気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※   作:キサラギ職員

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鳥の匂いっていいよね


17.ぴよぴよぴよ

 

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁかーわいいいいぃぃよぉぉぉぉ……!」

 

 一週間後。十個の卵のうち、半分が孵った。半分は孵らなかったので、だめなんだろうなと思う。

 弱火にした焚き火の傍に卵を置いて、一日三四回程ひっくり返し、卵の表面に水気を………という地道な作業が実を結んだようだ。俺が一晩中張り付いているわけにもいかないので、子供を何人か連れてきて交代で面倒を見たのだ。もう半分だが、子供たちに任せてもう一週間様子を見ようと思う。ダメなら茹でて食べちゃおう。

 

『ぴよぴよぴよぴよ』

 

 俺特性の木の囲いの中で、五羽の雛たちが身を寄せて鳴いている。ふわふわで、小さくて、まるで綿毛に足が生えているみたいだ。無邪気に光る黒い目は、俺のことを見つめている。孵化したときにばっちり俺の姿を見せているので、俺のことを親と思っているはずである。

 

「ほ、ほんとうに卵から鳥を………ソーマは鳥だった?」

 

 アキラスが愕然としている。鳥は、鳥でしか孵せない。という常識があったのだろう。

 言うまでもないが俺は鳥じゃない。

 

「ねー、言ったろー孵せるって。半分はだめっぽかったけどな!」

「温かいところにおいて、一日何回か転がして、水気を与える………これだけでいいのか……」

「俺も専門家じゃないからわからないけど実際孵ったし、条件としては合ってるはずだ。さて、餌を作るか」

 

 餌か。餌ね。柔らかい新芽とか、虫とか、穀物とか、貝も食べた筈だ。

 いまだパンにはしていないエノコログサ粉を取り、採取してきた新芽を器の中で潰して混ぜてみる。それから水を入れておく。穀物の粉と新芽なら、離乳食(?)には丁度いいだろう。

 確か鴨は、雛でも自力で餌を食べていた気がする。まあ最初なんで、草の茎を使ったスポイトを使ってみようと思う。ポンプ部分は俺の口だがな!

 

「すー………ふー……」

『ぴよぴよ!』

 

 上げてみると、元気よく食べる。みんな頭を上げて、くれくれと催促してくる。

 

『………』

 

 一通りあげると眠くなってきたのか、五匹固まったまま眠りについてしまった。

 ふふ。かわいい。

 

「餌は自分で取れるから、その辺散歩させてもいいかもしれないな………うーん悩ましい。何もしなくても俺の傍に来ちゃうわけで………というか飛ぶよなこの子ら」

 

 慣らして餌付けすれば、逃げることはないだろう。多分。羽を切っちゃうか? 鳥というのは風切羽と呼ばれる部位を切ると、飛行能力が著しく低下して長く飛べなくなる。しかし、いざというとき逃げられなくなる。

 

「いいや、しばらく俺が付きっ切りで面倒見るよ。アキラス、他の仕事お願いできないかな?」

「わかった。ブドウと、あのへんな草の種を撒けばいいんだな?」

「そうそう。溝を作って、一定間隔空けて植え付けて欲しい」

「なんかあったら呼んでくれ」

 

 アキラスは俺の傍で農業のやり方を見て学んでいるから、任せても大丈夫だろう。というか任せるしかないのだ。

 俺はアキラスが外に出て行ったのを見つつ、雛たちの傍に腰掛けた。

 

「そろそろいいかねぇ」

 

 ベリー酒の塩梅を確認しようと、壷に指を突っ込んで、舐めてみる。アルコールの風味がする。発酵しているということは、酵母があるということだ。加熱処理はしていないので、酵母は死んでいないということだ。

 

「ふふふ……今日はパンを食べるぞ!」

 

 今日こそは、カチカチのパンもどきではなくふわふわのパンを食べるんだ。その為に、竈というには小さいが、それっぽいものも粘土で作ってあるのだ。

 エノコログサの粉末を器に移して、水を加えて練り上げる。石版の上で伸ばして叩いて、ベリー酒を入れる。

 

「………形、形か………」

 

 パン生地をこねつつ、どんな形にしようかと思いを巡らす。

 パンで思い浮かぶ形状はやはり―――コッペパンだろう。形を整えて、しばらく寝かせることにする。保温が必要なので焚き火に近づける。

 あとは膨らむのを待つだけだ。とりあえず今晩は無理だろう。明日食べられればいいな。膨らめばの話だが。

 

「さーて次は……」

 

 次は、炭を作ろう。と言いたいところだがパスである。

 今日一日仕事で疲れたので、まったりとするか。乾燥タンポポを取り、草の繊維のフィルターに包んで土器コップにお湯を汲んで、抽出する。

 地面に寝そべって、コーヒーを啜る。

 

「ううん、コーヒーの味だなぁ………カフェインぽさがないのが残念だけど……アキラスも飲めばいいのに苦いから嫌いだなんてもったいないぞぉ」

 

 原始時代にいるのにコーヒーを飲んでくつろげるとは思っていなかった。パンも作れそうだし、なんならソーセージも作れそうだし、卵も手に入りそうだ。イギリス流の朝食も夢じゃないんじゃないか? あ、豆がないや。

 後は、ミルクと砂糖が欲しいところだ。サトウキビか、テンサイの仲間でも見つかればいいな。大人しい牛がいればいいな。想像は膨らむばかりだ。

 

「…………いや、いやいやいや」

 

 俺は身を寄せ合って眠っている雛を見て首を振った。

 大きくなれば食べられるよなという考えが脳裏を過ぎったからである。かの有名な合鴨農法も鴨は食べられてしまうらしい。鴨肉はとてもおいしいので選択肢としてはアリである。

 食べてもいいんだけど………食べてもいいんだけど……! 手間暇かけて孵したこの子達を食うのはしのびないというか………!! いまさらになって思い出したが、カモはニワトリのように頻繁に卵を産んでくれるわけではなくて、産卵期が決まっている。卵をコンスタントに食べられるというわけではないので、つまり、その……。

 畜産業の人たちって神か? 神なのか? 出荷することを考えると気が狂いそうだ。もう足を向けて眠れないだろ常識的に考えて。この世界にいないけど。

 

「今日のご飯作るか」

 

 アキラスが帰ってくるからね。嫁のように作りますよっと。

 

「誰が嫁じゃい!」

 

 一人で突っ込みを入れつつ、食材を考える。

 料理も案外楽しいもんだ。一人飯じゃつまらないけど、誰かが食べてくれるならなおさらだ。

 ということで俺は早速、今日取れたばかりの魚に手を伸ばすのだった。

 

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