気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
春がやってきたぞ。
現状を確認しよう。三家族合計15人と、俺とアキラスで17人。異邦人組が12人の合計29人だ。
食料の備蓄だが、冬の寒さのせいでほとんど食べつくしてしまった。も、もう、ドングリの塩クッキーとエビは十分です………。いや毎日ドングリクッキーで頭がおかしくなるかと思ったよ。まずくはないんだがパサパサでな。
幸いというか、気温の上昇とともに一気に自然の恵みが出てきているので、ドングリクッキーからは卒業できそうである。
さて、この冬の間、運がいいことに雪は降らなかった。焼畑の木々を取り除いて、整地するだけの余力はあった。冬を越えて土がカチカチに凍っているので、土起こしをしないといかん。
「ふーむ、農業に半分、残り半分は食料集めが妥当なところかな」
異邦人組も一通り生きる為に必要な技術は教えて込んでいる。狩りはともかく、採取ならば十分出来ることだろう。
「おーできたよ………これで医療は飛躍的に進歩したな」
そして俺がなにをやっているかと言うと、蜂蜜酒からアルコールを蒸留していたところである。セイカ一家の長男アキセイカ君に作らせた蒸留器だが、上手く出来ている。もっとも、割れないように、かつ確実に蒸留できるように、など土では条件が厳しく、失敗の山が作られたことになったけどな。
俺は、シャーレに似せた器にアルコールを注ぐと、くんくんと匂いをかいだ。確かにアルコールの匂いがする。
久々に嗅ぐ文明の香りに俺は一瞬意識を奪われた。
「………問題は保存だよなぁ」
できたはいいが最大の問題は保存である。なにもしないとどんどん蒸発してしまうのだ。
「土器で密閉容器……………」
もし出来たらもっと便利になるが……………。
「うむむむむむ………」
思いつかない! 木の実の中に封じるのはどうかと思ったけど気密性が高いとは言えないわけで。獣の内臓の中にしまうと不衛生だし。やはり土器がいいと思うんだが、そんなことが可能なのか?
まったく考えが思い浮かんでこないので俺は家から出た。
ぽかぽかと日差しが暖かい。くそったれな冬が去り、豊穣の季節である。絶好の農業日和だな。
農業は主に三つのプロジェクトを抱えている。一つがエノコログサ(仮称)の栽培。二つ目がベリーの栽培。三つ目がドングリの木の保護・育成である。
エノコログサ(仮称)の栽培がメインだが、上手くいく自信がある。生命力が半端じゃないからだ。撒き方も丁寧に植えつける日本のやり方はそぐわないというか、労力に見合わないと思っている。ただ何もしないで適当に撒くと鳥に食われるので、溝をつけて一定間隔で植えることくらいはしたい。
「ソーマ」
「アキラス。順調かい?」
とはいえ生えるだけ生えて実をつけない固体は排除せねばならない。
俺は、土器の中を覗き込んでいるアキラスの隣にしゃがみ込んだ。
「この、浮かんできた実は撒かないんだな?」
「そうそう。浮かんできた実は中身が入ってなかったり、悪い種だったりするからね。浮いてきた実はあとでパンにしてあげる」
塩水選というやつだ。食塩水に種籾を入れると、実の詰まっている固体は沈むが、悪い個体は浮く。この浮いているものを排除すれば、いい個体が残る。という理屈だ。
もちろん、浮いた個体はそのまま食べるつもりである。エノコログサは実がとても小さいので、胚芽をとらなくてもいいだろう。動物油を使ったパン(クッキーに近い)を焼いてみよう。
せっせと作業を進めるアキラスをよそに、俺は畑に向かった。
村人たち―――異邦人組も含む―――が、せっせと土を掘り返しているところだった。スコップなぁ……スコップは結局作れなかったよ。曲面を作るというのができなくて、鋤になってしまった。改良してスコップにしたいなあと思う。
土起こしが済んだら次は種まきである。溝の頂上に指で穴をほじって種籾を植えつける。
「ほんとうにこれで食い物が出来るのか……?」
疑いの視線を向けてくるものもいたが、俺はうんと頷いて見せた。
「もっちろん。やってることは自然の植物と変わらないよ、手助けをしているだけ」
植物というのは勝手に生えてくるもの。一度信じた常識はなかなか拭い去れないものだな。
俺は村人に指示しながらも、自分でも種籾を撒いた。
あとはどうするのかって? 雑草が生えてきたら抜く。以上だ!!
いやほんと他にすることがない。例えば質を追い求めるんだ! とか、量をとるんだ! とか、水の量が! とか、肥料が! とか色々あるんだけどね、農業というのは奥深いから追求すればするほどきりがない。なんでもいいから取ることが重要なんだ。おそらく人類史上初めての農業なんだから。
そういえば、肥料はどうするか。肥溜めでも作るか。うーむ。排泄物を集めて撒くんだよなんて言ったら頭がおかしくなったと思われそうだな。
「よーし次はベリーの木を植えるぞー」
次である。
同じように、ベリーも植えていく。こっちは更に分からない。どれくらいで成木になるのかもわからない。
更に次と言いたい所だが、日が翳ってきてしまった。日が翳っているのに森に入るのは危険なので、みんなで家に帰る。なんて健康的なんだ!!
「あ、そうだ。例の酒なんだけどさ」
「ん?」
俺は取れたての木の実をボリボリと貪り食っているアキラスに話を持ちかけた。
「とりあえず保存していく容器が思いつかないから飲んじゃっていいやと思って」
「あるこーるがどうとか言っていた件か」
「密閉してないと蒸発……空気に溶けて消えちゃうんだよねぇ……」
「……ミッペイ、ジョウハツ、またわからない単語だ」
俺はそういうと、蜂蜜酒を瓶から注いだ。
怪我人が出る度に蒸留してもいいが、手間がかかりすぎるよな。純度の高いアルコールはやめて、純度の低いアルコールで我慢するか? それならば蒸発にピリピリしなくてもいい。
考えてみれば、この手の中にあるものはおそらく人類史上初の人工酒である。まあ細かいことは気にするな。また作ればいいのだ。
「これが例の蜂蜜酒。蜂蜜を発酵させて作ったお酒だよ。飲んでみて。あっと、最初は少しね」
一気飲みし始めようとしたアキラスを慌てて止める。下戸だったら困るのでな。
「…………!?」
一口飲むと、アキラスが目をむいた。俺と器を交互に見比べている。
「毒……? 口の中が、こう、熱いというか、痺れるというか……」
「ふふっ」
わかる。超わかる。毒という見識も誤りではない。アルコールは毒なのだ。
「はー………おいしいなぁ」
俺も一口煽る。労働でほてった体に蜂蜜酒が染み渡るッ……!
「……体が熱くなってきたんだが、これは……?」
「んー、酒を飲むと体が熱くなってきて、心臓も早く、人によっては性格が変わったように振舞ったりする」
「いや、とくには変わらないが……」
平然と酒を飲んでいるので、大丈夫っぽいな。
「酒もたくさん作ってみんなに振舞いたいな………」
「酒ってのは、どうしたらできるんだ」
「ああ、それはね………」
こうして夜が更けていくのだった。ちゃんちゃん。