気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
寒い。とにかく寒い。
冬が来てしまった。雪は降っていないが気温が急激に低下してきており、ぺらっぺらの葉っぱと藁の服では寒さを凌ぐことができない。焚き火から離れるのも億劫なくらいだ。
例のダウンだが、子供には全員着せられたんだが大人の分は無理でしたね、ええ。投石で鳥を仕留めるのには限界があったよ。
「形としては出来上がってるんだがなあ」
で、鳥を仕留める武器を作った。弓である。動物の腱を脂で伸ばして整えたものを、弓形の木の枝にはめ込んで作った。矢も枝を削って直線にしたものの後ろに鳥の羽をつけて、先端には鏃をはめたものを作ってみた。
それはいいんだが、とにかくあたらない。俺も弓は未経験で、群れの誰一人弓なんて武器使ったことがないからな。的が大きいイノシシとかならまだしも、鳥相手には当たらない。習熟が必要だな。
そんなわけで、俺たち大人は寒さに震えながら生臭い毛皮をかぶって焚き火に当たっているのである。幸い、焼畑したことで得られた膨大な薪があるので、冬は余裕で越せる。食料も保存食で賄える。
「家がなかったら凍死していたな………」
俺のことを後ろから抱きしめる格好のアキラスがぽつりと呟いた。
いやね、最初は恥ずかしくて拒否してたんだけど、寒さが尋常じゃなくてアキラス布団を被ってるんだよね。
「さむいねぇ」
「寒いな」
俺は鍋でグツグツと煮えているスープを器によそってズルズル飲み始めた。コンブ出汁を利かせたイノシシの干物戻しスープである。うむ、まろやかでおいしい。やはり出汁が利いているか否かは料理の美味しさを大きく左右するな。とりあえずコンブ入れるだけでおいしくなる。
「あの海から流れてくる草を干して煮るだけでこんなに味に深みが出るなんて……」
アキラスも同じようにスープを啜りながら感想を述べる。海藻という概念がないので海から流れてくる草という扱いらしい。
コンブ(仮)はいいよ。なんたって、何もしてないのにどんどん流れ着いてくるからね!
「さーて今日はどうすっかなぁ。草食うのも飽きてきたよ……」
俺は毎日のように草を食っては薬効を調べて薬を作るという作業をしていた。熱さましやら下痢止めやら、基本的な薬は作れたつもりだ。蜂蜜酒も出来てきたので、そろそろ蒸留することを考えている。
俺が外に出るのはいやだなぁと思っているところで、群れの男が駆け込んできた。
「神様ぁ! 大変だ! 外から人が来たぞ!!」
「なんだって! いだっ」
「痛い!」
俺が思わず急に立ち上がると、ものの見事アキラスの顎を打ちつけてしまった。
「いでで………人ってなんだよ、人ってよぉ!」
「だから、外から人が来たんだ! みんな疲れきっているみたいだ! どうすればいい!?」
「いくぞアキラス!」
俺は駆け足で男の案内する先に向かった。
ついてみると、村人達が既に集まっていて、外からやってきたという人たちを不安そうに見ていた。
人数にして12人。家族がどうという感じではなく、色々な群れからの寄せ集めが偶然一緒になったという感じに見えた。服装は皮をまとっているだけであった。
「お、おぉぉ………ここが約束の土地なのか………!」
先頭にいた痩せこけた男が呟くなり倒れ掛かってきたので、俺は胸で受け止めた。こういうとき大きい胸は助かります。じゃなくて。男を地面に寝かせて様子を見る。怪我はしていないようだ。空腹と疲労と寒さのせいか。
これは……これは好機じゃないか? 村の面々では労働力に限りがあったところだ。
「ソーマ。これだけの人数を養うことができるとは思えないが…………追い出したほうがいいように思える」
アキラスが俺の肩に手を置いてそんなことを言う。
