広場の閉鎖に伴い未完のままとなっていましたが、何とか完結させたいと思い、執筆を再開いたしました。
既に20万字以上の長編となっておりますが、そのままではネット小説としては大変読み難いものである為、徐々に修正しながら更新していきたい所存です。
作品は放浪者ロロがいた頃の白の世界が舞台となっており、自分が別途執筆していた赤、紫の物語、及び構想だけはあった緑、黄、青の物語と連動する形となっています。
基本はフレーバーテキストやカードイラストに準じますが、それでも自分の独自設定をふんだんに盛り込んでおります。
また、カードにおける「銀狐ハティ」は「一角獣アインホルン」を庇って犠牲になった可能性が高いと見ておりますが、この小説では主役級の登場人物として長く活躍し続けます。(元々勘違いから始まり、スクルディアとのコンビが好きになり過ぎてしまった為……)
他の色の世界のストーリーでは主人公格のキャラクターが登場しますが、白の世界は敢えて群像劇を意識した構成にしており、BS01から始まるフレーバーテキストに沿ったストーリー展開を強く意識しています。
なお、この作品ではドラマCD『異界見聞録』も参考にしていますが、フレーバーテキストとの相違点がある場合は原則としてフレーバーテキストを優先してあります。
物語の鍵を握る【星創る者】についても自分なりの解釈で書いており、【星創る者】の三従者である「飛鋼獣ゲイル・フォッカー」「蛇竜キング・ゴルゴー」「獄獣ガシャベルス」たちも非常に重要な役割を担うキャラクターとして登場します。
長くなりましたが、バトルスピリッツの背景世界について、こういう解釈もあるんだなと思って頂けたら、自分はとても嬉しい限りであります。
海が死んだ。海洋の生命達は住処を追われ、変質した己の体によって求められるままに、大空を新天地とする他なかった。
その鯨は天空を揺蕩いながら、旅路についていた。その旅路の過程では、多くの同胞が環境の変化と機械化していく肉体の変化に適応しきれず、力尽きていった。
しかし、鯨の背と体内には、未だ適応しきれないでいるものの今日まで生き長らえてきた同胞達がいる。その者らを守り助けること、それが自身に課せられた使命であると鯨は信じている。事実、鯨はそれだけの力を得た。
旅路に行く当てなどはなかったが、目的はある。自分の体に棲みつく同胞達が暮らせる新世界の探求、それと自分自身がその世界に相見えること。変質した己の体では、その世界で暮らす事など出来ないであろう。ただ、それでも一目見ておきたい。
鯨の貫く信念に共感を覚えたのであろう、いつしか鯨と同じく海に住めなくなった魚達が鯨と共に空を泳いでいた。
大空を奪われた鳥達も徐々に集ってきた。鯨はその者らを満遍なく受け入れる。ある仲間は鯨が重みに耐えかねて飛べなくなることを危惧したが、鯨は鳥達を追い返すことが出来なかった。
自分があの門よりもたらされた異変から逃げることしか出来なかった時、多くの同胞達がなすすべもなく苦しみ、倒れていった光景が脳裏に焼き付いて離れない。鳥達も同じ境遇の筈である。
雷鳴が鳴り響いた。また奴らが来たか。鯨と仲間達は身構えた。
門より現れし、雷の銛を持つ機人。異様な熱量を放つ浮遊する物体達。まるで連中は環境に適応できずにいる生命の生存は容認できない、とでも言う様に執拗に鯨と仲間達を付け狙う。その度に鯨と仲間達は機械化した己の体を武器にして奴らを退けた。誰が言うでもなく、いつしか鯨と仲間達は奴らをこう名付けていた。〝侵略者〟と。
空の項
白き機人は高き天より出現し、上空より鯨を見据えた。それと同時に発光する飛行物体の群れが鯨と仲間達を包囲すべく中空に散開する。
逃げ場はない。奴らは何度撃退してもその数を増して攻めよせてくるらしい。
今回も生き延びることはできるだろうか。仲間達の誰しもが瞬時に思った。鯨とてその心配は避けられない。共に戦う仲間達と、自分に命を預けている無力な同胞達の被害を可能な限り最小限に抑えなければならない。
その刹那。奴らは攻撃を開始した。
機人の指揮により、飛行物体達が鯨と仲間達を取り囲む。あの飛行物体は、自分からは積極的に攻撃してこないが、機人の雷から魚達が逃れるのを断固として阻止しようとしてくる。
機人の放った雷の銛が一閃し、鯨に突き刺さった。鯨の体に激痛が奔る。それと同時に焼け焦げ、異臭を放ちながら仲間の何人かが地上に落下していった。
鯨の背から力無き者らの悲痛の叫びが響く。鯨は怒った。大きく旋回し、機人に喰らいかかる。だが、飛行物体どもがそれを許さず、鯨の前に立ちはだかる。
鯨は飛行物体の群れに正面から激突した。激痛が奔る。飛行物体の何体かも損傷を被った様子だが、奴らはひと際強く発光すると素早く後方に退いた。それと同時に機人も大きく後退し、再び鯨との距離をとる。
両者に緊張が走る。一触即発の状態。
防戦に徹していてはこの包囲網を破れない。鯨は先の衝突で機人の手勢が若干薄くなっている位置を瞬時に見分けると、攻勢に転じる。それと同時に鯨の仲間達も鯨と共に直進した。
