気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
夏が来た。というのは俺が独自につけている暦で季節がやってきたというだけで、ぜんぜん暑くない。体感だが25度もいってない。日が落ちると20度を余裕で下回る。真に残念ながら、米作りには適していないのではないかと思う。
現状を報告しておくと、今のところ死人は出ていない。死に掛けたのは何人もいるけどな。たかが風邪と侮るなかれだ。風邪人が出たときは俺の家で隔離して、俺が治療をすることにしている。死なないし。その間アキラスには迷惑をかけるが止むを得ない。
つまり人口は増えていないんだが、ぼちぼちと各家庭、異邦人組にも妊婦が出てきていて、今年の終わりか来年の始まりくらいには新しい命が生まれることだろうと思う。農業の成果はまだ出ていないが、生活が安定してきたことで子供を作ろうという気になったのだと思う。
さて農業だが、種を撒いた、エノコログサ、ベリー、ブドウ、麻、どれも芽が出た。
一番早かったのはエノコログサだ。成長が馬鹿みたいに早いので、秋には収穫できるだろう。というか本当にエノコログサなのか? 俺の知ってる草と比べると、房が大きいというか……。
次に早かったのは麻だ。こちらも成長速度が驚異的で、半端ではない。一月で俺の背丈を追い越すくらいに成長している。秋を迎える前に収穫できそうな勢いである。雑草を抜いたくらいしか世話をしていないんだが、いや、たくましいな。
他の種は、まだ未成熟だ。当然だがベリーの木、ブドウの木は実をつけるまで時間がかかる。気長にいこう。
畜産だが―――まあ説明するより見てもらったほうがいいな。
『グアグアグア!』
俺が川にザブザブと入っていくと五羽のカモ達がついてくる。たった数ヶ月で成鳥と見間違える程にでかくなった。
これなら卵も産んでくれるなと言いたいところだが問題があってな。
『………???? どこをどう見ればいいんだ???』
オスとメスの区別がつかない!!
哺乳類は分かりやすい。股間を見ればいいからだ。一方鳥類は股間を見ても突起物がなかったりする。突起以前に、性器と排泄口が一緒だったりする。捕まえてひっくり返して調べたけど正直分からない。セキセイインコみたいに鼻の色を見れば分かるとかにして欲しいです。
ま、まあ、全部オスでしたとかメスでしたということはない。はず。信じたい。確率的に半分半分だろ。
俺が水に入ると、カモたちもついてくる。俺が行く場所行く場所どこまでもついてくるし、一緒に寝る。大人になったら離れるかもしれないけど、慣らしてれば犬みたいに懐いてくれるはずだ。
「そら、魚おるよ。捕まえてごらん」
『グアグアグアグア!!』
カモたちは俺が言わないでも餌を取ってくれる。こうして一緒に水に入って、小魚も取れるように訓練したみたりもするのだ。
「この辺貝とかいそうだよねぇ」
『グア』
「そ、土抉って抉って。よしよし」
『グァッ!』
一羽が俺の肩に登って機嫌よさそうに鳴く。おお可愛いやつめ。他の子は、くちばしをスコップのように使って泥を掻き分けて貝を食べている。
俺がカモと遊んでいると、人影がやってきた。毛皮を腰に巻いている。
「ソーマ。ここにいたのか。手が足りない。手伝ってくれ」
「いくいく」
俺は手早く水から上がって毛皮の服を着込むと、サンダルを履いてカモを伴って歩き始めた。
全裸でも恥ずかしくない習慣の人たちなので、多少胸が見えようが構いはしないんだが、アキラス相手だと何故か恥ずかしいんだよな。
ちなみに毛皮だが、一ヶ月あれこれ試した結果、なめせるようになった。植物の灰汁―――タンニンにつけてみると上手くいくことがわかった。いやクロムとかミョウバンを使うのは知ってたんだけど、そんなもん手に入るわけねぇだろ。ということで伝統的な方法を探して、やっと見つけたのだ。
「はー、しかし皮なめしがこんなに大変だとはなあ」
問題があるとすればクソがつくほど手間がかかることだ。まず動物を仕留めたら解体する。骨と肉を取る。皮の裏についてる肉や組織をそぎ取る。タンニンで一週間程つけこむ。乾かす。燻す。油を塗る。と、一着作るのに気が遠くなる作業が必要なのだ。
やはりダウンだな。ダウンを作ろう。住民全員に毛皮はやりすぎだ。麻が出来たら羽を編みこもう。子供たちには先行して葉っぱの服に羽をつけているけど、大人用も作ろう。
ダウンか……。
『グワ』
つぶらな瞳が俺を見上げている。
だめだ! 殺せない! 無理無理! 無理ですって!!
「まさか植物の汁につけこむだけで腐らなくなるとは……」
「手間はかかるけどな」
村が見えてきた。村人たちが今日も元気に作業をしている。あるものは土器を作っているし、あるものは畑でせっせと雑草を抜いている。あるものは切り倒してきた木を石斧で薪にしている。あるものは採取してきた木の実を検分している。
「人手がたらんなぁ」
「更に遠くに探索隊を送るべきだと思う」
俺が言うと、アキラスが返してきた。
無から人を生やすことはできないので妊娠出産を待つしかないんだが、人手として使えるようになるまでには時間がかかってしまう。外の人を連れてくるのが一番だろうな。
俺がそんなことを考えていると、なにやら騒がしい。
「神様ー! 大変だ! また外から人が来たぞ!」
ばたばたと男がかけてくると、俺の前で止まった。またか。いい兆候だ。
俺が村人に案内されて行ってみると、髭もじゃの男五人が地面に座り込んでいた。老人のようだ。
「おお、あんたは………夢で見たお方………」
「ソーマだ。この“村”の長で神様やってる。あんたらはどうしてここに?」
老人たちは俺のことを拝み始めた。
また夢か。夢で俺の事を見るとでも言うのか。
「夢で………あなたさまの姿を見たんじゃ………こっちに行けば会えると………」
言葉を紡ぐのも辛そうに俯いてしまった。
見れば体は傷だらけだし、痩せ細って血色も悪い。詳しい事情はあとから聞きだすとして、治療しないといけない。
俺はかがみこむと、おじさんの手を握った。
「わかった。俺たちはあんたたちを歓迎する。みんな! 俺の家まで運び込むから、手を貸してくれ!」
「また、受け入れるんだな」
アキラスがぼそりと言いながら老人を抱き上げる。痩せているせいか、軽々と持ち上がる。
「慈善事業でやってるわけじゃないぞ。年寄りってのは長生きしてる分、色々な知識を持ってる。助ける価値はある」
子供を作るのにはちと遅いかもしれんがね。その抱える知識量はあなどれないものがある。
「絶対に死なせないぞ! 絶対にだ!」
俺は言うと、老人たちを家に運び込んだのだった。