確かにな。今は足りている食料であるが、消費者が増えれば足りなくなるかもしれない。群れの外に追い出してしまったほうが賢明であるという考え方もあるわけだ。
養えない人間を捨てる。仕事のできない人間を追放する。これは、実は俺のいた現代でもつい最近まで行われていたことなのだ。それが原始時代で人権のじの字もない時代であればなおさらだろう。
アキラスに対し、俺は首を振った。
「これだけの人数が増えれば色々なことができるようになる。もっと暮らしが楽になっていく。俺は迎え入れるべきだと思う」
「はぁー………わかった。ソーマが言うなら、俺は何も言わない」
「ありがとう。よし、みんな! 怪我人、病人は俺の家まで連れてきてくれ! 体の汚れを取って、温かいスープを飲ませるんだ!」
違う好機でもある。俺の作った薬を、試すいい機会である。人体実験なんかじゃないよ。ほんとだよ。というか俺が自分で草を食って試してるんだから実験済みだよ。
すると、異邦人の群れの中から男と女が一人ずつ進み出てきた。一人は腕を押さえていて、一人は青い顔をしている。
「あ、ありがとう、ありがとう………!」
「ありがたい、感謝します……」
俺は二人を自分の家に招いた。
男のほうは腕がぽっきりいっているみたいだ。骨折か、骨折なら……俺は工作用に取っておいた枝と蔓を持ってきた。
「あの、この囲いみたいなものは一体……」
「これ? これは家っていうんだ。あたたかいでしょ」
男が家をぼんやり眺めて質問してきた。はじめてみたんだろうな。
「まあ座ってよ。これお茶」
「ちゃ……? これは岩を削って作ったのですか!?」
お茶を注いで渡すと仰天された。
「いや土を焼いたんだ。まあ飲んでてよ」
俺は女を床に座らせると、男の治療に取り掛かった。
枝と枝を腕に沿わせて、蔓で結びつける。これでよし。壁際から獣の胃袋で作った袋を取り出すと、渡す。中身は貝殻を粉にしたもので、ようはカルシウム剤である。
「中に白い粉が入ってるから、毎日欠かさず一つまみ食べること。一ヶ月………一日が三十個くらい経ったら治ってるから、外さないようにね。ちなみになんで骨を折ったの?」
「実はここに辿り着く途中マンモスに襲われまして、それで……」
………あの畜生め。森にまだいるのか。やっかいだなぁ。
「そういや約束の土地がどうとか言ってたけどあれは?」
「私に限った話ではないのですが、狩りができなかったり木登りができないものは、約束の土地があるなどと言って追い出されるのです………ああ、でも本当だったのだと、今あなたに出会えて感動しています」
なるほどね。まあ、嘘でもなんでも甘い話を吹き込んで追い出すのが普通か。
「疲れてるんだろ? 少し寝てろよ」
「ありがとうございます」
男は頷くと、その場で横になった。
俺は次に青い顔をしている女の状態を見た。
「どの辺が悪いの?」
「落ちている木の実を食べたら腐っていたみたいで、腹痛が……」
ふむ。下痢止めは出さないほうがいいな。出すものは出しちゃったほうがいい。
壷から塩を取って、鍋で沸いているお湯に入れる。次にベリーを指で潰しながら入れていく。ようは経口補水液である。
「座って。そうそう。腸の働きを助ける薬を出すから、しばらく安静にしてて」
「薬というのは……?」
「体の悪いところを治してくれるものだよ」
鍋から経口補水液を器によそって、粉状にしておいた整腸剤を入れてかき混ぜる。
「最初に言っておくけど死ぬほど苦いぞ。ゆっくり飲んでくれ。全部飲み終えたら、この中に入ってるのを汲んで飲んでくれ。全部だぞ」
脱水を起こしている可能性も高かったしな。
ふう。緊急性を要する怪我人がいなくてよかった。
俺は二人を家に残して、家の外に出た。