鯨の仲間のエイが、先ほど損傷した飛行物体を鋼のひれで切り裂いた。飛行物体は燐光を周囲に撒き散らしながら墜落していった。一瞬怯んだ飛行物体達の隙を突いて、魚達が突進する。
鯨は尾びれで背後の飛行物体を叩き落とし、先を行く仲間達と共に直進する。
何とか脱出できる、鯨と仲間達の誰しもがそう思った。だが、次の瞬間、機人の放った電光が鯨の目前を迸り、仲間達を直撃した。
機人は、先ほど飛行物体が放った燐光を雷の銛に集めながら、鯨の上方から接近してくる。何とか態勢を立て直さなければならない。だが鯨の全身を激痛が奔り、それを押しとどめた。見ると、腹が大きく抉れている。先ほど迸った雷が鯨に深手を負わせていた。
機人は強烈な熱量を放つ雷の銛を構えると、鯨の背中に狙いを定め、急降下してきた。
だめだ。避けられない。だが鯨は最後まで諦めるわけにはいかないと言わんばかりに、何とか体を起こして、機人を迎え撃とうとした。しかし思う様に体が動かない。鯨には機人を迎え撃つだけの力を出せず、機人の接近に対して為すすべがなかった。
やられた。鯨と生き残った仲間達が一瞬そう思った。その刹那、鋼の鋏が一閃し、機人の腕を切り裂いた。機人は予期せぬ反撃を受け、散らばった電光を慌てて集約し、その鋏の主に反撃しようとしたが、鋏の方が早かった。機人の胴体は切断され、地上に突き落とされた。機人は声にならない悲鳴をあげながら落下していった。
周囲の飛行物体達は、墜落していく機人を見据えると、瞬時にその場を離れ、撤収する。侵略者達を退けたのだ。仲間達はその勝利に喜んだ。それから、この勝利をもたらした英雄が誰であるかと鯨の背の辺りに注目する。
それは大きな鋏を持ったエビであった。エビは特に意思表示をするでもなく、その場に佇んでいた。
鯨はそのエビの存在に驚いた。紛れもない、ついこの間までこの環境の変化に適応できずにいた、力無き者であったからである。
エビはそれから鯨に会釈すると、よたよたと鯨の背の中の方へ戻って行った。
仲間達はこの頼もしく、勇敢な新しい仲間の誕生を喜んだ。
鯨とてそうであった。だが、一方で虚しさもあった。自分がかくまっている、力無き者。それらの者にしてもやはりこの世界の変化の影響は避けられないのであろう。そしてその変化を受け入れることに成功した者達でなければあの者達には立ち向かえないのである。おそらくこの異変をもたらした侵略者達に。
エビは鯨の考えを見抜いていた。そして先ほどの会釈の際、鯨にこう伝えていたのである。「あなたとあなたに守られている者達の力になりたい」と。
鯨とその仲間達の旅路はまだ始まったばかりである。
侵略者ごとにある個々の指令。
彼の役目は攻撃。
あらゆるものを消滅させて、続ける前進。
ガトリングスタンドは目につくものを破壊しながら前進を続けていた。その彼が突然動きを止めた。すぐ近くに友軍の発信があった。
ガトリングスタンドは方向転換をすると発信源に向かう。そしてその場に辿り着いた。
ヘル・ブリンディであった。ガトリングスタンドはヘル・ブリンディの損傷状態を瞬時に分析すると、後方のアスクとエムブラに向かって信号を飛ばす。それから向きを変えると、前進を再開した。
間もなく回収班が来て、ヘル・ブリンディを回収する。損傷状態からして、おそらく修復できるだろう。それから再び指令を与えられ、戦場に赴く。
だが、ガトリングスタンドは意識の片隅で疑念が起こり、落ち着けなかった。先ほど見たあの姿。あれが自分や仲間達が近いうちに迎える末路ではないのだろうか……。
関連カード
●空母鯨モビルフロウ
小さき命を守る宿命を文字通り背負った飛行する鯨。
本章はモビルフロウの旅路でもある。
●レイ・ブレット
最初に侵略者の門の存在に気づいたとされる空魚。
本章における「エイ」とはレイ・ブロット。
●ロブスターク
フレーバーにおいては固まった海を切り裂きながら進み、侵略者へ抵抗している。
本章における「エビ」とはロブスターク。
●ヘル・ブリンディ
「雷を放つ者」、「空母鯨の天敵」とされている機人。
モビルフロウに背負われた小さき命にとっても脅威となる存在。
●スフィアロイド
「異界の蛍」と形容されている動器。
世界が変貌していく情景が書かれており、侵略者の出現と共に起こった異変を物語っている。
本章における侵略者の「飛行物体」とはスフィアロイド達のこと。発光を繰り返しながら他の機械と連携をとった。
カードにおいてはブロック時効果が主な役割の為、積極的な攻撃はしない支援機として登場。
●ガトリングスタンド
あらゆるものを消滅させる、攻撃の役割をもった侵略者。
おそらく地上戦においては主力となるほどの高い戦闘力を持っている。
●生み出される尖兵
名所千選016。
名所千選に選ばれているものは壊れて固定化された門であるが、
本章で触れているものは稼働中の門。異なる世界を繋げている。
門は侵略者が白の世界に攻め込む際に使われており、至る所でその存在が確認されている。
また、この門から世界を機械化させるナノウィルスが放出されている。
一部のスピリットのフレーバーテキストには、門が破壊される場面もある。