気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
あらかた収穫が終わった。加工作業はまだだ。
「そうそう、剥いて、可能な限り、細く剥いてね」
俺は麻の繊維を解す作業を子供に指導していた。こういう細かい作業は子供の小さい手が似合うね。
繊維を解して、繊維同士を寄り合わせると糸になる。糸を編むと、布になる。この寄り合わせる作業が途方もなくめんどくさい。
「これ、楽しいね」
「えーめんどくさいよ」
意見が大きく分かれるのをやむをえないな。いつまで経っても終わりが見えないからな。
とにかく時間がかかる。現代の紡績機(糸を作る機械だぞ)が偉大な発明品であると言われるのがよくわかる。
冬に間に合えばいいんだが。まあ毛皮をなめす方法が判明しているので、頑張れば全員に毛皮が支給できそうな………狩りが上手くいけばな!! なめしが間に合えばな!!
が、それよりも前に、作らないといけないものがある。石鹸である。
なんで石鹸かと言うと妊婦のためである。現在の人口は大体30人くらいであるが、妊婦が出てきているのだ。外から人を連れてこられる確証がない以上、自然増加を高めたいところだ。
この時代の妊娠出産は過酷である。詳細なデータは記憶にないが、死産の可能性がだいたい15%くらいだったと思う。この時代を現代に近づけるためには、やれることはやらないといけない。すなわち栄養状態の改善と、衛生の徹底だ。栄養状態は、農業が成功したので改善傾向にあるだろう。アルコールは蜜蝋でシーリングした壷に保管できるようになったので、あとは石鹸であろう。
俺はその場を離れ、自宅に戻った。角丸四角形の型を覗き込んでみる。液体のままの石鹸があった。
「やっぱりかたまらねぇ………」
動物の油に木炭の灰を混ぜてみた試作品の石鹸だが―――いつまで経っても固まらないのだ。石鹸としては出来ているようで、試しに手を洗ってみたが綺麗に汚れが落ちた。だが俺が欲しいのは固体の石鹸なのだ。
油と、アルカリ性のソーダだとか灰の上澄みを混ぜればできるはず。原理として間違っていないのは、石鹸が出来ていることから明らかなんだが、液体石鹸はこの時代じゃどうにも使いにくくてな。壷に入れて持ち運んでこぼしちゃいましたじゃ労力に合わない。
「むむむむ………なんで固まらないんだろうなぁ。間違ってないんだけどなぁ」
俺は出来上がった液体石鹸を眺めて呟いた。これはこれで使わせて貰うけどな。
「んー………どう思うよ?」
『グア?』
俺は、カモを両手で包むように抱っこすると、膝の上に乗せた。ふわふわとして気持ちがいい。
「灰の種類が違うのかな?」
俺が使った灰は、木の燃えカスである。
灰は灰でも、違う灰があるのか?
『グア』
「ん、だめだぞ。それは出汁をとる用だぞ」
カモの一羽が天井から吊るしてあるコンブを突こうとしたので、手で阻止する。
「………コンブ、海藻……」
海藻は、あるいは灰の成分が違うかもしれない。
食用にとっておいたそれを、器の上で燃やして灰を作る。続いて、水を混ぜて、上澄み液を取り、をくりかえすべきだろうが試作なので簡単に、獣の油とかき回して、石鹸型の土器に流し込んでみる。
「一晩待ってみるかね」
結果が楽しみだ。
「薪を燃やすんで?」
俺は村の中心、岩の傍まで来ていた。燃料が岩の傍に積まれている。狼煙を維持するのに、異邦人組の男を一人呼んできた。
周辺に人を送らず、人を集める方法について以前から考えていたのだが、狼煙をあげてみようと思う。現在、各家庭の焚き火では家屋に煙が遮られてしまって、狼煙にはならない。煙を上げることができれば、周辺にいる人間が存在に気がついて寄ってくるかもしれない。
「薪も燃やすけど、生木と葉っぱも燃やす。狼の糞があればよかったんだけど。煙をあげて周辺の人を呼び込もうと思うんだ。そうそう、薪はした。生木と葉っぱは上に被せるようにしてもらって」
忍者曰く狼の糞を使うと狼煙がまっすぐ上がるとか。狼がいないけどな! 犬もいないしな! ようは燻らせればいいので、油分と水分が多そうな木を選んできて貰った。
男が俺の指示で燃料を組みつつ言ってきた。
「神様、人を集める必要はあるんですかね。寄ってくる人が善人とは限りませんぜ」
「そうね。ありうるね」
所有の概念の薄いこの時代に盗賊はいないだろうけど、好き放題してやろうとする輩もいるはずだ。
もしそうなったとき、俺は人を裁かなくてはいけないかもしれない。
「それでも人を集めておきたい。もっと、生活が楽になるから」
俺はそういうと、男が狼煙に火を灯すのを見ていた。パチパチという音。薪が爆ぜる音。ゆっくりとだが熱量があがっていき、白煙が昇りはじめた。
目的ね。俺が不老不死なんだとすると、永遠に豊かさを追求することになるのかね。幸せってなんだよ?
