気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
「…………つまり年を食いすぎたから追い出されたと」
「ええ、そうなりますのう」
老人のうち四人は食事を取るとすぐにぐったり眠ってしまったが一人は話を聞くことが出来た。
要するに姨捨山である。この時代に福祉などあるはずもなく、働けなくなれば群れから追い出すのが常なのだ。かわいそうかもしれないが明日の食い物も分からない生活では、群れで養うなどとは考えられないのだ。
『グア!』
老人は周囲をうろちょろするカモを不思議そうに眺めている。野生動物を懐かせるなんて発想ない時代なので、なぜ逃げないのかと考えてるんだろうな。
「神様、この鳥は……」
「飼ってるんだ」
「飼う!? は、はぁ、神様はワシの知らない術をご存知のようで……」
術じゃないんだけど、ここは説明もめんどくさいので省略する。
「とりあえず追い出すようなことはしないから安心して欲しい。ちなみに名前は?」
「ゾイ。ただのゾイです、神様」
「ゾイさん。いままでの旅について教えて欲しい」
いいつつ俺は、エノコログサのお茶を差し出した。
最初は家を見て驚き土器見て驚きで話が出来なかったのだが、徐々に慣れてきたのかお茶をありがたそうに啜っている。伊達に年齢重ねているわけじゃないな。
ゾイ老人の見た目は、山男といったようだ。ボサボサの白い髪の毛。ボサボサの長い髭。目は細く、肌は焼けている。
ゾイさんが、群れを追い出されるまでの経緯を語り始めた。ここから離れた痩せた土地で、少数ながら幸せに暮らしていたこと。人数が増えるにしたがって食べるものがなくなってきたこと。娘が死んでしまったこと。年老いて群れから追放されるまでのこと。大きな山。大きな川。美しい女が手招きをしている夢。不思議な黒っぽい砂のある海岸。
「ちょっと待って。黒っぽい砂のある海岸………?」
「ここから遠くないところですかいねぇ、黒い砂の溜まった海岸があるんですわい」
………黒い砂の溜まった海岸? 気になるな。というのも砂鉄の可能性があるのだ。鉄にも色々あるが、砂のような細かい鉄が水によって運ばれ堆積するものもあるのだ。そして砂鉄は、粒子が細かいので加熱しやすく、加工しやすい。青銅器から始めようと思っていたけど、いきなり鉄器が作れるかもしれないな。
とんだ拾い物をしたものだ。ゾイ老人が話す砂鉄らしい砂の溜まる海岸の情報だけでも、おつりが来る。
「その場所、案内できるかな?」
俺が言うと、ゾイ老人は頭をガシガシと掻いた。
「ううむ、申し訳ないが疲れてしまいましてなぁ」
「わかってるよ。何日かゆっくり過ごしてくれ」
それから俺は、他の老人たちの様子を見た。栄養失調に脱水症状と外傷と酷い有様だった。うち三名は高熱を発しており、感染症であるならば隔離が必要だった。
着ていた粗末な毛皮は、汚染されている可能性もあったので焼却してしまう。お湯で全身を拭いて、傷口は、ベリー酒の蒸留で得られたアルコールで消毒だな。
「ありがとう、ありがとう……」
「その、それはいったいなにを……?」
「んー………説明してもわかんないだろうけどとにかく体をよくするものだよ」
密閉容器がありゃあなぁ……何かいいアイディアはないものか。いちいち沸かさないといけないのめんどくさいの極みだ。
俺はベリー酒で蒸留して得られたアルコールで、病人の傷口を消毒した。止血効果のある葉っぱを宛がい、蔓で巻いて応急処置をする。
「じゃ、これ飲んで」
それから塩とベリーを混ぜたお手製のドリンクを飲ませる。
熱さましとか飲ませると返って悪化するケースもあるので、自然治癒力に頼るしかない。抗生物質でもありゃあなあ。ペニシリンねぇ、とある漫画で作っていたのを覚えているけど、そこに行き着くまでにどれだけの時間がかかるやら。
「ソーマ。調子はどうだ?」
「アキラス。三人が熱を出してる。ちょっと気になる情報もあるしな。まあ、後で話すよ。今日は看病で終わりかなぁ」
「わかった。他の仕事はやっておく」
おうおう、頼んだぞ。
俺が手を振ると、アキラスもひらりと手を振り返してくる。
「旦那さんですかね?」
「ちちちちちちがわい! 誰が妻やねん!!」
ゾイ老人がにこにこ笑いながら言うもんだから、俺は首をブンブンと振ったのだった。
「おっ」
急に、密閉容器のアイディアを思いついた。
早速俺は、アキセイカ君のいる家に向かった。
「ちょっと作って欲しいものがあるんだけど」
アキセイカ君は、こねこねと人形を作っていた。どうみても俺が連れているカモである。上手いもので、写実的な形状をしている。アキセイカ君は土器作りがうまい。俺のへなちょこ器と比べて天と地ほどの差がある。
「こういう入れ物で」
「ふむふむ」
「蓋をつけたい。こういう、口の形にぴったり合うような」
俺は地面にさらさらとラフを描き始めた。とっくりみたいな形状の器で、口の形状に合うコルクのようなものも描いていく。木のコルクでいいじゃんと思うかもしれないがコルクがないんだよ。普通の木だと蒸発が抑えられなさそうだしな。
俺が考案したのは瓶の蓋をコルクのようにはめ込む形式にして、隙間を蜜蝋でシーリングすることだ。どんなに頑張っても出来てしまう隙間を蜜蝋で埋めれば、密閉できる! ……試してないけど。
「お酒? でもいれるの?」
「察しがいいねぇ。お酒はお酒なんだけど、ジョウハツを防ぎたいんだ」
「わかった。何日かしたら持っていく」
アキセイカ君は、作業を再開した。カモの土偶の。こういうおおらかななのが原始時代である。神様にやれと言われても、すぐにはやらない。現代人からするとじれったいだろうが、現代人がせっかちすぎるんじゃないかなと思う。のんびりと物事を進めることは、悪いことじゃない。
「なー、そう思うよなー」
『グア』
俺の後からついてきた五羽がアキセイカ君の周りをぐるぐる歩き回っている。人間を親と思って育ってきたせいなのか人間に恐怖心がなく、はばかることなく好奇心をむき出しにしている。
「よーしいくかー。みんなが待ってる」
『グァグァグァ!』
俺はカモたちを連れて、自宅に戻ったのだった。