来てくれてありがとう!」
赤い外套に包まれた首が振り向く。
「あんたが何者だろうと私たちはいつでも歓迎するから、これからもよろしくね!……あと、どうせ年下相手なんだから畏まらなくたっていいわよ」
「……ほんと、わけわかんない」
「えっ?なんか言った?」
「なんでもない。じゃあ、明日からまたよろしく」
「えぇ、よろしく!って、明日から!?また!?ってことは……」
私の驚きに答えはなかった。でも、正面を向き直る彼女の顔は微かに、確実に笑っていた。
あいつと初めて出会ったのは前の仕事を慌てて辞めた日の昼下がり。ひょんなことから職場で私が妖怪じゃないかという噂が立ち始め、周囲の視線に耐え切れなくなって逃げるように仕事を辞め、人里で暮らすなら仕方ない、人間なんてそんなもんだと自嘲しつつ、でも途方に暮れていたそんな時だ。
『ちょっとそこのあんた。仕事に困ってたりしない?教員とか興味ない?』
陰鬱なオーラを纏った私に臆せず近づく、とにかく押しの強い変な奴。そんな気分じゃないと突っぱねても食い下がるものだから私もつい身の上話をしてしまった。
『……え?職場を追われた?じゃあちょうどいいわね。うち今度寺子屋開くんだけど職員が足りなくて。勤務形態もお給金も相談可だから悪条件じゃないと思うんだけど』
みっともなく逃げ出した自分を取り繕いたくて虚飾を交えた話をしても彼女はなんら気にすることはなかった。遠回しに私が怖くないか聞いてみても……。
『……いや、私は別にあんたの境遇とか立場とか知ったこっちゃないし。ちゃんと仕事してくれるだけでいいんだけど』
純粋に人手が欲しいだけのようで身構えていた私が馬鹿らしくなった。
『女だとか、浮浪者だとか、妖怪だとか、そんなこといちいち気にしてちゃこの幻想郷じゃ生きていけないわよ。なんなら神様だって掃いて捨てるほどいるんだから人間一人が何よ。数で言えばどいつもこいつも一緒よ。堂々としてなさいって』
人間の癖して妖怪はおろか、あまつさえ神すら平等に扱う彼女の考えはすっと私の中に吸い込まれていく。
『私はあんたが何者だろうと気にしない。その気になったらいつでも来て。いつでも歓迎するから』
だから、まぁ、行ってやろうかなって気になった。
「……覚えてないなんて嘘じゃない」
去り行く赤毛の後姿をアホみたいな顔で見送る。結局何も思い出せなかったけど人手が増えたので良し!ということにしておこうかしら。
寺子屋開校の準備が着々と進んでいくことに深い感慨を覚え改めて気合を入れなおす。
「やぁ、こんにちは」
芹さんの背中を見つめる私の背後から誰かに声をかけられた。聞き馴染みのない声に慧音の知り合いかな?と思い、こんにちはーと振り返る。そこに今日一の衝撃が待ち構えているとも知らずに。
「初めまして、上白沢霊夢殿」
白と青の導師服。手入れされた毛並みのような金髪。頭頂部に突き立った二本のとんがり。そして大妖怪の風格と言える九本の尻尾。
「私の名は八雲藍。今後ともよろしく」
いつか会わなければならないとは思っていた。が、まさか、こんな道端で邂逅するとは夢にも思わなかった。本来ならもっと、事件の最中とか宴会でようやく顔を合わせられるかといったような影の存在だ。予想外の展開に私の体がこわばるのも無理なかった。
「あっ、えっと……初めまして」
そんな私の様子を感じたのか、彼女は朗らかな、しかし狐のような細みのあるほほ笑みをして見下ろしてきた。
「緊張させてしまったかな。すまない、君には私の姿は少し刺激が強かったようだ」
「い、いえいえ!全然そんなことないです!」
うぅ、気をしっかり持て!ちょっと意表を突かれたぐらいで何を動揺してるの!いつもならこいつを相手するなんてなんてことないじゃない!
「上白沢殿が捨て子を育てているとは前々から聞いていたが……かようにして愛らしいね。君ほどの歳なら橙と気が合うかもしれないな」
「ち、橙……?」
話すらほとんど耳に入っていないが、これまた懐かしいその名前を聞き逃すことはなかった。
「あぁ、橙というのは……まぁ私の子供みたいな子でね。目に入れたとしても痛くない、とても大切な存在さ」
……駄目だ、情報の洪水に全然思考が追い付いていない。
「ふむ、どうやら寺子屋開校の準備は順調に進んでいるみたいだね」
狐目の先には私が貼っておいたビラ。
「職員募集中か……興味深いね。私も考えさせてもらおう」
「えっ、それってもしかして」
「ご想像にお任せするよ。ただ、期待しておいて損はないと思うよ」
なんだかわけがわからないうちにもう一人人員が増えてしまった。それも、とんでもない逸材を!
「さて、買い物の途中だからそろそろ失礼させてもらうよ。何せまだ油揚げを買ってないんだ」
油揚げ、油揚げとうわごとのように呟きながら足早に去っていく影をあっけにとられたまま見守る。
……ちょっと待って、一度整理しよう。
芹さんの採用が決まったと思ったら突然あいつが現れた。この幻想郷において絶対的な意味をもつ八雲の姓をもつ妖怪。幻想郷の創設者の一人である奴の式神にして最強の妖獣。そんな奴が里にふらっと現れてあまつさえ寺子屋の教師に興味をもつ?そんな突拍子もないことが目の前で起こったと?そ、そんなこと……
「(信じられるかぁああああ!!!)」
咄嗟に慟哭を心の内に止められたのはある種奇跡としか言いようがなかった。
しかし、ひとしきり叫んで落ち着いてみるとこれはなかなか幸運なのではないだろうか。人手が増えるのはもちろん、彼女と日常的に顔を合わせるとなると必然的に邪魔な時に出て邪魔な時にいないあいつの足取りも掴めるかもしれない。そしたら……ひょっとしたら、私がここに生まれた理由もわかるかもしれない。ただの勘でしかないけどあいつなら……
ありえるはずがなかった、たった数分の出会いは私の心にしこりを残して終わった。
「接触は完了」
ひとまず無事に任務の第一段階を達成できたことに安堵する。
「……しかし」
得たいの知れない命令はよくあることだが、今回に限ってはあまりにも不可解な点が多かった。式が主の命令の意図を探ってはいけないのは私自身よく理解している。それでも疑問を抱かずにはいられなかった。
ただの人間に接触し関係を築けなどという任に何の意味が?いったい彼女に何を見初めたのですか?
貴方様が彼女に異常なほどの拘りをもっているのは私でも察せられます。しかし私は式。ただ主の為に在り、主の命を遂行するために動く存在。主に式の思考は読めても、その逆はなりえない。
「紫様……貴方は彼女に、上白沢霊夢に何を見ておられるのですか……?」
タイトルの元ネタは「You will know our names」から。しかし執筆が進むにつれ原型が失われていったもよう。
マニアックな原作ネタや誰にもわからないような小ネタ仕込むの好き。