「神様ぁぁぁぁっ!!」
「早い、早いよ!!」
つけて数分経ってないのに村人が走ってきた。ちょっと早すぎなんじゃないかね?
男は息を整えんと深呼吸をしてから声をあげた。
「うちの嫁が転んで足をざっくり……切ってしまってぇッ!!」
「OK、家に連れてきて」
怪我人が出たらしい。しかも足を切ったと。この時代の治療法としては、放置しておくことだが俺は違う。たかが傷と侮るなかれ。破傷風でも起こそうものなら死まっしぐらだ。医者ほど知識があるわけじゃないが、感染症を防ぐ方法ならわかっている。
自宅に走っていくと、早速治療の準備に取り掛かる。アルコールよし。骨を削って作った縫い針―――曲がった針だ―――を、お湯の中に入れて煮沸消毒する。次に糸だが、髪の毛を使おうと思っていたけど、ここは最新技術である麻の糸を使う。これもお湯に投じる。
「神様、連れてきました!」
「おし、そこに寝かせろ」
「何事だ?」
「アキラスか。これから傷口を縫うから見てて」
「傷口を……!? 縫う!?」
アキラスが騒ぎを聞きつけてやってきた。
俺は寝転んでいる怪我人の様子を見た。足の怪我以外は特に損傷がなさそうだった。脛がざっくりと縦に切り裂かれてしまっている。
「みんな彼女をおさえてくれ。暴れるかもしれない」
集まってきた面々が怪我人の手足を押さえた。
俺はまず水をかけて傷口を洗った。異物を洗い流すためだ。次にアルコールを葉っぱにつけると傷口を拭った。
「~~~~~~~~ッ!!」
激痛が走ったらしく暴れる。耐えてくれ。
傷口の様子を観察する。比較的鋭い石で切ったらしく、刃物で切りつけたような傷だ。皮下組織まで深く切っているわけではない。
麻の糸を針に通して、傷口の縫合を始める。ピンセットでもあれば楽だったんだが。本業の医者と比べれば笑いたくなるほどの拙さだが、ようは傷口を閉じて病原菌やウィルスが侵入できなくすればいいのだ。
「痛い………!」
「耐えてくれ!」
苦痛に怪我人の女が泣き始めた。手早く終わらせないと。
傷口の対岸に針を通して、対岸の淵にかけて……。
「人を……人を縫っている……!」
「なんという……」
女を押さえている男たちが唖然としている。縫うという概念は、毛皮の加工の時にみんな知っているがまさか人間を縫い始めるとは思ってなかったのだろうな。
「難しいな……」
手先が震える。人間を縫っているなんて、俺だって信じられないよ。
空洞を作らないように、慎重に。針の大きさが気になるね。金属製品が作れるようになったら、もっと繊細にできるんだが。
「みんな見ておいて欲しい。俺よりも手先が器用な人がいたら、今後はその人にやってもらうことになるから」
『…………』
誰一人返事をしてこなかったが、俺の作業を見守ってくれているのはわかった。
俺よりも器用な人がいるはずなのだ。その人を医者にしたい。もっとも、外科手術は俺の専門外のことなので、動物を使って実験することになるだろうが。
傷口を締め上げて、最後は焼けた木炭を近づけて麻を焼き切る。それから止血効果のある葉っぱを宛がって糸を巻く。完成だ。
「できた」
「ありがとうございます………」
「毎日必ず水で洗ってね。それから痛み止め出しておくから」
俺は壷の中から丸薬を取り出した。鎮痛作用のある薬草を丸めて干したものだ。
経過観察して化膿しないかを見ないといけないな。うまく処置できたならよかったんだけど。